突然変異緋色のゲヘナ学園生徒   作:エヴォルヴ

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以下、ヒドリ実装の時のPV

「Yostar」

「こんにちは、先生。便利屋68社員兼足係、赤時ヒドリです」

「ええ、というわけで僕が実装されます。あ、それとガチャの排出率が二倍だそうです」

「ブルーアーカイブ」

「認識の鳥は、いつでも便利屋68と共に」


いやぁ、ブルアカのライブはいつも驚かされますね(存在しない記憶)


便利屋68とお祭り騒ぎ~二日目~

 ゲヘナ学園食事祭り初日の盛り上がりは、過去最大を記録していた。売上についてもヒドリの予想を大きく超えるもの。トラブルはあったものの、初日閉幕セレモニーまでどうにか辿り着くことができた。

 

 そしてそんな翌日────ゲヘナ学園食事祭り二日目。ヒドリ達便利屋68は……

 

「チャーシュー丼四人前上がりです」

 

「ヒドリ、注文。牡丹麻婆豆腐三人」

 

「シシピン6個注文入りました……!?」

 

「アルちゃーん、配膳お願いしてもいい?」

 

「ああもう、大忙しね!? あ、熱いから気をつけて食べなさい!」

 

 長蛇の列を成すヒドリのテントで、料理を振る舞っていた。最初はヒドリだけで回せていたのだが、一人、また一人と客足が伸びていった結果、便利屋68全員で回さないと手が回らないほどの状態に。

 

 その理由はヒドリの得意なもの────香辛料にあった。山海経の料理に四川料理というものがある。味、種類が多彩なそれは香辛料を使った辛味や痺れが特徴の料理。元祖四川料理のように、ヒドリの料理も全てが辛いわけではないが、それでも病み付きになる辛さなのだ。また、気になるメニューは以下の通り。

 

 一番人気、甘辛いタレを絡めて焼いた牡丹肉のチャーシュー丼(温泉卵乗せ)。大盛にすることも可能。

 

 二番人気、痺れる辛さが病み付きになる、牡丹麻婆豆腐セット。お粥と白米のどちらかを選べるセットである。

 

 三番人気は牡丹肉の生姜焼き定食。なめこの味噌汁と糠漬け付き。こちらもご飯大盛、キャベツ大盛などオプションがある。

 

 同率三番人気は牡丹肉を使った胡椒餅(フージャオピン)────略してシシピン。片手で食べられるため、食べ歩きに最適なのだ。

 

 四番人気は肉巻きおにぎり。こちらについても食べ歩きに最適。

 

 便利屋68内で人気な家庭的、定食屋的な味わいやトッピングが追加されたことで売り上げが伸びているのだ。どうすれば美味しく食べてもらい、満たされるのか……ヒドリは頂点捕食者として計算し続けている。

 

「フウカさーん、ジュリさんはどこに?」

 

「食品の補充!」

 

 ヒドリのテントの隣にも長蛇の列ができている。そう、結構本気になっているフウカ達給食部がいるのだ。ゲヘナ学園の中にいた料理に興味のある生徒が勇気を出して給食部へ入部した結果、ほぼワンオペまたはツーマンセルの状態から解放されたフウカは余裕がある。

 

「フウカさん、リンゴが足りません!」

 

「飴色玉ねぎ、在庫が尽きました!?」

 

「ブイヨン残り僅かです!」

 

「あ、こっちの使います?」

 

「ごめん、貰うね!」

 

 凄まじい勢いで消えていく食材、途切れることのない長蛇の列。作り手もフル活動しているが、それでもマンパワーが足りなくなる状況だった。

 

「ヒドリ、もう食材無くなるよ。そろそろラストオーダーにした方がいいと思う」

 

「んー……まぁ、そうですね」

 

 便利屋68は大分稼いだ。食事券もある程度手に入るだろう。ヒドリ的にも、空腹を半分満たす程度には感情を食べることができたため、満足である。

 

「すみません、あと二十食でラストにします! 食材が無いので!」

 

 列から不満の声が聞こえたが、その後すぐに「まぁ仕方ないかぁ」、「凄い列だったもんね」と納得の声が聞こえてくる。二日目開始時刻、9時から四時間、ぶっ通しで回していたため、便利屋68のメンバーは少しだけ疲れていた。

 

 作りかけていた料理と、ラストオーダーの残り二十食、その全てを全力で作りきり、そして。

 

「全食材使い切りました。便利屋68、閉店です」

 

 ある程度の売り上げを叩き出して、終了した。現在の売上成績のトップは、プロ枠では揚げ物部門『牡丹せいろ』、焼き物部門は『シシドック』。生徒枠では給食部の『牡丹カレー』、便利屋68の『チャーシュー丼』。その背中に張り付くようにして売り上げを伸ばしているのはまさかの『レモネード』と『プリン』。口直しに特化するという素晴らしい着眼点だ。

 

「フウカさん、ヘルプ入りますか?」

 

「大丈夫! ヒドリ君はお祭り楽しんできて!」

 

 現在の給食部の人数はフウカとジュリを除くと五人。合計七人体制となった今、二人で回していたあの頃が懐かしいと苦笑するフウカとジュリを見るようになった。ちなみにこの五人、妙に強い。美食研究会を相手に善戦するくらいには強い。銃に寿司のようなグッズが付いていたり、寿司への造詣があるのは勤勉だからだろう。

 

「ヒドリ、今日はどうする?」

 

「うーん……あ、ヒフミ先輩が美味しかったって言ってたラーメンを食べに行きませんか」

 

 グルメペロロ様修繕工事を祭り初日の夜に完了させてみせたヒフミ。そんな彼女から送られてきた写真を見せながらヒドリが提案する。そのラーメンの写真には見覚えのある大将が。

 

「柴関ラーメンじゃない。今日出店だったのね」

 

「飛び入りでしたがねじ込みました」

 

「それ、大丈夫だったの?」

 

「キッチンカーなので大丈夫でしたよ」

 

 柴関ラーメン、その商品はまさかの豚骨ならぬ猪骨(ししこつ)ラーメン。獣特有の臭みをどう撃退したのかが気になる一品である。

 

「アビドスの皆さんからも美味しかったと聞いています。手が早いですねぇ」

 

「そういえばアビドスの皆ってアビドスから通ってるのかな?」

 

「あ、付近の安いホテルに泊まってるそうですよ。確か……ピンクハートホテル?」

 

「へえッ……!?」

 

 アルが白目を向く。ゲヘナ学園自治区で、ピンクと名が付いているホテルはそう多くない。というかキヴォトスでも多くない希少な名前だ。そして、そのホテルの本来の目的は────甘酸っぱい物語(ピンクアーカイブ)を行う場。

 

「た、確かに安いけれど……!」

 

「まぁ、安いよね。ビジネスホテルとして使われてるらしいし」

 

「? あの、ハルカさん、僕は何か変なこと言ったんでしょうか?」

 

「へ? い、いえ、分かりません……!」

 

 首をかしげるヒドリと、どう説明したものかと頭を悩ませる便利屋68の四人。思い出すのはヒドリが加入する少し前。住む場所が見つからなかった時、格安のホテルに泊まった時に見つけたあれこれ。さすがのカヨコとムツキも真顔になったものだ。

 

「ヒドリ君、そのホテルの詳細は知ってる?」

 

「? ビジネスホテルですよね? 何だかネオンを使ってるみたいですけど」

 

 ヒドリは性知識が全く無いに等しい。そもそもそういう知識が必要ない存在だから当たり前なのかもしれないが。

 

「まぁ、あとで説明するとして……ラーメン食べに行きましょうか」

 

「? はい」

 

 そういう施設もあるのだと、少しでも教えておくんだったとほんの少し後悔しながらも、便利屋68は柴関ラーメンのキッチンカーを目指す。今日も今日とてたくさんの人がやって来ており、あちこちから美味しい、楽しいという感情が流れてくる。ヒドリはやろうとも思わないが、これで三日飲まず食わずで活動可能だろう。

 

「そういえば、ヒドリ。あなたが食べた風紀委員って結局どうなったの?」

 

「生きてますよ? その時の記憶は吹っ飛んでますが」

 

 ヒドリが不安定だった頃────便利屋68に出会った日。単騎で風紀委員会の大部隊と激突した。あの時は空腹で、我慢できずに祝詞を響かせ、喰い漁ってしまったのだ。一応喰われた風紀委員は死んではいないことを記しておこう。彼女達は今でもしっかり風紀委員会に所属して仕事をしている。当時の記憶は無くなっているが。

 

 そのことを知っているのは風紀委員会ではヒナ、アコのみ。万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)に至ってはマコトのみが知っている情報だ。

 

「今でも食べたいって思ったりするの?」

 

「ええ、まぁ。でも……それ以上に皆さんとご飯を食べるのがいいんです」

 

 どこまで行っても化け物なのだろう。それはきっと、変わることがない。それでも、化け物としての自分をこうして繋ぎ止めてくれている便利屋68と食事をしていたい。今のヒドリはたくさんの枷によって、とても安定している。

 

 便利屋68を象徴するような悪魔のような禍々しい枷、給食部のように温かい湯気にも似た枷、アビドスの砂のような枷────その他にも、たくさんの枷が存在し、ヒドリの本来の姿である認識の鳥を雁字搦めにして、彼はそれを甘んじて受け入れているのだ。

 

「ところで、餃子とかもあったりしますかね? 楽しみです」

 

「あ! いた!」

 

「あれ? イオリ先輩。こんにちは」

 

「ああ。……って、それどころじゃない! ちょっと来てくれ!」

 

「おお……?」

 

 慌てた様子でやって来た、風紀委員会の突撃隊長銀鏡イオリに手を引かれて連行されていくヒドリ。顔を見合わせた便利屋68の四人は、ヒドリとイオリを追いかける。便利屋68と風紀委員会はあまり仲がいいとは言えない。そんな組織に所属しているイオリが便利屋68のヒドリを連れていくなど、只事ではないのだ。しかもこの先は────────猪の肉を保存している巨大冷蔵庫がある。

 

「ヒナ委員長、連れてきました!」

 

「ああ、ありがとうイオリ。ヒドリ、待ってたよ」

 

 冷蔵庫の前には、風紀委員会の幹部とイオリの部隊が待機していた。

 

「お疲れ様です、風紀委員会の皆さん。シシピン食べますか?」

 

「「「食べる!」」」

 

「余分に作ってると思ったら、風紀委員会の差し入れにするつもりだったんだ」

 

 風紀委員会にまだ温かいシシピンを配りながら、便利屋68は厄介事の気配を感じ取る。しかも、祭りが中止になりかねないような、厄介な出来事が起きる気配を。

 

「それで……何があったんですか?」

 

「それについては私から。……まずはこれを」

 

 そう言ってゲヘナ学園風紀委員会行政官の天雨アコが冷蔵庫のロックを解除する。するとそこには熟成された巨大猪の肉や骨、内臓が小分けにされて────────────いなかった。

 

「……これは」

 

「空っぽ……!?」

 

「そ、そんな……!? 三日目で使い切る計算で、ヒドリ君達が分配したはずなのに……!?」

 

 巨大冷蔵庫の中はもぬけの殻。内臓の一つも残っていない。最終日、もつ煮などの煮物も追加され、メインディッシュとして巨大な鍋を使った牡丹鍋が振る舞われる予定だったのだ。しかし、これでは……

 

「最終日を迎えられない」

 

「なっ、何ですって────────!!!???」

 

 ヒドリが便利屋68に入ってから、久しく白目になりながら叫んでいなかったアルが叫ぶ。もはや懐かしさすら覚える叫びに便利屋68の初期メンバー三人が少しの感慨深さを覚える中、イオリが奥歯を噛み締めた。

 

「クソッ、やられた! 警備の穴を狙われたんだ!」

 

「美食研究会は────」

 

「いや、無いです。フウカさんのテントで舌鼓を打ってます。開始時刻からずっと」

 

「それはそれで問題ですし、あとで拘束が必要なのでは?」

 

 チナツの発言に対し、この場にいる全員が苦笑する。だが、それよりもまずは、無くなった肉達がどこに行ったのかを調べなくてはならない。

 

「一応隅々まで調べましたが……監視カメラにも映っておらず……」

 

 何か痕跡がないか調べたという風紀委員会の言葉を、便利屋68は信じた。仕事に忠実なのは知っている。制空権を手に入れている現在こそ逃走も容易だが、今まで何度も追い詰められた記憶がある。

 

「カヨコ先輩、ここ、死角になる場所ってありましたか?」

 

「いや……無いはずだよ。今までだってそうだからここに保管していたんだし」

 

「ですよね。……なら、どうやって────────ん?」

 

 スンスン、と匂いを嗅ぐ素振りを見せるヒドリ。牡丹肉の匂いが残る冷蔵庫の中に、妙な匂いを捉えたのだ。

 

「ヒドリ?」

 

「この匂い……何だ? 香水? 火薬? ……真似事の匂い……?」

 

 ぶつぶつと呟きながら、冷蔵庫の中に入っていくヒドリに風紀委員会の誰もが疑問符を浮かべる中、便利屋68の四人は何か手掛かりを嗅ぎ付けたことを理解する。

 

「……ここ、変だ」

 

 くるくると歩きながら冷蔵庫の奥まで来たヒドリは、ミレニアムから特注した冷蔵庫の底を叩く。ここだけ、音が違うのだ。そして、よく見ると溶接した痕跡がある。ヒドリは躊躇い無く【PHENIX-TYPE-Ⅶ】のパイルバンカーを炸裂させた。

 

「ちょっ、ヒドリ君!?」

 

「何を────って、それは……!?」

 

「地下への道ですね。……水路、でしょうか」

 

 パイルバンカーがぶち抜いた先に、地下水路へと繋がる道────しかも無理矢理開通させたような────が現れた。火薬の匂い、これに気付かなかったのは、爆発物特有の匂いの少なさと、使われてから時間が経っていたということもある。それは間違いなく初日の爆発と同じ。

 

「……あの時か」

 

 何者かが陽動に爆発物を起動、ヒドリ達の気が向いている間に、冷蔵庫に穴を空けて、いたのだろう。ヒドリは冷蔵庫の温度が少し上がっていたとジュリに言われたのを思い出す。しかし、肉が傷むようなものでもなかったために気にしもなかったのだ。

 

「……この先に、多分います。肉を盗んだ人達が」

 

「すぐに行くわよ、ヒドリ。せっかくのお祭り、成功させないと」

 

「もちろんです。……あ、風紀委員会の皆さんに────ヒナ先輩にお願いが」

 

「何?」

 

「先生と……そうですね、美食研究会にこの情報を流してください」

 

 確実に捕まえます。

 

 そう言ったヒドリの翼は、怒りでざわめいていた。

 

 

 

 


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