ティンカーベルの子   作:宵月颯

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襲撃

 

謎のACとの接触から二週間が経過した。

 

同時に治療キットとの併用でハークラーの傷も癒えていた。

 

フェアリーとハークラーの協力もあり、ウォルターとしては傭兵稼業の懐は潤いつつあった。

 

同時にレイヴンの失った感情の起伏に関して彼女らとの接触がいい機会を生み出していた。

 

そんな日常が続く中で、ウォルターはある場所へ連絡を入れていた。

 

 

******

 

 

拠点の通信室である人物と話をするウォルター。

 

 

『いつ以来だ、ハンドラー・ウォルター!』

「…」

『貴様の猟犬にはクソほど煮え湯を飲まされた!よくも抜け抜けと連絡してこれたな!?』

 

 

通信機のスピーカー機能が壊れるかと思う位の怒声が響いていた。

 

相手はベイラム社のAG部隊レッドガンの総長G1ミシガンの声である。

 

流石のウォルターもミシガンの怒号が収まるまで通信デバイスから耳を放していた。

 

 

「ミシガン、こちらから提案だが…」

『うちの役立たず共と同じ扱いで構わんのだな?』

「第四世代は感情の起伏に乏しい、あいつには外からの刺激が多く必要だ。」

『ならば決まりだ、うちからはヴォルタとイグアスに死にぞこないのハークラー…それと見習いを出す。』

「見習い?」

『貴様の猟犬と同じく経験が必要なクソ餓鬼だ……貴様の新しい猟犬、我がレッドガンの流儀で迎えよう。』

 

 

以前から提示していた共同作戦の参加。

 

予定通り、ハークラーはこの作戦でレッドガンに帰還。

 

レイヴンもレッドガンの多重ダム攻撃への参加を認められた。

 

 

「ミシガン、もう一つ頼みがある。」

『何だ?』

「アーキバス社から預かっているAC乗りも参加させたい。」

『貴様!ふざけているのか!?』

 

 

敵対企業のACを任務に参加させる事に怒りを彷彿させるミシガン。

 

だが、ウォルターの説明でその理由を理解する。

 

 

「…二週間前、妙なACと遭遇した。」

『そのACがどうした?』

「そのACは今預かっているACの武装でしか倒せなかった…念の為の害虫避けだ。」

『……』

「不服なら待機させるが?」

『判った、そのAC乗りもこっちに寄越せ。』

 

 

ミシガンは何か察したのかウォルターの提案を受けた。

 

通信を切った後、ミシガンはしかめっ面で独り言を呟いた。

 

 

「まさかあのクソ餓鬼と同じ…」

 

 

~数日後~

 

 

『各機、ベイラム本社からの依頼が届いている…確認しろ。』

 

 

レイヴン、ハークラー、フェアリーは各機ACのモニターからベイラム本社からのミッションを確認した。

 

 

『ウォルターから話は聞いているな!?』

 

 

確認と同時に通信が始まりミシガンの声がコックピットに響いた。

 

 

『では、作戦内容を説明する!一字一句聞き漏らすな!!』

 

 

レイヴンは静聴しフェアリーは余りの声の大きさに驚いていた。

 

ハークラーは何時もの事で普通に聞いていた。

 

 

『今回、ベイラムは解放戦線の治水拠点ガリア多重ダムを叩き潰す事を決定した!』

 

 

音声通信に加えてガリア多重ダムの映像が映し出される。

 

 

『ライフラインの破壊により連中が泣いて詫びる損害を与えるのが目的だ!』

 

 

ミシガンの通信を聞きながら『相変わらずエグぃな。』とハークラーは呟く。

 

 

『我がレッドガン部隊からG4ヴォルタとG5イグアスに見習いのラーク…そこにいる死にぞこないのG7ハークラー、4名の役立たずが出撃する。』

 

 

続いて呼ばれた名前の順に機体の詳細が送られてくる。

 

 

『貴様らはその下、うちの役立たずに付けられた安いおまけだ!』

 

 

流石の扱いにハークラーが『うちの隊長がすまねえな。』とレイヴンにヒソヒソと謝っていた。

 

 

『レイヴン!おまけである貴様には一昨日空きが出たラッキーナンバー、コールサインG13を貸与する。』

 

 

文字通り13番は死神を意味する数字であり縁起が悪い。

 

 

『G13復唱!』

 

 

レイヴンに復唱を求めるミシガン。

 

電子音からの発言だったので違和感がある。

 

 

『もう一人、アーキバス社のクソ易いおまけ!!』

「?」

『貴様の所属先のコールサインは?』

「まだ、ない。」

 

 

フェアリーの話し方に呆気を取られたミシガン。

 

声から察するにアーキバス社のパイロットがまだ子供である事を理解したらしい。

 

行き場の失った怒りをウォルターへと愚痴を漏らした。

 

 

『……ウォルター、いつから貴様の所は保育園を始めたんだ?』

『アーキバス社から彼女の詳細は余り開示されていない、あれは彼女の素だ。』

『判った、クソ易いおまけのコールサインはうちの見習いの次のGB2(ガンズベイビーツー)だ!いいな!?』

 

 

ミシガンのノリに付いて行けず硬くなるフェアリー。

 

 

『GB2、復唱!』

「…GB2。」

『復唱したな!!では、準備を始めろ!愉快な遠足の始まりだ!!』

 

 

その後、通信は終了。

 

各機、輸送ヘリへの移送が開始。

 

その間、ハークラーがレイヴン達に弁明していた。

 

 

『レイヴン、フェアリーちゃん、悪いな…うちの隊長はいつもあんな感じなんだよ。』

『…』

『うん、ビックリした。』

『人相と口は悪いが悪い人じゃない、そこは判ってくれ。』

『…』

『判った。』

 

 

~ガリア多重ダムへ移送後~

 

 

ミッション先である現地に近い場所でレッドガンのメンバーと合流。

 

同じナンバーであるハークラーはヴォルタとイグアスに嫌味を言われつつも再会を祝した。

 

 

『君がアーキバス社のAC乗り?』

「ん。」

『僕はラーク・ビーク、君は?』

「フェアリー、フェアリー・コール。」

『フェアリーか、今回だけかもしれないけどよろしくね?』

「うん。」

 

 

見習いと紹介されたラークと会話するフェアリー。

 

同い年らしいので波長が合うのか、楽しく話し合っていた。

 

 

『けっ、またガキのお守かよ。』

『イグ兄、言い方ヒデェ!』

『ガキはガキだろ…ピーピー言ってるうちはな?』

『何それヒッドー!差別だ!差別!さーべーつーっ!!』

『ウルセェ!ラーク、テメェは黙ってろ!?』

『ふーんだ!帰ったらイグ兄がベッドの下に隠してるグラビア雑誌を全部燃やしてやる!!』

『テメェ!?それ今言うんじゃねぇ!!』

『ハハッ!一本取られたなイグアス!』

『つか、そんな所に隠すなよ…』

 

 

悪態付くイグアスに突っかかるラーク。

 

何時もの会話らしくヴォルタが爆笑しハークラーが苦笑いしていた。

 

 

『…』

『楽しそう。』

 

 

任務開始前なので静聴するレイヴンとレッドガンの様子を楽しいと感じるフェアリー。

 

 

『この役立たず共!余計な戯言を言う暇があるなら手を動かせ!!』

 

 

レッドガンのやり取りに対して怒声で叫ぶミシガン。

 

 

『これよりベイラムグループ専属AC部隊レッドガンによる作戦行動を開始する!!』

 

 

同時にミシガンの号令が下る。

 

 

『突入しろ!役立たず共っ!!』

 

 

独立傭兵、ベイラム、アーキバスのACチームによる共同戦線が開始された。

 

 

『GBとGB2は上空から敵部隊の移送型砲台を破壊!G4達を援護しろ!!』

『親父、任せてよ!』

『ん、分かった。』

 

 

空戦型ACであるラークのフェニックスとフェアリーのティンカーベル。

 

二機の先制攻撃によって砲台は破壊された。

 

 

『まさか独立傭兵にアーキバスのACと共闘する事になるとはな…』

 

 

戦闘の最中、イグアスとヴォルタの愚痴が始まった。

 

 

『野良犬の世話にガキんちょ二人のお守かよ、レッドガンも舐められたもんだぜ。』

『関係ねぇよ、先に俺達で仕留めればいい。』

 

 

無言のままレイヴンが一つ目の発電機を一基破壊するとイグアスより話しかけられた。

 

 

『よう野良犬、お前の様な木っ端は知らねえだろうが…俺達レッドガンは「壁越え」をアサインされている。』

『…』

『この仕事は慣らしだ、終わったら土着どもの要塞を落としにかかるのよ。』

『G5、おまけとの交流に余念がないようだな?』

 

 

レイヴンへのイグアスの嫌味に対してミシガンが横槍を開始。

 

 

『ついでに仲良く刺繍でもして!そのよく回る舌を縫い付けて置けっ!!』

 

 

イグアスの嫌味を余所にレイヴンは発電機の二基目を破壊した。

 

レイヴンの行動に称賛するヴォルタと無言のハークラーだったがミシガンの怒りのとばっちりが落ちた。

 

 

『…』

『やるじゃねえか、ズブの素人って訳でもねえな。』

『G4!一体いつ貴様が素人でなくなった?』

『ヤベ…!?』

『批評家はレッドガンには要らん改めろ!さもなくば荷物を纏めろ!!』

『…(おっかねぇ。』

『黙りこくってるG7!貴様もだ!今回の行動で前回の失態を撤回しろ!!』

 

 

先行したラークとフェアリーも三基目のダムの発電機を破壊し無力化。

 

 

『あーあー、皆に親父の雷が落ちてるし。』

『大変、だね。』

『何時もの事だよ、僕なんかしょっちゅうだもん。』

『そう、なんだ。』

『寧ろ、あれで血圧上がらないのか不思議だし。』

『GB!余計なお世話だ!!』

『ヤバッ!?』

『余所に身内の恥を晒すな!帰ってきたらノルマを追加してやる!有難く思え!!』

『ウェー。』

 

 

同じくとばっちりを受けるラーク。

 

 

『ん、くちはわざわいのもと?』

 

 

そんな周囲の様子にフェアリーはホーキンスに教えて貰ったことわざを呟くのだった。

 

こんな調子であるがガリア多重ダムの襲撃は成功し回収ヘリを待つだけだったが…

 

戦場は常に空気が変わるのだ。

 

 

『くそっ!どこからだ!?』

 

 

ヴォルタのタンク型ACが砲撃を受けて被弾。

 

同時にキャタピラ部分が破損し移動不能となる。

 

 

『伏兵だと!?G7!G4の防御に回れ!!』

『ヴォルタ、今そっちに向かう!』

 

 

ミシガンの指示でシールド持ちのハークラーのACが身動きの取れなくなったヴォルタの援護に回った。

 

 

『親父!あのACだよ!』

『出たのか!?』

『うん、間違いないよ!!』

 

 

ラークは例のACが出現したのをミシガンに報告する。

 

 

『仕方がない!GB、お前が応戦しろ!G5はGBのフォローに回れ!!』

『くそっ!ラーク!外すなよ!!』

『任された!』

『…』

『レイヴン、私も行ってくる。』

『…』

『うん、あの時と同じ…また出た。』

 

 

フェアリーも前回と同じく例のACの気配を感じ取り、ラークの元へ急行する。

 

この状況にウォルターもレイヴンにフォローに入れと伝えた。

 

 

『レイヴン、フェアリーの援護に回れ。』

『…』

 

 

その後、奇襲を仕掛けた謎のACはラークとフェアリーのコンビネーションによって破壊。

 

しかし、奇襲を受けたヴォルタの機体と防御に回ったハークラーの機体が損傷。

 

壁越えをする前に大きな痛手を負ったレッドガン。

 

破壊した例のACの残骸はレッドガンが回収したもののそのデータは共有される事となった。

 

任務終了後、回収ヘリでレッドガン部隊と解散し離脱。

 

レイヴンはフェアリーと共に拠点へと帰還した。

 

 

=続=





※ラーク・ビーク(公式には出ません)

16歳でベイラム社のAC部隊レッドガンの見習い隊員。
一人称は僕っ子少女で天真爛漫だが、レッドガンのメンバーと交流する内に口が悪い上に手がすぐ出る癖が付いた。
ミシガンを親父としナンバーズを兄と慕っている。
容姿は白銀のショートヘアに褐色系の肌で胸がデカいのが悩み。
名前の由来は雲雀と嘴。

サンセットカラーの二脚型可変ACフェニックスを使用。
鳥型へと変形機構を持つ。
両腕に専用武装の鉤型のスチールタロンと両肩に追尾型遠隔武装のHeatWingを装備している。
フェアリーの特殊ACティンカーベルと同様に攪乱や空中からの突撃攻撃を得意とする。
エンブレムは丸の枠に水色の羽を広げた鳥のマーク
コールサインはGB(ガンズベイビー)で由来はレッドガンの赤子。

敵対企業に属するフェアリーを何となく気にしている。
出来れば友達になりたいと話しているので分け隔てなく社交的。


※ヴォルタ

レッドガンの所属のタンク型AC乗り、コールサインはG4。
公式設定では多重ダムで共闘したり敵対したりした。
ベイラム社が仕掛けた壁越えを出来ず戦死している。

この話では多重ダムの任務後に強襲を仕掛けた謎のACの攻撃を受けて負傷。
負傷によって予定していた壁越えに参加出来なかった。


※イグアス

レッドガン所属の二脚型AC乗り、コールサインはG5。
公式設定では共闘したレイヴンに敵意を見せており…後に。

この話では口が悪いのが災いしキレたミシガンの命令でラークの面倒を任された。
最近は満更でもないらしくラークの面倒を見ている。
日々、口喧嘩が多いもののラークからはイグ兄と慕われている。

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