今回はレイヴンによるウォッチポイント襲撃開始より少し遡る。
レッドガン部隊によって拠点を手に入れたベイラム社。
だが、デリーターACの襲撃により収容所として使用していた拠点を失う事となった。
戦闘後、本隊は進駐を一時中断し収容所跡地から使用可能な物資を運び出しを行っている。
拠点として使用していた施設だが、デリーターACの再襲撃も視野に場所替えをする必要があった。
そんなレッドガン部隊の様子から始まる。
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「はぁ、調査?」
「イグアス、真面目に話を聞けっ!!」
ミシガンの命令で破棄予定の収容所の一室に呼び出されたイグアスとラークの二人。
二人に別の指示を出すミシガンだったが…
任務内容を聞いたG5ことイグアスの悪態付いた様子に怒号と拳骨で応対するミシガン。
見事な一撃が脳天に直撃し反動から少し震えるイグアス。
日頃の行いで殴られる回数が多い分…耐性はあるのものの痛いものは痛い。
横目でミシガンの拳骨を痛そうと見ながら、自分が呼ばれた理由を聞くラーク。
「ねえ、親父…イグ兄は判るけど、何で僕まで?」
「そいつは調査する場所に関係する。」
ラークの質問に対してミシガンは答える。
ミシガン座るデスクの前に表示された地図。
「お前ら二名の役立たずが行く場所はここだ。」
ミシガンは地図に映し出されたある地域にポインターで印を付けて伝える。
同時に現在地から目的の場所まで距離がある事を示していた。
ラークは地図に記載された目的地の名称を読む。
「ウォッチポイント?」
「ラークはまだ知らなかったな?地中に眠ってるコーラルの流れ…そいつの開け閉めをするバルブが設置された施設の事だ。」
「って事は水道管の元栓みたいな?」
ラークの子供っぽい答えに対して、ミシガンも一応は意味を理解していると捉えて説教はしなかった。
「…似た様なもんだな。」
「総長、調査の前に…ここは惑星封鎖機構が陣取ってる場所だろ?」
「勿論、あの意気地なしの糞な上層部も手を出すのは控えている。」
「て、こたぁ…ここで何かあったって事か?」
「そう言う事だ。」
レッドガンのナンバーズの一人であるイグアスもミシガンの考えを察して答える。
ここで何かが起こると…
「ついさっき、ウォルターの猟犬…G13がここへ向かったらしい。」
「あの野良犬がか!?」
「イグ兄、レイヴンだよ…犬じゃないって。」
言い方は色々であるが、621の通り名であるレイヴンが全然定着しないレッドガン部隊。
「親父、話は戻すけど…僕のフェニックスでイグ兄を?」
「そうだ、イグアスのACならラークのACの上に乗っけても飛行に問題ないだろう?」
「確かに…ヴォル兄達のタンクじゃ重たくて無理があるもんね。」
「生憎、ハークラーとレッドのACは周囲の警戒に当たらせている。」
「他はこの間のデリーター野郎共の襲撃で動けねぇ……俺らに白羽の矢が立った訳か。」
動けるACでの少数調査。
人選に少々問題がありそうだが、二人なら出来るだろうとミシガンが指示を出した。
「任務内容はウォッチポイントの調査、G13が暴れているなら便乗しても構わん。」
「そいつは惑星封鎖機構の連中に眼を付けられてもか?」
「ウォルターの考えならあのポイントに居る奴らは既に消えている。」
「…了解した。ラーク、すぐに出るぞ!」
「任された!」
任務内容を聞き終えたイグアスとラークは部屋を後にした。
一人残されたミシガンはぽつりと答える。
「…ウォッチポイント、何も起こらなきゃいいが仕方がねぇ。」
~同時刻・防衛拠点の「壁」にて~
同じ頃、ヴェスパー部隊内でも同様の任務が下されていた。
場所は防衛地点の施設内の一室。
第二隊長のスネイルに同じナンバーズのラスティとフェアリーが呼び出されていた。
「スネイル隊長、我々二人でウォッチポイントへ?」
「その通りです。」
レッドガン部隊がレイヴンの行動を監視していた様にヴェスパー部隊もまた監視をおこなっていた。
理由の一つとしてフェアリーの情報を持っている事とデリーターAC対策の武装を所持している為だ。
「第三隊長…オキーフからの情報通り、レイヴンはウォッチポイントで惑星封鎖機構の監視部隊と交戦中との事です。」
「我々もそれに加われと?」
「出来れば、監視部隊の殲滅後が正しいです。」
前回と同様にレイヴンに露払いをさせる腹積もりのスネイル。
そしてレイヴンがウォッチポイントに潜入し、何をするのか調査する事が今回の任務内容。
スネイルも惑星封鎖機構の監視部隊が在住する施設への潜入を一度は諦めたが…
レイヴンが向かっている事を知るや否や作戦の立案に踏み切ったのである。
「ヴェスパー4、レイヴンは、どうしてここに?」
「そうだな、ウォッチポイントはコーラルの流動管理と監視を行う施設…フェアリーが気にする様に何かあったとしか言えない。」
「レイヴンが、何かを、見つけた?」
「その可能性も否定出来ない。」
こちらも距離の関係と道中が惑星封鎖機構の監視衛星の巡回エリアになっている。
輸送ヘリでの移動は格好の餌食となってしまう。
その為、監視衛星の反応が鈍くなるエリアを二機のACで突破する事となった。
巡回エリアを抜けた後、ティンカーベルがスティールヘイズを抱えて目的地まで移動する形となった。
日々の調査でティンカーベルが軽量AC一機を輸送可能なのは実証済み。
現時点でこの任務に対して行動が可能な他のナンバーズは不在。
この為、待機中だったラスティとフェアリーが任務にあたる事となった訳だ。
「では、機体の準備が整い次第…出撃なさい。」
「了解。」
「りょ、了解。」
ラスティとフェアリーは敬礼し室内を後にする。
ラスティが先に出て行った後、フェアリーは立ち止まってスネイルの元に戻って来た。
「ヴェスパー10…何ですか?用がないなら出撃準備を急ぎなさい。」
「スネイル隊長、無理しないで、ください。」
「…」
「上の人が、意地悪で、フロイト、総隊長の分、仕事もしている、から…お疲れ、なので。」
「貴方が気にする事ではありませんよ。」
「嘘、です。目元が、疲れています。」
「…」
「私も、任務、頑張ります。だから、スネイル隊長も、無理、しないで、ください。」
フェアリーは相変わらず不慣れな敬語でスネイルの心配を告げた。
スネイルの座っている執務用のデスクへフェアリーは労いの品を差し出した。
それは自身が支給品として渡されている柑橘風味のジュースが入ったパウチとお菓子。
それらを置くと一礼し去って行った。
「…」
スネイルは視覚補助のサングラスを外すと静かに涙腺を緩ませた。
「後で彼女への労いを考えておきましょう。」
彼だけとなった室内で啜る様な音がしたのは別の話。
=続=