ティンカーベルの子   作:宵月颯

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話し合いと決議案。


語手・5

マナとカーラによって齎された情報。

 

知った以上、離脱の為の退路は塞がれた。

 

出来る事は抗うか大人しく消えるかの二択。

 

ただそれだけだ。

 

 

******

 

 

一通りの話し合いの中でオキーフはある事をマナに尋ねた。

 

 

「マナ、それはオールマインドも関係しているのではないか?」

『…その通りです。』

「傭兵支援を行う組織、正確には封鎖機構を管理するAIが監視していたのであれば…腕の立つ独立傭兵をルビコン3へ呼び寄せる事も可能だ。」

『貴方は何故それを…?』

「俺はアーキバス社に鞍替えする前に奴らの計画に加担されられそうになったからだ。」

『…』

「計画の内容はマナの言葉を照らし合わせて理解した……危うく人間らしさを失う所だった。」

「オキーフさん、その事は後で情報共有を。」

 

 

オキーフの秘匿していた秘密。

 

それを語り出した。

 

同時にオキーフはラスティに告げた。

 

 

「そのつもりだ、それにラスティ…」

「…」

「もう話すべきじゃないのか?」

 

 

今なら穏便に真実を晒す事が出来る。

 

共通の敵が現れた以上は手を取り合う必要が出て来た。

 

なら、分かり合えるはずであると…

 

オキーフは視線でラスティに訴えた。

 

 

「貴方も真実を語る決意をした。私も話さなければならない。」

「…ラスティお兄ちゃん。」

「フェアリー、大丈夫だ。」

「うん。」

 

 

その後、ラスティは自身がシュナイダー社経由で潜り込んだ解放戦線からのスパイであると告げた。

 

だが、解放戦線も一筋縄ではいかず現在は二つの派閥によって対立している状態だった。

 

これが今まで星外企業の進駐を止められなかった原因の一つでもある。

 

一つがコーラルを神聖視するサム・ドルマヤン派。

 

そして武力行使に秀でているミドル・フラットウェル派。

 

ラスティはフラットウェル派より派遣されたスパイだった。

 

ラスティの話によるとべリウス地方での一件でドルマヤンは失踪。

 

フラットウェル派が解放戦線を維持している状態が続いていた。

 

このままアルカナと封鎖機構の圧力が続けば、解放戦線も維持出来ず崩壊の一途を辿るだろう。

 

 

「ラスティ、貴方には此方側とミドルフラットウェル派とのバイパス役を担って貰います。」

「…私はヴェスパー部隊の裏切り者だが?」

「事情はどうであれ、貴方はヴェスパー第四隊長である事は変わりません。」

 

 

ラスティが真実を告げた後、スネイルは改めて彼に答えた。

 

 

「我々はアーキバスから放逐された身、今更…貴方の処遇に関して話す事はありませんので。」

 

 

アルカナと封鎖機構の追撃がある以上、手札は多い方が良い。

 

マナが語ったルビコン3崩壊の危機を防ぐ手立てとして彼らの協力も必要である。

 

今まで敵対してきた者同士である以上、そう易々と事は進まないだろう。

 

その為の措置である。

 

 

「総長殿もそれで構いませんね?」

「穏便に済むなら越した事はない。」

「そう言う訳ですので、今後の活躍に期待します。」

 

 

かつてのスネイルであれば、真っ先に再教育センター送りにしていただろう。

 

巡り巡った今までの行動が彼を変えた。

 

素直ではない発言なのは変わらずであるが…

 

 

「オキーフ、貴方もオールマインドに関する情報の共有も願います。」

「判った。」

 

 

オキーフは封鎖機構を統括するAIことオールマインドに関する情報を提供。

 

全ての傭兵をサポートする名目で実態は優秀な傭兵を監視し手駒にする為の…

 

云わば、品定めの機関であると答えた。

 

更に先のコーラルリリースのトリガーとなる人物を捜索している件も告げられた。

 

 

「選別対象が第一世代から第四世代の強化人間である事は掴めたが、何を基準にしているかまでは不明だ。」

「基準ですか…共通するのはコーラルでは?」

「…恐らくは。」

 

コーラルを利用した強化人間は第一世代から第七世代まで。

 

特に未熟かつ劣悪な施術を行った第一世代から第四世代が基準となっている。

 

それらに共通する何か…

 

 

「フェアリー。」

「うん。」

 

 

今まで黙っていたラークとフェアリーも意を決してある秘密を話す事を決めた。

 

 

「レイヴン、あの事…話してもいいよね?」

「…」

 

 

レイヴンもエアの事であると察して頷いた。

 

スネイルらの話し合いにラーク達は割って入った。

 

 

「その基準、多分エアの事だと思うよ。」

「エア?」

「C型変異波形……ルビコニアンのエアの事。」

『C型変異波形だって!?』

 

 

ラークとフェアリーの言葉に反応するカーラ。

 

カーラの驚き様に対してスネイルが訪ねた。

 

 

「シンダー・カーラ、そのC型変異波形について何か知っているのですか?」

『コーラルの中にある意識、それを示す特殊な波形でそれに関する論文があった位さ。』

「僕達、べリウス地方のウォッチポイントでコーラルの爆発に巻き込まれてからエアの声が聞こえる様になったんだ。」

「私達だけじゃなくてレイヴンもラスティお兄ちゃんもラークのお兄ちゃんにも聞こえてる。」

「ウォルターのじーちゃんはコーラル被曝だっけ?その集団幻覚じゃないかって事で取り合って貰えなかったけどさ。」

「エアは姿は見えないけどちゃんと居る。」

 

 

コーラルの声を聴くコーラルコネクターである二人ならではの発言。

 

だが、立証するには材料が足りなかった。

 

 

「…」

「エア、何処かの端末から話せないか?」

「何時ものお得意のハッキングでよ?」

 

 

レイヴンらもエアと話している以上は嘘ではないらしい。

 

エアは未使用の端末をハッキングし言葉を送った。

 

 

『レイヴン達の言う通りです。』

 

 

ハッキングした端末から聞こえるエアの電子音声。

 

 

『私はルビコニアンのエア、べリウス地方のウォッチポイント…そこで発生したコーラル奔流を期にレイヴン達と交信していました。』

 

 

一部から幽霊と言われたが、実際にエアが存在し話している事は理解して貰えた。

 

 

『ラークとフェアリーの言う通り、オールマインドはC型変異波形と対話を行える強化人間を捜索していると思われます。』

 

 

これまでのオールマインドの行動。

 

ケイトと呼ばれる謎の独立傭兵からの依頼。

 

各地に散らばった謎のACの情報。

 

それらを統合した結果とエアは説明する。

 

 

『皆さんが登録しているアリーナもオールマインドによって監視されている。』

 

 

最も優れた傭兵を選出する為のデータベース。

 

前にラークとフェアリーが興味本位で参加しようとしたアリーナに自身のACを登録出来なかったのも…

 

オールマインドに対する情報流出を防ぐ為だったのだろう。

 

ちなみに登録が出来なかった事もあり、二人は別口でACデータを組み上げて参加している。

 

 

『私は一人のルビコニアンとして集積コーラルへ赴き、コーラルが辿る結末を見届けたかった。』

 

 

ですが、アルカナと封鎖機構が手を組んで行おうしているコーラルリリース。

 

それがラークとフェアリーの感知した悪意のあるコーラル。

 

別のC型変異波形と繋がっているとしたら…

 

私は同胞の過ちを止めなければなりません。

 

私はレイヴン達と共に生きたい。

 

人とコーラルの共生が出来るのなら、私はそれに賭けてみたいのです。

 

 

『レイヴン、集積コーラルがある地下大空洞…そこに真実がある。』

「…」

『現時点で向かう事が出来ないと思いますが、いずれは…』

 

 

エアもまた覚悟を決めた。

 

ラークとフェアリーも意を決して答えた。

 

 

「マナ、僕達はエアやコーラル達と仲良くなりたい。」

「私達、集積コーラルとお話してみる。」

 

 

それはアルカナの本拠地とされる地下大空洞の先。

 

ルビコン技研跡地へ向かうと言う意思表示だった。

 

 

「…総長殿。」

「こっちも腹は決まった。」

 

 

スネイルとミシガンも双方部隊のナンバーズも答えを決めた。

 

アルカナと封鎖機構ことオールマインドの暴走を止める。

 

コーラル争奪戦から始まったこの戦い。

 

捨て置けば人類社会が滅亡する。

 

企業がどうこう言っている場合ではない。

 

人として生きるのであれば、アルカナとオールマインドは倒さなければならない。

 

 

「カーラ、俺も焼き払うのではなく共生の道を選びたい。」

『…ウォルター。』

「お前はどうする?」

『アタシらは観測者、コーラルが示す先を見届ける義務があるよ。』

 

 

オーバーシアであるウォルターとカーラも共生の道を見届ける決意を固めた。

 

流れは一つの大きな流れへと繋がった瞬間であった。

 

 

 

=続=




次回、楽しい狩りのお時間です。



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