…シュナイダーメイドとアーキュバス。
うーん、悩む。
輸送ヘリによってエンゲブレト坑道に到着したレイヴン。
既に惑星封鎖機構の執行部隊が坑道内に入り作業を行っていた。
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表向きはベイラム系列企業の大豊からの依頼。
陽動作戦の為に惑星封鎖機構の注意を引き、近傍拠点の兵力を分散するのが目的。
だが、これにはある策が潜んでいる。
『621、仕事を始めるぞ。』
『…』
『目標はエンゲブレト坑道の最奥にある。』
『…』
『坑道内に入った執行部隊を退け、旧型センシングデバイスを指定された時間に破壊するのが目的だ。』
『…』
『反抗の狼煙を上げる為にも火種に点火させるぞ。』
『…』
輸送ヘリから出撃したレイヴン。
ウォルターから今回の目的を復唱され、確認後に坑道へと潜入した。
『ラーク達の見立てではデバイスの破壊と同時に坑道内のコーラルが逆流を開始する。』
現時点でセンシングデバイスを破壊しても周辺のコーラル支脈の爆発を止める事は出来ない。
『目標を破壊した後は残存する執行部隊を相手するな。真っ先に地上へ逃げろ。』
だが、策とはこれに関連していた。
『レイヴン、目的のデバイスにマーカーを付けました。更に長年放置された事で坑道内は複雑になっています。』
エアの言う通り、長年の放置で手入れの入っていない場所だ。
所々、誤って立ち入れば崩落に巻き込まれるだろう。
『老朽化で崩落している場所もある様です、足場に注意して進みましょう。』
進むべきはセンシングデバイスが設置された下層。
レイヴンは周辺のコーラルを流す大型パイプを伝って下へと下降していった。
『レイヴン、ウォルターの話していた通り…敵は最低限の戦力を配備しているようです。』
エアの説明で下降するに連れて監視している惑星封鎖機構の機体がチラホラ見える様になった。
古びた施設の旧型センシングデバイスを修繕に何をしようとしているのか?
奴らもまたコーラルを監視しているのかもしれない。
『レイヴン、ここからは足場に注意を。』
進むにつれて下が見えない状態の大穴が見えて来た。
レイヴンは足場になりそうな部分を使って移動を続けた。
『奈落の底から膨大なコーラル反応、ラーク達の感じた通り…ここも地中支脈に通じている様です。』
道中で監視を行っている執行部隊のACを破壊しながら進んでいるとレッドガンのG6より連絡が入った。
『G13レイヴンに伝達!惑星封鎖機構の地上部隊がそちらに向かっている。此方の想定よりも動きが早い…!』
どうやら此方の予測よりもあちら側の動きが速かったらしい。
だが、これも好機と言えるだろう…
『作戦はそのまま継続。ミシガン総長より『G13、お前なら出来る!火種を必ず点火させろっ!!』との事だ、以上!』
自分達を信頼し信じているからこその発言であるとレイヴンは悟った。
『相変わらず無茶が過ぎます。』
『…』
『レイヴンが笑うなんて……珍しいですね。』
エアも暑っ苦しいレッドガンのやり方にまだ慣れていない。
彼女の不安に対してレイヴンは笑みを浮かべた。
これにはエアも驚いていた。
『621、通信は届いたな……聞いての通りだ、手早く終わらせて脱出するぞ。』
『…』
ウォルターからの指示も入り、レイヴンは気合を入れ直して坑道の最奥へと向かった。
『あれが破壊目標だ。』
パルスシールドで保護された旧型センシングデバイスを発見する。
『シールドで最低限保護されている様だが、内側から叩けば問題はない。』
レイヴンはシールド内にACを移動させ旧型センシングデバイスを破壊。
『目標の破壊を確認した。621、急いで脱出しろ!』
同時にレイヴンは脱出行動へと移った。
破壊と同時に坑道内の振動が徐々に強くなっていく…
そう、火種に点火した為だ。
『コーラルの逆流が始まった、通信が途切れるがお前はそのまま地上を目指せ。』
コーラルの濃度が急激に上がった事でウォルターとの通信が途切れた。
此処からはエアが地上までの道筋をサポートする。
『レイヴン、坑道内の各所でコーラルの連鎖逆流が始まりました。』
『…』
『ええ、急いで地上に戻りましょう。』
脱出の道中で惑星封鎖機構の地上部隊が入り込んできたが…
時すでに遅しである。
『コード23、現場に到着…何が起きている?』
『これは…!?』
周囲から吹き出るコーラルの奔流に巻き込まれて機体が爆発四散する。
『コード15、潜入したと思われるACを発見…!?』
『こいつが何かやったのか!?』
脱出を最優先しレイヴンは封鎖機構の機体の攻撃を避けつつ地上へと向かう。
『G13レイヴン!無事か!?』
『…』
『GB…ラークから爆発が起こったと聞いた、急いで脱出を……!?』
脱出道中でG6レッドから通信が入るが急激なコーラルの濃度上昇で通信がまた途絶えてしまう。
『レイヴン、ラーク達には私の方から伝えます…急いで脱出してください!!』
予想以上にコーラルの奔流が早まり脱出ルートのにも影響が出始めている。
急がなければACの装甲も持たないだろう。
『…』
『621!そのまま走り抜けろっ!!』
地上へ繋がる通路へ辿り着くと通信が回復。
ウォルターが指示を行った。
同時にブースターを加速させ一気に坑道の外へと脱出した。
『…』
脱出と同時に坑道内はコーラルの奔流によって遮られ、中央氷原の地下に入り巡らされた坑道内の空洞を伝ってコーラルの爆発が続いた。
振動と遠くから聞こえる崩落らしき音。
作戦は成功した様だ。
『何とか間に合ったようだな。』
ウォルターも何処か安堵した声で告げた。
『俺達の仕事は終わりだ、621…戻って休め。』
そこで通信が切れた。
『一歩間違えば、貴方もコーラルに呑み込まれていたでしょう。』
『…』
『ですが、これが反抗の狼煙となる事を願いましょう。』
エアも今回の作戦が必要な事は理解していた。
その為、レイヴンを心配する意思を見せていた。
『レイヴン、貴方の仕事は常に死と隣り合わせです……無理はしないでください。』
エンゲブレト坑道で起こったコーラルの奔流による爆発は中央氷原の各所に多大な影響を与えた。
ある場所では地表が崩落し、ある場所では高濃度のコーラルが噴き出している。
火種は点火された。
後はうっとおしい虫を追い込むだけである。
=続=
次回、ヨルゲン燃料基地&バートラム旧宇宙港。