デスゲームが始まって一週間ちょっと経っているが死者は増える一方である。そのせいなのか、違うのか、ますますはじまりの街から出ようとするプレイヤーは減少していってる。
私は私で《歌唱》を使い毎夜、希望を届けられるように唄ってる。最近で私のは噂がまばらに広がってるらしく、人が増えてる気がする。まぁ、今はご飯を優先したいので考え終了!
いつものように、街路樹にある一つの木造ベンチに座る。ストレージから炭をまぶしたような真っ黒なパン。通称黒パンを取り出す。一口サイズにちぎっては食べちぎっては食べを繰り返す。
「安い、安心、不味いの三拍子が揃ってるよね。ハァ〜これが美味しくなれば何でもできる気がする!」
「それは本当かい?お嬢ちゃん」
突然の目の前に人が現れ、驚きのあまりベンチから転げ落ちる。
うぅ。お尻が痛い。
「大丈夫かいお嬢ちゃん」
顔を上げると、フードを目深に被っていて金褐色の髪が見える女性プレイヤーだった。驚くことにヒゲがついてた。鼠のような三本線が両頬にくっきりと。
「はい。少しお尻にダメージを受けたぐらいです」
「にゃハハハ!なかなかおもしろい言い回しをするネ。」
手を差し出され、素直にその手を借りる。あなたの笑い方の方がおもしろいですね。なんて言う勇気もない私は、どうも、と一言言う。
「嬢ちゃんさっき、その黒パンを美味しく食べたいって言ったネ?」
「は、はい。言いましたけど、ところであなたは?」
「おっと、オイラとしたことが名乗り忘れるとはナ。オイラの名前はアルゴ。情報屋ダ」
「えっと。私はシャンテって言います。それで、情報屋って情報を売買する情報屋ですか?」
「ソウ。その情報屋ダヨ」
その情報屋が黒パンと何の関係があるのかな。もしかして、この黒パンってアルゴさんの好物だったり!?それだったら私、黒パンの悪口言っちゃた。
「す、すいません。知らないこととはいえ、過ちを犯してしまいました。お詫びとして、この黒パンあげます。」
「何言ってるんダイ?オイラはただ、黒パンを美味しく食べれる方法の情報を提供しようとしただけダゾ」
自分の勘違いの恥ずかしさのあまり、頭から湯気どころかマグマが溢れ落ちそうになる。
恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい。顔を覆いながら悶え苦しむ。
「悶えてるところ悪いケド。情報買うかい?買わないかい?」
「か、買います!買わせてくださいって言いたいんですがお金が……」
金欠なんて初めてだよ。
「大丈夫大丈夫。代わりに、シャーちゃんの情報を教えてくれればいいから」
それってまさか……。
「体に自信はあまり無いです。リアルでも……」
「にゃハハハ!違う違う。それも魅力的だが、オイラが教えて欲しいのはシャーちゃんのスキルのことだよ」
何で知ってるんですか、と問いかける前にアルゴさんが先制する。
「これでも情報屋ダ。シャーちゃんが毎夜特殊なスキルを使って、唄ってることぐらい知ってるヨ。それに、《隠蔽》で時計台にいたからネ」
気づかなかった。自分の注意力の無さを悔やんでしまう。
「具体的には何を教えれば?」
「スキル名、効果、後は戦闘で使ってるところを見せくれればいいゾ」
最初の二つはいいとして、戦闘でなんか使ったことがないから、できるかどうか分からない。
でも、背に腹は変えられないだよね。
「分かりました。その情報、売ります!」
にゃハハハとまた軽快に笑うアルゴさんの声は改めて聴くと、良い声だった。
*
とりあえず、戦闘以外は教えてからフィールドに出る。
「あの、戦闘経験は最初にある人から教えてもらって以来無いんですけど」
「いざとなったら、オイラが華麗に助太刀してあげるから、気楽にやってくれて構わないヨ」
あまり頼りにならないけど信じて損はないと思いたい。初めて、《歌唱》を戦闘目的で使うので、詳細をチェックする。今の時点で使えるスキルを確認すると、一つのスキルに目に止まる。
「まだカイ、シャーちゃん。待ちくたびれたヨ」
再確認してる暇が無さそうなので、早速使用する。
胸の中心に両手を乗せる。モーションが認識されたらしく、胸の辺りが紅く輝きだし、喉元に移動する。唄うように喉元の紅い輝きを口から中に放出すると同時に右腕はオペラ歌手のように斜めに浮きだす。口から放出された輝きは波紋のように広がっていった。
HPバーの下にステータス上昇のアイコンが表示されたのを確認し、近くにポップした《フレイジーボア》の照準を併せ走り出す。短剣基本上段突進技《ナナカルト》を繰り出す。右足を勢い良く踏み出し、短剣を持っている右手を弓の矢のように突き出す。命中した《フレイジーボア》はポリゴンの欠片となり消えていった。
「おお〜!すごいよシャーちゃん。初心者なのにここまでスムーズにソードスキルを使えるなんてお姉さん驚きダヨ」
「あ、ありがとうございます」
過度に集中したせいか肩で息をしている。戦うのがこんなに疲れるなんて思いもしなかった。
「シャーちゃん。疲れてるところ悪いけどレベルアップしてるヨ」
頭上を見るとレベルアップの表示と音が聴こえていた。ステータス振り画面が現れる。
「あの、ステータスって何に振ればいいんですか?」
「そう言えばシャーちゃんってMMO自体初めてだったネ。それならAGIつまり敏捷性をおススメするヨ。短剣を使用するプレイヤーなら振っていて損はないからネ」
先人の知恵に学べの精神で、AGI中心に振る。一応、STRつまり筋力もちょいちょい上げといた方が、いいとのことです。
「とっても良いものを見せてもらってお姉さん嬉しいよ!じゃあ、早速情報を教えてあげるヨ」
何でも、メダイの村で受けられるクエストの報酬としてクリーム!が貰えるらしいのだ!
「約束通り情報を教えたよ。名残惜しいが、まだ他に仕事が残ってるからここでさよならダ」
「それは少し寂しいですね。でも、ありがとうございました」
「お礼なんていらないヨ。まぁ、良い子のシャーちゃんに一つだけ教えてあげル。シャーちゃんも知っての通り、そのスキルは現時点ではユニークスキルだとオイラは思ってるけど、サポートだけに関してはそのスキルはゲームバランスを崩すと思うゾ。だから、シャーちゃん。その力は自分が一番良いと思うことに使用するんだゾ」
真剣なアルゴさんの言葉を心に留める。
「分かりました。私利私欲のために私はこの力を使いません。希望のために使います」
「にゃハハハ、本当に良い子だネ。じゃあネ、シャーちゃん」
「はい!またどこかで」
アルゴさんは笑い声を響かせながら、走り去っていった。
その日の夜。私の唄に違和感が出てた。二十一時の鐘がなる前に唄えなくなったのだ。
そのことを、あまり大きく捉えてなかった私はこの時点で過ちを一つ犯していた。
なかなか書けない。泣ける!
でも、まぁ。
色々と募集してます。