ヴィランの俺がヒーローになって何が悪い! 作:yes,ヴィラン
「――って感じね、何か聞きたいことはあるかしら?」
「……え、あーいや、現状特に聞きたいことはないです、はい」
現在はお昼も始まり、ちょうどいい時間ということもあり、テールはミッドナイトと食堂に来ていた。
普通に平日ということもあり、食堂にはたくさんの生徒が食事をしている。
普通の高校なら、もっと弁当持ちやコンビニで済ます人が多い中、ここ雄英ではクックヒーローランチラッシュが、生徒でも求めやすい値段で健康的な食事を提供しているのだ。
かと言って教師陣は違うのかと言われれば、そういうわけでもなく普通に利用している教師もいる…とミッドナイトはテールとともに列に並びながら説明する。
「それにしても女性の教員が増えるって聞いてワクワクしてたのよ、私」
「そう、なんですか」
高校を中退して以来、このように雑談をするのはインゲニウム以外だと誰もいなかったためか、曖昧な返事だけをして黙り込んでしまうテール。
彼女は、表ははっちゃけた性格をしているが、裏では初対面の人に大したリアクションができない人見知り属性を持っているのだ。
「女性の教員って言ったら、私とリカバリーガールと13号しかいなかったし、13号に関しては専門にしてる授業とか全然違うからあんまり話せないのよね。かといって休み時間とかは次の授業の準備とかしなくちゃいけなくてねぇ」
「な、なるほど…です」
そんな話をしながらランチラッシュの目の前に到着する二人。
テールは何を頼むのか考えてなかったのか、うーんうーんと唸っている。
そんなテールを脇目に見つつ、ミッドナイトは、いつもの、とランチラッシュに伝える。
「え、あ、お、俺も同じものを」
何を食べるか長い時間悩んでいてしまってはミッドナイトにも、後ろにいる生徒たちにも迷惑がかかると思い、急いでミッドナイトと同じものを頼む。
そして先に席についていたミッドナイトの隣に座り、共に食事を始めた。
「ゆっくり選んできてもよかったのよ?」
「いえ、さすがに待たせるのは…駄目だと思ったので」
「…なんか聞いてた話と違うのよねぇ」
「と、言いますと?」
小首をかしげるミッドナイトに対し、テールも小首をかしげる。
「いやね?あなたと仲良かったっていうインゲニウムに貴女の話を聞いたときは、すごいいたずら好きだって聞いてたし、今朝の感じもなんか男勝りな感じに見えてたんだけど、なんか今は首根っこをひっつかまれた子猫みたいに見えちゃって」
「あー…ふふ」
テールはそのようなことを言っているインゲニウムを想像し、思わず小さく笑う。
……後半に関しては、未だ自分がプロヒーローになれたのかと興奮しており、調子に乗っていただけなので、その辺はスルーする。
「……!?あ、いや、これはあの…!」
先輩であるミッドナイトが話している途中だというのに、インゲニウムのことで思い耽ったことを思わず恥じてしまい、思わずそばにいたミッドナイトに否定の言葉をぶつける。
が、当のミッドナイトは鼻血を垂らしながら、笑顔を浮かべてサムズアップをしている。
「青春してるわね、テールちゃんは!」
ミッドナイトの表情と発言に、テールは表現のしようのない寒気に襲われ、思わず距離をとる。
「ねぇ、テールちゃん」
「……はい、なんですか?」
「思いっきり抱きしめてもいい?」
「ダメ」
テールは急いでお昼ご飯を口の中にかきこみ、テーブルに置いておいたヒーローコスチュームの一部であるガスマスクを顔につけ、ローブを着込んで防御態勢をとるのだった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
いろんな意味で危険だったお昼休みを終え、今はヒーロー科二年の教室にお邪魔していた。*1
「ってことで、現在研修期間中で現在、雄英のいろんなことを学んでいる、研修生よ!ほら、挨拶して!」
「あ、はい。…すーっ、俺の名前はテール、本名は絶斗 克美だ。至らないところも多々あると思うが、よろしく頼む!」
先ほどまではよそよそしいといった感じだったが、今はヒーローとしてのキャラづくりなのか自信満々といった感じで話し始めるテール。
「はい!」
「…どうかしたか?」
簡単な自己紹介を終えて一息ついた様子のテールに対して、一人の生徒が手を勢いよく上げる。
「テールさんは俺たちと年齢が同じように見えるんですけど、実際の年齢はいくつですか?!」
その質問に、教室が少し静かになる。
みんな、気にになってはいたが中々聞けなかった質問のようだ。
「あ、はいはい!私も気になってました!なんで私たちとそんなに変わらない感じなのに教師になろうと思ってるのか!」
別のほうからは、鮮やかなシアン色の髪色をした少女が手をぶんぶんと振ってアピールしている。
テールは少しため息をついてから、ぼそりと呟くように言う。
「18だよ」
『じゅ、18いいぃぃ!!?』
教室内、阿鼻叫喚。
それもそうだろう、自分たちと一個しか違わないのにプロでヒーローをしていて、あまつさえ雄英で教師を使用と考えているだなんて、そんな人物はなかなかいない。
「すごい、すごいよ天喰くん!私たちと全然変わらないのにもうプロとして活躍してるんだって!」
「あぁ、俺たちとなんも変わらないのに、もう人々のために活躍している。それに比べて俺は……」
そんな阿鼻叫喚なクラスを少し苦笑いをして眺めるテールは、少し困ったような眼をしてミッドナイトのほうを見る。
ミッドナイトはその視線に即座に気づき、またその意図を理解したのか、生徒のほうに向きなおって、そして…
「はいみんな、少し静かにして!」
手に持っていた鞭を地面に打ち、静かにさせる。
「ありがとうございます、ミッドナイト。…えーと、この中に三年生を除いた中でトップに最も近いって言われてる、ビック3っていうのがいるって聞いてたんですけど、誰でしたっけ」
「それは――」
テールがこのクラスにいると聞いていたビック3が誰かを、ミッドナイトに聞こうとする。
すると……
「俺たちのこと、なんだよね!」
教室内から声が響き渡ったのだった。