包容力MAXのイギリス人が妹になったので一つ屋根の下で暮らします。   作:瓜生史郎

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9話 イギリス人の転校生に密着された

 朝のホームルーム前の休み時間、俺は何時ものように机に座ってニュースサイトを見ていると小原が走ってきた。

 

 「大変だ」と言いながら慌てたようにやってきたところを見るに相当な緊急事態のようだ。もしやもうクレアと住んでいるのがバレたのか?と覚悟を決めて「どうした?」と聞く。

 

「なぁ……今妖神で緊急クエスト来てるんだけど一緒にやってくんね?」

 

 なんだよゲームの話かよ……と、肩の力を抜く。

 

「なんで? 別にあれくらいお前一人でも勝てるだろ?」

「それがめっちゃ難易度強くてさ……適性キャラ持ってないんだよ」

「そりゃご愁傷さま」

「いや冷たいな!!」

 

 俺は妖神を開いて緊急クエスト蘭を見ると確かに小原の言う通り緊急クエストが来ていた。しかも超激ムズなんていうポップアップも出ている。

 

 このゲームにはそれぞれの地形やギミックによって適正キャラと言うものが存在している。難易度が簡単なものならそんなものは無視してごり押しで進めたりはするが、高難易度になっていくにつれて強いキャラやそこのステージにあったキャラが必要となってくるのだ。

 

 それでも多少は適正キャラじゃなくても、妥協キャラを使えば何とかなることもあるが、この難易度ならそれも無理そうだ。

 

「で、これ何が一番最適正なの?」

「ほらこの前でた、クロノスって女のキャラクター」

「この前出た新フェス限のキャラか」

「そうそう、お前がこの前単発で引いたやつ! 俺はあれを持ってないから勝てないんだよ!とりあえず時間もないし俺部屋立てるわ」

 

 俺はクロノスという銀髪のキャラクターを編成する。その後マルチ部屋欄を押して小原が立てた部屋に入るとすぐにクエストが開始される。

 

 すると開始早々フィールドが真っ赤な溶岩で、空が重々しい黒くなった緊張感のあるステージへと飛ばされる。なるほど溶岩の上を歩くとダメージをくらってしまうので浮遊キャラが必要と言う訳だ。

 

 3Ⅾの浮いたキャラクターを操作し広大なマップを駆け抜けていく。今のところこれといった激ムズ要素はない。敵キャラも普通の雑魚キャラばかりでクロノスじゃなくてもクリアはできそうではある。

 

「なぁ、これのどこに難しい要素あるんだよ?」

「雑魚はそうでもないんだけど、ボスがね……」

 

 雑魚敵をどんどんとなぎ倒していると、突如としてカットインが入る。すると空中から巨大な黒い3つの頭を持ったドラゴンが地上へと降り立つ迫力のあるムービーが再生される。

 

 その現れたボスの姿に俺は見覚えがあった。

 

「これ!半年前に皆が倒すのに苦労したって言うブラックギドラ!」

「こいつがやべーんだよ」

 

 なるほどたしかに超激ムズなわけだ。昔は浮遊キャラもおらず溶岩のダメージに耐えながら回復アイテムいつ使うかの駆け引きがあって相当難しかったが、今は浮遊キャラも出て溶岩のダメージも怖くなくなった。

 

 だがそれでもブラックギドラの3つの頭で吐いてくる炎はどうにもならない。そこで役に立つのがクロノスのスキルの時止めだ。これを使えば10秒ほど相手の動きを止めて、相手に一方的にダメージを与えられるという訳だ。

 

 サクサクとダメージをブラックギドラに与えていく、このままいけば余裕で倒せそうだ。そんな時だった。

 

「おはようございます、小原君、久野原君」

「「お、おはよう、クレアさん」」

 

 僕ら二人の前に現れたのはクレアだった。突如現れたクレアに俺と小原は動揺して同じ言葉を発してしまった。

 

 あれ?なんで来たの?この前まで全く話しかけてこなかったじゃん……。なんで急に話しかけて来たの!?おそらく小原も同じ気持ちだろう。スマホを持つ手が震えていた。

 

 教室中の生徒も突然の出来事に少しざわつき始めていた。小原はわかるがなんで久野原もなんだ?というひそひそ話も聞こえて来ていた。

 

「何やってるんですか?」

「妖神ってゲームのマルチっていう二人での協力プレイをやってるんだよ」

「楽しそうですね」

 

 クレアはざわつき始めたのをよそに小原のスマホではなく俺のスマホを覗き込む。

 

「久野原君はどのキャラクターなんですか?」

「銀髪の娘ですよ」

「へーすごーい可愛い……」

 

 そう言いながらクレアは俺の肩を掴んでもう少しで体と体が密着するくらいまで接近する。

 

 やばい……なにこれ……すごく近いんですけど!?しかもめっちゃいい匂いする……!?え?てか肩を掴まれてる!?なんで普通にボディタッチをしてるの?

 

「おーいめっちゃ体力減ってんぞ?」

「え!? あ! 本当だ!」

 

 クレアに気を取られてスキルを使い忘れてしまい、ブラッキギドラの攻撃をまともに受けてしまったらしい。俺はすかさず回復アイテムを使って体制を立て直す。

 

 すごく教室にいる他の男子の生徒の嫉妬の眼差しを感じる。違うんです誤解なんです。妹なだけなんです。

 

「久野原君はこのゲーム得意なんですか?」

「まぁ結構やりこんでるんで得意な方だとは思いますよ」

「そうなんですねー」

 

 本当に何を考えているんだろう?まぁいいや他人の振りをすればいいだけ……。てかあ、あれ?ていうかなんか背中に何か当たっているような……?

 

 少し振り返るとクレアは完全に僕に密着していた。「うまいうまーい」なんて呑気なことを言ってるが、背中にはクレアの豊満な胸が当たっていた。

 

 くそぉ……このままだ理性がどこかに行ってしまいそうだ……。教室にいる男子の鋭い嫉妬の眼差しが痛すぎる。でも突き放してしまうと家で何を言われるか分からない。我慢してこのままゲームを続けるしかない!!

 

「ふぅ……やっぱクロノスがいると楽だなー」

「そ、そうだな」

 

 ようやくクリアした時には僕は疲れ切っていた。背中に当たるクレアの胸に気を取られまいと、ゲームに全集中したせいだ。

 

 ただゲームをしていただけなのに。なんでこんなに疲れなきゃいけないんだ。

 

「すごーい」

「まぁこんなもんすね……」

 

 クレアに褒められて小原は嬉しそうにしていた。本当に調子のいいやつだ。

 

「クレアちゃーんこっち来てー」

「はーい! では二人ともまた」

「またねークレアさん」

「お、おう」

 

 いつも一緒に居る女子生徒から呼ばれて可愛い小走りでそちらへ向かうクレア。なんで久野原君にあんなに近づいてたの?とか聞かれてるんだろうか?一人の女子生徒から耳打ちをされていた。

 

「てかお前いつの間にクレアさんと仲良くなったの?」

「別に仲良くなってねーよ」

「嘘だ。めっちゃくっつかれてたじゃん。社交的とか言うレベルじゃないぞ?」

「知らないよ」

「まぁ、お前って意外とイケメンだからモテるのかもな……」

「お前には負けるけどな」

「やっぱりー?」

 

 そんな冗談を二人で言い合って笑っていると、先生が「ホームルームを始めるぞー」と入って来てチャイムが鳴る。

 

 それにしてもクレアの奴なんであんなに密着していたんだ?これじゃあバレてしまうじゃないか。何を考えてやがるんだ?まぁでもそれもさっきで終わりだろう。たまたま気が向いて俺にスキンシップを取りに来たんだろうとそう思っていた。だがその考えはこの後起こる出来事に無惨にも打ち砕かれてしまう。

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