ティンカーベルの子   作:宵月颯

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任務・2

 

ウォルターからの命令でルビコン3へ密航しIDを手に入れる。

 

ここで俺は俺を取り戻す為の戦いをする。

 

それだけだった…

 

 

******

 

 

「貴方は誰?」

 

 

飛行を行う空戦型ACに搭乗するパイロットはそう答えた。

 

幼さを残し、戦場に不釣り合いで純粋な声で…

 

 

「…」

「お話しは嫌い?」

「…」

『俺が話そう…621。』

 

 

彼ことC4-621は自身に対する受け答えが出来ない。

 

彼の個がまだ完全に回復していない故に…

 

反応に困ったと判断した彼のオペレーターであるハンドラー・ウォルターが代わりに答えると告げた。

 

 

『君は何者だ?』

「私はフェアリー…ヴェスパーにいる。」

『ヴェスパー…アーキバス社所属の強化兵士部隊か。』

「うん、そう。」

『私の名はハンドラー・ウォルター、彼はレイヴンだ。』

 

 

ウォルターの紹介で自分達は独立傭兵である事を説明。

 

企業や解放戦線からの依頼を受けるフリーの兵士だとフェアリーは覚えていた。

 

攻撃してこないのなら手を出してはいけないと教えられていたのでフェアリーは静かに話を聞いていた。

 

 

「ウォルターとレイヴン、うん…覚えた。」

『君はここで何をしている?』

「スネイル…小父さんに言われてここを見に来た。」

『何故だ?』

「……壁を超える為の練習。」

『…』

「さっき、おおきなヘリと戦ってた……でも、あれはもう一ついる。」

『何だと…?』

「レイヴンが倒したから、また戻って来る。」

 

 

ウォルターはレイヴンが偽装用のIDを手に入れた後で良かったと安堵する。

 

身分が無ければ仕事もままならないし怪しまれてしまう。

 

彼女はそれを理解していないが、何処から漏れるか分からないからだ。

 

 

『君は我々を攻撃するか?』

「しない…ルビコンの印、ベイラムの印、貴方は持っていないから。」

『なら、共闘を頼めるか?』

「共闘?」

『一緒に闘う…と言う意味だ。』

「ん、あれは私に痛い痛いしたから、大丈夫。」

 

 

レイヴンのACは先程、惑星封鎖機構の大型武装ヘリとの戦闘で弾薬を使い果たしている。

 

残っているのは左腕に装備されたパルスブレード位だろう。

 

 

「あ、あれ…」

 

 

フェアリーは何かに気が付いたのかACを移動させる。

 

足場に関係なく移動がしやすいACだと改めてウォルターが話していた。

 

フェアリーはそのまま近場で撃破されたルビコン解放戦線のMTに取り付いた。

 

 

「これ、使える?」

 

 

戻って来たフェアリーが持参したのは使いかけの実弾系ライフル。

 

武器自体の損傷は少なく、弾倉もある程度残っていた。

 

無いよりはマシだろうとウォルターの指示もあり、レイヴンは受け取った。

 

 

『レイヴン、彼女の話していた武装ヘリが戻って来る…迎撃するぞ。』

「…」

『フェアリーと言ったか?』

「ん。」

『君は空から武装ヘリへ攻撃を開始してくれ、地上からの援護はこちらがする。』

「判った。」

 

 

 

惑星封鎖機構の大型兵器である以上、企業も放っては置けないだろう。

 

解放戦線や敵対企業同様にコーラルを手に入れる為の障害である事は間違いない。

 

フェアリーはその意味を理解しているのか不明だが、使える戦力がある以上は利用する。

 

 

「うん、出来る…さっきと同じ。」

『レイヴン、彼女が攪乱している間に懐へ潜り込め。』

「…」

 

 

大型武装ヘリもフェアリーのACに攻撃を集中し撃ち落とそうとしている。

 

だが、フェアリーのACは持ち前の高機動でそれらを回避していた。

 

追尾ミサイルを上手く躱し、時には誤爆させて攻撃を阻害している。

 

彼女がヴェスパー部隊に配属されている以上は手練れだろう。

 

 

「レイヴン、おおきなヘリ…攻撃できない。」

 

 

フェアリーは武装ヘリの弾幕が弱まったのを見計らってミサイルコンテナを破壊。

 

一度離脱し、ヘリの遠距離砲台をレーザーガンとパルスブレードで撃ち抜き切り裂いた。

 

 

「…」

 

 

同時にレイヴンも武装ヘリの懐に入り先程と同様に動力部への攻撃を仕掛ける。

 

構造が同じだった為に先程の様に苦戦する必要はない。

 

貫くべき所は既に理解出来ているから…

 

 

「レイヴン、大きなヘリ…落ちる。」

 

 

動力部への攻撃で武装ヘリは火花を散らしつつ誘爆を繰り返して墜落した。

 

 

「レイヴン、大丈夫?」

「…」

『フェアリー、協力感謝する。』

「ん、平気…」

 

 

ウォルターは共闘してくれたフェアリーに感謝の言葉を告げる。

 

 

『では、我々は撤退する。』

「…」

『どうした?』

「帰れない…お電話通じないの。」

『…』

 

 

回収ヘリを回している間に別れを告げるウォルターだったが…

 

フェアリーはどうしていいか判らない表情で話した。

 

 

「…お電話したけど通じない。」

『ふむ、通信機の故障か…妨害電波か…兎も角、放って置くのもいかんな。』

「…」

『一緒に来なさい、レイヴンを援護してくれた礼だ。』

「ありがとう、あと、もう一人、いい?」

『もう一人?』

 

 

フェアリーはその場を離脱するともう一体のACを担いで連れて来た。

 

破損しているもののコアブロックは無事らしい。

 

 

「さっきのおおきなヘリに痛い痛いされた、怪我してる。」

『…ふむ。』

 

 

フェアリーの話通りなら、このACも惑星封鎖機構の大型武装ヘリの襲撃を受けたのだろう。

 

外部装甲は攻撃の影響か認識エンブレムも削れている。

 

だが、薄っすらであるが知る者は知るエンブレムである事は確かだ。

 

 

『…(これはベイラムのレッドガン部隊のACだな。』

「助けられない?」

『…いいだろう。』

 

 

フェアリーは敵対企業のACパイロットを助けた事を理解しているのか不明だ。

 

だが、人道的介入…助けたいと言う彼女の判断がそうさせたのだろう。

 

ウォルター自身も死に掛けであるがベイラム社のAC乗りを助けて置けば、何かの得もあるだろうと思い許可した。

 

 

『フェアリー、回収ヘリは予備を入れて二台しかない…指定距離まで飛べるか?』

「ん、大丈夫。」

 

 

あれだけの戦闘を行っても飛行を続けられるフェアリーのAC。

 

調査も兼ねてウォルターは回収ヘリに続いて拠点へ追従する様に説明した。

 

 

『621…帰るぞ?』

「…」

 

 

先の戦闘から数時間後、惑星封鎖機構の部隊は墜落した大型武装ヘリを発見。

 

その戦闘ログが解析された。

 

撃墜した筈の独立傭兵レイヴンが生存している事と…

 

ヴェスパー部隊の新型ACを危険候補としてリストに加える事となった。

 

 

=続=

 

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