デュエル開始ィイイイイイ!!!(フライング一番槍)
せっかくだから俺は、このワンターンキルジャガーノートデッキを使うぜ。
今回凄く短いです。多分3500文字くらいに収まってます。
話は変わりまして、ヒドリ君の声は最近だとFF16のジョシュアをイメージしてます。あと、感想じゃないメッセージで聞かれてたことなんですが……『ヒドリ君がもし、性欲というものがあったら、処理とかどうするの?』という質問が来てました。お答えしましょう。
特に何も起こりません。ヒドリ君は性欲があったとしても滅茶苦茶薄いです。あるとしても、便利屋68のメンバーの匂いがいい匂いだと思う頻度が増えるだとかその程度です。
遂に訪れたエデン条約調印式。招待されている便利屋68のメンバーは制服ではなく、裏の住人達が作った礼服に身を包んでいた。
この礼服、裏社会の住人達が作ったからなのか、複数の機能が組み込まれている。防弾、防塵、防刃、耐爆、耐炎────など、まるで戦闘に使ってくれと言わんばかりの性能。質感はシルクの生地にも近い。お値段一着259,000円。中々の金額であるが、これでも割り引きされた状態だ。
「……さて、ヒドリ。どう来ると思う?」
「まず僕の足止めに何かしてくると思いますよ。広範囲攻撃とか」
儀礼用と言わんばかりに、今回【朱涅】と【夜叢】を持ってきているヒドリは、武器の調子を確かめながら呟く。便利屋68は希望的観測をしない。どれだけ最善の道を進んでいたとしても、常に最悪の可能性が脳裏にちらつく。
「準備はしてきた方だと思うよ。……ゲヘナとトリニティはちょっとピリピリしてるけど」
「爆弾もあちこちにセットしておきました……! ……雀の涙ですけど」
「まぁ、雀の涙だろうけどねぇ……」
「そうね。けど、準備しないよりはマシよ。……今回は本当の殺し合いになるかもしれない。先生がそれを許すか否かはともかくとして、そうなる可能性は高い」
戦わなくては、殺さなくては生き残れない。手加減したせいで、手を抜いたせいで隣の誰かがいなくなっている。そんな戦場になるかもしれない。便利屋68は裏社会も見てきたが、そういう戦いに身を置いていた怪物達を何度も相手にしていた。
今回の戦いも、そういった類いの敵を相手にするであろうことも、何となく察している。ゲヘナとトリニティを壊せるなら死すら厭わない死兵だって現れるだろう。
「ヒドリ、その時は────」
「喰います。僕が全部」
「……ごめんなさい」
「謝らないでください。僕はそもそもそういう存在ですから」
命のやり取りをするには、ゲヘナもトリニティも幼い。便利屋68の四人ですら────遠い昔、違法薬物を売り捌いていた闇商人を摘発した時、命を奪ったことを今でも夢に見る。ヒドリに人殺しをさせることだって、本当ならしたくない。
ヒドリに余計なものを背負わせたくはない。ヒドリが、緋色の鳥が、認識の鳥が人間を完全に喰らえば、存在すらなかったことにされてしまう。ヒドリしか、知らないし覚えていないことになってしまうから。
彼は妙なところで律儀だから。喰った人間も、全員覚えている。便利屋68は覚えていない。闇商人が本当は六人いたことも、ヒドリに教えてもらえなければ、覚えていなかった。
「僕にとって、人間を食べることは食事をするようなものです。今のこの状態がおかしいんですよ、本当は」
「それでも、私達はあなたに背負わせてしまう」
「背負ってもらってるのは僕の方ですよ。……まぁ、納得しないでしょうが」
便利屋68の会話が終わる頃、エデン条約調印式の鍵となる連邦生徒会長────が推薦し、立ち上げた独立組織であるシャーレ、その先生が訪れる。彼の顔には緊張が張り付いており、襲撃に気を張っていることは明白だ。
そんな彼が訪れてからすぐに、エデン条約の調印式が始まる。本来であればマーチングなどの余興があったのだが、アリウス分校からの宣戦布告が行われた今、そんなことをしている暇はない。
「エデン条約……ゲヘナ学園と、トリニティ総合学園、双方の和平を願う条約です」
ゲヘナ学園とトリニティ総合学園の代表者が前に出て、条約を結ぶための碑に学園の名を綴る。
「宣言しよう。我らゲヘナ学園は」
「宣言します。我々トリニティ総合学園は」
「トリニティ総合学園との和平を願う」
「ゲヘナ学園との和平を願う」
代表者の言葉に続くようにして、参加者達から拍手が贈られる。あとは先生が連邦生徒会長の代理としてエデン条約を締結すれば、エデン条約は完成するのだ。そんな中で、ヒドリは導かれるように立ち上がり────────
「上、来ます」
「可能な限り防ぎなさい、ヒドリ」
「分かりました」
大きな翼を広げ、天井を突き破りながら外に出た。この行動を確認したゲヘナ学園風紀委員会とトリニティ総合学園の正義実現委員会は、すぐさま戦闘態勢。彼女達もまた、何も準備してきていないわけがない。
空へと飛び立ったヒドリは、高速で飛来するそれを見て目を細める。いかに治安が悪いキヴォトスと言えど、それを見ることはなかった。音速で飛来する光の名前は────
「巡航ミサイル……しかもステルス性能が高いやつ……?」
巡航ミサイルを目視したヒドリの行動は早かった。いくらヒドリ────認識の鳥とはいえ、枷が邪魔をして防ぎきることは不可能。ならばどうするか……ここに来るまでにガントレットへと蓄積させていた神秘を一気に圧縮して解放することで、ミサイルの数や威力を僅かでも少なくすることを選択した。
雲を貫きながら近付いてくる巡航ミサイルを正面に捉え、一気にトップスピードへと突入したヒドリ。可視化する程に圧縮された赤黒い神秘と、ミサイルの光が激突する直後────────巡航ミサイルが空中分解を始める。
「……!?」
突然の空中分解に面食らったヒドリは、その後すぐに空中分解した理由を理解した。空中分解していく巡航ミサイルだったものは、ただの巡航ミサイルではない。中から出てきたそれら全てが爆弾……つまりはクラスターミサイルだったのだ。圧縮した神秘を解放したとしても、大きな被害は間逃れない。
だが、それでもヒドリは神秘を解放する。少しでも被害を軽減するため、少しでも戦力を確保するために。
赤黒い神秘が、クラスターミサイルと激突した。
────────────────────────────────────
降り注ぐ殺意に晒されたエデン条約調印式の会場、その瓦礫の中から出てきた便利屋68の四人は、既に始まっていた戦闘の規模に表情を歪めた。想像以上の破壊工作と、想像以上の戦闘。風紀委員会、生徒会、正義実現委員会、ティーパーティー……各々が力を振るうが、消耗はこちら側が大きい。
「ヒドリは……まだ空ね」
「ミサイルじゃないけど……何かと戦ってる?」
カヨコの目────正確には、ミレニアムから仕入れたコンタクトタイプのデバイスが拡張した視覚が捉えた情報。ヒドリがクラスターミサイルを叩き落としてもなお、空から降りてこない理由をはっきりと認識していた。
ヒドリが相手をしているのは、青白い……生きた人間とは思えない容姿のガスマスク集団。その手にはチェーンソーのようなものが握られている。なぜ飛べるのかは分からないが、ヒドリと空中戦を行っていた。
「空を飛べる人が……ヒドリ君の他にも……?」
「……とりあえず動こっか。手筈通り、先生の避難が最優先……次点で応戦」
「そうね」
ヒドリを心配していないわけではないが、仕事が最優先事項。それに、ヒドリがやられることを便利屋68は信じない。仮に────億が一負けたとしても、相討ちに持っていくであろうことは予想している。
「今は空崎ヒナが守ってるみたいだけど……ジリ貧だね。ハルカ、爆弾は?」
「数個だけ……生き残ってます……でも、そこまで有効にはなりません」
さて、どうしたものか。戦術を組み立てるためにカヨコの頭脳が高速で回転する中、アルの思考もまた、加速していた。
(考えなさい、陸八魔アル。相手が一番嫌がることは何?)
アルの頭脳は、一度動き出せばこのキヴォトスの中でもトップに食い込むレベルの思考能力を見せる。世界がスローモーションに見えるほどに思考が加速するのだ。カヨコがその場で複数の想定を組み上げる並列思考タイプだとすれば、アルは超加速型直列思考タイプ。
(先生の離脱? 確かにそれも嫌かもしれないけど……もっとあるはず。……ヒドリの足止めがその理由だとすれば……そういえば祝詞は? あれを使えば簡単に────)
「社長、可能性があることを何個か考えたよ」
「相変わらず見事ね。こっちは一つ辿り着いたわ」
「なら、一番高い可能性は────」
「「ヒドリの参戦」」
空で戦い続けているヒドリが、なぜ祝詞を使わないのかを考えた結果、行き着いたベアトリーチェや黒服の認識阻害。あれが上空の青白い者達にも使われているとすれば、ヒドリは使わない。
そこまでしてヒドリを封じ込めておきたい理由など、彼がベアトリーチェの中で最もイレギュラー的存在だからだろう。ゆえに、アリウス分校────もとい、ベアトリーチェは青白い者達────ミメシスに対ヒドリ用の兵器を持たせていた。その名も、高周波炎冷ブレード。ヒドリの数少ない弱点であるものを詰め込んだ代物である。
「その次は私達の参戦だね。その証拠に……」
「明らかに私達への攻撃が少ない」
認識の鳥の地雷を踏み抜くほど、ベアトリーチェも馬鹿ではない。便利屋68がヒドリの地雷であることを理解し、できるだけ刺激しないようにしていた。
「な、なら……先生の離脱を援護するよりも……」
「引っ掻き回した方が嫌がりそうだね。……いいよね? アルちゃん」
「ええ。────便利屋68、仕事の時間よ!!」