グリット012からの脱出その3。
前回、レイヴン達の前に出現した謎のAC。
そして…オッツダルヴァの答えた『ナインボール』とは?
******
ナインボールと呼称された三機のACと対峙するレイヴン達。
同型機で赤、青、緑のカラーリング。
違う点とすれば、それぞれにアセンブルされた武装だろう…
既存データに無い機体だった為にエアは正体を知る者へ問いかけた…
『オッツダルヴァ、ナインボールとは?』
『…』
『危険なAC…なのですか?』
『ああ、本来はアリーナに出現するだけのデータの存在だった。』
エアの質問に答えるオッツダルヴァ。
『ナインボールは本来アリーナに君臨する覇者だ。』
歴代のアリーナに君臨しその頂点に立つAC。
登録パイロットは『ハスラー・ワン』と呼ばれる存在。
健在から古き世代のアリーナにもその名が出ている。
『だが、実際は違う。』
オッツダルヴァはアリーナがある目的の為に利用されていた事を伝えた。
『歴代のアリーナ自体が、優秀なAC乗りを選別し手駒にする為の…言わば選別システム。』
『選別…ですか?』
『ああ、同時に選別されたAC乗り達は全員消息を絶っている。』
『俺は無事だが?』
『…フロイト、君の場合は選別される直前にアーキバスへ入社した事で免れた。』
現在のアリーナランキング一位に君臨するフロイト。
オッツダルヴァの説明通り、ギリギリの所で選別を免れたらしい。
彼の説明に対してラスティらも会話に参加した。
『一歩間違えば、か…流石の私も主席と事を構えたくはないな。』
『んで、選別されやがった連中は…俺らの様になっちまったのか?』
『いや、もっと質が悪い。』
『?』
『古き世代から存在するシステムに取り込まれ…個を失う。』
『個…個人と言う意味ですか?』
『その通りだ、エア。』
『それ、まざ…てじぶんなくなう?』
『レイヴン、君の言う通り…システムに取り込まれたモノは人としての個を失う。』
それが歴代のアリーナで行われてきた所業。
アリーナを制覇しシステムに取り込まれた存在。
その一人が目処前にいた。
『タロット8、話は済んだか?』
『タロット4、何故…AMに忠実であった貴方が動いた?』
『我々がAMに従う必要は無くなった……AMの目的を私達が掌握する。』
タロット4の号令によって動き出すタロット7とタロット9。
『レイヴン、タロット4達の狙いは!?』
タロット4の言葉の真意に気づいたエアの忠告も空しく…
レイヴンらのACに三機のナインボールが接触し取り付いた。
『取り付かれただと!?』
『ちっ!どう言うこった!?』
『はがれなぃ!』
レイヴンらのACも先の戦闘である程度の損傷があるものの…
行動不能になる破損をしている個所がある訳ではない。
だが、AMの技術提供を受けたACである以上は最新式である事は間違いない。
ナインボールの馬力の方が三人のACの出力を上回っていた。
『ボイル、レミル、やれ。』
タロット4の指示の元、タロット7、9のナインボールより放たれるコーラル粒子。
『レイヴン、高濃度のコーラル粒子です!』
『!?』
ナインボールより放出されたコーラル粒子はフェアリーのACが浄化した状態の物と異なる。
赤いコーラル粒子はマナの調査によって暴走状態に陥っている。
それを利用する理由は…
『レイヴン、貴様達の肉体を明け渡して貰うぞ?』
『えぁっ!?』
コーラルによる脳内焼き付けの痛みに襲われるレイヴン。
周囲にばら撒かれたコーラルを通して激痛は全身に行き渡る。
同じく第四世代のイグアスと第三世代から第八世代に移行したラスティも例外ではない。
三人の共通点はルビコニアンであるエアと交信を行えている事。
それがタロット4達の目的に必要な条件だった。
コーラルによる焼き付けを利用し情報を転写する。
これがタロット4達の目的であり、彼ら自身がコーラル・リリースのトリガーに成り代わろうとしていた。
だが、彼らが求めるコーラル・リリースはAMの求める計画とは異なる。
『くそがぁああ!!』
『ぐっ!?』
レイヴン、イグアス、ラスティの人格をタロット4達の人格に書き換える。
コーラルを投与していない強化兵士であれば、逃れられただろう。
しかし、彼らはべリウス地方でコーラル被曝に巻き込まれている。
後に除染されてはいるものの、一部が体内に残留し同化ている状態が継続。
それがタロット4達の介入を許していた。
『レイヴン!イグアス!ラスティ!?』
『エア、何が起こった!?』
『オッツダルヴァ、タロット4達によってレイヴン達が書き換えをされています。』
『書き換えだと?』
『このままではレイヴン達の意識がコーラルに散逸してしまう…!』
異変に気付いて通信を再開したオッツダルヴァ。
エアが現在の状態を伝え、危機的状況であると答えた。
『話は分かった!』
『此方の準備が整いましたので、急行します。』
同じく別区画で行動していたミシガンとスネイルより通信が入る。
『私の方で散逸を抑えます…急いでください!』
エアは引き続きタロット4達の介入を抑え込む為に交信を利用して散逸を妨害。
相手が三人である以上、散逸をカバーするには手が足りない。
『大丈夫、エァ…』
『僕ら…も、手伝う…よ。』
応急処置で命を取り留めたフェアリーとラーク。
意識が朦朧としているもののレイヴン達の危機に気づいていた。
『フェアリー、ラーク。』
『レイヴン…をお願…い。』
『僕らでイグ兄達を…』
フェアリーとラークのコネクターとしての力。
コーラルドラックの影響でエアと同様に交信しイグアスとラスティの意識にリンクする。
同時に弾き飛ばされるタロット7と9の意志。
『これは…!?』
“ラスティお兄ちゃん”
『…まさか!?』
“イグ兄”
『ふぇありー…』
『らーく?』
幽体の様にラスティとイグアスの視界に現れるフェアリーとラーク。
““『私』と『僕』が護るから!!””
『レイヴン!私も諦めません!!』
相乗する様にエアもまたレイヴンの意識へ介入しようとするタロット4を弾き飛ばした。
『このような事が…!?』
肉体の自由を取り戻したレイヴン達。
『気色悪りぃ…野郎共がぁあああ!!』
『早々に出て行って貰おう!』
『しかげる!』
一瞬の隙を突いて至近距離の攻撃を加えるレイヴン達。
パルスブレード、マシンガン、パイルバンカーの一撃がタロット4達のACに直撃する。
当たり所が悪く火花を散らす。
『…(AMめ、何処までも小細工を。』
本来のナインボールであれば、先の攻撃程度は回避出来る筈だった。
だが、緊急回避行動が行えないロスが発生している。
タロット4はAC自体がAMによって細工を施されていた事を悟った。
『ボイル、レミル、作戦は失敗した…撤退する。』
『了解。』
『撤退します。』
自身の意識が転写されたコアブロックを利用している以上、機体の損傷は避けるべきだろう。
タロット4は二人に撤退の指示を出し、その場を後にした。
『レイヴン、いずれ貴様らの肉体を手に入れる…精々、他のナンバーズに倒されぬ事だな。』
捨て台詞を吐いた後、タロット4も撤退。
障害が無くなった以上、ここに居る必要はない。
『?』
『ん、この地響きは…?』
『けっ!もう来やがったか!』
『レイヴン、ラスティ、イグアス、四拠点を襲撃した大型機動兵器が此方へ接近しています!』
エアの警告と同時に到着する援軍。
『挽き肉にされたくなければ、さっさと乗れっ!!』
『各機回収後、グリット012を急速離脱します。』
ティンカーベルとフェニックスを核に運用するAWH。
レイヴンのフリューゲル用のAWHを持参したオッツダルヴァから通信が入る。
『レイヴン、このAWHは君専用だ…早急にドッキングしてくれ。』
『わかぁた。』
レイヴンもエアの補助を借りながらAWHとドッキング。
VOBを外したオッツダルヴァのステイシスはフリューゲルのAWH。
ヘッドブリンガーとライガーテイルはフェニックスのAWH。
スティールヘイズとオープンフェイスはティンカーベルのAWH。
それぞれAWHに搭載された外部ハンガーを使用し接続。
『座標を確認しました。このまま急速離脱します。』
エアがザイレムへの最短距離を確認し各AWHのブースターを加速させた。
全員がグリット012を離脱。
離脱後にグリット012は地響きと共に出現した大型機動兵器によって壊滅した。
=続=
微妙なオチで脱出完了。
次回は色々と回収作業。