ブルートゥのザラマンダーと交戦中のミシガンとスネイル。
二人の実力であれば、ブルートゥは相手にもならないが…
奴のコアブロックにラークとフェアリーが人質として搭乗しているらしく手出しが出来なかった。
この為、苦戦を強いられていた。
エアは状況を知る為にミシガン達の通信音声を三機に送信。
今、此方から姿を現すのは得策ではないと判断。
エアはレイヴンの電子端末を通してスネイルと連絡を取った。
『ヴェスパー2、聞こえますか?』
『その声はエア…成程、敵の通信障害が途切れた様ですね。』
『…先程の会話ログを元に敵ACのコアブロックを調べました。』
『では、ラークとフェアリーは…』
『はい、あのACのコアブロックから二人の反応を感じました。』
『エア、レイヴンの他に出撃しているACは?』
『G5イグアスのヘッドブリンガーとヴェスパー4ラスティのスティールヘイズです。』
エアとのやり取りで奪還作戦を練るスネイル。
『エア、私達が隙を作ります……その隙に。』
練りに練った作戦ではなく即席の一か八かの作戦。
少しの失敗も許されない。
『…G1、聞きましたね?』
『判った!そっちは任せたぞ!!』
エア経由の通信でミシガンにも作戦を伝える。
『おやおや、此方はまだ踊り足りないのですよ?』
攻撃は最大の防御を思わせるザラマンダーの火炎放射器。
両腕から発射される炎の壁に対してミシガンはライガーテイルに装備された爆裂筒の弾倉が残った片腕武装を投げ飛ばした。
炎の壁に片腕武装が接触すると熱による誘爆を引き起こし視界が遮られる。
『このタイミングは逃しません…!』
同時にスネイルはオープンフェイスの両肩に装備されたスタンニードルランチャーを発射。
その一撃はプライマリシールドを破る威力…
更に二撃分となれば被弾時のスタッガー状態はより継続される。
『イグアス、ラスティ、レイヴン、今です!』
エアの合図と同時に仕掛けるレイヴン達。
『後は任せろ!ミシガン!!』
『この好機は逃さない!』
『っ!』
レイヴンがコアブロックの装甲を破壊。
イグアスとラスティはコアブロックから捕らえられたラークとフェアリーを救助した。
彼女達の正確な位置に関してもエアが既に事前通告済み。
土壇場で組まれた作戦であろうと修羅場を潜り抜けた彼らには何時もの事である。
『まさか!?』
コアブロックの破損で周囲の機器に火花が散り始める。
それがブルートゥの髪に燃え移り、彼の貌を焼き始めた。
『ひっ!?』
誘爆の危険性もあり、二人を救助した二機は急いで離脱。
『スネイル隊長、二人は救助した。』
『ヴェスパー4、G5と共に一時離脱を。』
『了解。』
『G5!奴はどうした!』
『あの下種野郎ならコアブロックで一人火遊び中だぜ!』
『そうか!』
それぞれのやり取りが続く中で救助作戦は成功。
やる事はただ一つ…
『そうちょう!』
『G13!!泣きを入れたらもう一発だっ!!』
『りょうかい!』
『よし!貴様の発言もマシになって来たな!』
コアブロック内の出火で動きの制限されたブルートゥ。
その隙を逃す程、レッドガンの総長は甘くない。
レイヴンに指示を出して攻撃を再開。
ミシガンもその後に続いた。
『ああ、折角のダンスが台無しです…ゲストも去ってしまいました。』
コアブロック内の出火で火傷を負いつつも操縦桿を握り絞めるブルートゥ。
『貴様の糞な踊りもこれで終わりだ!!』
『なっ!?』
『つぶす!』
レイヴンのフリューゲルの右腕マシンガンが牽制。
先の救出時に尻尾部分のチェンソーを破壊していた。
残るは奴のミサイル装備だけである。
それらをマシンガンを乱射し発射口を潰す。
最後にミシガンのライガーテイルの拳がブルートゥのコアブロックに鉄拳を撃ち込んだ。
だが…
『まだ、終わりでは…!』
ブルートゥは脱出装置で辛うじてコアブロックより離脱。
だが、パージの距離が短かった為に近くにあった施設の通路へと逃げて行った。
『この期に及んで逃げる気か!!』
逃走するブルートゥに対してミシガンの叫びが響く中、異変は起きた。
『おい!ラーク!?』
『フェアリー、どうしたんだ!』
イグアスとラスティが二人の様子がおかしい事に気づく。
突如、二人がけいれんを起こして吐血し始めたのだ。
その状態を通信で見ていたカーラは察した。
『こいつは不味い…!』
『カーラ、どういう事です?』
『…ジャンカー・コヨーテス製のCドラックだよ。そいつを投与されたらしい。』
『Cドラックだと!?』
『特に奴らの精製したCドラックは質が悪い。精製時の濃度が濃すぎるせいで常人なら一回で発狂する代物さ。』
『では、二人の状態は…』
『二人はある程度の耐性を持っている以上は発狂はないだろう…問題はコーラルの過剰摂取状態って事だよ。』
スネイルとミシガンにCドラックの説明をするカーラ。
遅効性のCドラックの影響で鼻血や吐血と同時に嘔吐を繰り返すラークとフェアリー。
『いたぃ…い。』
『くる…しぃ。』
『カーラ!何とかならねぇのか!?』
『二人を自分のACに乗せな。応急処置だが体内のコーラル濃度を軽減出来る。』
『了解した、エア…二人のACは?』
『この奥の区画です。マナから預かった自動操縦コードで移動させます。』
コアブロックから降りて二人を介抱するイグアスとラスティ。
簡易治療キットから止血用のガーゼを取り出して口腔の血を吐かせていた。
だが、ラークとフェアリーに仕掛けられた毒は徐々に二人を蝕んでいた。
この様子にミシガンとスネイルは行動を起こした。
「…準備は良いか?」
「ええ、其方も撤退可能時間をお忘れなく?」
ミシガンがコアブロックよりマシンガンを背負って出てきたのである。
同じくスネイルも出ており、対人装備に大型拳銃と腰にはスタンバトンを携えていた。
『…ミシガン。』
『スネイル隊長…』
イグアスとラスティは二人の様子に察した。
『俺達は遠足の後始末に行ってくる。』
『時間までには戻りますので、貴方達は撤退の準備と周囲の警戒をお願いします。』
狂人狩りが始まったのである。
>>>>>>
グリット012の施設内。
ザラマンダーごと自身のACを破壊されたブルートゥ。
破壊の余波で炎上したコアブロックから脱出したものの…
人を騙すのに有利な貌は既に意味を成さない。
重度の火傷で整形手術でもしない限り、戻る事はないだろう。
ボタボタと血を流しながら施設の奥へ逃走する。
「遠足は足取りが大事だぞ?」
ふらつくブルートゥの足元にミシガンのマシンガンが火花を散らせた。
普段叫ぶような話し方ではなく追い詰める様な覇気を放っていた。
二人に発見されたブルートゥは踵を返して逃走を図るも…
「ひっ!」
「何処へ逃げるのですか?」
逃げるブルートゥの大腿の肉を削ぐ形で大型拳銃で撃ったスネイル。
太い血管に目掛けて撃たなかったのはより苦痛を長くする為だ。
「ああっ!!?」
床に転がり痛みに叫ぶブルートゥを追い込むミシガンとスネイル。
歩く地獄と再教育センター・所長と言う肩書を持つ二人。
普段の様子とは程遠いその視線は尋常ではない。
隠している狂気は大衆に晒されるのではなく個に晒されていた。
「貴方の最終指導はまだ終わってませんよ?」
「指導とは…あがっ!?」
「話していいとは一言も言ってません。」
スネイルは言葉を発しようとしたブルートゥの膝へ至近距離の発砲。
大型拳銃の銃弾はブルートゥの膝の肉はおろか骨を難なく裂き砕いたのである。
「いっいがぁあああ!?」
「痛い?どの口が言っているのですか?ああ…この口ですね?」
スネイルは奴から情報を聞き出すまで、その三枚舌を斬る事を止めていた。
恐怖と怨嗟を込めてブルートゥを始末すると決めている為に…
「余計なおしゃべりが好きな奴だな?」
「G1、カーラの話によれば奴はACの名の通り乳歯がお気に入りらしいので…」
全部粉々に砕いても構わないでしょう?
「へぶっ!?」
スネイルの処刑宣告にも似た言葉でミシガンの鉄拳がブルートゥの顔面にクリーンヒットする。
レッドガンに置いて幾多の隊員達を地面に沈めた拳…
それはブルートゥの歯はおろか顎の骨も砕く結果となった。
「顎まで逝ったか?」
「減らず口には丁度いい仕置きです。」
火傷の貌に更なる負傷…
ブルートゥの痛みは既に痛みを通り越して痛覚まで麻痺しつつあった。
ボタボタと出血は止まらず、貌の損傷に加えてご自慢の乳歯のネックレスも砕けていた。
「さて、貴方には話して貰う事が山程あります。」
「簡単に死ねると思うな?」
機体を失い、死を目前とする拷問とも言える尋問。
「血を流し過ぎてもいけませんので、慈悲として止血はして置きます。」
スネイルはブルートゥの出血個所に電流を上げたスタンバトンを接触させて止血した。
声にもならないブルートゥの叫びと人体が焼け焦げる臭いが周囲を漂った。
「アルカナの情報…貴方の知る奴らの情報を全て渡せば、その後の対応は考えますよ?」
「さっさと言う事だな?」
僅かに残されたブルートゥの焼け焦げた髪を引っ掴んで睨むミシガン。
二人の本気は先の行動で十分理解しただろう。
幾ら狂人でも過度の損傷で彼の理性は崩壊しつつあった。
相手に狂気じみた性癖を向ける奴は自分が可愛いと言う思考が多い。
いざ、自身が危機に迫るととっさに逃げるのと喜んで受け入れるの二択が存在する。
…ブルートゥの選んだ結末は後者だった。
「ああ、あぃい…でぇ。」
「…カーラ、奴のデータベースへのハッキングは?」
『もう終わったよ、そいつは用済みだ……煮るなり焼くなり好きにしてくれ。』
「では、遠慮なく…」
ブルートゥを始末する事は確定事項だった。
二人はカーラにブルートゥのアジトに残されたアルカナの情報を抜き取る様に申告していた。
この地獄の様な茶番は時間稼ぎである。
それが終わった為、ブルートゥの末路は決定した。
「貴方への最終指導はこの時を持って終わりです。」
「貴様が地獄へ落ちようとも俺達は常に地獄を歩いている……精々撃ち抜かれんよう怯えていろっ!!」
「ひぃ!?」
ミシガンからトドメの鉄拳制裁にスネイルの至近距離の脳天発砲によってブルートゥは絶命。
二度と再会しない様に近場にあった削岩機に物言わぬ肉塊を投げ捨てて置いた。
「さて戻るか?」
「ええ、随分と時間を取り過ぎましたので。」
二人にとっては生温い地獄の行脚だっただろう。
だが、親と慕ってくれる子供達にした仕打ちを考えれば…
それ相応の報復は実行されるべきである。
二人が去った後、室内の削岩機からブルートゥだった肉塊は固いモノは砕かれて柔いモノが挽き肉になっていく音だけが響いていた。
=続=
次回、グリット012脱出。