ティンカーベルの子   作:宵月颯

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雪原でのリベンジ。


猟犬・2

ミドル・フラットウェル派の解放戦線からの正式な依頼。

 

内容は『指定ポイントの防衛とカタフラクト部隊の撃墜。』

 

作戦地点は中央氷原の中心部、べリウス地方・防衛拠点の『壁』、べリウス地方と中央氷原を海路から繋ぐオアス産業海港。

 

以上の三か所へ侵攻している封鎖機構の執行部隊を迎撃する事となった。

 

同盟部隊はレッドガンを防衛拠点の『壁』、ヴェスパーをオアス産業海港、ハウンズを中央氷原の中心部へ派遣。

 

猶、防衛拠点の『壁』とオアス産業海港には解放戦線の非戦闘員や民間人が退避していた。

 

三か所の内に二か所は拠点を防衛をしつつカタフラクト部隊を退かなければならない。

 

更に拠点化した四か所の防衛も継続しなければならない為、人員は更に削られる形だった。

 

この為、人員にある程度の余裕があるレッドガンとヴェスパーが二か所を対応。

 

機体の特性上、高機動かつ高所での行動に有利なヴェスパーがオアス産業海港。

 

レッドガンは自分達の意向で壁攻略をする為、防衛拠点の『壁』を選択。

 

残された中央氷原・中心部へはハウンズが派遣された。

 

 

******

 

 

洋上都市ザイレムのヘリポートから離陸した輸送ヘリの中で依頼内容を確認するレイヴン達。

 

暫く前に依頼の受諾をし返信が送られてきたとエアから伝えられた。

 

 

『レイヴン、貴方とハウンズ宛にルビコン解放戦線からメッセージが届いています。』

 

 

メッセージは作戦内容と受諾に対する礼が述べられた。

 

 

『独立傭兵レイヴン改め独立傭兵団ハウンズ、こちらの依頼を受けて頂き感謝する。』

 

 

既に帥叔からも直接の連絡は受けているだろう。

 

惑星封鎖機構が地上戦向けの特務機体カタフラクトを実戦配備した。

 

現在、各地の解放戦線の拠点が襲撃を受け壊滅寸前の状態。

 

当初は封鎖機構の高性能機が企業の手に渡る事を危惧していたが…

 

レッドガンとヴェスパーが企業から見放され、貴方達と行動を共にしている事を同士から伝えられた。

 

更にアルカナと封鎖機構への反撃を行おうとしている事も…

 

我々も黙ってやられる訳にはいかない。

 

カタフラクトは強固な装甲に包まれた封鎖機構最強の地上兵器。

 

人型MTをコアに組み込む事で汎用性を確保した恐るべき相手だ。

 

我々側の部隊も奴らの手によって壊滅した。

 

壊滅した同士達からの最後の通信…

 

それによるとカタフラクトのコアとなっているMTを狙えれば勝機はあります。

 

 

『貴方達の助力に感謝する……どうか気を付けて下さい。』

 

 

そこで解放戦線からの通信は終了した。

 

 

『レイヴン、解放戦線は企業と封鎖機構の共倒れを考えていた…ですが。』

 

 

我々の行動がそれを変えた。

 

我々が共に手を取り合い先へ進む意思がそうさせたのかもしれません。

 

 

『レイヴン、話がある。』

 

 

ハウンズのリーダーを任された617ことイーグルらからレイヴンに話が入った。

 

 

『いーうる?』

『自分達は以前、あのカタフラクトとの戦闘を最後にアルカナに捕らえられた。』

『…』

『本来であれば自分達が仕留めるべきだったが…』

 

 

今回の戦闘は彼らの慣らしも兼ねている。

 

その為、無理はするなとウォルターに釘を打たれていた。

 

続けてクレイン、シーガル、ドゥスターが会話に参加する。

 

 

『私達もまだ本調子ではないので。』

『そう言う訳だ、お前がコアを狙いに行け。』

『僕らはレイヴンの援護に回るよ。』

『わーった。』

 

 

治療を終えて対カタフラクト戦用にアセンした各自のAC。

 

二度とハンドラー・ウォルターの元を離れる事はしない。

 

自分達は猟犬であり、飼い主の元へ戻るのも仕事の内である。

 

 

『レイヴン、頼もしい仲間が増えましたね。』

 

 

エアの交信を聞きながらレイヴンは笑みを浮かべた。

 

 

~作戦エリア降下後~

 

 

各機にウォルターからの通信が入った。

 

 

『ミッション開始だ。惑星封鎖機構の特務機体カタフラクトを排除する。』

 

 

吹雪が吹き荒れる中央氷原の平野。

 

レーダーには既にカタフラクト部隊の機影が感知されていた。

 

 

『618と619は解放戦線のMT部隊と合流し周囲の封鎖機構のMT部隊の迎撃に当たれ。』

 

 

618ことクレインと619のシーガルはウォルターの指示の元、解放戦線の援護に向かった。

 

 

『617と620はカタフラクトを狙う621のフォローに入ってくれ。』

 

 

事前のブリーフィングでも解放戦線よりカタフラクトの詳細から作戦を練っていた。

 

地上戦を想定して製造された強化外装付のMT。

 

バルテウスの地上版とも言える武装と運用性を強化した機体。

 

大型ビーム兵装にミサイルコンテナ、前方へは両腕ガトリング砲と言う火力重視。

 

また、巨大化させたタンクの如く加速力、突撃力も油断できない。

 

解放戦線の情報通り…

 

コアとなっているMTを狙うしか沈黙させる方法はないだろう。

 

単にコアを狙う訳にはいかない。

 

イーグルらが交戦した際と同様に接近するまでカタフラクトの大火力に晒されるのだ。

 

だが、対処方法が判っている以上は二度の敗走はない。

 

 

『皆さん、カタフラクト来ます!』

 

 

エアの交信と共に封鎖機構のカタフラクトが突撃してきた。

 

目視と同時にガトリング砲の火花が雪原に散った。

 

 

『コード23、敵性AC三機を確認…これより交戦を開始する。』

 

 

封鎖機構を統括するAIの指示の元、攻撃を開始するカタフラクトのパイロットである特務上尉。

 

 

『ドゥスター、手筈通りに!』

『オッケー!』

 

 

イーグルのACとドゥスターのACがカタフラクトへと攻撃を開始する。

 

目的は陽動である。

 

ドゥスターはマシンガンで牽制しチャフ系武装でミサイルを無力化。

 

イーグルはタンクのドリフトを駆使し炸薬系兵装で敵への妨害弾幕を張った。

 

例の大型ビーム兵装と前方に入らない様に各自注意を怠らない。

 

 

『優先排除対象…レイヴン、まさか貴様が戻ってこようとはな!』

 

 

621ことレイヴンはカタフラクトのパイロットと初対面である。

 

恐らく元のIDの持ち主と勘違いされているのだろう。

 

 

『情報をリークし企業を呼び込んで満足か?』

 

 

特務上尉が語ったように…

 

どうやらマナの情報通りブランチによる星外に向けてコーラル情報の暴露が起こったらしい。

 

 

『このまま逃げ隠れるつもりだろうがそうはいかない!』

 

 

問題のブランチは姿を隠している様子だが…

 

 

『封鎖機構を統括するAI…情報漏洩を防げなかったのでしょうか?』

『わかぁない。』

『ですね、余りにも管理不十分…杜撰な統括AIです。』

 

 

何処のオールドンマイかはさて置き…

 

エアもレイヴンに対して愚痴るレベルである。

 

 

『我々の封鎖による秩序を貴様が崩したのだ。』

 

 

最もな理由を開示する訳でもなくルビコン3封鎖へ踏み切った封鎖機構。

 

アイビスの火による二次災害を事前に公式発表していればそうでもなかっただろう。

 

そしてルビコニアン達への配慮を怠った。

 

だからこそ余計に捻じ曲がって今の状況を生み出した。

 

ブランチの情報リークはそのキッカケに過ぎない。

 

 

『レイヴンのライセンス…元の『レイヴン』がやった仕事か。』

『うおぅたー…』

『その件は後だ、今は戦いに集中しろ621。』

『わーった。』

 

 

不慣れなながらも取り戻した声でウォルターと話すレイヴン。

 

 

『今がチャンスだ!レイヴン!』

『このまま突っ込め!』

『ありあと!』

 

 

そして、イーグルとドゥスターの切り拓いてくれた道へと突撃した。

 

 

『おらった!』

『!?』

 

 

イーグルの兵装によって視界を奪われたカタフラクトのパイロット。

 

ばら撒かれた爆発兵装で周囲の熱量が上昇し索敵に不備が出る。

 

それが原因でレイヴンのACの接近に気づくのが遅かった。

 

 

『しまっ!?』

『…』

 

 

コアの接続された中心部に対して至近距離からグレネードキャノンを発射され…

 

トドメとばかりにパイルバンカーで貫かれたのだ。

 

 

『そういう…ことか…』

 

 

コアブロックごと貫かれた特務上尉。

 

 

『コード5、戦闘ログを送信…再照合を…』

 

 

爆発するコクピットで封鎖機構への情報を送信するが、時すでに遅し。

 

その情報は送られる事なくカタフラクトは沈黙した。

 

 

『カタフラクトの撃破を確認、ミッション完了だ。』

『…』

『借りた名義については気にするなと言いたいが…マナの情報通りなら近い内に此方へ接触して来るだろう。』

 

 

ブランチ達が振りまいた一方的な正義がどれほどの被害を齎したのか?

 

本当の自由の意味を示す為に。

 

いずれは闘わなければならないだろう。

 

 

『マナとカーラが話していたブランチ…彼らの目的は一体?』

『…』

『621、618と619の方も終わった…617達と共に輸送ヘリで合流しろ。』

 

 

エアの疑問の後にウォルターはレイヴン達に帰還の指示を出した。

 

ルビコンにおけるコーラル争奪戦の切っ掛けとなったブランチの情報リーク。

 

彼らは何を求めているのだろうか?

 

それは彼らが知る事である。

 

 

>>>>>>

 

 

雪原での戦いが終わりを迎えた頃…

 

べリウス地方、防衛拠点の『壁』の死守に成功したレッドガン。

 

戦利品としてカタフラクトを鹵獲に成功し彼らにとっても良いリベンジ戦となった。

 

解放戦線との引継ぎ後、洋上都市ザイレムへ帰還する前にラークは墓参りをしたいと話していた。

 

それはべリウス地方に埋葬したスッラの墓の事である。

 

防衛拠点の『壁』から然程離れていないのでミシガンが許可を出した。

 

護衛として新規加入したG8のノーザークとG9のネルソンが同行する条件付きだが…

 

ラーク自身が狙われている以上は護衛が必要と言う判断からである。

 

 

『えっと…確かここらへんだったかな?』

 

 

ACを鳥型へ変形させスッラの墓まで飛行したラーク。

 

地上からノーザークとネルソンが後追いする形で追従していた。

 

目的のポイントに着くと二脚型に戻して地上へ着陸。

 

徒歩で墓のある場所へ向かうものの…

 

 

「うそ…でしょ?」

「ラーク、どうしたんだ?」

「ないんだ、スッラの墓の中身が…!」

 

 

先に向かったラークが見たモノは荒らされたスッラの墓。

 

建てられた十字架は折られ、造花の花輪は無惨に壊されていた。

 

そして埋葬した場所からスッラの遺体が入っていた棺桶がごっそり無くなっている。

 

 

「ラーク…」

「何処に行っちゃったの?」

 

 

茫然とするしかないラークに対してノーザークとネルソンは声を掛けにくかった。

 

実の父親かもしれない人物の遺体が無くなっていたのだ。

 

 

「俺、総長に連絡してきます。」

「判った、私はラークを見ていよう。」

 

 

ネルソンは自体を把握し本隊と連絡を取る為に自身のACへ。

 

ノーザークは挙動不審になり掛けているラークの元に急いだ。

 

 

「僕…フェアリーに何て言えばいいんだろう。」

 

 

消えたスッラの遺体。

 

それは大きな流れが動き出そうとしていた…

 

 

>>>>>>

 

 

一方、オアス産業海港でも大きな出来事が起こっていた。

 

オアス産業海港に迫っていたカタフラクト部隊を制圧したヴェスパー部隊。

 

ちなみにカタフラクトの戦いを楽しんでいたフロイトは…

 

 

「全然、楽しめなかったぞ!」

 

 

と、言う始末。

 

 

「もう、二~三体は相手にしたかったな?」

 

 

と無理難題を言ってローズネイルより怒りの拳骨を喰らっていた。

 

 

「アンタはね!もう少し状況を見て考えなさいよ!!この戦闘狂っ!!!?」

「っうううう!!!」

「ローズネイル、それ以上やるとフロイトの頭がどうにかなりそうなのでその辺で。」

 

 

ローズネイルの拳骨を喰らって頭を押さえるフロイト。

 

流石に拙いのでスネイルから静止命令が下った。

 

更に最後の仕上げと言う事でローズネイルはフェアリーに何時ものを頼んでいた。

 

 

「判ってるわよ、じゃ…フェアリーちゃん何時ものアレ宜しくね?」

「フェアリー?」

「フロイト小父さんの意地悪、スネイル隊長が可哀そうです。」

「!?」

 

 

ローズネイルが教えたフロイトに対するフェアリーの鶴の一声。

 

これに関してはフロイトもグッサリと響いたらしい。

 

 

「止めないとシミュレーターの相手はしません。」

「フェアリー!もうしないから!?」

「本当?」

「本当!絶対にしない!」

「判ったけど、今回の報告書も自分で書いてください。」

「あ、ハイ…」

 

 

大の大人が泣き叫んでロリ少女の足にしがみ付く何とも酷い光景。

 

更にロリ少女による最もな正論を言われる始末。

 

これに関してはスネイルも許可しているので何とも言えない。

 

 

「フェアリー、ご苦労様です。」

「スネイル隊長、フロイト小父さんが無理を言い過ぎです。」

 

 

プンプンとフェアリー本人は怒っているが、可愛いの部類の怒り方である。

 

 

「何時もの事ですよ。」

「でも…スネイルパパが可哀そうです。」

 

 

毎回、自分の味方をしてくれるフェアリーに対して涙腺崩壊しそうなスネイルは教育的助言をして置いた。

 

 

「フェアリー、いいですか?」

「?」

「あの様に自らの我儘を通す人間は恥ずかしい部類に入りますので、絶対にマネしない様に。」

「了解です。」

「何か俺の扱い酷くない!?」

 

 

フロイトの自滅からの理不尽はさて置き、オアス産業海港での事後処理が進む中で事件は起きた。

 

解放戦線が産業海港の民間人を移動させようとした地点との連絡が途絶えた。

 

急ぎ、解放戦線のMT部隊を向かわせた所…発見されたのは数名の作業員だけだった。

 

救助された解放戦線の作業員に話しかけるラスティ。

 

 

「何が遭った!?」

 

 

数十キロ程離れた産業海港と隣接する地底湖都市オアス。

 

そこで大崩落が起こったと作業員は告げたが…

 

 

「只の崩落じゃない、あれは…化け物のせいだ。」

「化け物?」

 

 

地底湖都市オアスの崩落から運良く免れた解放戦線の作業員。

 

多くは突如発生した崩落によって生き埋めにされた。

 

最悪な事に地底湖自体が崩落してしまっている為、救出する事は不可能だった。

 

ただ、作業員が視たと言う化け物の詳細は不明のまま。

 

オアス産業海港をこのまま利用するのは危険と判断。

 

ヴェスパーと解放戦線は産業海港を放棄する事を決定。

 

産業海港に残された民間人を洋上都市ザイレムへ移送する運びとなった。

 

 

=続=




次回、ザイレムでの出来事。

※オアス産業海港

ルビコン3に点在するグリットが建造されるまでアーレア海をメインに物資輸送を行っていた海港の一つ。
グリット建造後はカーゴランチャーでの輸送が出来ない物資や人員を輸送していた。
ヨルゲン燃料基地で燃料化したコーラルを輸送していた為、各所に燃料タンクの残骸が遺されている。
多くの海港は一部を除いて閉鎖されたが、コーラル争奪戦により解放戦線によって再び利用され始めた。
現在はべリウス地方で発生したアルカナと封鎖機構による大量虐殺から逃げ延びた民間人らが押し寄せている。


※地底湖都市オアス

オアス産業海港と隣接し地下空洞の地底湖に建造されたコーラル採掘都市の一つ。
本来、民間人達が避難する予定だった場所だが都市のあった地底湖が突如落盤。
設備の点検を行っていた解放戦線の作業員が落盤による土砂や落石等に巻き込まれた。
逃げ延びた解放戦線の話によると巨大なナニカが通り過ぎたとの事…


※ルビコン解放戦線

コーラル争奪戦に置いてコーラルを狙う企業や封鎖機構の圧力に屈せず解放と独立を目指すレジスタンス。
多くは二つの派閥に別れており、コーラルを神聖視するサム・ドルマヤン派と実質的な戦闘集団のミドル・フラットウェル派に分かれて対立している。
べリウス地方での大量虐殺を期にドルマヤンは失踪し実質的な指導者を失った。
残されたべリウス地方の解放戦線の人員は民間人を引き連れて中央氷原へと撤退を余儀なくされた。
各企業所属の部隊が企業から切り捨てを受けた事はラスティを経由しフラットウェル派より情報が浸透。
互いの利害は一致しているので大きな諍いはないと思われるが…


※G8、G9、G10

レッドガン内の人員整理を兼ねて三名が選出。

G8にノーザーク、但し万年雑用はそのまま。
元独立傭兵であり戦力的にもある程度は闘える為に無理やり。
レッドガンのマークに元々のパーソナルマークと数字の8が追加。

G9に新型テスター機で生き残った新兵を選出、名はネルソン。
ナイルによって叩き直され、べリウス地方での撤退戦に貢献した事による昇格である。
AC名はデイノニクス、破壊された新型機とは別で組み上げたACで軽量逆関節型。
レッドガンのマークに肉食恐竜のデイノニクスと9のマークが追加。
名の由来はネルソン川より。

G10にラーク、これまでの戦いで生存した事で見習いのGBより昇格。
但し、部隊指揮は行わず他のナンバーズのサポートがメイン。
レッドガンのマークに不死鳥と10のマークが追加。
フェアリーと同じ番号であるのはミシガンの計らいである。


※フロイトの扱い
ルートAでチャティ壊したチャティ壊したチャティ壊した…

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