ティンカーベルの子   作:宵月颯

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処遇

 

ルビコン解放戦線から拠点奪還を終えたヴェスパー部隊。

 

本社から輸送した物資を拠点へと移し替え航行艦の帰港を終了。

 

それから更に数日後の事である。

 

 

******

 

 

拠点内部の会議室にて…

 

 

「何も覚えていない?」

 

 

前回の戦闘後、ラスティは例のACごと少女を確保した。

 

特に抵抗はなかったのでそのまま調査を行ったものの…

 

帰って来た答えは我々の求める情報ではなかった。

 

 

「正確には何も知らないが正しい。」

 

 

取り調べを行ったスネイルらの話によると少女はまっさらなメモ帳と同じ状態。

 

戦闘行為が可能なだけのいわば人形状態である。

 

此方の指示をすんなり受けたのも、彼女の中の命令系統がはっきりしていなかった事によるもの。

 

つまり、偶然が重なって我々ヴェスパー部隊に協力したのだ。

 

 

「本社からは何と?」

「コーラルの調査と平行し彼女の経過観察と例のACのデータを収集する事となった。」

 

 

本社も本社で厄介事はこちらに任せる魂胆らしい。

 

本社と遠く離れた辺境惑星で発見した少女と例のACは喉から手が出る位に連中は欲しい筈…

 

だが、実際に少女とACだけを連れ帰る為に帰還艦を出す訳にはいかない。

 

我々がコーラルを手にした後で少女とACを移送する形となるだろう。

 

 

「…」

 

 

取り調べを受けた後、少女はラスティの傍に付いて離れようとしない。

 

彼の人当たりのいい性格が彼女を安心させているのだろう。

 

 

「彼女の名前は?」

「名前はないらしい、彼女の入っていた調整槽の型式番号にはFxC-34と記載されていた。」

 

 

取り調べ中も彼女の名称を確認したが、名前が無いらしく本人も戸惑っていた。

 

スネイルと研究者達の推測では彼女は例のACだけを動かす為の生体パーツ。

 

我々強化人間と何ら変わりはないらしい。

 

 

「名前がないのも不便だな。」

「…」

 

 

ラスティの発言でローズネイルらもそれには同意した。

 

 

「そうね、名前がないのも何だか可哀そうね。」

「フロイト総隊長、彼女に名前を付けて見ても?」

「許可しよう、彼女の件は我々に一任されている。」

 

 

ラスティの横で大人しく座っていた少女の名称をナンバーで考える事となった。

 

一般女性の名称と容姿と雰囲気から白を連想する名前が多く挙げられたがしっくりくるものなく…

 

名前を付けるだけで悩むナンバーであった。

 

この時、ラスティがボソリと呟いた。

 

 

「妖精…フェアリー。」

「!」

 

 

ラスティの呟いた名称に対して少女が反応したのだ。

 

 

「フェアリーの名前が気に入ったのか?」

「ん。」

 

 

少女は静かに頷いた。

 

簡単な受け答えは出来るらしく好き嫌いが解り易かった。

 

 

「では、決まりだな?」

 

 

フロイトも彼女の様子を察して名称が決まった事を告げた。

 

少女の名は形式番号から取ってフェアリー・コールと呼ばれる事が決定した。

 

 

「フェアリーちゃん、これからよろしくね。」

「うん。」

 

 

名前が決まるのと同時に絡んでいくローズネイル。

 

彼に対しても特に難なく接している。

 

ここまでは良かったのだが…

 

彼女の自己認識が乏しいせいか、とんでもない発言をする事となった。

 

 

「何はともあれ、問題が解決して良かったですね。」

 

 

ホーキンスが何事もなく終わった事に安堵して発言したものの…

 

彼の様子を見ていたフェアリーはある事を告げた。

 

 

「フェアリー君、どうしたのかね?」

「…パパ?」

 

 

フェアリーの発言に対して一同、沈黙。

 

 

「えっと、フェアリー君?」

「ちょっとホーキンスの小父様ってば~いつの間にパパになったの?」

「ローズネイル君、私はそんな事を言った覚えは一切ないよ。」

「フェアリー、他の皆は?」

 

 

ラスティ達はフェアリーの名前を決める前に自己紹介を済ませていた。

 

だが、フェアリーの認識は少々違う様子である。

 

フェアリーの発言に対してラスティは質問した。

 

順にフロイト、ホーキンスをパパ。ローズネイルをママ。ラスティ、ペイターをお兄ちゃん。メーテルリンクをお姉ちゃんと呼んでいた。

 

スネイルとヴェスパー3のオキーフ、スウィンバーンに関しては小父さんである。

 

 

「みんな大事、大事な家族、家族は守る。」

 

 

これがフェアリーの意思らしい。

 

スネイルもフェアリーがこちら側に従順に従うのであれば家族の認識を利用するのも得策と考えて特に意見はしなかった。

 

 

「私、いつの間にパパ呼びになったんでしょうね。」

「恐らく雰囲気では…?」

 

 

ホーキンスの空しい発言に対してペイターが静かに答えた。

 

 

「?」

 

 

周囲の戸惑いを余所にフェアリーは静かに首を傾げた。

 

 

=続=





※フェアリー・コール

少女に付けられた名前。
ラスティらが遭遇した時の彼女の姿と形式番号FxC-34のFとCの文字から取られた。
調整槽に入っていた期間が長かったせいか髪は白銀でアルビノと思われる程に白い肌を持つ。
まっさらな状態の強化人間?らしく自己の感情に乏しい。
ヴェスパー部隊の隊員達や周囲の物に見て触れる事で学び知る事を喜んでいる。
時折、誰かの声が聞こえると答えるが第七世代と同じ幻聴の一種では?と診断されている。
ラスティらナンバーを家族としヴェスパー部隊を守る事を教え込まれた。
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