突然変異緋色のゲヘナ学園生徒   作:エヴォルヴ

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セリカと面識ないのおかしくね、とか言わないでくれると嬉しい。

ところで、息抜きの方が筆が乗るのって何か理由があるのかしら?

ヒドリ君の容姿ですが、下記の通りです。

身長:173cm
翼:全長5m
尾羽:6m(基本的には半分以下に小さくしている)。
髪:緋色。半分羽毛
目:緋色。ルビーやガーネットよりも赤い
顔立ち:穏やかそうな顔つきだが、カヨコのように目が鋭い。全体的には少しだけアルに似ている。
服装:ゲヘナ学園の制服を動きやすいように改造している。誕生日にもらった中折れ帽子を仕事中はいつも被っている。

好きなもの:食事

以上です。よろしくお願いします。


仕事はこなすよヒドリ君。意外と強いぞヒドリ君。

 赤時ヒドリの膂力は凄まじい。アル、ムツキ、ハルカ、カヨコの四人を大きくて頑丈な籠に入れて空を飛べるのだ。そんな怪力ヒドリと便利屋68は現在、空の旅に出ていた。

 

「来た時も思ったけど……凄い砂漠地帯ね、ここ……」

 

「暑いですけど……気持ち悪い暑さではない、ですかね?」

 

「防暑対策が役立ちましたね」

 

 巨大な翼が定期的に動き、それによって風が吹き、用意した日傘が日差しを完全にカット。冷たい飲み物を飲みながらのアビドス空の旅は、意外にも快適である。

 

「ヒドリは暑くないの?」

 

「それがですね、カヨコ先輩。意外と暑くないんです」

 

 その証拠に汗一つかいておらず、顔色も普段通りだ。人間とは全く違う存在であるため、当然である。

 

「あなた、環境で体調が左右されることとかあるの?」

 

「多分ないですよ? 熔鉱炉に放り込まれたら……ワンチャンありますかね?」

 

 恐らく死なないだろう。便利屋68の全員がそう考えた。ヒドリがその程度で死ぬのなら、化け物に枠組みされる存在ではない。熔鉱炉に落とされようと、次の日にはケロッとした顔で朝食である山盛りの蒸しキャベツと目玉焼きとご飯を貪っているに違いない。ちなみに、ヒドリは仕事探しもやっているお陰で、便利屋68の収入もわりと上がっていたりするのだ。

 

 砂漠を飛ぶこと約四十分。ヒドリは大きな建物を発見する。

 

「社長、あの大きい建物、多分目的地ですよ」

 

「あら、結構早かったわね。着陸できる?」

 

「余裕ですよ。……でも、もしかしたら撃ち落とされるかもですね」

 

「えっ」

 

 ヒドリの目は非常に良い。停止状態または歩行中であれば、ダチョウとほぼ同じ程度の距離────20kmまで視認でき、飛行および走行中であれば3kmまで鮮明に見えている。その気になれば、超長距離スナイプすら可能とする最強の殺し屋にもなれるだろう。

 

 その視力で捉えていたのは、校庭で完全武装をした生徒と一人の大人だった。

 

「まぁ、僕が壁になればダメージはそこまでないと思いますので、着陸しますね。あとは手筈通りに」

 

「ちょ、ちょっと待ちなさぁあああああ!?」

 

「ヒドリ君これ大丈夫なんですかぁあああああ!?」

 

「あはは! ジェットコースターみたーい!!」

 

「かかるGが凄いね、これ……!」

 

 高度2000mからの急降下による強制着陸の実行。それを攻撃と見なしたのか、完全武装した少女達の銃口が便利屋68に向くが……何かするよりも前に、ヒドリの着陸の方が速かった。

 

「到着。どうも、アビドス高等学校の皆さん。僕は赤時ヒドリ。便利屋68平社員兼足係です。あ、こちらつまらないものですが」

 

「“あ、これはご丁寧に……って、いつの間に!?”」

 

「「「「「ッッ!!?」」」」」

 

 バッ、とアビドス高等学校のメンバーが後方にいる一人の大人────先生を見る。先生の前には、緋色の翼と美しい尾羽を揺らすヒドリが立っていたのだ。

 

 籠を置き、頭を下げたところまでは、アビドス高等学校廃校対策委員会全員が見えていた。だが、見えたのはそこまでで、その後、いつ先生の目の前まで接近したのか分からない。未知の体験、未知の存在、先生ではないキヴォトスでは珍しい学生の男性の存在が、分からない。

 

「“君は?”」

 

「赤時ヒドリです。さっき名乗りましたよ? 聞こえませんでした?」

 

「“ああ、うん、ごめんね?”」

 

「声を張らなかった僕にも非はありますので。……あ、ところで皆様、僕ばっか見てていいんですか?」

 

 戦い、始まっちゃいますよ? 

 楽しそうに笑みを浮かべたヒドリの言葉の直後、先生の目に映ったのは、籠の中から飛び出したゲヘナ学園の生徒達。各々が武器を構え、突っ込んでくる。

 

「“皆、戦闘態勢!!”」

 

「先生から離れて……!」

 

「ん? あいたぁ!?」

 

 ほぼゼロ距離からのアサルトライフルの弾丸を喰らい、悲鳴を上げるヒドリ。だが、その悲鳴にしてはダメージが少く────否、全く効いていない。

 

「ごきげんよう、アビドス高等学校! 私達便利屋68はあなた達に宣戦布告するわ!」

 

「あ、でも菓子折りはちゃんとしたやつだから皆で食べてね!」

 

「アル様が選んだものです……間違いないですよ……!」

 

「皆油断はしないでね」

 

 ヒドリの頑丈さに全員が目を向いている間に、便利屋68との交戦が始まる。アビドス高等学校のメンバーは一人一人がしっかり強い。多対一を繰り返すように指示した先生は、悲鳴を上げたわりには結構ピンピンしている少年に目を向けた。

 

「“ホシノ!”」

 

「やぁやぁ、ちょ~っとおじさんに付き合ってもらうよ?」

 

「……?」

 

 シールドバッシュと共に放たれた声を聞いたヒドリは、頭にたくさんの疑問符を浮かべる。まるで、別人を見ているような、初対面の彼女を見ながら、首をかしげていた。

 

「情報と違う?」

 

「んー? おじさんのこと知ってる感じ?」

 

「数年で人は変わるらしいし、そういうものか」

 

 納得したように手を合わせて首を縦に振ったヒドリが足の調子を確かめるように跳ねた。その足に装着されているのは、ヒドリが持つ唯一の護身用武装である。

 

「僕、戦闘が苦手なんです」

 

「そんなこと言っても手加減はしないよ?」

 

「ああ、いえ、ちょっと僕は特殊で……」

 

 ヒクイドリ、という鳥がいる。大柄な体躯に比して翼が小さく飛べないが、長距離なら時速50km程度で走ることが出来る他、非常に殺傷能力の高い爪を持ち、性格は臆病で気性が荒い。そんな鳥だ。彼らの武器はやはりその鋭い爪と膂力から放たれる蹴り。

 

「銃を使うのが苦手なんです。なので────」

 

(────速)

 

「こうして蹴り飛ばすことにしてるんです」

 

 ヒドリの脚力から放たれる蹴りは、ヒクイドリと同等かそれ以上の威力を発揮する。そこにブラックマーケットで拾ってきたジャンクパーツを掛け合わせて作られた靴の鋭いインパクトが乗る。ヒドリの武器は己の肉体なのだ。

 

「うへぇ……これはちょっと本気出さないといけないかなぁ?」

 

 盾で受け止めず、受け流すことを選択したホシノは、ヒドリの胴体目掛けて引き金を引く。だが、ヒドリにその程度────ましてや神秘の籠っていない一撃は、緋色の鳥に通用しない。

 

「アザになったらどうするんですか」

 

「……マジ?」

 

 夕焼けよりも真っ赤な翼が、ショットガンの弾丸を全て受け止めていた。その頑丈な翼と、動きやすいように改造されたゲヘナ学園の制服を見て、ホシノは思い出す。

 

「君、ゲヘナの怪鳥とかいうゲヘナ学園の生徒かぁ」

 

「? 僕のことですか?」

 

「うん。ゲヘナ学園────キヴォトス唯一の男子生徒、赤時ヒドリ……学園最高戦力の一人」

 

 ヒドリは知らなかったが、ゲヘナ学園────いや、キヴォトスの勢力は、ヒドリの持つ戦力を最高戦力の一人として認識していた。銃が使えないという点を除いても、彼は単騎で風紀委員会の大規模部隊から逃走に成功、反撃に成功している。

 

 全てを嘲笑うかのように暴れ回り、飛翔する姿を見た者達が呼んだ二つ名はゲヘナの怪鳥。暴れ回った理由は空腹だったことと、要領を得ない言い分、爆発による食事の消失及び資格勉強の本の焼失が噛み合った結果だ。

 

「そんな君がどうしてアビドスに?」

 

「依頼で。アビドスを襲撃しろ、と」

 

「誰に……は、答えてくれないよね?」

 

「クライアントですしねぇ……でも、そろそろ帰りますよ」

 

「へ?」

 

 突然の言葉に驚き、止まってしまうホシノ。気付けば、ホシノとヒドリ以外の戦闘も終わっており、どういうわけか便利屋68のメンバーから名刺を配られている。

 

「だって、襲撃してこいとは言われましたけど、全滅させろとも言われてないですし……全滅させるなんて難しいですし?」

 

「“それでいいのかい?”」

 

「金払いも良くなかったので。あ、僕からも名刺を」

 

 ヒドリのポケットから取り出されたフェイクレザーの名刺入れ、それから『便利屋68社員 赤時ヒドリ』という名刺が取り出され、先生とホシノに渡された。

 

「改めまして、便利屋68社員兼足係の赤時ヒドリです」

 

「おおー? これはご丁寧に……立派な名刺だねぇ」

 

「社長の意向で、名刺はしっかりしたものを、です」

 

 戦いが終わればノーサイド。厄介者扱いされることは多いが、便利屋68は真のアウトローもとい、ハードボイルドを目指す集団なのだ。誕生日プレゼントに貰った中折れ帽子を被ったヒドリは、いつもの笑みを浮かべる。

 

「対価を払ってくださるなら、何でも承ります。ご利用の際は名刺の下にある電話番号まで。相談までは無料ですので」

 

「“商魂逞しいね”」

 

「それが便利屋68の僕ですから」

 

「ヒドリー! ラーメン食べに行くわよ!」

 

「今行きます! というわけで、僕達は行きますので!」

 

 眼鏡を掛けた青年────先生は、赤時ヒドリという生徒がどういう生徒なのかを少しだけ掴む。便利屋68のメンバー全員から信頼され、信頼している。強い繋がりを持った彼ら彼女らは強い。あの五人が本気になってアビドスを落とそうとすれば、最悪流血沙汰になっていただろう。

 

「“アロナ、ヒドリの────いや、便利屋68の情報を集めてくれるかな?”」

 

『お任せください!』

 

 飛び去る便利屋68の情報を集めるため、先生はタブレットの中にいる少女のアロナに指示を出す。強敵にも、心強い味方にもなりえる便利屋68と、アビドス高等学校廃校対策委員会の邂逅はこうして終えた。

 

 

 

 ────────────────────────────────────

 

 

 

「本当に良かったのかしら?」

 

 柴関ラーメンで味噌ラーメンを啜るアルが、そう呟いた。

 

「良かったって、何がです?」

 

「依頼の内容を曲解したことよ」

 

 鶏白湯ラーメンを啜っていたヒドリの問いかけに、アルは答える。今回の依頼内容はアビドス高等学校の襲撃。つまりは撃破してこい、というものだったはずだ。だが、ヒドリやカヨコが別に全滅させなくてもいいのでは、と考えたのである。

 

 なぜなら、襲撃してこいとは言われたが、撃破してこいとは言われていない。しかも、金払いが良くなかったために、仕事が雑であろうと構わないと曲解した。

 

「お金を払わない時点で騙して悪いが消えてもらう、ってするつもりだったと思いますよ。あ、ハルカさん、鶏ハム食べます?」

 

「あ、ありがとうございます……と、ところでヒドリ君……こんなに頼んで良かったんですか?」

 

 ハルカの疑問は、テーブルに並べられたたくさんの料理にある。全員が食べているラーメンの他にも、にんにく抜き餃子、チャーハンなど、たくさんの料理が並べられている。

 

「え? ああ、もちろんですよ。実は貯めてたんです。こうして使うためのお金」

 

 ヒドリの月々に使うお金は多くて3000円程度。便利屋68の仕事は確かに安定しないが、ヒドリが中心に探してくる仕事のお陰で貯蓄はある。ゆえに社員全員に少くない給与も与えられているのだが……ヒドリは貯め続けていた。

 

「どうあっても僕は緋色の鳥()で、認識の鳥()ですから。救われたんです。四人に」

 

 自分は化け物。両親から捨てられるようにキヴォトスへと送られたヒドリにはその自覚がある。どれだけ取り繕っても空腹に(人を食べたく)なる。食事をしなければ、餓えは満たされない。心を喰らい、成長する怪物は、だからこそ便利屋68に感謝していた。

 

怪物()が赤時ヒドリでいられるのは、四人のお陰です。だから、少しでもお礼がしたいんです」

 

 誰かと食事をすることで、感情を共有し、空腹から解放される(人を食べなくていい)。それを見つけてくれた便利屋68の四人に少しでもお礼をするために、ヒドリは自分のお金を貯め続けていたのだ。

 

「美味しいものは皆で食べたいんです。これからもずっとは難しくても、その時が来るまでは」

 

 それだけ言って食べることを再開したヒドリに、アル達は呆れたような、小恥ずかしいような笑みを浮かべる。ヒドリの言葉はいつも本心からの言葉である。喜怒哀楽、全部が本心から発せられる言葉であり、今伝えられた感謝も、邪念のない純粋な言葉として彼女達に伝わっていた。

 

「本当にこの子は」

 

「くふふっ、そのうち、色んなところで女の子引っ掛けて来そうだよねー」

 

「ヒ、ヒドリ君が不良に……!? ……でも、ヒドリ君がナンパしてるところ、イメージできませんね」

 

「うん、ならないと思うよ。そもそも女の子に興味無さそうだし」

 

 その言葉を最後に、全員が料理に舌鼓を打つ。会計の時、計算より安くなっていてヒドリと柴関ラーメンの大将との一悶着があったのは、また別の話。

 

 

 

 


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