包容力MAXのイギリス人が妹になったので一つ屋根の下で暮らします。 作:瓜生史郎
学食へ来た俺達3人は、メニュー表を見て悩んでいた。
それにしても俺、学食に来るの入学した時の校内案内以来初めてじゃないか?ほとんど教室でコンビニ弁当ばっかだったし……。
「友太君、何食べるー?」
「うーん、そうだなぁ……」
「私は、卵サンドで良いよ」
ぶっきらぼうな表情で一言そう言い残し、近くの開いてる席に座った。
やっぱり、有栖と仲良くしてたのがそんなに気に入らなかったのかなぁ……。あんな高嶺の花が俺の事を好きになるわけないのにな。
「友太君、どうしたの……?」
「あ、あぁ……なんでもない……。クレアは何が良い?」
「うーん……」
メニュー表を見て、クレアはこれも良いな、あれも良いなと悩む。
とりあえず、俺はクレアの弁当があるからそれでいいや……。そう思いながら待っていた時だった。
「久野原くーん」
その声が聞こえた時、近くに座っていた優奈の顔色が暗くなった。
「松原……」
「久野原君も学食で食べるの?」
「ま、まぁ……」
優奈の顔色を伺いながら、俺はそう答える。
やばい、イラつきすぎて優奈の持っていた割り箸が折れた!?
「松原さんだー」
「クレアさんも一緒だったんだねー」
「はい」
2人は和気あいあいとした雰囲気だった。
いつの間にクレアと仲良くなってたんだ?まぁ2人とも雰囲気は似てるしお互い気が合ったんだろうな。
その後、クレアはフルーツサンドに決め、卵サンドと一緒に買い、優奈の座っている場所に向かう。
「友太……、私卵サンドは頼んだけど、くるみは頼んでないんだけど……」
「悪かったわね……」
2人はかなり険悪なムードだ……。
正直ここから離れたい。
「早く、くるみ割り人形に割られればいいのに……」
「何ですって⁉」
なんで優奈はこうやって、喧嘩を煽るのかなぁ……?流石に松原が可哀そうだよ。
正直松原を庇いたいのはやまやまだけど、そうなると優奈の機嫌が悪くなるんだよなぁ。
「なぁ、2人ともその辺にして……」
「「わかった」」
2人は同時に俺の方を向いて、首を縦に振る。
早い……。
その後俺の鶴の一声で、松原と俺達3人は同じ机で食べる事になった。
「友太、本当に実行委員長やるの?」
「うん、まぁ……」
「え、久野原君実行委員長やるの?すごっ」
驚いた顔をした松原が、机に身を乗り出した。
「実行委員長って何やるんですか?」
「うーん、いろいろ準備の指示したり、最初の方で挨拶したりとかかな?」
「へー、友太君すごいー」
松原に教えられて、クレアは目を輝かせる。
「え、ちょっと待って……。俺最初に挨拶しないといけないの?」
「そうだよ?」
「まさか、友太それを知らずに承諾したの?」
「ま、まぁ……」
最悪だ……。何で承諾しちゃったんだろう?
こんな陰キャが、挨拶とかできるわけないじゃないか……。
今更後悔の念が押し寄せて押しつぶされそうだった。
「頑張ってねー友太~」
「なぁ……。どんな事言えば良いんだ?」
「そう言うのはネットから拾えば良いんじゃない?」
優奈は「ほら」と言いながら、ネットに載っているサイトを見せて来た。
そこには様々な場面で使える挨拶の文が載せられており、結婚式や宴会など……。こういうのを見てると最近のネットは便利だなぁとつくづく思う。
「ほんとうだ……。これを丸コピで良いか……」
「後でLINEに送ってくね」
スマホを自分の方へと戻し、操作する。
「それじゃダメです」
納得していない様子で松原が、机を両手で軽く叩きながら。
「ど、どうしたんですか?松原さん……?」
困惑した様子でクレアが松原に問う。
「せっかく久野原君が勇気を出して前に出るんですから、丸コピじゃダメです」
「じゃあどうすんだよ」
「私が考えてあげます」
「はぁ!?」
スマホを触っていた優奈は、松原の提案に異議ありというような顔で立ち上がる。
「あら、植野どうしたの?」
「何であんたが考えるのよ」
「ダメなの?」
まーた喧嘩が始まってしまった……。
どうしよう。
「まぁまぁ……。2人とももう喧嘩しないで」
「じゃあ、友太。どっちに考えて欲しいか選んで」
結局、どっちか2人に挨拶を考えてもらうことに変わりはないらしい。
コピぺで良いのになあ。
「小学生の時、国語赤点だった癖に文章なんて作れるの?植野さん?」
「失礼ね!!小学校の時の話よ!あんただって赤点ギリギリだったでしょ?」
「ぐぬぬ……」
バチバチと火花を散らすように戦う2人の間に俺は割って入る。
「わかった。俺が自分で考えるから!!お前ら喧嘩するな!」
「「へ??」」
唖然とした様子で、2人はこちらを向いてその後に遅れてクレアもこちらを向いた。
「友太できるの?」
「まぁ多分な……」
「そっか、久野原君分からないことがあったら教えてねー」
とりあえず、2人を争わさず平和的に解決できたが本当に挨拶なんてかけるかなあ?今からすごく不安になって来た。
放課後、俺は図書館の机に向かって挨拶を考えていた。
「本日は、お日柄も良く……」
最初の1文だけを書いて完全に詰んでいた。
ダメだ。俺も格好をつけたはいいものの、国語の評価2だし、作文を書くのも苦手だ。マジで全くいい文章が思いつかん……。
「やっぱコピペにするか……」
近くに置いてあった、スマホに手を伸ばそうとした時だった。
「だーめ……」
静かな声と共に、両方の視界が遮られる。
「ま、松原……?」
「せいかーい」
視界が開けたと同時に笑顔の松原が現れた。
「どうしたんだよ」
「久野原君、大丈夫かなーって」
「大丈夫だよ……」
「それにしては最初の一文しかできてないね……」
机の上に置いてあった、ほとんど進んでいない作文用紙を持ち上げて見つめる。
「作文は得意じゃないんだよ……」
「ふーん。じゃあ私が手伝ってあげようか?」
「えっとじゃあ……」
その時俺の脳内に突然電流のようなものが走った。
ここで、手伝ってと言えば後で見つかった時に絞られるくらい怒られてしまうんじゃないか?絶対に断らなければいけない。だが。
「ねぇ……。私じゃ不満なの……?」
上目遣いで、今にも泣きそうな顔でこちらを見つめて来る。
「いやそんな訳じゃないけど……」
「あ、わかったー。植野に見つかるのが怖いんでしょ?」
嘘だろこいつ、ドンピシャで当てやがったこいつ。
ニコニコと笑顔で、はにかんだ表情は逆に恐怖を感じる。
「大丈夫、ついさっき走って帰って行ったの見たから……」
「えっ……」
走って帰ったという事は、優奈は今日バイトか……。
てかよく見てんなぁ……。
「だから、考えてあげるね」
「あ、ありがとう」
その後、松原に文章を考えてもらっていると、気が付けば30分くらいで完成していた。
ほとんど松原が書いてもらったが、少し俺のアイデアも入っている。
「どうかな?」
「うん、いいかも」
とてもいい文章になったなぁ……。
でも、これ良い文章過ぎて、誰かが考えたってバレないかな?まぁ大丈夫か。
「あ、もうこんな時間!用事あるから帰るね!」
「おう!じゃあな」
「うんまたね。あ、それ私が考えたって言わないでね……」
つぶらな瞳を輝かせながらお願いされたら、俺は「はい」としか言えない訳で……。
返事を聞いた松原は安心した表情で図書館から足早に出て行った。
「さて、俺も帰るか……」
見送った後、俺も図書館を出る。
「げっ……めっちゃ暗くなってる……」
窓の外を見ると、いつの間にか空は暗くなっていた。
相当時間が経っていたらしい。
「早く帰ろう……」
急いで学校を出て帰路についたのだった。