ティンカーベルの子   作:宵月颯

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彼女は空を舞う。

それは妖精の様に。

軽やかに。

彼女を拒む空は存在しない。


出撃

 

漂流した航行艦の一件から三日が経過した。

 

我々の乗艦する航行艦は辺境惑星ルビコン3へ到達した。

 

惑星封鎖機構の保有する静止衛星レーザーから艦を護衛。

 

惑星へ降下後、先行していた調査師団と合流。

 

企業が保有していた施設の奪還作戦が行われようとしていた。

 

 

******

 

 

アーキバスが保有する航行艦内の会議室。

 

ヴェスパー部隊のナンバーズ達が招集され作戦内容が開示された。

 

ルビコン解放戦線よって補修され拠点と化した施設の奪還が目的。

 

通信妨害を行うと同時に四方からの攪乱強襲と地下搬入路からの内部潜入に別れる。

 

四方からの陽動強襲にはヴェスパー3、5、6、7の部隊が担当。

 

地下搬入路への潜入はヴェスパー4、8、9の部隊が担当となった。

 

ヴェスパー9は昨日まで調査を行っていた調査師団の部隊長。

 

彼の情報を元に敵を殲滅し内部制圧する事になる。

 

 

「で、アタシがルビコンで調査している間にそんな事が起こってたの?」

 

 

ブリーフィングを終えて情報交換を行う中…

 

開口一番に声を上げたのはヴェスパー9ことローズネイル。

 

白人系の金髪に化粧を施しハスキーなボイスで話しているが、れっきとした男性である。

 

 

「ええ、彼女は現在も眠ったままです。」

「ふうん、後で意識を取り戻したらお話してみたいわね?」

「その前に彼女にはいくつか取り調べをしなければなりません。」

 

 

ローズネイルに事の次第を説明したヴェスパー4のラスティとヴェスパー8のペイター。

 

 

「ちょっとペイターちゃん、ちょっと位お話してもいいじゃないの?」

「そうは言っても例の航行艦で何か起こったのか説明して貰わないと…」

「その子、見つかるまで調整槽で眠っていたんでしょ……案外何も知らなかったりして?」

「ローズネイルさん、何故そうだと?」

「ラスティちゃん、オネェ様の感よ、感。」

 

 

年下の部隊長達に対してちゃん付けで話すローズネイル。

 

ヴェスパー6のメーテルリンクは何時もの事で放置しヴェスパー7のスウィンバーンは巻き込まれたくないのか話に参加していない。

 

 

「まあ、彼女の事は任務が終わってからでも遅くはないでしょう。」

 

 

ヴェスパー5のホーキンスの言葉もあり、話は中断。

 

目的の施設奪還の説明に戻って行った。

 

 

「では、先の布陣で行動を開始します。」

 

 

ヴェスパー2のスネイルの締めくくりの後、各自ACへ搭乗する為にハンガーへと向かった。

 

 

 

~数時間後~

 

 

 

陽動部隊の攻撃によりルビコン解放戦線の部隊は混乱し戦場は乱戦状態へと変貌した。

 

一方で地下搬入路から施設内部に侵入する潜入部隊。

 

 

 

「さてと、ラスティちゃん、ペイターちゃん、準備はいい?」

「いつでも。」

「ヴェスパー9、この搬入路に罠が仕掛けられていると情報がありましたが…」

「部下ちゃん達の情報だと、この先から赤外線センサーを利用した対AC用レーザーの巣になってるわ。」

「つまり、ここを掻い潜る必要があると?」

「そ、旧型のレーザー機器を改造したのだから…ある程度は壊して進んで大丈夫よ。」

「了解、ペイター、ローズネイルさん、先に進みます。」

「了解。」

「積極的な男の子は大歓迎よ。」

 

 

施設内部に続く地下搬入路へ侵入した潜入部隊。

 

潜入路の維持を部下達に任せると部隊長である三機は内部へ潜入。

 

施設を牛耳っている解放戦線から派遣されている拠点リーダーの殲滅を行った。

 

 

「あら~あっけないわね?」

 

 

ラスティとペイターのACによる攪乱とローズネイルの火力兵装による制圧によって拠点リーダーACの撃破を確認した。

 

 

「…あっさりし過ぎている。」

「やっぱり?ラスティちゃんも気になる?」

「はい、拠点リーダーと護衛にしては守りが手薄すぎる。」

「となると、奴らの狙いは……ちょっとまずいかもね。」

「どういう事です?」

 

 

ラスティとローズネイルの推測に対して質問するペイター。

 

 

「ペイターちゃん、恐らく奴らの狙いは本社の航行艦よ。」

「まさか!?」

「拠点制圧に乗り出したアタシ達をここに釘付けにして航行艦を狙ったのでしょうね。」

「…ローズネイルさん。」

「ラスティちゃんは地上に出て陽動部隊と合流して頂戴、ここはオネェ様とペイターちゃんで何とかするわ。」

「お願いします。」

「了解。」

 

 

ラスティは二人と別れて地上へ続くエレベーターに移動。

 

地上到達後に陽動を終えた部隊と合流し動きの速いACを中心に部隊を再編成し航行艦の救助に向かった。

 

 

 

~陽動部隊による施設制圧直後~

 

 

 

ローズネイルとラスティの読み通り、解放戦線の別動隊がアーキバスの航行艦を強襲。

 

護衛に付いていた第一と第二部隊が対応するが、拠点制圧に戦力を回したのが裏目に出てしまい戦力差が出来てしまっていた。

 

どうやら解放戦線にとって此方が本命らしい。

 

何処で情報が漏れたか不明だが、ベイラム社辺りが漂流艦の一件で八つ当たりをしたのだろう。

 

 

「総隊長。」

「制圧部隊が戻るまで耐えるしかない。」

 

 

ルビコン3におけるコーラル利権を求めて再調査に乗り出したアーキバス本社。

 

アイビスの火で消失した拠点を再利用する為に航行艦には物資が満載している。

 

新品同様の物資を積載された航行艦は解放戦線にとって格好の獲物だった。

 

ヴェスパー部隊によって防戦一方が続く中…

 

航行艦から一機のACが出撃した。

 

 

「どこの部隊のACだ!?」

「スネイル隊長、出撃したのは例のACです!!」

「何だと!?」

 

 

パッケージされたままで解析途中だった例のAC。

 

そのACが突如動き出し、カタパルトデッキから落下したとの事。

 

だが、例のACは現に空中での行動を可能にしていた。

 

 

「あのACは空戦型だったのか!?」

「誰が乗っている!!」

 

 

ヴェスパー1のフロイトの驚きの声を余所に…

 

スネイルは回線を開き例のACの通信に強制介入する。

 

 

「…」

「あの娘か…!?」

 

 

通信に映ったのは調整槽で眠っていた筈の少女だった。

 

現在は航行艦の医療室に移送されていたのだが、どうやら脱走したらしい。

 

 

「…」

「誰か、あのACを止めろ!?」

「いや、待て!」

 

 

スネイルの命令を静止しフロイトは少女に告げた。

 

 

「君に頼みたい、この船を守って欲しい。」

「このお船?」

 

 

少女の言葉は幼稚でたどたどしい。

 

だが、意味は理解した様で解放戦線の部隊に向かって機体を降下させた。

 

 

「お船、守る。」

 

 

少女は搭乗ACの機動力を利用し解放戦線のAC部隊を攪乱。

 

両肩に装備された兵装で瞬く間に点在していた敵AC部隊を撃破した。

 

 

「妖精?」

 

 

現場に到着したラスティ自身も通信で状況を確認し応戦する中で少女の戦闘を目視した。

 

空を自由に飛び、彼女を止める術もない敵AC部隊は格好の的。

 

元から装備する兵装の相性もあってか、たった一機のACに戦場はかき乱されていた。

 

その後、解放戦線のAC部隊は撤退。

 

ヴェスパー部隊は当初の目的通り、拠点制圧に成功。

 

拠点への着艦準備を始めた。

 

 

 

=続=





※ティンカーベル

空戦並びに宙域対応の二脚型特殊AC。

少女に適応する様に調整されており、彼女以外乗りこなす事が出来ない。

基本兵装、右腕にレーザーガン、左腕にパルスブレード、両肩にVvc-700に酷似したFairyArrowを装備しており空中からの攪乱兼突撃攻撃に優れている。

更に追尾ミサイル系を無力化するフェアリーガストと呼ばれる機構が備わっている。

狭い坑道や洞窟内では動きを制限されると思われたが、高度な姿勢制御装置が備わっており難なく行動が可能。

ルビコン3へ向かうルートに流れ着いた難破船よりパイロットと共に発見された。

フォルムが流麗な為にアーキバス本社の新型と周囲からは思われている。

カラーリングはミントグリーンと戦場に似つかわしくない塗装が施されている。

エンブレムは菱形の枠にマゼンダカラーの蝶のマーク。

ルビコン3におけるアーキバス社の拠点奪還作戦後を期に『告死の妖精』と呼ばれる様になる。

アーキバス社から出向している技術者の話では遥か昔…過去の大戦で製造された空戦型ACを再現したのでは?と推測されているが、それらを立証するデータはなく有耶無耶になっている。


※ヴェスパー9(公式本編には存在しません。)

ヴェスパー部隊のナンバー9。

本社からの指示でルビコン3における拠点奪還の為、調査任務に就いていた。

レッドカラーの両肩ミサイルコンテナ、両腕ガトリング砲装備のタンク型重量ACレッドスローンを使用。

パイロットネームはローズネイル、れっきとした漢のオネェ様である。

エンブレムは紫の薔薇に弾痕が施されている。

AC操作技術は良いものの強化措置の関係で現在の様なオネェな性格に変貌、強化措置を行った研究者達も頭を悩ませる結果となった。

彼の率いる第9部隊の隊員達は別の意味で大体が犠牲となっている。
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