ティンカーベルの子   作:宵月颯

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変異・4

 

独立傭兵スッラと謎のAC二機の襲撃を受けたレイヴン。

 

劣勢に立たされつつあった彼だったが、繋いだ縁が奇跡を呼んだ。

 

レッドガンのイグアスとラーク、ヴェスパーのラスティとフェアリーの救援である。

 

双方共に先行したレイヴンが殲滅し露払いの終えたウォッチポイントの調査。

 

当然の如く鉢合わせと一触即発の状況に陥ったが…

 

ラークとフェアリーの説得で一時停戦した。

 

結果、レイヴンの危機を救う形となったのである。

 

 

******

 

 

レイヴンがスッラとの戦闘を開始。

 

 

『…やれレイヴン、さもなくばお前が死ぬ事になる。』

『619と620はどうした?死んだか?』

 

 

ミサイル兵装による弾幕を張りつつ距離をとって交戦するレイヴン。

 

スッラとの通信でウォルターの元へ集った番号持ちの強化人間達。

 

その多くはスッラの手によって葬られていた。

 

 

『私が殺ったのは何番だったか…』

 

 

声質で煽っているのが伺える。

 

 

『奴の言葉にかまうな、戦いに集中しろ。』

 

 

ウォルターも冷静に言葉を掛けるが、レイヴンには理解出来た。

 

ウォルターの中の静かな怒りがスッラに向けられている事を…

 

 

『第四世代は違うな、上手く育てれば優れた猟犬になる。』

『…』

『不憫な事だ、ここで死んでしまうとは…』

 

 

勝手に死ぬ事を前提にされては困る。

 

俺は勝って生きる。

 

ウォルターに与えて貰った生きる意味の為に。

 

 

『!?』

 

 

レイヴンは弾薬を撃ち尽くした武装を切り離し近接戦闘へと移行、スッラのACを切り裂いた。

 

一方、レイヴン対スッラとの戦いが続く中…

 

ラスティは自身らの開戦前に重量型AC乗りに質問した。

 

 

『まず、聞かせて貰いたい事がある…!』

『何?まさか命乞い?』

『何故、お前達はフェアリー達の名を知っている?』

 

 

ラスティの言葉は最もだ。

 

こちら側は誰も名乗っていない。

 

何故、こちら側の情報を知っているのか…

 

パズルの枠にピースが少しずつ埋まって行くのが判る。

 

 

『それねぇ~彼女達は僕らの計画に邪魔なんだよね。』

『無論、手中に収める事が出来るのなら別だが…手に入らぬのなら始末する事も命令されている。』

 

 

謎のACの二人組は答えた。

 

フェアリーとラークは彼らの計画に邪魔な存在。

 

また、手駒として手に入れられるのなら連れ去るのも視野に入れていたと語った。

 

 

『まさか…!一連のデリーターACによる襲撃はお前達の仕業か!?』

『ピンポン!ピンポン!大正解~っ!』

 

 

クラッカーでも鳴らすような勢いで答える重量型AC乗り。

 

 

『貴方達が、皆を、苦しめた!』

『ふざけんな!よくも僕らの家族をっ!!』

『そうだよ、勿論…これから可愛いフェアりんと元気っ娘ラークりんを僕らのお遊びでいっぱい痛めつけてあげるよ?』

 

 

部隊を襲撃した相手が判明した事で怒りを露わにするフェアリーとラーク。

 

煽る様な喋り方で挑発し終えると重量型AC乗りは砲撃装備の装填を始めた。

 

 

『あのイカレ野郎共が…舐めた真似しやがってっ!!』

『それには同意する、此方としても捨て置く訳にはいかない!』

 

 

所属部隊同士のペアで行動を開始。

 

だが…デリーターACを使役する上位種である以上、あの機能が二機のACにも施されていた。

 

 

『くそっ!例のバリアか!?』

『イグ兄、黒いのには僕が攻撃するよ!』

『外すなよ!』

『フェアリー、奴の砲撃は此方で攪乱する…落ち着いて狙うんだ。』

『うん!』

 

 

攻撃をラークとフェアリーに任せ、援護に回ったイグアスとラスティだったが…

 

二機のACもエース級の腕前を持ち、徐々に劣勢に追い込まれていった。

 

 

『くそっ!援護するにも弾薬が足らねえ!』

『此方もそろそろ…』

 

 

援護するにしても弾薬とENは有限。

 

延々と続く訳ではない。

 

ウォッチポイントまでの移動の過程で所持出来る弾倉が制限されていた。

 

後は近接武装が頼みの綱だが、薄っぺらい紙で鉄の板を斬る様なモノである。

 

 

『どうしよう、ラスティ、お兄ちゃんと、ラークの、お兄ちゃんが…』

『フェアリー、頼みがある。』

 

 

苦戦を強いられるラスティ達の様子にウォルターはデリーターAC対策用の兵装シェルパを手配した事をフェアリーに告げた。

 

 

『破壊防止を兼ねて距離を置き、設置する。』

 

 

ウォルターは輸送ヘリに保管しておいたDソードブレイカー二基が納入された兵装シェルパを最奥施設に繋がる前門の防衛地点へ移動させた。

 

 

『フェアリー、奴らに対する試作武装だ。彼らに届けてくれ。』

『うん、分かった。』

 

 

イグアスとラスティに武装を届ける為にフェアリーは戦場を一時離脱。

 

補給シェルパへと移動した。

 

 

『お兄ちゃん、行ってくる!』

『頼んだぞ!』

『あれ~フェアりん、どこ行っちゃうの?』

『フェアリーが戻るまで、時間を稼ぐ!』

『糞真面目なナイト様の相手ってのも…つまらないんだよ!?』

 

 

ラスティのスティールヘイズへ重量型ACの砲撃とミサイル兵装による弾幕が続く。

 

重武装だが、砲撃兵装の発熱部分を瞬時に冷却する装置によって装填時間が速い。

 

今は避けるので手一杯である。

 

 

『ラーク、あんまり近づきすぎんなよ?』

『判ってる!』

『ふん、いくら武装が強くともパイロットが未熟ではな?』

 

 

同じく高機動型ACと交戦するイグアスとラークの通信。

 

接近しすぎれば、インファイターの様な素早い近接攻撃の餌食となる。

 

イグアスのは兎も角、ラークのACは空中からの突撃攻撃の際に離脱の一瞬…隙が生まれる。

 

今までの敵対勢力に空戦型ACがいなかった事もあって、その手の実戦経験が少ない。

 

彼女もまた経験不足である事は間違いない。

 

だが、希望を携えた妖精の救援によって窮地は一転する。

 

 

『ラークの、お兄ちゃん、これ!』

 

 

距離を開けてイグアスのACに例の武装を投げ渡すフェアリー。

 

 

『反撃と行くか…!飛べ、ラーク!』

『うん!』

 

 

イグアスは変形したラークのACに飛び乗り空中戦へと移行。

 

高機動型ACとの短期決戦に挑んだ。

 

 

『同じ手は通用…?!』

『つっかまえた!』

『ラーク、そのまま抑えてろっ!!』

 

 

ラークは高機動型ACに接近し専用武装で捕縛。

 

イグアスはラークの飛行中に更に上昇し落下と同時に高機動型ACへ切り込みを掛けた。

 

 

『ラーク、今だ!』

『イグ兄、いっけぇえええ!!』

 

 

ラークは合図と同時に至近距離で高機動型ACに攻撃を加えてから離脱。

 

一時的な行動不能になった所をイグアスは狙ったのである。

 

 

『ラスティ、お兄ちゃん!』

『フェアリー、決めるぞ!』

 

 

互いのACに届けられた希望。

 

Dソードブレイカーによって、二機のACの装甲がバリアごと切断。

 

それは冷却装置の破損とメインブースターの破損を招いた。

 

 

『対応出来る武装があれば…!』

『俺達はっ!やられねぇんだよ!』

 

 

決着は同時に決められた。

 

彼らもまたナンバーズとして番号を与えらえた存在。

 

 

『うっそぉ!?』

『私とした事が…!』

 

 

彼らの生きる本能が勝った事を二機のACは侮っていた。

 

機体の破損で戦闘継続が不能となった以上は撤退するしかない。

 

 

『スッラ、私達の見込み違いか……所詮、主を失い…野に放たれた、哀れな犬か。』

 

 

高機動型ACはレイヴンによってスッラのACが破壊された事を確認すると重量型ACに告げた。

 

 

『時間だ、戻るぞ。』

『もうちょっと遊びたかったな、ま…しょうがないか。』

 

 

二機は頃合いと見てイグアス達のACから距離を置く。

 

そして彼らは名乗った。

 

 

『名乗っていなかったな、私はタロット13…ACの名はデスサイズ。』

『僕はタロット12、このACの名前はハングドマン、今後ともよろしくね~』

『我らはアルカナ…いずれ貴様達へ正式な挨拶に参ろう。』

 

 

イグアスとラークのペアとラスティとフェアリーのペアの奮闘により撤退する二人のAC乗り。

 

タロット13とタロット12と名乗った二人は光学迷彩を使用し撤退して行った。

 

 

『あのイカレと死神野郎が、次こそはぶっ潰す…!』

『…無論だ、奴らを放置する訳にはいかない。』

 

 

イグアスの苛立ちとラスティの静かな怒りの言葉。

 

デリーターACを使役する組織アルカナ。

 

いずれは奴らと相対する事になるだろう。

 

そこに所属企業の意志云々は関係ない。

 

 

『でも、アイツら…どうして僕達を?』

『分からない、でも、何か知っている?』

 

 

今回の一件で奴らの目的にフェアリーとラークの拉致若しくは殺害が仄めかされた。

 

二人とそのACが奴らの計画を阻害する何かを秘めている事も発覚した。

 

情報が少ない以上、これ以上の詮索は出来なかった。

 

あのアルカナが今後も此方に接敵してくる事以外は…

 

 

『レッドガンとヴェスパー、双方には感謝する。』

 

 

四機はスッラとの戦闘を終えたレイヴンと合流。

 

ウォルターは偶然ではないと思われる救援に感謝の言葉を送った。

 

 

『勘違いすんなよ、俺らはたまたま通りかかっただけだ。』

『我々も調査任務中のトラブルだったので。』

『…そう言う事にしておこう。』

 

 

ウォルターもベイラムとアーキバスが監視している事は薄々気づいていた。

 

状況によっては逆に利用する事も視野に放置していたのである。

 

利用されるのなら利用するのも一つの手立てでもあり、職業柄か身に沁みついてしまった。

 

結果的に今回は危機的状況を脱した。

 

 

『ハンドラー・ウォルター、これからどうされる?』

『此方は依頼を続行する。大方…ミシガンや第二隊長殿にでも様子を見てこいとでも言われたのだろう?』

『…(総長、あっさりバレてるぜ?』

『…(流石、猟犬を飼い慣らす人だ。』

 

 

双方の部隊長らの思惑を看破したウォルターの発言。

 

これにはイグアスとラスティも無言で返答した。

 

 

『此方の目的はセンシングバルブの破壊……その理由はこれを見てからにして貰う。』

 

 

ウォルターはイグアスとラスティのACにある観測データの情報を送った。

 

 

『おいおい、マジかよ…!?』

『これでは…!?』

 

 

驚愕した二人の様子に対してラークとフェアリーが反応する。

 

 

『イグ兄、どうしたの?』

『?』

 

 

イグアスとラスティに渡された観測データ。

 

これによると現在地のウォッチポイント内にあるセンシングバルブの破壊を遂行しなければ…

 

小規模であるが、コーラルの局地爆発でべリウス全域が地図上から消失すると言う調査内容であった。

 

更に爆発の範囲にはレッドガン本隊が居る収容所の拠点とヴェスパー部隊が居る防衛拠点の壁までもが被害予測領域に含まれていたのである。

 

 

『野良犬、癪だが…この後も付き合うぜ。』

『私もだ、戦友。』

『放って置いたら親父達が危ない!』

『うん、ヴェスパーの皆を、守る!』

 

 

帰る場所でもある部隊を失う訳にはいかない。

 

四人の決断は早かった。

 

ウォルターの計らいで二基目と三基目の補給シェルパを手配して貰い、補給を済ませた五名はACを移動させウォッチポイントの最奥部の施設内へと向かった。

 

道中は一本道。

 

一行はセンシングバルブを目視すると各自バルブを破壊。

 

バルブによって地脈に押し留められてた暴発寸前のコーラルは元の流れに戻る筈だっだ…

 

 

『いかん!?』

 

 

だが、時既に遅し。

 

ウォッチポイントのバルブからコーラルが漏れ出し爆発を招いた。

 

その後、コーラル爆発の影響で五機との通信は途絶。

 

消息不明となった。

 

 

 

~ウォッチポイント・コーラル爆発後~

 

 

爆発の影響で意識を失った一行。

 

その爆発の後に聞こえて来た声。

 

 

『貴方達は…』

 

 

第四世代、旧型の強化人間…

 

第八世代、新型の強化人間…

 

それに…

 

 

『貴方達には私の『交信』が届いているのですね。』

 

 

アイビスの色、コーラルの色、命の光とも言える場所。

 

彼女の問いに対してレイヴンが代表で答える。

 

 

『私はルビコニアンのエア…目覚めてください。』

 

 

エアは答える。

 

 

『貴方達の自己意識がコーラルの流れに散逸する、その前に…』

 

 

目覚めを促す忠告と告げた。

 

 

『!?』

 

 

赤い光が空間に張り巡らされると意識は現実へと戻された。

 

 

=続=

 





※Dソードブレイカー(左腕装備)

対デリーターAC用の試作型兵装。
特定の波形パターンを持つバリアに貫通出来る対レーザーブレード。
デリーターACのバリア装甲を破壊する事が目的。
装填式のカードリッジ一回分でチャージ攻撃が可能。
但し、耐久性の問題でチャージ攻撃は5回までとなっている。
その後は威力は弱まるもののパルスブレード代わりとして使用可能。
ウォルターがシンダー・カーラへ設計図を送り、製造を頼んだ。

現時点で3機分しかなく、一つ目はレイヴンは装備中。

残りの二つはウォルターの采配で送った一基目の兵装シェルパで現場近くに輸送。
その後、ウォルターの頼みでフェアリーが受け取りラスティとイグアスに送り届けて使用した。


※スッラ

独立傭兵スッラ、第一世代型の強化人間で番号はC1-246。
謎のAC乗りらの所属する組織への勧誘を受けていた。
その試験としてウォッチポイントへ訪れたレイヴンと決闘する。
敗退後は謎のAC乗りらに不合格の烙印を押されて放逐された。
機体は損傷し行動不能となったが…?



次回、バルテウス戦。
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