ティンカーベルの子   作:宵月颯

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解読

 

前回の戦闘によるウォッチポイントで引き起こされたコーラル爆発。

 

これによりべリウス地方の北西ベイエリアが消失した。

 

ウォルターが先んじて手に入れた調査データもあり、べリウス地方に点在していた各組織は全滅は免れた。

 

この事からウォルターの話し合いをしたいと言う通信を受けたベイラム社とアーキバス社。

 

双方共に調査に出したチームの件もあり、その後の状況確認も踏まえて承諾する事となった。

 

 

******

 

 

ウォルターの通信を介して…

 

ベイラム社側のミシガンを始めとしたレッドガン部隊のナンバーズ。

 

アーキバス社側のスネイルを始めとしたヴェスパー部隊のナンバーズ。

 

ライバル企業同士の精鋭部隊と独立傭兵と言う形で顔合わせをする奇妙な光景となった。

 

 

『ウォルター、奴らと話し合いをする以上はよっぽど重要な事だろうな?』

「その通りだ。」

『敵対企業同士を揃えてまで貴方が話す理由をお聞かせ願えませんかね?』

「まず、ウォッチポイントで例のデリーターACを嗾けた組織と接触した。」

 

 

ミシガンとスネイルのさっさと説明しろ発言の後…

 

ウォルターは映像通信で戦闘ログを開示する。

 

ウォッチポイントでの戦闘時に遭遇した奴らのACの情報も順に映し出された。

 

それに対して眼の色を変えた双方。

 

 

「組織の名はアルカナ、レイヴン達が交戦したのはタロット12とタロット13と言うAC乗り達だ。」

『こいつらが…!』

『…他に判明した事は?』

 

 

ウォルターは順に説明していく。

 

 

「奴らの勧誘を受けていた独立傭兵スッラが遺した情報を話す。」

 

 

スッラの残した情報。

 

アルカナは22のネームドナンバーズで構成された少数精鋭の組織。

 

だが、その多くは何者かと交戦し死亡。

 

生き残りはその半数以下である。

 

現在動いている者はタロット12とタロット13の二名。

 

更にデリーターACはルビコン技研で開発されたC兵器と呼ばれる兵器の強化版。

 

今後もその発展型が出現する可能性がある。

 

 

「更に双方共に重要な事を話して置く、フェアリーとラークの件だ。」

 

 

奴らの目的達成にはフェアリーとラークのACが障害となるらしい。

 

同時に彼女達の身柄が奴らに狙われている。

 

 

「そこで二機に共通点がないか有無を調査させて貰った。」

 

 

フェアリーとラークのACが同系列の技術によって製造されている件。

 

ベイラム社とアーキバス社に同系列の技術で製造したACが一体ずつ…

 

余りにも不自然すぎた。

 

それを裏付ける様にあの二機のACはフェアリーとラークにしか動かせない。

 

 

「治療の際に二人の血液を調べた結果、ある事が判明した。」

 

 

コーラル爆発を受けても被害がないのは、体内のコーラル数値が普通の強化人間よりも遥かに高いからだろう。

 

更に同じDNAの塩基配列を持っている点から推測して…

 

 

「フェアリーとラークは姉妹の関係…どちらが姉で妹かまでは不明だ。」

 

 

企業のACの情報並びに所属のAC乗りの生体情報を勝手に調べるのは流石に拙い案件である。

 

だが、デリーターACやその上位種であるアルカナと呼ばれる組織が出現した以上。

 

可能な限りの情報を集めなければならない。

 

ウォルターが情報共有と危険喚起を兼ねて、双方を呼び出したのも頷ける。

 

 

「二人が姉妹である事は伝えていない、この件を話すかは双方に委ねる。」

 

 

ウォルターの言葉も最もだ。

 

二人の少女に真実を告げるのは保護者である部隊の面々に任せた方が良いと言う判断。

 

余りにもデリケートで話すタイミングを伺う必要がある。

 

その筈だった…

 

 

ガァン!!

 

 

「イグ兄秘伝のドアぶっ壊し!!いや~結構硬かったね?」

「ラーク、もの壊すは、いけない、事。」

「だって!僕らに黙って内緒話してるのがいけないんじゃん!」

「そう、だけど…」

 

 

ウォルターの居る通信室のドアをラークが蹴り破ったのである。

 

ラークの跡を付いてきたフェアリーは物を壊した件で困った表情をしている。

 

 

「何しに来た。」

「ウォルターのじーちゃん、僕らの事を皆で話してたみたいだけど?」

「ごめんなさい、お話、聞いてました。」

 

 

どうやらウォルターの跡を追って先程の話を隠れて聞いていたらしい。

 

 

「言って置くけど、僕とフェアリーが姉妹でも僕の家族はレッドガンだよ!」

「私も、ラークと、姉妹、嬉しい、でも、私の家族は、ヴェスパーの皆。」

 

 

本来であるなら姉妹を一緒にして置くべきだが、二人は自分の居場所を決めていた。

 

これから互いに敵対し戦い合う事があるかもしれなくても…

 

 

『このクソ餓鬼が…』

『…』

 

 

双方、他のナンバーズは指示があるまで静聴してはいたものの…

 

レッドガン側は「うちの子ええ子や。」状態で暑苦しく号泣。

 

ヴェスパー側も「良い子に育ったな。」状態で涙腺崩壊。

 

お涙頂戴状態が続いていた。

 

 

『貴様ら!気持ちは解らんでもないが、さっさとその汚い顔面を拭き上げろっ!!』

『此方もですよ、そもそもフェアリーはアーキバス社との契約継続中です。』

 

 

と、言っているミシガンとスネイルも涙腺がそろそろ限界になりそうな状態を堪えていた。

 

 

「そうだ、ウォルターのじーちゃん。」

「まだ何かあるのか?」

 

 

通信室のドアを破壊され、話し合いが色んな意味で修羅場を迎えた。

 

この状況に頭を抱えるウォルターはラークの質問に返した。

 

 

「前に中央氷原にコーラルがあるって言ってたでしょ?」

「それがどうした?」

「私達、コーラルの、場所が、判る。」

「多分、あのコーラル爆発かな…あれに巻き込まれてからもっと判る様になったっぽい。」

 

 

ラークとフェアリーの爆弾発言によって更なる修羅場へと発展した。

 

ラークらに話の続きを促すウォルター。

 

 

「どういう事だ?」

「ウォッチポイントで、爆発したコーラルが、中央氷原に、向かっている。」

「どうもそれ…ボスがいるっぽいんだよね。」

「ボスだと?」

「コーラルから、声が聞こえる、その中で、強い声に、集まってる。」

「で、その強い声が他のコーラルを集めてボスになろうとしているんだよ。」

 

 

ラークとフェアリーの言葉通りならコーラルは意思を持ったエネルギーと言う事になる。

 

 

「で、そのボスが…ちょっとまずいんだよ。」

「うん。」

 

 

ラークとフェアリーは互いの顔を見て困った表情をした。

 

 

「皆の事を消すって、その声がここからでもビリビリ聞こえるんだ。」

「怯えている、じゃない、怖い、じゃない、私達を、消す声が、聞こえる。」

 

 

つまり、コーラルの中の敵対の意思を持つ者によって狙われ始めている。

 

理由は定かではないが、それは完全な悪意に近いだろう。

 

 

「ラークとフェアリー、地図を出す…中央氷原で反応が強いのは何処だ?」

 

 

ウォルターは端末で中央氷原の地図を出してラーク達に指示を出した。

 

 

「うーん、何て言えばいいかな?」

「そう、だね。」

「判る範囲でいい。」

「ボスに集められたコーラルが芋虫とか蛇みたいにウネウネ移動しているんだよ。」

「うん、中央氷原の中で、ずっと移動して、止まらない。」

「今は中央氷原の北側、そこのコーラルの反応に向かってるよ。」

 

 

ラークは映し出された地図の北部分を指さした。

 

続けてフェアリーが移動中のコーラルの動きを指で描いて説明した。

 

二人が教えた道筋をウォルターがポインターで印を付けて行く。

 

 

「この集合コーラルは別のコーラルの吹き溜まりを目指している、と言う事か?」

「そんな感じ!」

「うん。」

 

 

中央氷原で目指すポイントが定まった。

 

同時にある事が判明してしまう。

 

ラークとフェアリーはコーラル反応を感知するソナーとしての能力に目覚めた点だ。

 

これは企業にとっても手放せない人材になってしまった瞬間でもあった。

 

だが、間が悪い事は続くもの…

 

 

『話の筋を折る様で悪いけど、緊急事態よ。』

『ヴェスパー9、どうしましたか?』

『監視をしていたオキーフの小父様からよ、とうとう惑星封鎖機構の執行部隊が動き出したわ。』

 

 

ヴェスパー側から齎された情報。

 

レッドガン側も監視を行っていた隊員からの情報でG6が真実であると答えた。

 

 

『総長、ヴェスパー側の情報は真実です。向かう先は…』

『…これからアタシ達が向かう中央氷原。奴らは一気に根絶やしにする気ね。』

 

 

惑星封鎖機構は双方の企業部隊から独立傭兵に解放戦線ごと全てを殲滅する。

 

現時点で奴らは艦隊の編成中、先に中央氷原へ移動する必要が出てきた訳である。

 

中央氷原で奴らに対する反抗作戦を展開するのが最も生存率の高い作戦だった。

 

 

『おい、ヴェスパーのお偉いさんよ?』

『何です?レッドガンの総長殿?』

『これなら上層部も拒否しないだろう……一時休戦、狙うは惑星封鎖機構。』

『いいでしょう、この状況では調査続行は不可能ですし。』

『ウォルター!お前の所のG13も手を貸せ!!』

「乗りかかった案件だ、いいだろう。」

『ついでにラークが破壊したドアの修理費を回して置く。』

 

 

この日、ベイラム社とアーキバス社は休戦協定を結んだ。

 

次の目的地はべリウス地方からアーレア海を横断した中央氷原。

 

惑星封鎖機構の狙いを分ける為、ヴェスパー部隊は別ルートから中央氷原へ

 

レッドガン部隊はウォルターからの伝手で大陸横断用の施設の掌握にグリット086にあるドーザーの拠点へ

 

その先行調査の指示を受けたレイヴン、イグアス、ラークにヴェスパー側の援軍でラスティ、フェアリーの5名は仲良くグリット086へ愉快な遠足に向かう事となった。

 

 

=続=




自分で書いてて思うのは元祖893(レッドガン)とインテリ893(ヴェスパー)と新参893(独立傭兵)の会合と言う光景にしか見えない件について…


※ラークが壊したドアの修理費

後日、監督不行き届きと言う事でイグアスの給料から差っ引かれました。



次回、皆で仲良くグリット086へ愉快な遠足へ。

↑アルカナAC戦とバルテウス戦でDソードブレイカーが全基破損した為に開発者のお怒りを受けます。

カーラ「アンタらが試作武装を全部ぶっ壊したんだ……ケジメをつけて貰うよ?」

…スマートなクリーナーと勝負です。


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