「……エボルトは消えたか」
それは宇宙空間から地球を観察していた。
「セント、リュウガ、楽しかったぜ。エボルトを倒しておめでとうか……くくっ……何時か戻るぜ?その時は、楽しい、楽しいゲームをな」
その存在の名前は地球外生命エボルトの弟、オニキス。仮面ライダーの仲間としてエボルトと敵対して死んだはずの存在である。
「よお、セント」
「お前は…オニキス!」
桐生戦兎はビルドドライバーに手をかけるが、オニキスは無からアタッシュケースに入った札束を桐生戦兎に手渡す。
「金ないだろうが、後……お前は必ずベストマッチな相棒と再会できる。そして…お前達が万全になったとき、俺と楽しいゲームをしようぜ」
「巫山戯るな!お前のゲームで何人の人が、消滅し、殺されたと」
だがそれは間違いだ、オニキスは石動美空を、桐生戦兎を、万丈龍我を愛している。
愛しているという感情を持ってしまった故に、彼等を護り手に入れようとしたのだ。
狂った愛、それがオニキス。
そして、その狂った愛は市民にも向けられゲームとしょうし、数多の人々がスマッシュに落ちた。
「エボルトよりはマシだろ?じゃあな、Adieu」
桐生戦兎の前で雲の様になり消えたオニキスはブラック・ホールを使い別次元へと飛んだ。
「さぁ……どこかなと」
オニキスが抜けた先には地球があった。
別次元の地球である。
「へぇ……面白そうだな」
オニキスは世界を周り、ありとあらゆる知識を奪った。その時に殺した人間の数は、図りしれない。
「魔術ねぇ……ウィザードとか言った奴も居たな。仮面ライダーは居ないみたいだが……」
「まさか…テレビとはねぇ……しかも2008年ときた。いやはや……」
オニキスは再び人間に擬態する。
名を石動宗介。
「しっかし、情報の類も簡単に抜ける。これなら旧世界の方がセキュリティは上だぞ?」
日本政府の情報をハッキングし、戸籍、資産、全てを偽造する。
「さて……カフェnacitaの開店だな。エボルト、お前みたいな泥水を入れるものかよ」
と意気込んだ物の、宗介が店長を務めるnacitaは閑古鳥が鳴いてはいないが、客足はあまりなく近所の隠れた名店といった立ち位置で、息をする程度だった。nacitaを経営しながら世界を知り、どうしたものかと考えて生活する。
パンドラボックスもなく、パンドラパネルも存在しない。
(俺、詰んでね?)
今更ながらにそう思うのだ。
「あっ!マスター!!」
「やぁ、藤丸ちゃん。何時ものかい?」
「うん、ビターココアとパンケーキセットで!」
元気に返事をするのは今年、19となる少女。
藤丸立香である。
「就職、決まったのかい?」
「ううん……中々」
(ハザードレベル3.2、クソッ…測定だけじゃ意味ねぇ)
「そうかぁ…藤丸ちゃんを小6から見てるけど、こんないい子を取らないなんて目が無いねぇ……」
「ちょっと……マスター」
撫でられて照れている藤丸を宗介はどうするかと考える。時間を越える装置があればより良かったが、そんな物は存在しない。
「はい、ビターココアとパンケーキセット」
「うん、ほろ苦いのに甘さがあって、パンケーキは甘すぎない!ホイップクリームもビターココアの苦味と合わさって……」
「ここで食レポは無しだよ、藤丸ちゃん。店内では静かに、食事に感謝をしながら食べてね」
「えへへ…ごめんなさい」
宗介は笑顔を向けてくる藤丸を撫でてやる。
周囲の人間を操り、石動美空の兄となっていた時も、何故かこのような感情を覚えていた。
エボルトと敵対したのは宗介いやオニキスが先に優しさという感情を知ったからだ。
それでも、宗介の優しさは数多の人間を殺したのだが。
「ご馳走様でした、あの……マスター?」
「藤丸ちゃん、君が辛くなったら此処に来なさい。僕は君の苦しみを理解できないけど、寄り添う事はできるから」
――――
藤丸立香が石動宗介と出会ったのは、12歳の夏だった。たった一人で済んでいるマンションの近くにできたこじんまりとした小さなカフェnacita。
そのマスターだった。
「……」
カラン、カランとベルがなる。
そこには独り立ちしたばかりと見える男性だった。
「いらっしゃい」
「お客様第一号、お名前は?」
「藤丸……立香です」
藤丸にはnacitaの中がまるで別の世界の様に思えた。自分の知らない匂い、自分の知らない音、全てが新鮮で、新しい物だった。
「はい、ビターココア」
それはほろ苦く、子供向けではなかったが始めて暖かいと感じた飲み物だった。
「パンケーキセット」
出されるスイーツに涙が止まらない。
今までなかった、嬉しさばかりが浮かんできてしまう。
「藤丸ちゃん、お代は結構だから…お友達に広めて頂戴ね」
コレが藤丸立香とカフェnacitaの運命の出会い。
―――
そして現在、宗介とnacitaは荒廃した世界にいた。
「どうなってんだ?」
理由がわからず、あたりを見回せば地獄。
エボルトでも来たのかと思ったが、どうやら別口の用だった。
「はぁ……こっちでいいか」
〘ウルフ〙
〘蒸血〙
〘ミストマッチ!〙
〘ウッウッウルフ!ウルフ!ファイアー!〙
CV玄田哲章
「ったく、この骸骨何だよ……」
それはエボルトと異なり、石動宗介として仮面ライダー達に最後まで寄り添った男の姿。
自身の妹を愛し、ライダー達を愛して、人々を殺そうとした狂った戦士の弱体化している姿。
〘レイセイヴァー〙
トランスチームシステムとウルフロストフルボトルで変身する姿である。
レイセイヴァーはトランスチームガンで骸骨の頭を砕きながら店の周りを制圧する。
「…誰か来るな」
レイセイヴァーは変身を解くと店に入る。
「うそ……何でここに…………」
「ちょっと、どうしたのよ藤丸!」
「嬢ちゃん!!」「マスター!」
藤丸立香は涙を流しながらその扉を開いた。
見慣れた店内、感じる匂い、そして
「おや、藤丸ちゃんじゃないか?どうしたのよ、その服。イメチェン?」
「……マスター」
「何よ、涙なんか流してさ。何時ものでしょ、ビターココアとパンケーキ」
「うん………私、お腹ペコペコで」
「後の方々も……同じので良いかい?」
「何で………こんな世界に」
「すみません、魔術師」
「魔術師?そうだね、俺は魔術師さ!俺にかかればどんな品も逸品になる!んで……その恥ずかしい格好のお嬢さん。温かい物でも飲む?」
「はい、私も先輩と同じので」
宗介はその言葉に驚いた。
「なんだってー!?藤丸ちゃんの後輩?いくらお友達を連れてって頼んでも連れてきてくれなかった藤丸ちゃんが後輩を!これはめでたい!ささっ座って!座って!腕によりをかけて作るからね」
「あっいえ」
「マスター!ビターココアおかわり!」
「速いよ、まったく!藤丸ちゃんも一緒に座ってなさいよ!」
そう言うと宗介は店の奥に下がっていく、良い匂いがするから何か作っているのだろう。
「ねぇ、キャスター。貴方はこの店の事を知っていたの?」
「知らねぇよ、こんな店。でもなぁ…あの男、魔術師じゃねぇぞ」
「えぇ、藤丸は」
「マスター…いえ、石動宗介は私の実家の近くにあるカフェnacitaのマスターなんです。魔術師のハズがありません」
「そうね、石動なんて家系記憶にないわ」
宗介の事を怪しみながら、オルガマリー・アニムスフィアは思案する。
「取り敢えず、ここを魔術工房にするわよ。簡単な」
「マスターを巻き込むんですか!」
「良い?藤丸、ここにいるという事はいつ襲われてもおかしくない。幸い、キャスターの助力でライダー、アサシン、ランサーは倒れたわ。でも、まだバーサーカーとアーチャー、セイバーが残っているのよ」
「何子供が辛気臭い顔してるのよ、ほらカフェnacita特製のセット」
「なぁ、あんた。これホットドックか?」
「?そうだけど」
「犬はいらねぇ」
「なんかおかしなこと言うお客だな。ホットドックなんてアメリカ人が勝手に名付けただけなのに。そう言えばね、藤丸ちゃん。知ってるかい」
「きた来た!マスターの雑学講座」
「あの、先輩。雑学講座とは?」
「マスターね、いろんな事に詳しいの!歴史とか、星とか」
「おっ?なら、クー・フーリンって行けるかい?」
「クー・フーリンといえばケルトの大英雄だよ。影の国の女王スカサハの弟子でね、魔槍ゲイ・ボルクを授かった男さ。槍と名前が有名だけどね、本当は戦車に乗って戦う事が多かったらしいよ。……そう言えばね犬が食べられない逸話があったね。お客さん、もしかしてクー・フーリンリスペクトしてる?」
「違う違う、そこにいふ…モガモガ」
「そうなんだよなぁ!格好いいよな!クー・フーリン!」
「そう!まぁ、息子を知ってて殺したり、下からの食事を断らない、犬を食わないとか、そこら辺、やられて殺されちゃったけど……それでも、今でも崇拝される偉人だよ。アイルランドのダブリンには銅像もあるし」
「すげぇんだな、クー・フーリン!」
キャスターのクー・フーリンは自分の栄光の話をされて浮かれているのか若干気分が良さそうだ。
「そうだ、アーサー王について何か」
「アーサー王ね……有名なのはエクスカリバーだよね。でも、俺はアーサー王は存在したと思うよ。学会だと存在したか、していないか、結構別れているんだ。でもね、夢があるじゃないか。存在したほうがさ」
「はい。そうですね……それで何か弱点になる様な」
「アーサー王の弱点?そりゃぁモードレッド卿だと思うよ。彼を殺した存在だしね、それか……そうだね、鞘を奪うことかな」
「鞘ですか?」
「エクスカリバーの鞘には不老不死の加護がある。アーサー王は一説によればモルガン・ル・フェによって鞘を奪われたからカムランの戦いでロンの槍つまり、ロンドミニアゴを使技る得なかったと言う説がある。もし、俺がアーサー王と戦うなら、鞘を奪う。でなけりゃ、不老不死だぞ?それこそクー・フーリンの魔槍で心臓を貫いても抜いたあとに生き返ったら、相手が死ぬまで攻撃だ。そんなの嫌だ」
「うへぇ……マスターさんよ、あんたに会えて良かったぜ」
「はい、かなり重要な情報です」
「そうだマスター、マスターも一緒に来てみる?」
「馬鹿!藤丸!」「先輩?!」「嬢ちゃん」
「英霊?なんそれ」
宗介は訳がわからないという顔をしている。
「実はね、この人クー・フーリンなの」
「マジ?」
「マジ」
「あんた、まじでスカサハの弟子で、因果逆転の魔槍持ってて、死ぬまで戦ったクー・フーリン?」
「おう、何だ。信じるのか?まぁ、槍を見せてやりたかったんだが」
「信じるさ、だって藤丸ちゃんが俺につく嘘は友達を連れてくる。でも、それも嘘じゃなくなったな」
「……」
藤丸は宗介に撫でられると頬を赤らめながら頷く。
「……正直、俺も現実逃避してたんだよ。店支度してたら急にこんな場所に出るしさ。外は変な骸骨だらけ、でも……子供が怯えてるのに、大人が怯えたら不味いよな?」
「……良いでしょう、やってみる価値ならあります。でも、戦力がない。藤丸はこれ以上の契約はまだ難しい。貴方、名は」
「俺は石動宗介だよ」
「手伝いなさい」
オルガマリー・アニムスフィアは石動宗介から血を抜くと店の床に魔法陣を設置する。
「………この呪文を」
「なんだコレ……長いな……ええっと?
素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。
降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ
閉じよ(みたせ)。
閉じよ(みたせ)。
閉じよ(みたせ)。
閉じよ(みたせ)。
閉じよ(みたせ)。
繰り返すつどに五度。
ただ、満たされる刻を破却する
――――告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ
誓いを此処に。
我は常世総ての善と成る者、
我は常世総ての悪を敷く者。
汝三大の言霊を纏う七天、
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!
なんて、俺は魔術師じゃな」
「サーヴァントムーンキャンサー!!
フランシスコ・ザビ………!
戦闘は全くできないけどよろしく!」
「………まじかい」
フランシスコ・ザビエルつうと、宣教師の男。
だが宗介の前にいるのはどう見ても女子高生だ。
「本当にフランシスコ・ザビエルなのか」
「違います、岸波白野です。月の王やってます」
まさか、月に文明があったなんて。
と内申、宗介は驚いている。
(この世界も捨てたもんじゃないな、火星の女王ならベルナージュだが、奴みたいな存在が目の前にか。ボトルの浄化は流石に出来ないだろうが…)
「俺は石動宗介、しがないカフェのマスターさ」
こうして地球外生命体と月の王というパートナーが完成した。
「サーヴァントでも戦えないんじゃ意味ないわ。アーサー王討伐は私達が行きます」
「それって」
「…藤丸、捲き込んだのは貴女よ。理解なさい」
「……ごめんなさい」
「行くぜ、嬢ちゃん。マスター、良い飯だった」
「マスターさん、ご馳走様でした」
「代金は必ず払います、今はここで待っていてください」
4人は戦いに向かう、ソレを石動宗介は見送った。
「あの、マスター」
「ふぅ……確かこうだったな。令呪を使って命ずる、今から見ることは他言無用だ。喋ったら自害させるからな」
「!」
岸波白野は自身のマスターとなった男の雰囲気が変化したのに気づく。
「やっぱりだ、お前…俺が人間じゃない事知ってるな?いいぜ、教えてやるよ。パートナーだからな。俺の名前はオニキス。所謂地球外生命体ってやつだ」
「宇宙人?まさか」
「くくっ………まぁ、俺は愛する奴等は護れと彼奴等二教えられたからな。店番頼むぜ。
……蒸血」
〘ウルフ〙
〘蒸血〙
〘ミストマッチ!〙
〘ウッウッウルフ!ウルフ!ファイアー!〙
CV玄田哲章
「じゃあな、Adieu」
レイセイヴァーはビルドフォンを変形させマシンビルダーとする。そして今にも襲われそうな四人の前に現れた。
「よぉ……赤と青なんて彼奴を思い出す様な組み合わせだなぁ」
「有り得ん、空想の産物が何故この世界に。それに……お前はまだ生まれていない筈だ!」
「お前、俺を知ってるのか」
「おい弓兵!てめぇ……何呼び寄せやがった!」
「私ではない!貴様、エボルトと共に来たか!」
英霊だからこそ判る、それがどんな存在か。
神すら消えた世界で、星1つたやすく破壊できる異質な存在なのだ。
「なわけねぇだろ、俺は俺だぜ?愛する者達の平和を願ってるんだ。ほら、行きな。その赤いやつは俺がやってやるからよ」
クー・フーリンがレイセイヴァーに杖を向けたままジリジリと距離を取る。
「信じていいの?」
「あぁ、Adieu」
トランスチームガンがアーチャーの胴体に放たれる。一瞬、弾いたように感じたが続いて狼がアーチャーを狙う。
「くっ…貴様、本物か!!」
「エボルトを知ってたら困るんだよ。じゃあな、一緒に来てもらうぜ」
煙が現れるとアーチャーとレイセイヴァーの姿は消えていた。
「…訳わかんねぇが……行くぞ、嬢ちゃん!」
「行きましょう、先輩!」
「藤丸、速く!」
「うん」(Adieuって………まさか)
「トランスチームガン……ならば、まだオニキスにはなれないか」
「はぁ……お前、全部知ってるのか。まぁ良い、俺の愛する者達を傷つけた。その報いだ」
「貴様の愛は歪んでいる!その心で、何人の人間が死んでいった!」
「おいおい、人間なんて簡単に増えるだろ。1万人が死んだ程度で笑わせる。それに、俺は美空を最後まで守っていたぞ」
「話が通じん!」
アーチャーの干将莫耶がトランスチームブレードに砕かれる。
「甘いな、やっぱり地球の1個人程度じゃ俺を倒せないか」
「貴様……まさか」
「凍てつけ」《アイススチーム》
絶対零度の刃がアーチャーを斬りつけ、凍てつかせていく。
「ありえん……コレが」
「Adieu」
《スチームブレイク》
慈悲などなく、何もなせぬまま消えていく。
地球という星にいる限り、星の中の生命体という枠組みである限り、命である限り、それには敵わない。殺すことは決して出来ないのだ。
「さて、可愛い可愛い、藤丸立香。お前は愛しているぞ」
ソレは狂気的な愛、ソレは狂った愛情。
ソレを向けらる事を知らない、藤丸立香は特異点を修復した。
「さて、店に戻ってだ。彼奴を連れてどう逃げるかな」
『オニキスドライバー』
『ウルフ!ライダーシステム!レゾリューション!』
『Are you ready?』
『ウルフ!ウルフ!オニキスウルフ!』
『フハハハッ』
「音声うるさいか?」
フェーズ1となり、nacitaに向かうオニキス。
「よぉ、戻ったぜ?」
「姿が……違う?」
「気にすんな、それよりもだ。あの娘の場所に行くぞ。魔術師から記憶は抜き取った」
「いつ…」
「出された珈琲には気を付けろってな。行くぞ」
オルガマリー・アニムスフィアは死に、クー・フーリンは消えた。
特異点は崩壊を始めている。
「ロマン!駄目!マスターが!」
「無理だよ、そんなのは」
「やって見なくちゃわかんないでしょ!お願い!」
音を立てて崩壊を始める特異点、ソレをマシュと藤丸立香は走っている。
向かう先はカフェnacita、立香にとって家族よりも家族らしい存在がいる場所である。
「マスター、お願い」
「もう、駄目だ」
ロマンの苦しそうな声が響く。
藤丸立香の意識はそこで潰えた。