前回のコーラル爆発によって消息不明となった五機。
各機のオートパイロットシステムか作動し施設外へ緊急退避された。
全員の無事を喜ぶ暇もなく…
新たな機影が接近していた。
******
『各機、敵性機体の接近を確認しました。』
この声は先程のエアと名乗った女性からの交信。
『貴方達の脳波と同期し「交信」でサポートします。』
彼女は答える。
『各機、メインシステム、戦闘モードを再起動。』
戦う準備は整った。
接近する機影に対して各機が迎撃態勢へと移った。
『ひゃー!イグ兄、何かデカいの来たよ!?』
『クソが!ミサイルコンテナと火器類を大量に積載すりゃいいってもんじゃねぇぞ!』
『ラークとフェアリーは引き続きミサイル兵装の破壊を!』
『判った。』
エアの正体を聞く前に目処前の敵を片付ける事に決めた四機。
『各機、コーラルの影響で外部との通信回線が一時的に切断されました。』
通信障害で救援を呼べない状況。
引き続き、五機で敵性機体の相手をしなければならない。
『貴方達は致死量に近いコーラルを浴びた直後、今は戦う事だけに集中してください。』
同時にコーラル爆発の影響で人体に影響が出ている可能性がある。
エアは彼らのサポートを続けた。
『各機、敵性機体の詳細が分かりました。』
名をバルテウス。
ルビコン技研の手によって生み出されたC兵器と呼ばれる機体。
無人機であるが、何者かが差し向けた事だけは理解出来た。
『ダメージを与えるには、バルテウスが展開しているパルスアーマーを解除する必要があります。』
『…』
『ちっ、こっちの所持武装だけじゃ少しきついな。』
『確かに、戦友は?』
『…』
『ねぇ、どっかにパルスガンか何か転がってないの!?』
『馬鹿か!見当違いな事言ってんじゃねぇ!!』
『待って、心当り、ある!』
バルテウスの弾幕と火炎放射器から繰り出される切断攻撃を避けつつ応戦する五機。
しかし、エアの言う通り…
奴のパルスアーマーを外さなければダメージを与える事は出来ない。
応戦中でも会話が続き、ラークの言う通りパルスアーマーを阻害するパルスガンがないか尋ねるものの…
イグアスによって一喝された。
だが、フェアリーが思い出した事を話す。
『レイヴンと、戦ってたACが、持ってた、無事なら、使える。』
『野良犬、どうなんだ!?』
『…』
『マジ!?まさかの奇跡だよ!』
『フェアリー、私達が援護する…パルスガンを持ってきてくれ!』
『うん!』
スッラのACがパルスガンを装備していた事を思い出したフェアリー。
イグアスは武装の有無をレイヴンに問うと無事であると答える。
ラークは奇跡に感謝の声を上げ、ラスティは急ぎフェアリーに指示を出す。
フェアリーのACは一時離脱し撃墜されたスッラのACの元へ急いだ。
~撃墜されたスッラのACが残る場所~
一時離脱に成功したフェアリーはレイヴンに渡されたスッラのACの反応を辿って捜索する。
言葉通りなら戦闘中に近接武器で腕ごとを斬り飛ばしているので無事であるはずだと…
『フェアリー、目的の武装は足元です。』
『うん、あった!』
エアのサポートでフェアリーはウォッチポイントを繋ぐ橋の部分に引っかかったパルスガンを発見。
急ぎ、回収し戻ろうとするが…
「まて。」
『えっ?』
フェアリーを呼び止めたのは先程までレイヴンと交戦していたスッラだった。
どうやら破損したコアブロックから這い出して来たらしい。
第一世代型強化人間である彼は…
“第一世代型は…その成功率の低さと非人道的行為で生き残りは少なく、中には人ですらなくなった者も存在したそうです。”
フェアリーは以前ホーキンスから聞いた第一世代型の末路を思い出していた。
スッラの身体はほぼ全身が機械化され人であった部分は顔以外ないらしい。
それらを物語る様に彼の対Gスーツから破損した機械部分が所々から見えている。
更に顔を隠すバイザーも破損し、目元が確認出来る程だ。
『貴方は?』
「お前も奴らに狙われているのだろう、これを託す。」
声帯も機械化されており、ノイズ混じりのスッラの声が響いた。
通信が遮断されているのでエアが補助してくれている様だ。
スッラがフェアリーのACにある情報を送り託した。
『これって?』
「いずれ、必要に…なるだろう、俺もまた…奴らの駒に、過ぎなかった。」
『…貴方の、名前は?』
「…スッラだ。」
『スッラ、ありがとう。』
フェアリーはスッラに礼を告げると、急ぎ戦場へと戻って行った。
「レイヴン、いや621……こ、れで何回、目だ?」
スッラは意味不明な言葉を呟くと機能を停止した。
それは戦う事を強いられた彼にとっての永遠の眠りでもあった。
~バルテウス・交戦場所~
フェアリーはスッラとの会話を終えるとパルスガンを所持して戦場へ戻って来た。
『ラスティ、お兄ちゃん!』
『フェアリー、パルスガンは!』
『大丈夫、壊れて、ない。』
『判った、フェアリーはそのままパルスガンでバルテウスのパルスアーマーを引き剥がしてくれ!』
『うん!』
ラスティの指示でフェアリーは相手の攻撃の合間にパルスガンでバルテウスのパルスアーマーを解除していく。
『レイヴン、G5、ラーク、フェアリーがパルスアーマーを解除する!その隙に!』
『…!』
『ラーク!ありったけの弾薬を叩き込めっ!!』
『任された!!』
フェアリーによるバルテウスのパルスアーマー解除と同時に攻撃を叩き込む四機。
巨体故に回避用の補助ブースターを先に破壊された事で劣勢に追い込まれて行った。
苦し紛れの攻撃も彼らに通用せず、機能停止へと追い込んだ。
『…敵機システムダウン、完全停止です。』
爆発四散し沈黙したバルテウスの残骸と先程のコーラル爆発で所々に火災が発生するウォッチポイントの施設。
『レイヴン、皆さん、貴方達には休息が必要です。』
エアからの労いの言葉。
『それから…』
エアが言いかけた直後、赤い光が上空を覆った。
『貴方達が巻き込まれたコーラルの逆流、あれは…予兆に過ぎません。』
そして赤く染まった空と同時に発生した吹き荒れる強風。
『ルビコンを焼き払う、この炎と嵐の…』
新たな波乱の幕開けにも似た…血の色の輝きが目処前の世界を覆っていた。
~レイヴンの拠点へ帰還~
機体の損傷もあり本隊との合流が困難となったレイヴンを除いた四人。
ウォルターの計らいで、彼らの拠点に滞在させて貰う事となった。
拠点の一室に集まったレイヴンら五人とウォルター。
ウォルターは事情を聞くのと同時にある映像を見せた。
「これはある友人から提供された観測映像だ。」
ウォルターは観測映像と照らし合わせて説明した。
逆流から引き起こされたコーラルの局所爆発、その拡散には一定の指向性がある。
向かう先は、アーレア海を越え対岸に位置する「中央氷原」。
コーラルには、鳥や魚の群知能にも似た…集まろうとする特性がある。
「判るか?」
中央氷原の何処かに大量のコーラルが眠っている事を示していた。
更にウォルターは彼らに起こった出来事を改めて聞き返した。
「この場の全員が頭の中で妙な声が聞こえる、と言う事だったな?」
その手の症状は旧世代型の強化人間にはよくある事だが…
新世代型の強化人間と試験管ベイビーにも幻聴が聞こえると言うのは不自然だ。
全員が声の主である『エア』の名前を告げている。
コーラルの爆発に巻き込まれた影響がその場に居た全員に干渉したとしか…
情報が少ない以上は下手に騒ぎにしない方が良いだろう。
最悪、頭がイカレたと捉えられても可笑しくない。
「今は各自で休んで置くといい、レッドガンとヴェスパーには私から連絡して置く。」
ウォルターが労いの言葉を掛けると室内を後にした。
その直後である。
『レイヴン、皆さん…』
そう、エアの声である。
『今回のコーラル局所爆発でべリウス地方、北西ベイエリアが消失しています。』
ウォッチポイントのセンシングバルブを破壊したお陰で被害は最小限に留められた。
もしも破壊するタイミングがズレていたら…と冷や汗ものである。
エアが交信でその場所の経過映像を脳波で伝えてくれた事は感謝すべきだろう。
『…ですが、それすらも。』
かつての『アイビスの火』とは比較にならないほど小規模なものであるとエアは答える。
『貴方達にお願いがあります。』
エアの頼み、それは…
『集積コーラルに到達するまで、貴方達と交信を続けさせて欲しいのです。』
その言葉はエアの決意の証でもあった。
『コーラルを巡る戦いが何処に向かうのか、私は見届けなければならない。』
一人のルビコニアンとして…
エアはそれを伝えると交信を解除した。
交信が終わるとラスティは再確認の為に全員に確認を取った。
「俄かに信じがたいが…皆にもエアと言う女性の声は聞こえているのだな?」
「ばっちし!」
「うん。」
「何が悲しくて、このオカルトじみたネタに振り回されなきゃならねぇんだ…」
「レイヴン、君はどうする?」
「…」
レイヴンは電子端末を起動させ自身の意思をその場の全員に告げた。
「エアと行動を共にする…か。コーラルの一件もそうだが、例のアルカナの事も気になる。」
「ウォルターのじーちゃんが親父達と話してくれるって言ってたけど…」
「心配。」
「おい、ヴェスパー4…聞きたい事がある。」
「G5、何かな?」
「そのフェアリーってのは何モンだ?」
「では、此方も同じ事を聞く…ラークとはどこで知り合った?」
「こっちが質問してんだよ。」
イグアスとラスティの質問はまだ知るには、酷な真実でもあった。
「大方、テメェらがルビコン3入りする前に調査していたあの幽霊戦艦の中だろう?」
「では、彼女も?」
フェアリーとラークは同じ航行艦から発見されたと言う事実。
「だとすりゃ辻褄が合うんだよ。」
「確かに。」
アルカナが危険視するACを所持するフェアリーとラーク。
奴らの望みを叶える事もあれば邪魔となる対象。
「ねぇ、イグ兄…それって。」
「ラスティ、お兄ちゃん、どういう事?」
当事者である彼女達も困惑している。
謎の組織アルカナが動き出した以上は真実を知るべきだろう。
「ふーん、そっか。」
「やけにあっさりだな?」
「別に…それに過ぎた事でしょ?」
「フェアリー、済まない。」
「ううん、話してくれて、ありがとう。」
イグアスとラスティが語ったのは…
ルビコン3に入る前にフェアリーとラークが発見された謎の航行艦での出来事である。
真実を知っても二人が動揺する事はなかった。
「僕にとってレッドガンの皆が僕の家族だもん、間違ってないでしょ?」
「私も、ヴェスパーの皆が、大事な家族、だから。」
所属先の部隊の仲間達が家族であり親であると二人は告げた。
自分達を生み出した親が居ない以上、今の居場所が大切であると…
「ねぇ、レイヴン…僕お腹すいてきちゃった。」
「私も、お腹すいた。」
「…」
「C型レーションかぁ、ないよりはマシだよね。」
ウォッチポイントでの連戦で疲弊したラークとフェアリーは空腹を訴えた。
レイヴンは備蓄してあるレーションならすぐに出せると電子端末で話した。
ちなみにC型レーションはチキン料理だが、パサパサしていて食べにくいとされている。
「ラーク、余所んちで飯貰えるだけ有難いと思えよ。」
「へーい。」
「フェアリー、C型だと肉料理になるが大丈夫か?」
「うん、苦手だけど頑張って食べる。」
ラークとフェアリーにレッドガンとヴェスパー双方の保護者二名と共にレイヴンはレーションで賑やかな食事会をする事となった。
=続=
※レーション
軍用レーション、現実では国ごとによって様々な料理が封入されている。
一食分に付きカロリーが1000キロ越えしているのもある。
食料の他にレーションを暖める燃料や機材に水を消毒し、ろ過する薬剤も含まれる。
また、種類によっては寒冷地用なども存在している。
国によって付属のお菓子やドリンクの種類などが豊富。
この話でのレーションはワンプレート式のレーション。
メニューのC型はチキン料理をメインとした物。
他にも種類がある。
フェアリーが好んで食べているのはビーガン用の豆加工肉と野菜中心のB&Bレーションである。
次回、保護者会議。