転生者、メタリック魔術士になる   作:フユガスキ

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まだ色々と朧気なときのこと

 しばらくして日暮れの頃、会話の話題が尽きて得体のしれない緊張感が車内を埋め尽くす。赤い光の悪魔がやってくるのは夜であるため、染み付いた緊張ともいえる。

 その頃にようやく残る適性者を二人拾い上げ、馬車はまた歓迎の軽い雰囲気を取り戻した。私たちが入る前もこんな雰囲気だったのかもしれない。

 

「ルイス・シャリオンです」

 

「ベニス・シャリオンです」

 

 双子の幼い適性者は軽い自己紹介をすると馬車の端、私の隣に座って黙りこくってしまった。見た目は小学生後半程である。歳の差からして、緊張させてしまったのかもしれない。

 

「では、ここからは一直線に訓練所へと向かいます。はっきり言って辞めるチャンスはここが最後です。皆さん、魔術士になる覚悟はおありですか?」

 

 リヴィーテさんがおそらく年齢順にそれぞれと目を合わせながら覚悟を問う。この馬車には若いというより幼い人が多いからこその目を合わせる意味だろう。私はその点、覚悟という覚悟はなく、テリミアさんと共にノリと勢いで乗ってしまった人間である。その意味で、ふさわしくない人間であるのは確かだと思うが、それでも死ぬ気はないし、戦う意志はある。ここで降りるという選択肢はないのだ。

 

「……では、ここから重要機密であり、現状魔術士について我々が分かっていることと、訓練所で訓練する大まかな内容を話します。よく覚えておいてください」

 

 ここからの話は長くなり、訓練所に到着する深夜までノンストップで話し続けることになった。

 まず、悪魔とは、魔術士によってのみ攻撃可能な、未知の生物である。赤い光を纏って現れ、自然災害を引き起こす。一斉攻撃の夜以降、出現には一定のルールが確認され、この場所はその出現場所を避けて走行しているらしい。また、赤い光を纏っているときは、魔術士であってもほとんど攻撃が効かず、悪魔と同時に出現する赤い玉を破壊することで赤い光の供給を絶ち、魔術士の攻撃が効くようになる。

 魔術士とは、古来に生きていたとされる亜人と呼ばれる種族の力を身に宿し、悪魔と戦う力を有する者のことを言う。

 亜人とは、御伽噺に登場する、耳の長い美しい人、身長の低い人、獣を模した人などなど、エルフ、ドワーフ、獣人たちのことである。

 そして、その亜人の力を呼び起こす根源が精霊と呼ばれるもので、共通して人形のような見た目をしている。精霊たちによって、魔術士の装備である魔術具が作られ、魔術士適性者が魔術具を装備し、精霊たちが動かすことで亜人の力を使うことができる。また、魔術士は魔術具を装備している状態でしか精霊を見ることはできないらしい。ここで、魔術士適性者は、すべての亜人の力を使えるわけではないことが注意点として挙げられた。例えば私は人魚の魔術具が与えられる予定であるが、他にもエルフや鷹の獣人の適性もあったらしい。逆に言えばそれ以外は使えないということであるらしい。

 このように、精霊と魔術士が組み合わさなければ亜人の力を使えなければ、悪魔にも対応できないのだが、そこを強固に繋げる要として天使というものが必要になってくる。

 天使適性者は魔術具をつけなくとも精霊たちを見ることができ、魔術士の強化も出来る。強化というのは、赤い光を貫通して悪魔を攻撃することが出来るというものだ。赤い玉――コアを破壊する際にもこの力は必要になるため、悪魔を退けるだけでなく倒すには必要な力である。

 ただ、厄介なのが天使と魔術士の適性はそれぞれ独立しており、天使適性者だが、魔術士適性者ではない場合と、魔術士適性者だが、天使適性者ではない場合と、天使と魔術士適性者である可能性が存在する。魔術士適性者より天使適性者のほうが絶対数が少ないのと、天使が魔術士にかけられるバフは個人に依存するため、天使が魔術士の司令塔となるらしい。私の場合は天使と魔術士の適性があるため、別働隊の隊長になることが決定しているらしい。本体を任されるよりは幾分か軽い気がする。

 

 ところで、ふと私は疑問に思ったことがあった。御伽噺に出てくる亜人は能力がそれぞれ異なり、訓練と一言に言っても相違点が多く、まとめて訓練できるような気がしない。上手いことやっているのかもしれないし、杞憂だったのかもしれないが質問してみると、この馬車が向かう訓練所は獣人の適正者が集められた場所らしい。

 テリミアさんは兎の獣人、双子はどちらも狐の獣人、暫定日本転生者ヤマダは竜人、セシェイストさんは人狼、リヴィーテさんは猫の獣人らしい。種類は様々だが、獣人という一括りらしい。

 

 深夜、訓練所に到着すると先に来たであろう馬車が10台程、同時に到着したのがもう1台あり、70人ほどの人数を既に集められていることが察せられる。

 リヴィーテさんに連れられ、石組みでできた訓練所の中に入ると、そのまま中庭へと接続されている道と、脇に屋内へと繋がる道がある。中庭にある大人の男性を想定した藁人形を横目に屋内へ入ると、若い男女が集められた大部屋が見えた。その中に入り用意された椅子に座ると待機を命じられた。少しずつ軍隊っぽい雰囲気が醸し出されてくる。

 

 テリミアさんと喋りながら座ること数十分、ぞろぞろと私たちと同じような男女がこの部屋に入り、空いた椅子をすべて埋めた。計121名の魔術士適性者である。

 全員が席につくと一段高いところに上った人が声を発した。

 

「はい、魔術士適性者の皆さんお集まりいただきありがとうございます。僕は教官長で彼ら10名の教官の、まぁ責任者のようなものです。生徒諸君にとっては普通の教官と変わりません。また、訓練と言っても身構えるものはなく、騎士団の魔術士適性者が悪魔と戦っているうちに分かった戦い方を教えるだけです。なので、皆さんにとって辛いのは、どちらかというと身体作りの面になることでしょう。よって、今日は11に分割される班で顔合わせと生活の場となる部屋の説明を終わらせてから寝てもらいます。今が2時ですので、起床時間は9時頃とします。普段は6時なので特別ですよ」

 

 教官長が一息に演説すると、徐ろに紙を取り出し名前を呼び始めた。それぞれの教官が管理する班員の名前らしい。私とテリミアさんは教官長の班になった。

 時間があまりないとのことで、部屋まで移動し、すぐさま就寝の準備を始め、初めての場所に戸惑いながらも、3時には就寝となった。顔合わせはあまりできていない。二段ベッドの上はテリミアさんで、左右は青髪縦ロールの少女と仲の良い黒髪の少年と、ピンク髪の長身の女性である。

 

 

 

 朝、慌しい昨夜とは大違いに落ち着いた食事を摂ることができた。班ごとに机があり、教官も同席して同じ食事を摂っている。その時にまともな自己紹介をして、軽く今日の日程を話した。

 教官長は鷲の獣人で、青髪縦ロールがペンギン、黒髪の少年が烏、長身の女性がダチョウ、他は良く覚えていない。兎に角、鳥関係の獣人が集められた印象だ。

 

「この後は実際に魔術具に触ってもらい、慣れさせていくよ。およそ1ヶ月半は魔術士の動きになれる期間として用意されてあるから、急がず慌てず、着実に慣れていくように」

 

 

 

 食事は終了し、早速訓練を開始した。基本的には午前には体力づくりや身体能力の向上を目的とした運動を行い、午後は魔術具の使用に慣れるため時間に使われる。

 初日の午後は施設の間取りの案内も含めて、魔術具を精錬、修理する工場まで遠回りして訪れた。工場に入り、耳を突くような音が反響する中を歩いていくと、教官長の第一班の班員分の魔術具が並べて置かれていた。

 私の魔術具は大きな尾ビレを模した機械だった。尾ビレは中がくり抜かれた円錐状になっており、脚を入れるであろう二本の穴がある。隣に置かれたテリミアさんの魔術具を見ると、同じくメタルチックな脚のパーツとうさ耳と腰の装着するのであろう梵天のようなものが置かれている。

 

 教官長を見ると既に着用を始めていたため、私たちも急いで装着し始める。私のパーツは一つだけなので分かりやすいものだが、テリミアさんは3つもあるため時間がかかるだろう。

 私は尾ビレに足を奥まで入れてみると、ちょうど腰のあたりに尾ビレがフィットした。腰回りはゴム製でできているのか、痛みはない。腰回りから伸びたショルダーベルトを肩に回し、長さを調節して装着を完了する。すると、尾ビレと脚の接続が外れ、脚だけ独立して動くようになり、尾ビレは尻尾の如くなった。どうやら、腰の右側あたりに脚の接続を変えるボタンがあるらしく、不用意に触ってしまったために作動してしまったらしい。人魚としてはなかなかに不格好である。

 

「さて、実のところ、皆さんの装備は同じ適性者意外使えない代物、つまり、僕は使い方を知らない。そのため、すまないが使い方自体は教えられない。しかしまぁ、一応同じ鳥の獣人ということで似たような点もあるだろう。僕が教えられる範囲は教えるが、施設は用意してあるので、班員同士、もちろん僕も交えて、試行錯誤していこう。僕たちは11人で一つのチームだ」

 

 教官長の言葉を受け、正直不安や心配もも残りつつも、班員の結束が高まったような雰囲気がした。

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