ベイラム社とアーキバス社の休戦協定。
これは解放戦線にとって大きな痛手だった。
だが、彼らもまた惑星閉鎖機構に狙われている表立った動きを控えていた。
独立傭兵達は惑星を去る者、それぞれの陣営に協力する者に別れた。
中央氷原に向かうコーラルの流れも不穏な流れを見せていた。
ラークとフェアリーが伝えた悪意の持つコーラルの意思。
それが、何を成そうとしているのか?
まだ誰も知る由が無かった…
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休戦協定が決定した翌日。
ウォルター並びにミシガンとの話し合いの結果を伝える為に…
スネイルは各ナンバーズを招集し今後の方針を定めた。
~防衛拠点・壁~
拠点内の一室に集められたナンバーズ。
引き続き、スネイルが進行役を請け負った。
「昨日、惑星閉鎖機構の強制執行に伴い…ベイラム社とアーキバス社は休戦協定を結びました。」
前回の会合での決定が上層部に通ったらしい。
コーラルを探す過程で惑星閉鎖機構は邪魔な存在。
利害一致で戦える戦力があるのなら越したことはない。
「ですが、全部隊を中央氷原に送る訳にはいきません。」
「スネイル、こちら側に残るナンバーズは決まったのかい?」
ホーキンスの質問に答えるスネイル。
「ええ、メーテルリンクとスウィンバーン…貴方達二人に拠点防衛を続けて貰います。」
「判りました、スネイル隊長。」
「残りは中央氷原へ?」
「いえ…オキーフは引き続き、惑星閉鎖機構の監視を願います。」
「了解した。」
「他は別ルートから中央氷原へ向かいます。」
スネイルが順々にべリウス地方での待機チーム、別ルートから中央氷原に向かうチーム、先行偵察に向かうチーム分けを行った。
「ラスティとフェアリーは独立傭兵レイヴンらと共にグリット086への先行偵察へ向かいなさい。」
「了解。」
「二人はその拠点にある大陸横断用の施設を利用し中央氷原でレッドガン部隊と共にこちらと合流を。」
「了解、しました。」
会議に参加していた総隊長であるフロイトは自分の行動を言う前にスネイルから切り込みを入れられた。
「じゃあ俺は…」
「フロイト、貴方には私にホーキンス、ペイター、ローズネイルと共に中央氷原へ向かう道中の厄介払いをお願いしますね?」
スネイルの眼の下に隈状態の表情にある意味の恐怖を感じ取ったフロイト。
更にローズネイル、ホーキンス、ペイター、フェアリーからも苦言を申された。
「ま、フロイトちゃん…ちょっと遊び過ぎてるし仕事して貰わないと困るものね。」
「スネイルの負担が大きすぎるし、君も実務に加わって貰わないと…」
「そもそも、総隊長だからと言っても許される限度があります。」
「フロイト、パパ、意地悪、スネイル、隊長が、可哀そう、です。」
特にフェアリーの言葉がグッサリと心に突き刺さったらしく、フロイトの心が撃沈した。
「フェアリーちゃん、滅多に怒らないし戦闘馬鹿のフロイトちゃんも真面目に仕事に取り組まないと可愛いフェアリーちゃんに嫌われるわよ?」
ローズネイルの毒々しい毒舌アドバイスもフロイトの心の傷に更なるダメージを与えていた。
「…」
「いい気味です、日頃の行いを改めないからですよ?」
ちゃっかり本音が出ているスネイル。
面倒な事は全てスネイルに押し付けているフロイト。
そのツケを支払う時期が来た様である。
「スネイル、隊長、元気、出ましたか?」
フェアリーの言葉にスネイルは何時もの調子を崩さずに答える。
「アプローチの仕方を変えた結果です、ストレスは良くありませんからね。」
「素直じゃないわね、フェアリーちゃんの言葉を一番喜んでる癖に。」
ローズネイルの言葉通り、スネイルの顔が少し赤くなっていた。
「ラスティ、隊長、私、変な事、言いましたか?」
「大丈夫だよフェアリー、君の優しさは十分伝わったからね。」
スネイルは咳払いをした後、次の本題に入った。
「フェアリー、貴方のAC用の追加武装が完成しました。」
手元の電子端末に写されたのは取り回しの軽いEN系ライフルである。
「ティンカーベルの専用装備、EN系ライフル武装のセイレーンと強化型レーザーブレードのピクシーです。」
現在のティンカーベルの火力不足を補う形で製造されたとの事。
戦いが激化する以上はある程度の火力も必要と判断されたらしい。
「貴方のACのジェネレーターであれば、ある程度は使いこなせるでしょう。」
「は、はい。」
「中央氷原での合流までにレポートを纏めて提出してください。」
「判りました。」
何時も通りの対応と思われたが、今回は違うらしく…
「これから先行調査に出る貴方へのせめてもの選別です。」
「あ、ありがとう、ございます。」
「ラスティ、彼女の護衛を引き続き頼みます。」
「了解しました。」
「彼女とラークは中央氷原のコーラル反応を発見する唯一の手掛かりです。」
スネイルも例のアルカナが襲ってくる事を想定して強化武装の開発を行った。
狙われ始めたフェアリーの自衛もかねて…
こうして少し長めのブリーフィングは終了した。
~べリウス地方・某所~
フェアリーはウォッチポイントの調査後に息を引き取ったスッラを回収。
ウォルターに相談しお墓を造りたいと伝えた。
レイヴンらの協力で見晴らしのいい丘にスッラの遺体を埋葬した。
「スッラ、ここは、スッラの居た場所じゃないけど、綺麗な場所、だから。」
フェアリーはラークと共に造花で作った花輪をスッラを埋葬した場所に備えた。
ルビコン3はアイビスの火による災害の影響で花を付ける動植物の多くが毒物と化している。
その為、造花を供える事を薦められた。
「私達は、アルカナを、絶対に、やっつける、だから、おやすみなさい。」
フェアリーは祈りを捧げた後、その場を後にした。
”お前達なら出来るかもな……行って来い。”
その声は上空を漂うコーラルの流れに乗って静かにかき消えた。
=続=
※セイレーン
チャージが可能なEN系ライフル武装。
ティンカーベルのジェネレーター用に設定されている為、通常のACだと即EN不足で機能不全に陥る。
※ピクシー
強化型レーザーブレード。
通常のブレードモードの他にチャージ攻撃としてレイピアモードがある。
一点集中の刺穿攻撃の為、使うタイミングと取り回しには注意が必要。