ヴィランの俺がヒーローになって何が悪い!   作:yes,ヴィラン

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一話から二年後の話


元ヴィジランテ、18歳!

あれから二年の月日が経った。

 

謎のヴィジランテ、テールが姿を消してから約二年、インゲニウムが拠点としている東京の一部ではその間名物であった、『追いかけっこ』が見れなくなり残念がる市民が多かったという。

 

かく言うインゲニウムも日常の一部と化していた追いかけっこがなくなってしまったことにじゃっかんの気落ちをしながらも、いつもと変わらない感じで今日もヒーロー活動に明け暮れていた。

 

「インゲニウムさん、今日の見回りの資料です」

「あぁ、ありがとう」

 

夕方、昼の活動を終えたインゲニウム他、サイドキックたちは、報告書を書いていた。

 

「それにしても、やつがいなくなってからずいぶん静かになりましたね」

「……そうだな。やつがいなくなったおかげで、こちらはストレスで毎日鏡で剥げてないか心配することはなくなったが、騒がしいのがいなくなった分、別の意味で騒がしい奴らが日に日に増えている」

「まぁ奴の存在は、他のヴィランにとって抑止力になっていた、てことなんですかね……」

「俺たちが抑止力になれていなかったと嘆くべきか、奴のおかげで市民が無事でいられたと喜ぶべきか」

 

インゲニウムが報告書から目を離し、苦笑しながらため息をついた。

 

「なんだろうな、今だとあいつの声を聞きたがってる俺がいるんだ」

「お?じゃあ今から話そうぜインゲニウム!」

「ほら、あまりに重傷すぎてあいつの声が耳元で聞こえてくるよ」

「いやいや、今お前の真後ろにいるんだけど」

「はは、そんなわけがないだ…………」

 

空元気に笑うインゲニウムが後ろを振り向くと、そこには……

 

「よぉ、久しぶりだな!インゲニウム!」

 

二年前とは変わらない、いや、少し背が伸びた、嘗てヴィジランテとして活動していたテールの姿があった。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

現在、夜の居酒屋にて。

 

「ははは!いやぁお前とは一回こうして酒を飲みたかったんだよ!」

「いや待て情報がいろいろ多すぎる!!」

 

ヒーローコスチュームを脱いで普段着を着ているインゲニウム――飯田天晴と、相変わらずローブを身にまとった性別不明――テールが居酒屋の隅の席で飲んでいた。

 

二年ぶりの再会。

お互い積もる話もあるだろうと、事務所から近場の居酒屋に移動したはいいものの、テールがあまりにも勢いよくお酒を飲んでいってしまい、その勢いに乗ったままこの二年間で何があったかをノンストップで話し始めたのだ。

 

これにはさすがのインゲニウム(賢人)もあまりの情報量に酔いは覚め、頭の中に情報がぐるぐると回り始めた。

そしてさらには、

 

「あー、あと俺、春から雄英高校に努めることになったから!」

 

あろうことか、ヒーローになってまだ少ししか経ってないにも関わらず、最高峰のヒーロー育成所である雄英高校の教師になるとまで発言したのだ。

 

流石のインゲニウムもこれには驚きを隠せていなかったが、まぁあの人(根津校長)ならありえなくはないかと現実逃避をしてなんとか耐え凌いだ。

 

「あ!店員さん、枝豆もう一つ……いや二つくださーい!」

 

そんなインゲニウムの苦労をまるでわかってないテールは、近くにいた店員を呼びつけて酒のつまみを頼んでいた。

今日の飲みはインゲニウム持ちなのが確定しているからなのか、遠慮なく次々と頼んでいく。

 

「はぁ、少しは遠慮してくれないか?俺の財布がどんどん軽くなっていくのだが」

「ははは!悪い悪い。でも、久々に会った友人と飲むのは気分がいいからな!止めようにも止められん!」

 

ローブを纏っていても、どんな表情をしているのか見なくてもわかるぐらいに明るい性格をしたテールは、卓に置かれた枝豆を丁寧に食べている。

 

テールの言葉が本音だとわかってしまったインゲニウムは、もう一度ため息をつき、自分も枝豆を食べる。

 

「にしてもインゲニウム。お前全然飲んでないな!」

「明日もヒーロー活動があるからな。市民を守るために酒に溺れていては示しがつかない」

「あいっかわらず真面目だねぇ」

 

テールはその言葉に苦笑し、ローブの裾をばたばたとする。

 

「にしてもここ、暑くないか?」

「……?いや、そうでもないが」

「……あー、なら酒の飲みすぎかな、ちょっとローブ脱ぐわ」

 

そう言ってローブをまるで上着のように脱いでいくテール。

インゲニウムはその様子をチビチビとお酒を飲みながら眺めていると、とある光景を見て思わずむせてしまった。

 

「おいおい、どうしたんだよ。急にむせちまって」

「ごほっ、ごほっ……、いや、そういえばテール、お前の性別を聞いてなかったなと思ってな……」

 

その言葉を聞き、テールはよくわからないといった顔をするが、すぐにその意図に気付いたのか大笑いをし始める。

 

「あっはははは!そういえばそうだな!ずっと俺はローブ着て変成器もつけて喋ってたからな!そりゃあ俺の性別もわからなくて当然だわな」

 

まぁ今も変成器はつけてるけどな、と笑うテール。

そんなテールは、その一人称も勘違いの一因だということに気づかない。

 

「まぁ、ここらで改めて自己紹介してもいいかもしれないな」

 

テールは未だに置いてきぼり状態のインゲニウムを軽く無視し、また酒も入っているということもあり、声高らかに言い放つ。

 

 

 

「俺の名はテール(主人公)、本名は絶斗 克美(ぜっと かつみ)。性別は女!個性はでっけぇ声では言えないが、少なくとも()()()()()()()()()()()と自負してる!歳は18だ。改めてよろしく頼むよ、インゲニウム先輩!」

 

 

 

他の誰か、というより全ヒーロー、もしくはヒーローファンを敵に回すかのような言い回し。

少しの歯車の狂いで、ヒーローファンに背中を刺されてもおかしくないような発言。

 

それを当の本人はわかっているはずだが、そんなことは関係ないと言わんばかりに堂々と胸を張る。

まるであの、ナンバーワンヒーロー――オールマイトでさえも、自分の手にかかれば確実に勝てるといった気迫だ。

 

インゲニウムはそれに苦言を漏らそうとするが、今までのテールの行動を思い返し、」その苦言を飲み込み、代わりにテールに向かってニッと笑って見せる。

 

「あぁ、よろしくな、次期ナンバーワンヒーロー候補の後輩!」

 

インゲニウムはテールの目を見る。

その目には、野心と言われれば違うし、油断と言われても違う。

その目には圧倒的な自信に満ち溢れていたのだ。

 

 

 

 

 

なお次の日、あんなに自信満々に非公式にだがヒーロー全体にケンカを売ったテールは、二日酔いのためにその日一日はトイレから出てこれなかったということを伝えておく。




テールの容姿
髪:青みがかった黒髪・ウルフカット

目:細目・目の色は黒みがかった紫

顔:可愛いよりカッコいい寄り

体:全体的に細いが、見えないだけで結構な筋肉量を要する

身長:162cm



最後のインゲニウムも若干酔っているため、大々的な発言をしています
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