前回、封鎖機構による強制執行。
地上用戦略兵器カタフラクトの導入による各地への圧力。
それらを食い止めた同盟部隊。
信用を勝ち取るにはまだほど遠いが…
ルビコン解放戦線に対して休戦協定へ持ち込む事に成功した。
今後の話し合いはこれからであるが、地の利を知る解放戦線とアルカナと封鎖機構に対する戦力を持ち合わせている同盟部隊が手を組む。
アルカナと封鎖機構にとっては標的が一つになったと捉えられただろう。
だが、大量虐殺を行った奴らの指示に従う気はない。
奴らの思惑に準じたコーラルリリースによって引き起こされる大災害。
それを食い止める為にも…
我々は手を取り合わなければならない。
******
レッドガン、ヴェスパー、オーバーシア、独立傭兵団ハウンズ、RaDによって結成した同盟。
そこへ休戦協定を申し入れてくれた解放戦線。
サム・ドルマヤンの事実上の失踪に伴い…
「解放戦線のミドル・フラットウェルです。」
解放戦線の代表としてミドル・フラットウェルが選出された。
それぞれの代表者から簡単な挨拶の後、スネイルとミシガンより会談へと入る事となった。
「此方の提案を受け入れて頂き、感謝します。」
「早速で悪いが事が事だ、会談に入らせて貰うぞ。」
政府の圧力、企業からの切り捨て、過去の贖罪によって集った者達。
ある意味で理想的な形になったのかもしれない。
アルカナと封鎖機構が行おうとしているコーラルリリースの真実。
ルビコンにおけるコーラルの異変。
それらの研究と調査結果が解放戦線に開示された。
元ルビコン技研の被験者や技術者の言葉もそれを真実と裏付ける結果となった。
「即時に決定すると言うのも無理があるでしょう。」
「…」
「期間を設けますし、その間の避難民の衣食住もザイレムで賄う事が出来ます。」
「取り敢えず、英気を養ってから決めろと言う事だ。」
「ザイレムには管理AIが生産し貯蔵していた物資がある、其方の避難民まで行き渡るだろう。」
解放戦線は封鎖機構の圧力や企業の進駐により現在まで衣食住に不自由を強いられてきた。
更にべリウス地方での戦乱から逃げ延びた避難民達を賄う為の物資も不足していた。
この同盟からの申し出は彼らにとっても有難い事である。
「ラスティからの連絡で半信半疑となっていたが…」
大きな流れが同盟を生み出し、更に手を取り合う状況を作り上げた。
フラットウェルは了承までとは言えないが、物資供給の件に感謝を伝えた。
「…何から何まで済まない。」
空腹であった子供達や老人にも食料が行き渡る。
満足な治療も出来ず苦痛を強いられていた者達の治療も行える。
それは彼らにとっても救いだった。
>>>>>>
だが、それとは別の問題が発生していた。
ザイレムにあった公共施設。
元は公園だった場所で…
「アンタ達のせいだ!アンタ達が来てからっ!!」
「…」
「…」
子供達の間で一つの諍いが起こっていた。
解放戦線に所属するリトル・ツィイー。
彼女は解放戦線の子供達を引き連れて公園で遊ばせていた。
其処へレッドガンのラークとヴェスパーのフェアリーが訪れたのである。
だが、彼女が向けたのは敵意だった。
「ゴメン…」
「ラーク。」
恨まれても仕方がない。
彼女達はレッドガンとヴェスパーに拾われた。
何もなかった彼女達に居場所を与えたのは彼らだ。
彼女達の居場所はそこしかなかった。
だが、そこでの生き方が彼女達と彼らを変えた。
それはレッドガンとヴェスパーだけの話で解放戦線には関係ない。
「行こう、フェアリー。」
「うん。」
休戦協定を行ったとしても一度出来た溝が埋まるには時間がかかる。
二人は揉め事を起こさないようにその場を去っていった。
しばらく歩いて距離を取った後、ラークはフェアリーに話した。
「フェアリー、嫌な思いをさせてごめんね。」
「ううん、ラークは悪くないよ。」
友達が出来ると淡い考えをして嫌な思いをさせた。
ラークはフェアリーを巻き込んだ事に謝罪をした。
「でも、僕が友達作ろうって言ったのが原因だし。」
「私も同じ、お友達出来ると思ってた。」
二人っきりの同世代の子供。
解放戦線や民間人の中にも同世代の子供達は少なからず居た。
彼らと話が出来ればと甘い考えに至ってしまった。
「仕方がないよね、僕達は解放戦線にとって悪い奴らだったし。」
「…ラーク。」
無理に笑顔を作るラークと心配するフェアリー。
「でも、僕らの居場所はレッドガンとヴェスパーだよ。」
「うん。」
気を取り直してラークは自分の願いを答えた。
「僕…約束したんだ、全部終わったら親父達の故郷に行ってみたいって。」
「故郷?」
「うん、企業本社がある地球って星。」
「ルビコン以外に惑星があるって聞いたけど…地球ってどんな所なんだろう?」
「分かんない、親父達は微妙な顔するけどさ。」
「私もパパ達の故郷にいつか行ってみたいな。」
「僕はフェアリーも一緒にって思ってた。」
「所属が違うけど大丈夫かな?」
「レイヴンと同じで独立傭兵って事にしておけばいいんじゃない?」
「うん、そうだね。」
調整槽から出て僅か数ヶ月の二人。
まだまだ学ぶことが多いが、それも切ない願いである事を知らない。
「あの、すみません。」
二人の会話に入ってくる人物。
どうやら技術者らしい。
「誰?」
「あれ?もしかしてRaDの人?」
「ええ、ボスの指示で此方に資材を届けに。」
ジャケットに記されたエンブレムでRaDの人と認識した二人。
「それなら逆の方向に工廠があるよ?」
「おや、そうでしたか。」
「ザイレムは広いから道を間違えるよね。」
「そうですね、今後の事も考えて慣れるといいのですが。」
「ま、しょうがないんじゃない?」
RaDの技術者にしては礼儀正しい人だったので不思議そうな顔をする二人。
だが、物腰柔らかな雰囲気に二人は次第に心を許していた。
「自己紹介がまだだったね、僕はラーク。」
「私はフェアリー。」
「これはご丁寧に、私の名はオーネスト・ブルートゥと申します。」
以後、お見知りおきをと笑顔でブルートゥは答えた。
=続=
次回、ザイレム襲撃。