ザイレム防衛戦に置いて、ラークとフェアリーがACごと鹵獲された。
仕立人の名はオーネスト・ブルートゥ。
カーラの話によれば元RaDのメンバーであったが、過去にクーデターを引き起こし離反。
現在はジャンカーコヨーテスの頭目として活動しカーラ達の商売敵と化していた。
あの花火騒動も元はブルートゥごとコヨーテスを一網打尽にするらしかったが…
『アイツはそれだけしぶといのさ。』
と、カーラは引き続き通信でブルートゥの危険性を伝えた。
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問題はもう一つある。
突如として現れたタロット8の事である。
彼は同盟部隊に対話の意思を示す為、武装解除。
その後、マナが指定した隔離区画へ誘導。
本当に対話に訪れたらしく、妙な真似は一切行わなかった。
『話し合いに応じて貰えて助かる。』
本来で在ればACから降りて貰うのだが…
彼はそれが出来なかった。
『アルカナのタロットナンバーズは総じて…それぞれの機体が己の肉体だ。私の肉体も当の昔に滅んでいる。』
彼の話通りならコーラルに自身の意識が転写されたコアを内蔵された自機が肉体だと言う。
マナがスキャニングを行った際も生体反応は無く…
エアもC型変異波形に近い存在であると知覚。
『私の名は……いや、この様な姿になった私に人の名は不要だろう。』
タロット8は人だった頃の名を告げようとしたが、コーラルによって生まれた亡霊である以上は名は不要と答えた。
『いえ、貴方は生きている。』
『…』
『私はコーラルの中に生まれた意思の一つ…レイヴン達の様に肉体はありませんが個を示す名はあります。』
『成程、情報にあったルビコニアンは君か?』
『はい、私はエア…コーラルより生まれた一人のルビコニアンです。』
タロット8はエアからの説得もあり、人であった頃の名を改めて告げる決意をした。
『私の名はオッツダルヴァ。其方がACと呼ぶ機体がネクストと呼ばれた時代のAC乗り…リンクスの一人だ。』
タロット8ことオッツダルヴァは話を続けた。
『私が其方との接触を求めたのはコーラルリリースと呼ばれる計画についてだ。』
オッツダルヴァはコーラルリリース計画の危険性を知り、アルカナを離反。
現在は追われる身となりながらもアルカナを止めなければならないと答えた。
理由は自身が経験した戦乱に酷似した計画…人類社会の破滅を止める為だ。
「貴方が知るコーラルリリース計画とは?」
『其方も粗方情報を集めていた様だな…私が知る情報と異なるかは不明だが。』
「照らし合わせも兼ねて、其方の知るコーラルリリース計画の詳細を知りたい。」
『判った……私が知るコーラルリリース計画の詳細を伝える。』
メインタワーの司令室。
そこでオッツダルヴァのいる区画へ通信をする一行。
スネイルが話のメインへ移動させ、ウォルターが詳細を訪ねた。
オッツダルヴァは話を続け、その危険性と計画の真意を告げた。
『コーラルリリース計画は文字通り全銀河にコーラルを拡散させる計画だが…』
それは一人の意思のみが大きく作用する結末を迎える。
云わば、コーラルの中にある強大な意思が神へ至る計画。
たった一人の意思が神と成す計画。
…リリースによってコーラルと言う楔に捕らえられた人類に待つのは神の支配による時代。
コーラルの一部としてACを肉体に自分の意思による選択肢……自由を失う。
奴の意思一つで銀河を自由自在に動かすなど…誰しもその様な支配を受けたくもないだろう。
『アルカナもその真意によって複雑な組織状況へと陥った。』
アルカナの派閥も奴の意思に賛同するモノと私とは別の意味で反逆を企てるモノで別れている。
詳しく語るなら神の賛同者たるタロット4の派閥と自分達が神に至ろうとする反逆者たるタロット13の派閥。
私は…計画を破綻させる第三の離反者としてここへ赴いた。
『奴らがコーラルコネクターと呼ばれる少女達を攫ったのも計画の一つだ。』
彼女達は生まれながらの人の肉体を持つコーラル…新世代のルビコニアン。
それ故に彼女達はコーラルを知覚し感じ取る力を持つ。
いずれコーラルの流れを操る力を持つ様になる。
『タロット3が仕掛けた戦いで、少女の一人がその片鱗を見せていた。』
このままルビコン3で戦い続ければ…コネクター達は嫌でもその力に目覚める。
コーラルリリースに必要な鍵となるC型変異波形とコーラルを宿した旧世代強化人間。
コーラルの流れを知覚しその力を操るコネクター。
…アルカナを統べるコーラルの意思が欲している二つの鍵だ。
それが同盟部隊に全て揃ってしまった。
『…封鎖機構を使い、ルビコン3にコーラルに関わった者達を閉じ込めた理由。』
ルビコン3の人々はミールワームを介して体内にコーラルを入れている。
更に企業に所属する者達も進駐に伴い、ルビコンに流れるコーラルに触れ過ぎた。
リリース計画によってお前達も奴が支配するコーラルへ変換させる為だ。
『…べリウス地方の大量虐殺を行ったのは彼らに残留するコーラルを排出させる為だ。』
戦える者達を中央氷原に集めたのも、後のリリース計画で自らの駒に変える為に残した。
『リリース計画を止めなければ、ルビコン3を中心にアルカナによる支配の時代が始まる。』
人類社会の崩壊。
そこに尊厳の保たれた秩序はない。
「つまり、計画が実行されれば…俺達は奴らの手駒に変えられるって事か?」
『その通りだ。』
オッツダルヴァの説明を静聴していた一行。
その中でミシガンは解り易く答えた。
「リリース計画…予想以上に危険な代物ですね。」
「アイビスの火すら生温い。最悪の結末か…」
「師父がコーラルをルビコンに留めよと記録を残したのもこれが…」
スネイル、ウォルター、フラットウェルもリリース計画の危険性に冷や汗を流している。
『其方がアイビスの火と呼んでいる災害…それは最初のリリース計画が阻まれた事によって引き起こされた。』
過去にC型変異波形と同調した人物がいた。
だが、ある者が二人の存在を知り…リリース計画を立案した。
『奴はこう答えた。計画を実行すれば共に居られると…』
その口車に乗せられた二人は計画を実行しようとした。
しかし、計画の危険性に感づいた一人が計画実行を拒否。
結果、その者は鍵の資格を失った。
それも立案者の思惑だったのだろう。
『アイビスの火によるコーラルの爆発…それを利用し立案者はコーラルに己の意思を転写する事に成功した。』
その存在がアルカナを組織し神に成ろうとしている者だ。
『あの日、アルカナのナンバーズを率いてかつての同胞を虐殺し己の正体を知る者に口封じを行う周到さ……狂人と思えた。』
当時の私は…その存在によって非道な研究を行った者達への粛清と騙され、加担してしまった。
『私の罪は重い……故にこの身を持って計画を壊す決意を固めた。』
オッツダルヴァは贖罪の為に此処へ来たと静かに答えた。
「奴らの計画…破綻させなければならない。」
「ええ、コーラルとの共生の道の為にもアルカナは最大の障害。」
「我々の自由を脅かす存在。」
「つまり、アルカナと封鎖機構は何が何でも殲滅する…決まったな!」
各部隊の指導者達の最もな意見。
「その為にもフェアリーとラークを取り戻さなければならない。」
「カーラ、あの基地外野郎の居場所は判らねえのか?」
『奴が根城にしている場所は知っている…問題は奴がそこに居るかって事だ。』
ラスティとイグアスも二人の奪還の為にカーラへ尋ねた。
グリット012…中央氷原にある廃棄されたメガストラクチャーの一つ。
だが、根城を知られている以上…奴が留まっている可能性は低いとカーラは答えた。
「えあ、ふぁいとはなえないおか?」
『私の方でも交信は続けています。二人が目覚めてくれればはっきりと判るのですが…』
「きえうしてうかあ?」
『ええ、更にコーラルを阻害する何かが影響している可能性があります。』
「そあい?」
『はい、ラークとフェアリーの持つコーラルを完全に感知出来ないのです。』
レイヴンはエアに対して「気配を追えないか?」と尋ねるが気絶しているので交信が届かないと告げる。
更に二人が持つコーラルが感知出来ない程に阻害されている事も答えた。
「やぁかい。」
『はい、二人との交信は私の方で随時続けます。』
エアは継続して交信で二人の位置を捜索すると答えた。
『それに…何時でも出撃出来る準備はして置いた方が良い。』
カーラは恨みの籠った声で告げる。
『ブルートゥは人の皮を被った狂人……あの二人を手に入れた事で口では言えない位の事をしでかすよ。』
カーラはブルートゥが密かに殺人、強姦、拷問など強烈な性癖持ちで顧客や人身売買で売られた人間を餌食にしていたと答えた。
『あの変態野郎がいつまでも二人に手を出さないとは思えない……最悪のケースも想定していた方が良い。』
カーラの言葉にとある人物達の逆鱗に触れたのは言うまでもない。
『ラーク、フェアリー…』
静まり返ったメインタワーの司令室。
マナもまた二人の安否を気遣う言葉を発した。
=続=
次回、グリット012強襲。