突然変異緋色のゲヘナ学園生徒   作:エヴォルヴ

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よぉし、サックサク行くぞぉ!!戦闘描写が少ない?知るかぁ!!苦手なんだよ畜生!!


終戦だよ、ヒドリ君

 緋色の騎士。その姿となったヒドリの神秘は、ほぼ全て鎧に回されている────というよりも、肉体自体が鎧に置き換えられているため、肉体自体が神秘の塊と化しているのだ。間違いなくキヴォトスで最も頑丈な存在となっているだろう。

 

「僕の相手は────お前か」

 

「────────!」

 

 そんな彼に激突するのは青白い肌を晒すガスマスク。ミメシスの中で最も強い、ユスティナ聖徒会最強バルバラ。そしてそれを補助するはベアトリーチェ。

 

 この決戦に向け、ベアトリーチェはマエストロにバルバラの強化を依頼していた。その一つがヒエロムニスとグレゴリオの融合である。これに対してマエストロは渋ったが、バルバラという最強に、人工天使達を混ぜ合わせたらどうなるのかという好奇心に負けた。

 

「彼女はそう簡単には倒せませんよ」

 

「でしょうね。でも、僕は一人じゃないので」

 

 右腕の幾何学文様が光り、腕に接続されていたカートリッジのようなものから赤黒い粒子溢れ、ヒドリの後方へと流れていく。その到達点にいるのは────便利屋68の突撃役、ハルカ。

 

「な、何が…………は、はいぃ!?」

 

「「「武器が変わったァ!!?」」」

 

 赤黒い粒子がハルカが握っていたショットガンと右腕に纏わりついた後、姿を変えた。禍々しくも近未来的なデザインへと姿を変えたショットガンに、ヒドリの鎧と少し似ているが装甲の厚さが全く違う右腕装甲。ハルカは混乱しながらもヒドリの前に出て銃のトリガーを引く。すると────

 

「はわわわ……!?」

 

 凄まじい反動と共に、電磁波を纏う弾丸が吐き出された。

 

「レールガン……!?」

 

「“ショットガンだよねそれ!?”」

 

「あ、やっぱりいいですね、それ。厄介な相手でしたけど、本当にいい武器です。名前は確か……ロンゴミニアドでしたか」

 

『『『ふぉおおおおお!!? レールガン! ショットガンなのにレールガン!!』』』

 

 ヴェリタスと共にモニタリングしていたエンジニア部が大興奮している。レールショットガン【ロンゴミニアド】。ヒドリがかつて戦い、勝利した騎士が使っていた槍とショットガンが混ざり合った特異な銃。そしてそれを片手であっても使えるようにする分厚くも軽い装甲は、ちょっとやそっとの攻撃では壊れない。

 

「次元ごと貫くレベルの威力が出せるはずなんですけど……再現度が足りないか……んじゃ次はこれです」

 

 次は左腕の幾何学文様が光り、同じく左腕のカートリッジのようなものから赤黒い粒子が溢れる。それは意思を持っているかのようにヒドリの後方に向かい────カヨコのハンドガンと左腕に纏わりついた。

 

「これ…………なるほどね」

 

 姿を変えたハンドガンと、左腕の装甲。ハルカの装甲とは違い、補助を目的としているのか装甲が薄い。だが、その分補助機能が盛り込まれているようであった。

 

「デモンズロア改め、【縁裁厄除(えにしぎりやくじょ)】。その能力は────」

 

(まさか────緋色の騎士、その能力は……!!)

 

「────────!?」

 

「因果すら超えて、魂まで切り裂く音響。これも厄介な相手でした。……あれ、やっぱり再現度が足りませんね」

 

 緋色の騎士、その能力は────【認識再現】。自分が戦い、勝利した者の力を再現する力。本来であればほぼ完璧に再現が可能のはずだが、キヴォトスに辿り着いてから全く使ってこなかった能力でもあり、当時よりも弱体化しているヒドリにはそれが扱いきれていない。

 

 だが、それでもバルバラには凄まじいダメージリソースとなっている。ヒドリの拳を喰らってもびくともしていなかったバルバラの右肩から、大きく裂けるような切り傷が生まれていた。

 

「しかし、まだバルバラは倒せませんよ……!」

 

「それはそうでしょうね。だからダメ押しはし続けますよ!」

 

 剣と槍の攻撃をしながらも、また脚のカートリッジのような部分から赤黒い粒子が溢れ、ムツキの銃と足に纏わりつく。

 

「あはっ! 何これ面白~い!!」

 

 空気を踏みつけるように飛び上がるムツキは、禍々しく姿を変えたMGを構える。銃身が二つに増え、マガジンも二つに増えているそれを軽々と構え、トリガーを引いた瞬間、吐き出された弾丸。バルバラだけではなく、ベアトリーチェも狙ったそれが彼女達に着弾した瞬間────雷が降り注いだような凄まじい爆発を起こす。

 

「爆発弾……!!?」

 

「【雷霆(ケラウノス)】。強かったよなぁ、あの戦士……」

 

 その能力は着弾した地点に雷撃のような爆発を起こす弾丸を発射するというもの。死に体になりながらも突っ込んでくる戦士を思い出して苦笑するヒドリは、首に近い背中のカートリッジ部分から赤黒い粒子を放つ。それが向かうのはやはり便利屋68────そのリーダー、陸八魔アル。禍々しいデザインのスナイパーライフルと、バイザーが接続されたアルは不敵に笑っていた。

 

「最高よ、ヒドリ」

 

 光も、音も置き去りにして、その弾丸はバルバラの心臓を貫く。

 

「【グングニル】……マジで強すぎるんだよ、あの戦士……マジで何だったんだ……でもまぁ……」

 

 これで詰みですね。

 

 そう言って放つのは炎の剣と氷の槍による斬撃と刺突。本来であれば先生であっても大人のカードを何度か使わなければ勝てなかったであろう凄まじい強敵。しかし、それは生徒の────便利屋68との数回の攻防によって撃破された。

 

「さて……次はあなたですね、ベアトリーチェ」

 

「そのようです。……しかし、私にも意地がある」

 

 突如、ベアトリーチェの神秘が膨れ上がった。それは神秘だけではなく、反転した────恐怖も含まれた力だ。

 

「これは────!?」

 

「マダム……!」

 

「“アリウスの生徒達から力を吸い上げてるのか……!?”」

 

 アリウスの生徒達や、バルバラの亡骸から神秘を吸い上げ、いつの間にか片手に握られていた錫杖のようなものに収束していくベアトリーチェ。

 

「完成には至っていませんが、あなた方を倒すには────絶対破壊の一撃が必要です」

 

 完成に近付いていく純粋な力の塊。ヒドリですら冷や汗を流す程に力が凝縮された錫杖と、ヒドリの剣と槍がぶつかり合う。

 

「……!!」

 

「驚きましたか? 私は椅子にふんぞり返るだけの大人ではありません。こう見えて────」

 

「“ヒドリ!?”」

 

「現場主義ですので。こうして戦えるように鍛えてはいます」

 

 実はドレスの下が密度のある筋肉で引き締まっているベアトリーチェ。そんな彼女の膂力によって振り抜かれた鎖付きの錫杖がヒドリの体に激突すれば、凄まじい勢いで吹っ飛ぶのは必然的であった。

 

「痛ってぇ……なぁああッッ!!?」

 

 そんな攻撃を受けたのにも関わらず、ヒドリは瓦礫の中から飛び出した。

 

「やはり頑丈ですね……!!」

 

 鎖の調整によって射程範囲を自在に操るベアトリーチェに対して、凄まじい量の赤黒い粒子を噴き出しながら突撃していくヒドリ。先生の指揮によって援護射撃も逐一行われているが、錫杖や神秘のバリアによって弾かれてしまう。それはアリウスの生徒達も同じであった。

 

「解放した力! そう長くは持たないのでしょう!?」

 

「それはお互い様だろうがァッッ!!」

 

 何度も、何度もぶつかる力と力。剛と剛。柔と柔。技と技のぶつかり合い。お互いに傷だらけになりながらも、ヒドリとベアトリーチェは戦いを激化させていく。

 

 一撃、一撃がお互いを必殺に至らしめる攻撃。片やヒドリは鎧に置き換えられている体から凄まじい神秘と金属片を飛び散らせ、片やベアトリーチェは切り傷や擦り傷によって血を滲ませる。

 

 剣が、槍が、錫杖が、拳が、脚が、パイルバンカーが、ヒートブレードが、神秘が、恐怖が、ぶつかり続ける。その応酬は援護射撃を行っていた生徒達が自然と銃を下ろしてしまう程に、美しい戦いであった。

 

 戦争などではなく、ただひたすらに、意地と意地とがぶつかり合う戦い。それは先生やゲヘナ学園、トリニティ総合学園、アリウス分校の誰もが息を飲み、声にならない叫びという名の声援を送るもの。

 

「……フゥゥウウウウッッッ……!!」

 

「はぁ……!!」

 

 何度も行われた暴風のような攻防だったが、お互いにこれが最後の一撃。お互いにそれを確信していた。

 

 決着をつけるべく神秘を収束させていくベアトリーチェは、こちらに鋭い眼光を向けるヒドリが剣と槍を重ねて神秘を放出、圧縮を繰り返しているのを見ながら、彼のいる方向へ向って歩き出した。

 

 圧縮され、解放される瞬間を今か今かと待ち望む神秘が宿る剣と槍が、ありったけの神秘と恐怖が収束された錫杖が、終わりへと向かっていることを示す。

 

 その身体にあるほぼ全ての神秘と恐怖を錫杖に込めた漆黒の一撃。その勢いのまま放たれるであろう神速の打撃。血走った複数の目と、戦意の籠った視線が交錯し、ヒドリもまた同じように構えた。限界まで力を込めた剣と槍をベアトリーチェに向けて、集中力を最高に引き上げる。

 

「ッッッ!!」

 

 思い浮かべるのは便利屋68や、友人、思いを託してくれた多くの者達。記憶を取り戻した今だからこそ分かる。その全てが、ヒドリをここまで連れてきたのだと。

 

「「────────」」

 

 奇しくも同じ構え。純白の錫杖を構える淑女に真紅の剣と漆黒の槍を構える騎士。二人の間に流れる空気が張り詰めていく。互いに持てる全ての力と想いを乗せた一撃がぶつかり合う。

 

 凝縮される時間、交差する互いの視線。まるで時が止まっていたかのように一歩も動かなかった彼らが、ほぼ同時に激突した。

 

 ────────かつて真紅の騎士と漆黒の騎士という騎士がいた。

 

 あらゆる困難を越え、最強と謳われた騎士がいた。戦場を駆け抜けてきた二人は互いに恋に落ち、一人の子を授かった。それは灰色の髪の子供。翼ある一族が信仰してきた神鳥が人の肉体を得て生まれてきたのだ。

 

 彼らは息子を溺愛した。それはもう凄まじい溺愛ぶりであった。そんな子供はいつしか最強と謳われるようになり、今、ベアトリーチェと対峙している。

 

 激突する瞬間、ベアトリーチェの方が一手速い。

 

「獲った────!!」

 

 勝利の叫びを放つベアトリーチェ。その声を聞き、無駄とは分かっていながら援護しようとするヒナやツルギ達。だが、だが、先生は……便利屋68は……動かない。信じているのだ。ヒドリが勝利する姿を、信じているのだ。

 

 そして、その思いは現実となる。

 

「……な、にぃいいいいッッ!!!??」

 

 ヒドリの手を離れた朱涅と夜叢が、誰かの手によって握られていた。それはまさしく、かつて最強と謳われた騎士。真紅の騎士赤時アカネと、漆黒の騎士赤時ヤグサの二人────その再現体であった。

 

「一番近くで見てきたから……父上も! 母上も! 僕が一番近くで見てきた!! だから、簡単に再現できた……!!」

 

 炎の剣がベアトリーチェの錫杖を両断し、氷の槍がベアトリーチェの体を貫く。それでもなお止まらないベアトリーチェは、両断された錫杖を両手で掴み、攻撃を仕掛けるが……それは届かない。三人の騎士の攻撃が、ほぼ同時に放たれる。

 

 一撃目は、何とか凌いだ。だが、二撃目、三撃目と重なっていくごとに、凌げなくなっていく。数十に及ぶ連撃の前に、ベアトリーチェは遂に隙を晒す。

 

 詰み(チェックメイト)だ。

 

「……終わりだ、ベアトリーチェ」

 

「……ふっ……見事です、赤時ヒドリ……そして、シャーレ!!」

 

 二人の騎士に背中を押されるようにしてスラスターを吹かしたヒドリの蹴りが、ベアトリーチェのがら空きになった腹に突き刺さる。

 

 その蹴りによって吹き飛ばされたベアトリーチェは、壁に激突して意識を失う。

 

「ふぅうううううううううう……………………はぁ。────────僕達の、勝ちだ!!」

 

 鎧が消え去り、元の姿へと戻ったヒドリが叫ぶ。その叫びを聞いて、ゲヘナ学園、トリニティ総合学園、ブラックマーケットの不良達、モニタリングしていたヴェリタス、エンジニア部────その誰もが勝鬨の叫びを上げた。逆に、アリウスの生徒達は立ち尽くしていたが、その誰もがどこか憑き物が落ちたような表情を浮かべている。

 

「……ヒドリ、大丈夫……じゃないわね」

 

「ふっ、ふっ、ふっ、ふっ…………ははっ……さすがに……疲れました……」

 

 倒れそうになったヒドリを抱き止めたのは、やはりアルであった。病み上がりだというのに、ヒドリの体を抱き止めながら笑みを浮かべる彼女に対して、ヒドリは小さく笑った。

 

「あとは私達が何とかするわ。あなたはとにかく休みなさい」

 

「はい…………あ、社長」

 

「何?」

 

「今度のお祭り、トリニティも……巻き込み……ます、から……」

 

 それだけ言い残して、意識を赤き原野へと送ったヒドリ。長い緋色の髪を撫でながら、アルは微笑む。

 

「お疲れ様、ヒドリ」

 

 エデン条約を巡る戦争が今、終わりを告げた。

 

 

 

 

 


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