包容力MAXのイギリス人が妹になったので一つ屋根の下で暮らします。   作:瓜生史郎

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今回は全てクレア目線で話が進みます。


8話 父と妹が話し合った

 その夜、私はベッドの上に寝転がりながら今日友達から聞いたことを思い出していた。

 

「久野原君、小学校の頃男子生徒にナイフで刺そうとしたんだよ」

「しかも、目がマジだったらしいんだって……怖すぎ」

「ねー。マジ怖いよね」

 

 本当に友太君がそんな事を?さすがに話が膨張され過ぎなのでは?と思ったが二人の話し方を見てると真実の言明なんだろう。でも……。

 

「でも! 久野原君にも理由があるんじゃ?」

「まぁ私もそう思うんだけどさ」

「いくら何かあったからってナイフで刺そうとするのはどうかと思うよね」

 

 二人の言う通りだ、いくら何か気にくわないこと、誰か守ろうと思ったからってナイフで刺していい理由にはならないし、擁護もできない。当然そんなことをしてしまえばいくらこんなに生徒の多いマンモス校でも噂が広がってしまうのも納得である。

 

 それでも友太はそんな噂のような男子じゃないって事は、私は知ってる。でも……その時は何も言えなかった。

 

 

「なるほど、これは想像以上に深刻な事態だな……」

「そうですね……」

 

 気が付くと私は友也さんに電話していた。今の私の気持ちを話せる人が友也さんしかいなかったからだ。

 

 本当は友太本人から話を聞きたかったのだが、至極当然のように「もう終わった」とこの前のようにはぐらかされてしまうだろう。

 

「昔の友太なら色々話してると思うが今の友太だと話してくれないだろうなぁ」

「誰か別の人に聞くとか?」

「それが良いと思うけど、あの高校には友太の小学生時代を知っている人はほとんどいないだろうから」

「植野さんは違うんですか?」

「植野?誰それ?」

「あ、ご存じなかったんですね……」

「ごめん知らない」

 

 友也の反応からして植野の存在を把握していなかったようだ。

 

「それにしてもまさかこんな事になってるとは思っていなかったぞ。予想外だ」

 

 スマホ越しでも友也が戸惑っているのがよくわかった。

 

 これは想像以上に難題となってしまった。と私も頭を抱える。間違いなく学校で聞いた噂が友太の友達を作らなくなってしまった理由に直結することは間違いないだろう……。

 

 とりあえずまずはそうなってしまった理由を探らなくてはならない。

 

「ところで昔の友太君ってどんな子だったんですか?」

「昔の友太は友達を作るのが超得意な子でなー、かなりの数の友達がいたぞ」

「どれくらいいたんですか?」

「ざっと100人はいたと思うぞー」

「そんなに!?」

 

 驚いた。そんなにたくさんの友達がいたなんて……。昔の友太は相当友達を作るのが大好きだったんだな……。

 

 というかそこまでの人数がいたら植野も把握できていなくて当然か。

 

「でも少し過剰すぎるところがあってな……」

「どういうことですか?」

「友達が少しでもいじめられていたら、すぐに飛んで行っていじめてる相手を成敗していたんだ。その度に学校へ呼ばれて大変だったよー」

 

 友也は「はっはっはー」とスマホ越しに笑っていて、それに私は「へ、へぇ」と生返事しかできなかった。

 

 だけどそんな友達想いな友太がなんで今の友太君に変貌してしまったんだろう?いや友達想い過ぎるが故という訳か……。

 

 おそらくどこかのタイミンクで学校で聞いた出来事を起こしてしまったのだろう。そこから何かを思って人間関係や交友関係を絶ってしまったと考えられる。

 

 そう考えると、友達想いだった友太にとっては英断だったのかもしれない……。

 

「それにしてもクレアには迷惑をかけてすまないな」

「いえ……これも友也さんに対する恩返しですから……」

「そう言ってくれると助かる!」

 

 友也さんには返しても返しきれない恩がある。絶対のこのミッションを成功させなくてはいけない……。

 

「だって、兄妹になった友太君がこのまま寂しい運命を辿るなんて耐えられませんから」

「クレア……」

 

 兄が真っ当な人生を送ってほしいと思うのは家族として当然の事。

 

 そうだ。これは妹として、家族として、大げさかもしれないが私が全うしなければいけない責務なんだと私はもう一度決意を新たにする。

 

「まぁ急ぐ必要はないよ~?クレアちゃん。ゆっくりと友太君の心を開いていけばいいさ」

「はい!」

「ゆくゆくは友太とね……くっついたりしてね」

「そ、それは! ないです!!」

 

 私は慌てて断言した。流石に友太と恋人のような関係になる事なんて……。そんな事を考えていると顔が真っ赤になっていってるのがわかった。

 

「まぁゆくゆくはだから! それにしても義兄弟同士……の?」

 

 そう言いかけるとスマホの向こうから「ちょっとダーリン~?」という聞きなれた女性の声が聞こえた。

 

「ごめん~ハニ~今行く~。じゃあそう言う事だからよろしく~」

「あ、はい!」

 

 そのまま通話は切れる。おそらくさっき聞こえた声は私の母の声だろう。元気そうで良かった。本当に二人はラブラブだな……。

 

 

 

 友也との通話が終わりベッドに寝転がる。そうはいったもののどうすればいいんだろうか?

 

 まずは友太に付いている黒い噂を取り払わなくてはいけない。そうすれば自ずと友太の元へと近づいてくるはず。そうすれば小原や植野以外にもだんだんと友達が増えていくはずだ。

 

 そうなれば、友太は昔のように友達を作ることへの楽しさを思い出してくれるはずだ。

 

「どうやって……黒い噂を取り払おうかなぁ……あ……」

 

 私の口元はいつの間にか緩んでいた。そうだ学校でもああすれば皆友太が怖い人じゃないと教える事ができるじゃないか……。そうなれば明日からやろう。

 

 でもそうなると……。植野と対立することになってしまう。植野は友太に友達をもう作ってほしくないと言っていた。それは多分友太にもうあの時の出来事の時の事をもう起こしてほしくない、思い出してほしくないと思っての事だろう。

 

 その気持ちはよくわかる。だけどそうやって過去の事をずっと引きずったままではダメだ。友太には前に向かって歩んでもらわなくてはいけない。

 

 もう植野と対立してしまってもいい。それが友太のためになるのなら……!!

 

「友太君、絶対貴方の周りを友達でいっぱいにしてあげるから!」

 

 そう決意を新たにして、その日の夜は目を閉じた。

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