ティンカーベルの子   作:宵月颯

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グリット012からの脱出その1



脱出・2

時を戻し、ブルートゥの後始末を終えたミシガンとスネイル。

 

何事も無かった様にレイヴン達の元へ戻って来た。

 

だが、その表情は余りにも静かすぎたのである。

 

それは、知らぬが仏をした方が良いとも取れる表情だった。

 

 

******

 

 

 

「そうちょ…」

「G13、ラーク達の様子は?」

「おうきゅしょちすんだ。」

「そうか…」

 

 

レイヴンもまだ慣れない発声で状況を説明。

 

ブルートゥに拉致されたラークとフェアリーの状態を伝えた。

 

現在はそれぞれのACに搭乗させ、体内に入った高濃度コーラルをろ過していた。

 

安全圏まで濃度が下がったとは言え、身体への負担は残っている。

 

ACの操縦もままならないだろう。

 

 

『G1、ヴェスパー2、ラークとフェアリーの応急処置は済みましたが…』

 

 

続けてエアが電子端末から二人の状態と二人のACの移動について説明した。

 

応急処置が済んだが、ラークとフェアリーがACの操縦を行うのは困難。

 

二人が乗る事でACの起動は出来ている。

 

この事から先程と同様に自動操縦でエアが補助を担当。

 

問題は脱出の際に二人を護衛しながらの行動となる事である。

 

 

 

「問題はそこだな。」

「カーラからの情報によれば、既に…」

 

 

ミシガンとスネイルの表情は険しい。

 

二人がカーラと連絡を取り、経過報告を受けた所…

 

既に四つの拠点を襲った大型機動兵器がグリット012へ迫っている。

 

既に安全に脱出可能な時間は過ぎていた。

 

ラークとフェアリーの事もあり安全とは言い切れない状態。

 

二人の護衛を前提とした脱出が求められた。

 

 

 

「エア、フェアリー達と話せますか?」

『少しで宜しければ…』

 

 

容体が一時安定したラークとフェアリー。

 

だが、ブルートゥの仕込んだコーラルドラックの影響は続いている。

 

先程まで続いていた吐血が収まったばかりだった。

 

現在はそれぞれのACのコアブロックに座らされている。

 

操縦席から体内のコーラル濃度を安定させる為に必要な措置だった。

 

 

「フェアリー、無事で何よりです。」

「パパ…」

「もう少しだけ頑張れますか?」

「う…ん。」

「一緒にザイレムへ帰還しましょう。」

「ん。」

 

 

多量の吐血で貧血を引き起こしているフェアリー。

 

元々の体質から余計に顔色が悪く見えていた。

 

スネイルも何時もの表情を崩していないが、内心穏やかではない。

 

同様にミシガンもACのコアブロックに居るラークに話しかけていた。

 

 

「ラーク。」

「おや…じ。」

「帰るまでが遠足だ、いいな?」

「判って…る。」

「減らず口が言えるなら問題ない。」

 

 

口では何とでも言える。

 

フェアリー同様にラークもまた状態が悪いままだ。

 

それでも心配させまいと声を出しているラーク。

 

対してミシガンはいつも通りの言葉を掛けた。

 

 

 

『感傷に浸っている所で悪いけど、一仕事して貰うよ!』

 

 

 

四人の会話に割って入るカーラ。

 

 

 

「どういう事だ?」

『そっちにマナの秘蔵品が向かってる、合流して欲しい。』

「秘蔵品とは?」

『そいつは見てからのお楽しみさ、お宅のバトルジャンキーが運搬中だよ。』

「まさかフロイトが!?」

『他はザイレム防衛で動けない、最大限の少数精鋭として仕方なかったのさ。』

「…人選を考えれば、致し方ないですね。」

 

 

静聴していたレイヴンらも加わり、カーラの説明は続いた。

 

VOB装備を換装したオッツダルヴァのACステイシスに搭乗したフロイトが…

 

状況を打破する秘蔵品を携えて、グリット012に向けて運送中との事。

 

 

「では、我々はヴェスパー1とその秘蔵品とやらと合流して脱出しろと?」

『ああ、ついでにブルートゥに奪われた武装も回収して持ってきて欲しい。』

「基地外の格納庫にぶら下がっていた馬鹿デケぇ砲身の事か?」

『それさ、例の化け物を倒す秘策に必要なんでね。』

「あぇで、こっぱみじん?」

『ビジター、良い事言うね。まあ…お披露目は出来上がってからのお楽しみって事で。』

『例の設計図を見せて頂きましたが…今は合流を最優先しましょう。』

 

 

 

カーラの説明を切り上げ、一行は合流ポイントへ向かった。

 

ミシガンとスネイルの度の超えた暴力的な殲滅行動でジャンカーコヨーテスは壊滅状態。

 

戦力と言う戦力を軒並み破壊した事で襲撃を仕掛けて来る事はないだろう。

 

念の為、エアが自立ドローンなどの類がないか調査したが、既に停止。

 

その頃にはザイレムからの援軍との連絡が繋がった。

 

 

『各機、ヴェスパー1とオッツダルヴァとの連絡が繋がりました。』

 

 

エアの状況説明からスネイルがフロイトと会話を開始。

 

 

『判りました。フロイト、聞こえていますね?』

『ああ、中々のフライトを楽しめた。』

『冗談は抜きでお願いします、G10とヴェスパー10の容体も踏まえて速やかに撤退しますよ。』

『了解したが…あの連中も此方の動きに気づいた様だ。』

 

 

 

事前通達が行われていても何時も通りの調子を崩さないフロイトだったが…

 

 

彼らの到着と同時に招かれざる客人も訪れていた。

 

 

 

『アルカナの連中か!?』

『その通りだ、レッドガン総長。』

『此方の損耗を考慮しての襲撃か……奴らには『窮鼠猫を噛む。』と言う言葉も知らんのか?』

 

 

 

その相手を察したミシガンはフロイトに答えを告げた。

 

同時にミシガンの言葉を煽る様にイグアスが答える。

 

 

『要は向かって来る奴らを纏めてブッ飛ばせばいいだけだろ?』

『大口を叩いた以上は、やれるな?』

『…この状況なら、やるしかねぇだろ!』

『此方も迎撃は可能だ。』

『かえりうち。』

 

 

 

イグアスと同じくラスティとレイヴンも同意した。

 

同時にスネイルが追って指示を出す。

 

 

『では、ヴェスパー4、G5、レイヴンの三名でアルカナの戦力を抑えて下さい。』

『俺達はエアと例のデカブツを収容する。』

『回収が終わり次第、合図を送ります。』

 

 

ミシガンとスネイルはラークとフェアリーの護衛をしつつフロイトとの合流を行う。

 

例の秘蔵品…AWH(アームズ・ウェポン・ハンガー)へカーラの武装を接続し運送。

 

アルカナの戦力をある程度削った後にグリット012を脱出する形となった。

 

 

『レイヴン、戦闘の継続を…』

『判った。』

『私はラークとフェアリーの補助を行いますので、貴方との交信が一時的に途絶えます。』

『二人を頼む。』

『判りました。』

 

 

レイヴンもエアとの交信で二人の事を預けた。

 

 

=続=

 




更新が遅くなって申し訳ありません。

少しずつですが、更新頻度を戻せればと思います。

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