突然変異緋色のゲヘナ学園生徒   作:エヴォルヴ

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炊き込め炊き込めヒドリ君。美味しく炊き込めヒドリ君。


錦より赤く、香りは高く。美味しく炊き込めヒドリ君。

 ブラックマーケットという闇市がキヴォトスには存在する。取り締まりが難しいために、各学園から警戒されながらも放置されている場所だ。

 

「あれ? ヒフミ先輩?」

 

「あ! ヒドリ君! こんにちは!」

 

 キヴォトスの闇市には似つかわしくない少女を見つけたヒドリが声をかけた。阿慈谷ヒフミ────トリニティ総合学園二年生帰宅部。誰が呼んだか史上最強のペロキチ。一富士二ペロロ様三茄子という初夢を見るくらいにはぶっ飛んでいるトリニティ総合学園の少女である。

 

「こんにちは。ヒフミ先輩はペロロ様グッズですか?」

 

「はい! 先程親切な方達に助けてもらって手に入れました!」

 

「素晴らしい。それ、限定品ですか? 見たことないグッズです」

 

「分かりますか? アイスクリームを食べるペロロ様です!」

 

 なるほど、だからこんなにも興奮しているのか。ペロキチの行動力にいつも驚かされているヒドリに対して、ヒフミは不思議そうに彼を見た。

 

「ところで……ヒドリ君はどうしてそんな格好を?」

 

「僕の独学、赤鶏の炊き込み御飯の売り込みです」

 

 割烹着を着たヒドリが立つテントの横、そこに設置された大きな釜に入っているのは、炊き込み御飯であった。

 

「ブラックマーケットに入り浸る生徒って、お腹空かせてますから。こうして低価格で売ってるんですよ」

 

 木製の蓋を開くと現れる紅色の炊き込み御飯。見事に引かれた出汁とスパイス、炊き立てのご飯と山菜や肉の香りは空腹だったヒフミの胃袋に直撃する。

 

「はう……」

 

「食べますか?」

 

「え、いいんですか?」

 

「試食程度なら無料ですよ。気に入ったら買ってください」

 

 そう言って使い捨ての茶碗に炊き込み御飯を盛り、ヒフミに差し出すヒドリ。おずおずと茶碗を受け取ったヒフミは、赤い炊き込み御飯を口にする。────瞬間、鶏とスパイスと山菜の旨味が脳天を吹き抜けた。

 

「うわぁ……凄く美味しいです!」

 

「ありがとうございます」

 

 甘辛く味付けされている炊き込み御飯の米一粒一粒に、食材の旨味が乗っている。そこにやってくる唐辛子や山椒の痺れるような辛さ……だが、この料理の主役として立っているのはやはり鶏肉。ヒドリは鶏肉の扱いがキヴォトスの誰よりも上手い。

 

 噛めば噛むほど旨味がやってくる。パサパサしておらず、恐ろしいまでにしっとり。タケノコの食感も楽しい。

 

「一杯何円で売ってるんですか?」

 

「200円です。大盛は250円です。諸々トッピングも合わせると……ワンコインくらいですかね?」

 

「赤字にならないんですか!?」

 

「本職じゃないので大丈夫ですよ」

 

 ヒフミがおかわりを────並盛で────購入してすぐに、ちらほらと客がやってくる。ヒフミが驚いたのはその後……喧騒に包まれているブラックマーケットとは思えないほどの民度の高さで並んでいく人々だ。

 

「大盛! あ、ネギも!」

 

「はい、280円です。……20円のお釣りです」

 

「私並盛で鶏そぼろ!」

 

「うちは大盛で卵焼きかな」

 

「合計510円です。……はい、丁度ですね」

 

 行列に難なく対応するヒドリの手際は中々のもので、何度もやっているのだろうと感じさせる。500人以上いたであろう客がいなくなる頃には、大きな釜は空っぽになっていた。

 

「完売です。売上、伸びてますねぇ」

 

「人気でしたね、ヒドリ君の炊き込み御飯」

 

「嬉しいことです。……連邦生徒会から許可が降りれば、フライドチキンも売れるのですが……」

 

「あはは……あれは凄かったですもんね……」

 

 おいしさ やばげ 緋色の鳥よ あぶらみ あかみ てをのばせ。

 

 その言葉の下、ヒドリが黙々と作り上げたスカーレット・フライドチキン。その美味しさは中毒者が出ると危険視されたほどで、現在は連邦生徒会の許可が降りない限り作ってはならない、売ってはならないと決められてしまっている。この味を求めて、日々抗議している者がいるとか、いないとか。

 

「痺辛、燃辛、ピリ辛……辛いの苦手な人には甘辛も……と作ったのですがね」

 

「暴動があったので仕方ないかと……」

 

「ええ……なので、いつかお祭りに出してみせます。体育祭みたいなのとかに!」

 

 ヒドリもまたキヴォトス人である。連邦生徒会から許可をもぎ取るまで、何度でもチャレンジするつもりらしい。フライドチキンがダメでも、炊き込み御飯のおにぎりくらいは出せるようにと。

 

「ま、その前にやることはあるんですが」

 

「やること?」

 

「燻製作りです」

 

 保存食の作成はもはや趣味と言ってもいい。少し昔であれば、収入のない時の非常食として用意していたのだが、今となってはヒドリの趣味の一環になっている。

 

「スモークチキンとか美味しいんです。チーズなんかもいいですね」

 

「ヒドリ君はどこを目指してるんですか?」

 

「美味しいものは皆で食べたいんですよ、僕」

 

 ヒドリはポケットに入れていたらしい包みを開き、猪ジャーキーを噛みちぎる。先日無理を言って風紀委員の狙撃銃を使える人間に狙撃してもらい、素早い血抜きをしたお陰で、キヴォトスを騒がせていた巨大猪は見事な牡丹肉となった。

 

 その肉は現在、熟成も兼ねてゲヘナ学園最高セキュリティ搭載冷蔵庫に眠っている。あとでゲヘナ学園全生徒を巻き込んだ鍋パーティーを開催予定だそうだ。この祭り、実はヒドリが入学してから定期的に────数ヶ月に一回の頻度で────開催されていたりする。入場料は無料、ゲヘナ学園生徒でなくとも参加可能なため、時折ゲヘナ学園生徒ではない人間もいたりする。

 

「あ、ヒフミ先輩も今度のお祭り、良かったら」

 

「あ、ありがとうございます。今回は牡丹鍋……? 牡丹ってお花ですよね?」

 

「猪肉のことを牡丹肉って言うんだそうです。山鯨、なんても呼ぶそうですよ」

 

 キヴォトスでも時折出回る鯨肉。ヒフミは食べたことがなかったが、それと似た味なのかもしれないとイメージする。

 

「ちなみに、猪の体脂肪率は驚異の10%です」

 

「ほぼ筋肉じゃないですか……!?」

 

 余談になるが、豚の体脂肪率は15%であり、鶏の体脂肪率は5%以下。意外と引き締まっている。

 

 

 

 ────────────────────────────────────

 

 

 

1:名無しの先生

 う、美味い……! 新発売ブルアカ公式商品の赤鶏炊き込み御飯……! 辛さと旨味のダブルパンチに加えて、米一粒一粒に味が染み込んでいやがる……!! 酒! 飲まずにはいられないッ! 

 

2:名無しの先生

 食レポ乙。マジで美味いよな。

 

3:名無しの先生

 初めてヒドリ君見た時は「あ? なんやハーレムか?」と思ったけど、今では便利屋68の弟みたいな目でしか見れない。そんな彼が作った料理を忠実再現とか頭おかしい。いいぞもっとやれ。

 

4:名無しの先生

 おいしさやばげ緋色の鳥よあぶらみあかみてをのばせ

 

5:名無しの先生

 ブルアカ公式イベントで一瞬にして売り切れたスカーレット・フライドチキンの話はそこまでだ。

 

6:名無しの先生

 買いたかった……

 

7:名無しの先生

 通販でもいつも売り切れてる。抽選だからしゃーないけど、そろそろ当たってほしいわ……

 

8:名無しの先生

 ヒドリ君、君どうして便利屋68にいるの……? 給食部じゃないの……? 

 

9:名無しの先生

 お? イベント未プレイ勢か? 

 

10:名無しの先生

 よく来たな。まぁ、座れよ。

 

11:名無しの先生

 ここは初めてか? 肩の力抜けよ。

 

12:名無しの先生

 歓迎しよう、盛大にな!! 

 

13:名無しの先生

 ちくわ大明神

 

14:名無しの先生

 誰だ今の

 

15:名無しの先生

 ヒドリ君はあれだよ。便利屋68に拾われたペットだよ。

 

16:名無しの先生

 ペット……? 

 

17:名無しの先生

 あれをペットとは言わない(戒め)

 

18:名無しの先生

 色んなところで女の子と仲良くなる天才だよ。たまにバッドコミュニケーションぶち当てるけど。

 

19:名無しの先生

 人間との違いを見せつけてくるタイプの上位存在でしょあれ。

 

20:名無しの先生

 飛べる、歌えるヒドリ君やぞ。

 

21:名無しの先生

 もしかしてあの輪唱のこと言ってらっしゃる……? 

 

22:名無しの先生

 まぁ、歌えてはいたよね。

 

23:名無しの先生

 本気で歌わないタイプの鳥

 

24:名無しの先生

 トリカス? 

 

25:名無しの先生

 ヒドリ君はトリカスじゃねぇよ!? 

 

26:名無しの先生

 とりあえずヒドリ君に石を投げたトリカスは死んでもろて……

 

27:名無しの先生

 死ぬなんて……そんな野蛮な……ここは穏便に拷問で……

 

28:名無しの先生

 物騒じゃねぇか!? 

 

29:名無しの先生

 ヒドリ君は気にしてないみたいだけど……俺達が気にする。

 

30:名無しの先生

 おじさんのこと本気で本気で怒らせちゃったねぇ! 

 

31:名無しの先生

 ホシノかな? 

 

32:名無しの先生

 おじさん(先生)ゾ。

 

33:名無しの先生

 あっ、そっかぁ……

 

34:名無しの先生

 でもあの時、ヒドリ君しかいなくて助かったよな、あのトリニティ生徒

 

35:名無しの先生

 誰かいたらフルボッコなんだよなぁ……

 

36:名無しの先生

 そもそもヒドリ君怒らせたら世界の終わりでしょ。

 

37:名無しの先生

 キヴォトスが滅ぶな! 

 

38:名無しの先生

 え、そんなヤバイの、あの子。

 

39:名無しの先生

 認識の鳥はなぁ……ね? 

 

40:名無しの先生

 下手すりゃ世界が食われる

 

41:名無しの先生

 未来演算する機械が見せた最初に眠る者になったら終わりだよ。

 

42:名無しの先生

 その前にセイアの夢が現実になったら終わるんだよなぁ……

 

43:名無しの先生

 あれは……ヤバイよ。ヒドリ君だよね? ……本当に? 

 

44:名無しの先生

 真っ赤な鳥なんてヒドリしか思い付かねぇよ。……てか、マジで枷が外れたらヤバイんだよ。どうにかしろゲマトリア。

 

45:名無しの先生

 手に終えないでしょゲマトリア。

 

46:名無しの先生

 食べられて終わりよゲマトリア。

 

47:名無しの先生

 つか、ヒドリ君の枷ってやっぱり便利屋68? 

 

48:名無しの先生

 フウカとジュリも

 

49:名無しの先生

 片や拾い主、片や食事提供者。うーん、ヒドリ君の今を作ってる。

 

50:名無しの先生

 何を言ってるのか分からなかったけどな。PV、あの鳥の声が曇りすぎて

 

51:名無しの先生

 解析班、なんとかしろ

 

52:名無しの先生

 今終えたぞ

 

53:名無しの先生

 有能

 

54:名無しの先生

 優秀。

 

55:名無しの先生

 1145141919810点上げるわ

 

56:名無しの先生

 多過ぎィ!? 

 

57:名無しの先生

 で、結果は? 

 

58:名無しの先生

 貼るわ。

 

「足りない……足りない……足りない……足りない……満たされない……こんなに……こんなに……」

 

「たくさんの命を食べているのに!! ちっとも満たされない!!」

 

「いない! いない! どこにも! 皆! 皆がいない!」

 

「どうして! どうして! どうしていない! いなくなった!」

 

「アルも! ムツキも! ハルカも! カヨコも! フウカも! ジュリも! 皆を! お前が! お前が奪ったのか!? 皆を……返せェエエエエエエエエッッッッ!!!!」

 

 以上! 解読してた全員が気づけば泣いてたよ……あれ、ヒドリの泣き声だもん。咆哮全部が、ヒドリの泣き声だったよ……

 

59:名無しの先生

 おっっっっっっっっも

 

60:名無しの先生

 解析班よくやった……今は休め……! 

 

61:名無しの先生

 解読音声も残しておく……おやすみ……

 URL:────────────────

 

62:名無しの先生

 乙

 

63:名無しの先生

 マジでお疲れ様でした解読班……

 

64:名無しの先生

 ヒドリ君の慟哭が壮絶すぎる……

 

65:名無しの先生

 解読音声やべぇ。

 

66:名無しの先生

 心が……心が……死ぬ……! 

 

67:名無しの先生

 ヒドリ君、寂しかったんやろなぁ

 

68:名無しの先生

 寂しさで人を食べるとは? 

 

69:名無しの先生

 叱られたかったとか? 度が過ぎてるけど

 

70:名無しの先生

 あの未来には行かぬ……我らは先生だからな。

 

 

 


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