ゲヘナとトリニティの戦力が増えた。アリウス分校の自治区に攻め込むつもりである。
マコトがアリウスと内通していない。わりと仕事してる。
カヤ上が極限のワーカーホリックへと進化している。お労しやカヤ上。
ところで、皆様は『Feed A』という曲を聴いたことはありますか?GOD EATERのTVアニメOPなんですが……最高にカッコいいんです。ゲーム内BGMの『Blood Rage』なんかもお気に入りですが、やはり『Feed A』の殴りかかるような曲調が最高なんです。ヒドリ君のバトルがこの曲流しても栄えるようなものにしていきたい所存。
エデン条約────ひいては学園の平穏を取り戻すための作戦会議で、ゲヘナ学園とトリニティ総合学園、ミレニアムサイエンススクール、アビドス高等学校、そしてブラックマーケットに入り浸る不良達とジャブジャブヘルメット団が集っていた。
作戦会議の会場は、連邦生徒会防衛室長御用達の結構広い超防音セキュリティ会議室。本来であれば申請を出さなければ使えない場所だが、緊急時のため申請を独断で割愛してくれた不知火カヤは今夜も
「ぶっちゃけ、ゲマトリアが関わってるとなると面倒です」
「うーん……それはおじさんも同感かなぁ。厄介だよ、あの大人」
先生が倒れたという情報はアビドスにも届いており、戦力が必要だということでムツキがアルの代理で連絡したら二つ返事で来てくれた。ヒドリの発言に対して、ゲマトリアの大人を知るホシノが頷く。
「あの……ゲマトリアとは?」
「キヴォトスの外にある大人の組織です。厄介。それだけ覚えておいてください」
チナツの疑問にサクッと答えたヒドリは、便利屋68が独自に考えた今回の戦争の目的についての資料を取り出す。
「ゲマトリア────ベアトリーチェが宣戦布告を行ったのは恐らく、ルールに沿うことで正当性を生み出すためです」
「「「正当性?」」」
「アリウスは基を辿るとトリニティ、そしてゲヘナが原因でああなってます」
資料の二枚目に記された記録。それはヴェリタスがぶっこ抜いたシスターフッドの秘匿情報の類いである。これにはシスターフッドの代表として参加していたサクラコも開いた口が塞がらない。
「この情報は……!」
「すっぱ抜きできる時点でお笑い草だよ。秘匿情報ならデータの海に残しておくべきじゃなかったね」
「まぁ、このようにチヒロ先輩達にお願いしました。……話を戻しますが、手酷く弾劾されたアリウスは僻地へと。人道的支援は全く無かったみたいですね」
これは酷い。さすがのゲヘナも呆れてしまうほどの後始末のなさであった。何の物資もなく僻地へと向かわせて、はいさようなら、はさすがに酷い。過去のトリニティのやり方に、トリニティ総合学園の生徒も顔を不快感で歪ませた。
「シスターフッド……ユスティナでしたっけ。執行者。審判の神の名の下に断罪する存在。審判の神が何なのかは知りませんが、断罪し終えたら後始末をしないって杜撰過ぎません?」
「ぐうの音も出ないご指摘です……」
「とりあえずこの資料を前提に話をします」
「……ヒドリ、一つ聞きたい」
「はい、何でしょう、ツルギ先輩」
「お前の後ろにあるその包みはなんだ?」
「お気付きになられましたか」
ツルギ、遂にツッコミをかます。ヒドリの後ろに置かれていた山程の包み。そこから漂ってくる香辛料の香り。ブラックマーケットに入り浸る不良達は今にもよだれを垂らしそうな勢いである。
「お昼になりますので、試作品を持ってきたんです。実験台になってください」
「思った以上に明け透けだ!?」
イオリの言葉を聞き流すヒドリの手の中で包みが開かれた瞬間、官能的なまでに香る香辛料と暴力的な旨味を閉じ込めたであろう唐揚げが現れた。
「あら? それは確か禁止された────」
「スカーレットフライドチキンは禁止されましたが、緋色の唐揚げは禁止されていません」
「……屁理屈では?」
「屁理屈で暴言を投げてきたトリニティの方がそれを言いますか? そもそも何ですか、角が気持ち悪いって。トリニティの自治区に鹿の角生えてる店主が経営してる紅茶店ありますよね? ティーパーティー御用達の」
ティーパーティーの代表として出席していたナギサへの、幼馴染みがヒドリの前で言い放ったことに対しての強烈なカウンター。過去の行いは決して消えないのだ。
「言葉にも行動にも責任が伴います。次に社長やカヨコ先輩に向かってそんな発言したら即刻喉を潰しますよ、あの人……何でしたっけ、ピンク色の人」
「聖園ミカだ、赤時」
「ああ、その人です。ありがとうございます、マコト先輩」
(ミカさん、本当に何やらかしてくれたんですか……!!)
現在、トリニティ総合学園の牢屋の中で投獄ロールケーキ生活をしているミカに悪態を吐くナギサ。次に目の前のゲヘナ学園生徒は本当に喉を潰しかねない。それどころか顔面が滅茶苦茶になるまで殴る蹴るの暴行をした後にジョロキアを口に突っ込むまでやるかもしれない。それだけで済めば御の字かもしれないという、最悪の可能性をナギサは感じ取っていた。
(便利屋68のメンバーがいないせいか、いつもよりキレキレだね、ヒドリ。……というか、こっちが素なのかな?)
腹の底から出た本音を吐き出したヒドリは、また一つ人間を学んだ。ゲヘナらしくなっているのかもしれない。
「まぁ、僕のあれこれはどうでもいいんです。食べながら話を聞いてください」
弁当を配り終えて切り替えたのか、仕事の顔になるヒドリ。徹底的に調べ上げたのか、アリウスの情勢、ゲヘナとトリニティの状態など、こと細やかに記されている。
「アリウス分校の自治区へ向かうためには、山を越える必要があります。そうですよね、マコト先輩」
「ああ。公務で調査した際に、山を二つ────いや、三つ越えた。かなりの距離だ」
「空からは強力な電磁波みたいなのがあって侵入できませんでしたよ。輸送機がとんぼ返りしました」
マコトとイロハの発言に頷いたヒドリは、五枚目の資料を見るように指示する。そこには、エデン条約調印式会場の付近の下水道や水路、地下鉄などといった地下施設についての記載があった。
「水路などについても、ジャブジャブヘルメット団に調べてもらいました。正義実現委員会と風紀委員会が交戦したアリウス分校の出現場所について違和感がありましたから」
「違和感?」
「あの人達、何で無傷でやってきたんですか?」
「「「あ……!!」」」
その時戦闘に参加していなかったメンバーも含めて、全員が目を見開く。あれだけの空爆に巻き込まれず、警戒網にも掛からず、どうやって現れたのか。対空システムに引っ掛かった輸送ヘリなどの存在も、ステルス機もなかったのに。
「地上から現れた……のであれば、アリウス分校の自治区がある方角的に、ブラックマーケットを通らざるを得ない」
「でも私達はそれを見てない……! あんな武装をしてるやつらならすぐに気付く!」
「……水路からの侵入、ですか」
結論をアコが弾き出すと共に、ジャブジャブヘルメット団の代表として出席している河駒風ラブが口を開く。
「昨日の今日で調べたからちょっと雑にはなるけど、トリニティの水路は他と比べると妙に入り組んでるんだ」
「入り組んでいる?」
「うん。まるで迷路みたいに。だけど、必ず排水できるようにはなってる。浄化とかの仕組みのためかと思ったけど……違った」
水路などについて全て暗記しているのか、考える素振りも見せず仮想ボードに写真や図面を透過、必要な場所だけを可視化させていくラブ。作業を見ていた全員が、ラブの手際に舌を巻くと共に、現れたそれに驚愕する。
「道になっている……!!?」
「トリニティの地下────いや、ゲヘナの地下水路にも繋がってる!!」
「ちなみにアリウスが作ったものではないよ。何十年も前の産物だ。多分……ゲヘナとトリニティがそこまでいがみ合ってなかった頃の……共同開発の緊急避難路なんだと思う」
一応、記録を見るとゲヘナとトリニティがいがみ合っていなかった時期があったのだ。その頃に作られた避難用地下通路が、そのまま残っていた。アリウスはそれを利用して奇襲を仕掛けてきたのだろうと結論付ける。
「だが赤時……ベアトリーチェには転移があったはずだ」
「多分、制限があるんだと思います。一度使うと、その後何日か使えないような制限が」
「土壇場での緊急脱出装置みたいなもの……ですか」
下ネタ発言をしないハナコの呟きにヒドリは頷く。ヒドリは神秘の流れを見ることができる。その目が、ベアトリーチェの転移に対して莫大な量の神秘が必要であることを読み取っていた。
「出口は各所にあるみたいですし、そこから現れたと考えていいでしょう」
「なら、すぐにそこを利用して────」
「あ、それは無理。塞がってるから」
あのクラスター爆撃の際に起爆したのか、通路は完全に塞がってしまっていた。水回りの仕事をしているジャブジャブヘルメット団は後日水路修理の仕事が入っている。意外と実入りがいい。
「あの転移があるからこその奇襲だったわけね……」
「じゃあ、どうやってアリウスに攻め込むの?」
「そこはシスターフッドの方が知ってるはずですよね、サクラコ先輩?」
「……カタコンベ、ですね」
トリニティ総合学園自治区、シスターフッドの領域にあるカタコンベに繋がる道。これについてもヴェリタスが調べた。ルールがどうとかを語っている暇はもうないのだ。
「あそこから向かえるはずですよ、アリウス分校の自治区に」
「ええ。……ですがあの道は古代の遺産で、迷宮のようになっており、そう簡単には……道を示すような書物も解読が……」
「古代の産物なら僕が読めますので大丈夫です。……あとは先生が起きないとダメですね。ヒナ先輩にも復帰してもらわないと」
「なぜそこに先生が?」
「エデン条約は連邦生徒会長の提案から始まってます。なので、その人が推薦したという先生なら正式に調印が可能かと」
ヒドリの意見に納得する面々。しかしそこでふと、疑問が浮かび上がった者がいた。
「あ、あの……」
「はい、何でしょう?」
「その……結局、ベアトリーチェという人が宣戦布告した理由は……正当性を手にするだけのため、だったんでしょうか……?」
その疑問を口にしたのは、正義実現委員会の中である程度の実力はあるものの、まだ幹部のお付きに留まっている見習い少女である。だが、そんな彼女の発言はこの場にいる誰もがハッとする発言であった。
「というと?」
「え、えっと……宣戦布告なんてしたら、奇襲の意味が無くなりますよね? なのに、あの大人は宣戦布告をしました。その理由が最初の説明だけじゃ分からなくて……ご、ごめんなさい! どうでもいいこと────」
「いえ、素晴らしい着眼点ですよ。……ツルギ先輩、ハスミ先輩。いい後輩に恵まれてますね」
ヒドリが人を褒めることは別段驚くことではない。便利屋68や、喫茶店の店主が言っていた「素晴らしいことには正当な評価を」という言葉を実践しているのみである。
「宣戦布告の理由。それは正当性の他にも、事後処理のためでもあるかと」
「事後処理……?」
「はい。仮にアリウス分校が負けたとします。その時、どうアリウス分校を裁きますか?」
「それは……裁判?」
ゲヘナ学園とトリニティ総合学園、その二つの学園を交えた弾劾裁判となるだろう。それは、過去の行いの繰り返し。歴史を繰り返すことになる。それも、過去よりもっと酷い状態での繰り返しとなることは明白だった。
「しかし、それがベアトリーチェというアリウス分校の理事長────ひいては大人による行動、生徒達への洗脳が原因だったとすればどうでしょう?」
「……情状酌量の可能性は極めて高い」
「はい。ゲヘナとトリニティに勝てなかったとしても、アリウス分校の生徒に重い罪を与えることは不可能です。だって、ベアトリーチェ以外のアリウス分校の考えを、誰も知らないんですから」
ゲマトリアの大人は狡猾で、清濁併せ呑むことを知って行動できる大人達だ。そして、その全員が自分の思う『崇高』への道を突き進む存在。
その『崇高』が何なのかはともかくとして、ベアトリーチェの保険は『仮に負けたとしても責任が全て自分に行くようにすること』なのだ。実際に痛みと恐怖で支配していたわけで、それらは洗脳にも近い効果を発揮していた。彼女の保険は間違いなく機能している。
「しかも、アリウス分校をある程度統治していたということは……」
「ええ、投獄などすれば確実にアリウスのインフラや統治がおかしくなりますね」
万が一投獄が決定したとしても、ベアトリーチェは大人────子供の経済力とは違う経済力を持っている。法外な保釈金だって支払えるだろう。
「それはそれとして、借りは返します。うちはアリウスに社長をやられてますし」
そう言って拳を握ったヒドリの全身から溢れる神秘は、それを知覚できない者達であっても身震いする程であった。
「そのためにも、皆さんと先生の力が必要です。よろしくお願いします」
ヒドリは便利屋68のために翼を広げる。便利屋68のためなら自分の目をくり貫くことも、腕を切り落とすことも、命を賭けることもする。
この場にいる誰もが感じ取ったのは、覚悟だ。赤時ヒドリという男の、仲間を────家族を想う者の覚悟。もし、ここにいる者が誰一人賛成しなかったとして、彼は一人でアリウス分校の自治区へ向かう。やると言ったらやる、そういう凄味がヒドリにはあった。
「うへ、ヒドリ君には助けられたし、おじさん達も協力するよ」
「ん、言われなくても協力してた」
「まぁ、大将のお店、よく来てくれるし……一緒にホシノ先輩を助けた仲だしね」
「恩返しにはまだまだ足りませんけど、私達をじゃんじゃん頼ってくださいね」
「アビドス高等学校は便利屋68の皆さんに協力しますよ。頑張りましょう、ヒドリ君」
「赤時君に────便利屋に助けられたからあたし達がいるんだ! 行かせてくれ!」
「私も行くよ! 連れていってくれ!」
「陸八魔さんに、便利屋68に少しでも恩返しさせて!!」
「ま、乗り掛かった船だし、最後まで付き合うよ」
「サポートは任せてくれ。最高の作品達も用意しよう」
誰よりも先に協力することに頷いたアビドス高等学校と、ブラックマーケットの不良達と、ジャブジャブヘルメット団、そしてミレニアムサイエンススクール。そんな彼女達に感化されたのか、ゲヘナ学園とトリニティ総合学園の生徒達も口を開いた。
「元はと言えば、私達ゲヘナとトリニティとの問題だ。行かなきゃダメでしょ」
「手酷くやられた分は、返さないとな……」
「ええ、私達も参ります」
「ユスティナ────シスターフッドの前身が現れるのであれば、シスターフッドが出ないわけにはいきません」
覚悟は、決まった。方向も決まった。ヒドリは小さく笑ってから声をあげる。
「作戦名は『Payback time』。決行は────まぁ、先生が起きてからです。それまでは皆さんで準備を」
楽園を取り戻す戦いが、始まろうとしていた。
以下、与太世界線の『先生、ちょっとお時間いただけますか』
「先生、おはようございます、赤時ヒドリです。今週から僕が出向します」
そう言って頭を下げるヒドリ。いつものゲヘナ学園の改造制服に身を包んだ彼は、ポケットからメモ帳を取り出して何やら読み上げる。
「伝言です。『ごめんなさい、先生! ちょっと仕事が立て込んでて行けないわ!』……だそうですよ」
「……はい。本当なら社長が来る予定だったんですが、仕事の兼ね合いで僕が来ました」
仕事が山積みなんですよ、意外と、と呟いた後、ヒドリは咳払いをして口を開く。
「まぁ、今回は一問一答。ユウカ先輩もそこから始まったと聞きます。早速始めましょう」
Q.名前は?
「赤時ヒドリです」
Q.年齢は?
「15歳ですね。高校一年生です」
Q.身長は?
「大体170cmくらいです」
Q.体重は?
「昨日計った限りですが、54kgでしたよ」
Q.……ご飯しっかり食べてる?
「食べてますよ」
Q.お風呂の時、体はどこから洗う?
「基本的に翼からです。面積が大きいので」
Q.便利屋の皆と入ってるの?
「はい。どうしてそんなことを聞くんですか? ……家族に興奮する人はいませんよね?」
Q.男女七歳にして席を同じゅうせずって言葉があるし……気になって。
「少なくとも、便利屋68は違うんですよ」
Q.ゲヘナの怪鳥って知ってる?
「気付いたら付けられてましたね、それ」
Q.便利屋68に何か一言ある?
「いつもありがとうございます。拾ってくれたのも、感謝してます」
Q.最近困っていることは?
「そうですね……特に何も。僕は便利屋の皆さんといられるなら、それでいいんです」
Q.その紙って何?
「この世には知らない方がいいことだってあるんですよ、先生。知りたいなら、それはそれでいいですけどね」
「……こんな感じでしょうか? でも、ちょっと時間が余りますね」
「ああ、それと。この紙の内容は見てもいいですよ。声に出して読まなければ」
「声に出したらどうなるのかって? ……試してみますか?」
“何が起こるの!?”
「ふふ、冗談ですよ。まぁ、僕が見てる側で、僕がその気にならない限り、声に出しても大丈夫ですが」
「変わりといってはなんですが、こっちの方ならいいですよ」
“あれ、それってもしかして……!”
ヒドリが赤い剣と黒い槍を構える。
「緋色の輝き、友焼け子焼け」
「沈みて業々、原野を照らす」
「堕ちろ、【朱涅】」
“おお……! やっぱりカッコいいね、それ!”
「ありがとうございます。……さて、次はこっちですね」
「緋色の輝き、夢見の帳」
「昇りて煌々、原野を覆う」
「昇れ、夜叢」
「……お気に召しましたか? ────それなら良かった」
「ブルーアーカイブ。今週も頑張りましょう、先生」