包容力MAXのイギリス人が妹になったので一つ屋根の下で暮らします。   作:瓜生史郎

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76話 体育祭実行委員になっていた

 次の日、いつものように登校した俺は、ロッカーを開け上履きを出そうとすると、白い封筒のようなものがふわりと床に落ちた。

 

「なんだこれ?」

 

 拾い上げると、表面には久野原様へと丁寧な文字で書かれている。

 

 何の躊躇もなもく開けると中には写真が何枚も入っていた。中に入っていた写真を見た直後俺の背筋が一気に凍りついた。

 

「嘘だろ……」

 

 あろうことか、写真には俺とクレアが一緒に家へ入る所が激撮されていたのだ。

 

 それだけではない……。買い物しているところや……なんと抱き着かれているところまでも……。

 

「誰がこんなことを……」

 

 更に封筒の中には手紙も入っている。

 

『体育祭でもし貴方がいる組が負けた場合……、この写真ばらまきます』

 

「なんなんだよ……これ……」

「おはよう、友……太?」

 

 封筒の中身を見て、震えおののいている俺の後ろに優奈がやってくる。

 

 顔色が凍り付いた様子を見て不思議に思った優奈は後ろから覗き込む。

 

「それ何?」

「ごめん、ここじゃ話せない……」

 

 腕を掴んで、俺は急いで自分の教室へと走った。

 

「ちょ、ちょっと友太!!」

 

 驚く優奈に聞く耳を立てずに走る。

 

 ようやく教室へたどり着き、教室の中を見渡すと既に小原が机に座ってスマホを触っていたので急いで近づいく。

 

「どうした?そんなに焦った顔をして……」

「やられた……」

 

 冗談ぽく「何がだよ」と言いながら笑う小原に白い封筒を渡すと、察したのか顔色を変えて周りの様子を確認した中をチェックした。

 

「まじかよ……」

「見せて」

 

 同じように小原も真っ青な顔になったのを見て優奈も封筒の中身をチェックする。

 

「ひどい……。誰がこんな事を……」

「おそらく、情報を流した奴と同一人物だろうな」

「誰なんだよ……」

 

 先ほどまで俺の心を支配していた恐怖は次第に怒りへと変わった。

 

 こんな事をして何が目的なんだ……?

 

「私、許せない……。友太にこんなひどい仕打ち……」

「ていうか、誰が流した情報掴めてないのか?」

「それがまだ情報来てないんだよ……。昼休みくらいに来そうだけどな」

 

 どんよりとした空気の中、それを引き裂くようにホームルームの予鈴のチャイムが鳴り響く。

 

「本当に、あり得ない……絶対許さないんだから」

 

 まるで自分がされたように優奈は怒りを露わにしながら自分のクラスへと戻って行く。

 

 情報がない今はあまり下手に動かない方が良さそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昼休憩、小原から屋上に呼び出された俺は急いで向かう。

 

「よぉ、来たか」

 

 待っていた小原から、缶ジュースを投げられて受け止める。

 

「何か、分かったのか?」

「まぁ……詳しい情報ではないがな」

「話してくれ」

 

 お互い缶ジュースのタブを開けて、まずは一口飲んで落ち着かせる。

 

「3日前、やはりファンクラブの奴らに誰かが情報を渡してるのを見た人がいるらしい」

「で、そいつは誰なんだ?」

「それが、渡している方が暗い場所にいてわからなかったらしい……」

「なんだよ……」

 

 心底ガッカリした様子を見せる俺に「ただ」と付け加える。

 

「声は女子だったらしい」

「女子って言われても……、この学校何人女子がいると思ってるんだよ……」

 

 犯人が女子と言われても、このマンモス校には何百人もの女子生徒がいる。

 

 そこからどうやって特定しろと……。

 

「そこなんだよなぁ……」

「それ以上の情報は?」

「ない」

「はぁ?」

 

 あまりの情報の少なさに度肝を抜かれる。

 

「まぁ、誰かが情報を渡してるって言う情報が分かっただけでもありがたいと思え。後、情報渡したんだ。とりあえず学食でパン奢れ」

「わかったよ……」

「よっしゃー」

 

 喜びを表に出しながら、小原は飲み終えた缶を空き缶入れに投げ入れると、見事一発で入る。

 

「お、ついてるなあ!!お前もやってみろよ」

 

 言われるがままに俺も投げ入れると、投げた空き缶は見事に入った。

 

「入った……」

「今日はついてるなあ、良いことあるかも知れないぞ!!」

「だと、良いんだけどな」

 

 ルンルン気分で歩いて行く小原とは違って、俺の心は不安でいっぱいだった。

 

 女子とは分かったが、それ以上の情報が分からないので正直怖い。

 

 まるで見えない敵と戦っているようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 教室に戻った俺は授業中にも関わらず、ずっと窓の外を眺めていた。

 

 俺を貶めようとしている女子……、全く見当もつかないな……。

 

 昔、いじめた女の子なのかな?もしかしたら振った女の子かも、2つとも記憶にないけど……。

 

 とにもかくにも、早く情報漏らした奴を突き止めて、止めないと……。

 

「久野原!」

「は、はい!」

 

 不意に大きい声で呼ばれて現実に引き戻された俺は勢いで返事をする。

 

 どうやら、気づかないうちにホームルームとなっていたようだ。

 

「お前、体育祭実行委員になったけど良いか?」

「へ……?」

 

 思いもよらない先生の言う事に俺は困惑する。

 

 目の前の黒板を見ると、チョークで書かれた体育祭実行委員の下に俺の名前が書かれていた。

 

「さっき手を上げていたから書いたぞ?」

 

 そんな馬鹿な……。いろいろ考えるのに夢中で適当に手を上げてしまっていたらしい。

 

 まずい……、断ろうかな……?いやこの状況皆嫌そうな顔してるし引き受けるしかないか。

 

「わかりました……」

「という事で、うちのクラスの実行委員は久野原に決定した。久野原は放課後視聴覚室へ行くように」

 

 そうして、ホームルームが終わり、教室にいた生徒は次々と出ていく。

 

 最悪だ……。何でこんな面倒な事に……。

 

 肩を落として落ち込んでいると、隣から小原が俺の肩を叩く。

 

「良かったな、久野原」

「良くねぇよ……」

「じゃあ頑張れよー、体育祭実行委員さん」

 

 笑顔で肩をポンと叩きながら教室を出て行った。

 

 良い事あるかもって言ってたくせに、結局起きたのは悪い事だったじゃないか……。

 

「はぁ……やめようかな……」

 

 憂鬱な気分のまま、リュックを背負い視聴覚室へと向かう。

 

 後で先生に言ってあれこれ理由を付けて辞退しようかな?

 

 そう思っていた時後ろから「友太君ー」と愛愛しい声がしたので、振り向くとこちらに向かってクレアが走って来ていた。

 

「クレアどうした?」

「私も体育祭実行委員になったの」

「え?」

 

 驚きと言うよりも「なんで?」という気持ちの方が強かった。

 

 こんな面倒な事を、なんで自分から引き受けたんだろう?

 

「友太すごく辛そうだったから、私が一緒だったら楽しいかな?って迷惑だったかな?」

 

 何と優しい妹なのでしょう……。感動して涙が出そうになった。

 

 クレアの問いかけに俺は首を横に何度も振った。

 

「良かったー。じゃあいこっか」

 

 クレアは俺の手を握り、視聴覚室の方角へと引っ張った。

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