仮面ライダーギーツ 卵割編   作:エグ神

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ぐおおおおお時間が欲しい。
全人類ワンダーエッグ・プライオリティを見ろ(発作)


卵割Ⅳ:アニバーサリー・イブ

「結局、俺たちは傍観者か」

 

 屋敷の中の寝室。

 ベッドの傍らに佇んでいた二体のトルソーは、その上に横たわっているアイを見守りながら落ち着いた調子で言葉を交わした。

 

「もともと僕たちができることは限られていた。まして今回はイレギュラーな事態。アヤメが別世界から来た脅威なら、あの神様とやらが対処するのが筋というものだ」

「自分のケツは自分で、か。実際それしかなさそうだ」

「アイなら大丈夫だろう。彼女はもう立派な“戦士”なんだから」

 

 どこか他人行儀な口調は今に始まったことではない。

 だが今回ばかりは彼らも本当に焦っている様子だった。

 

 アイたちが敗北すれば、あらゆる並行世界が「死」で満たされる。そうなれば自分たちの「優先事項」を果たすどころではない。

 

「案外、アヤメの思惑通りになるのもアリかもしれんな」

「……ひまりのところへ、か」

 

 冗談交じりではあるが、本音が含まれていることもまた事実だった。

 しかしそれはフリル——「死の誘惑」に屈することと同義。当初の目的とは真逆の結論だ。

 

「まあ、どうせなら最後まで足掻いてみよう」

「戦うのは俺らじゃないがな」

 

 ベッドで仰向けになっているアイの顔へ視線を寄せる。

「死の誘惑」——「タナトス」に抗うための「エロスの戦士」。それに最も近い少女が、夢の中で過去最大の脅威に立ち向かっている。

 

「期待しているよ」

 

 心からの言葉を贈った後、アカは一足先に部屋を出て庭園へと向かった。

 

 

 自ら命を絶つ選択をした少女たち。その未練が重なり、混ざり合った彫像が夜空を貫いている。

 その下に見える草原には地獄と見紛う光景が広がっていた。

 

《BOOST MARKⅢ》

 

 上半身のみが白く染まった不完全な創世の神が地を駆ける。

 相対する黒い戦士————ピューピルが見せる高速移動へ食らいつきながら、ギーツは紅蓮の尾を解き放ち敵を捉えようとしていた。

 

 ピューピルが力の源としている“絶世の女神”。あの彫像は創世の力と同質の力を備えている。あれが存在し、創世の力を相殺してくる限り、ギーツは全力で戦えない。

 

 仮面の下で笑みをこぼしながら、ピューピルは全身から射出したレーザー攻撃の照準を白狐へと集中させた。

 

「アハハハハハハハハ!!!!」

 

 裂くようなアヤメの笑い声が響く。

 

 際限なく放出される光熱波が、ギーツの軌跡をなぞるようにして降り注いでいく。

 対するギーツはブーストマークⅢによる空間歪曲を用いてそれを凌いでいた。

 

 草原の中心でピューピルとギーツの戦闘が展開される中、その周囲では無尽蔵に“ポーンジャマト”が出現しており、その場にいたアイもギーツたちの戦いを観戦するだけとはいかない状況だった。

 

「このっ……!」

 

 全方向から襲い来るジャマトたちを、アイは使い慣れた武器を振り回して粉砕していく。

 その行動に大した意味がないことはアイ自身わかっていた。この状況を作り出しているのはピューピル——アヤメ本人。彼女を打ち倒さない限り、ジャマトたちも無尽蔵にわき出てくる。

 

「英寿さん……!」

 

 仮面ライダー同士の戦いに割って入れるほど、アイの戦闘能力は高くない。

 その事実に歯がみしながら、アイは遠方で神話の如き死闘を繰り広げている両者に視線を向けた。

 

「そもそもお前のことはずっと前から嫌いだったんだ!」

 

 駆け回るギーツに光熱波を照射し続けながら、ピューピルが叫ぶ。

 

「すました顔で難なくデザグラを勝ち抜きやがって! そのくせ叶える願いには純粋な欲望がない……! わたしらが望んでるのはお涙頂戴の茶番じゃないんだ! ——まだベロバが出しゃばってた時のがマシだったよ!!」

 

 予備動作なしで瞬時に距離を詰めたピューピルの拳がギーツの胸元に突き刺さる。

 三つの尾を動員し衝撃を受け止めたギーツだが、わずかに押し負けているようにも見えた。

 

「……ッ」

 

 右方向から飛来したピューピルの蹴りがギーツの胴体を捉える。

 その直後の体勢を崩した瞬間を狙って、畳み掛けるように再度レーザーが放射された。

 

 生い茂る草原が次々と焼け野原へ変貌していく。

 アヤメ自身の身勝手な怒りを体現するかのように、瞬く間にその場は煉獄を思わせる赤へと染まっていった。

 

《DELETE》

 

 防御姿勢をとりながら攻撃を凌いでいたギーツへ、ピューピルは手を緩めることなく必殺の一撃を解き放つ。

 グレアの“ヒュプノレイ”、ゲイザーの“ドミニオンレイ”と酷似した遠隔武装を膝から分離させ、高出力の熱線を白狐へと集中させた。

 

「——創世の力はエンターテイメントのための舞台装置であるべきなんだ。ギーツ……お前がいると、世の中のすべてがつまらなくなる」

 

 爆発で広がっていた煙の幕が晴れ、膝をついたギーツの姿が露わになる。

 

「逆がそうであるように、お前が存在する限り“絶世の女神”は十分な力を発揮できない。……消えろよ、ギーツ。わたしが思い描く理想の世界に、お前のような神はいらない」

 

 ギーツへ歩み寄るピューピルが右手を掲げると、空間が歪むほどのエネルギーが集束する。

 勝ちを確信するように笑ったピューピル——アヤメは仮面の下で微笑すると、眼下にある標的へそれを振り下ろそうとした。

 

 だが、それは真横から飛来した重量によって阻止された。

 

「あ……⁉︎」

 

 メイスのような大型の武器。

 アイだ。視界の端で、大戸アイが投擲後の体勢で息を切らしている姿が見えた。

 

「……っ!」

 

 意識が自分から逸れた一瞬を狙って、ギーツは生成した尾による打撃でピューピルを牽制しつつ後退する。

 ピューピルは腹の底からわく怒りに身を震わせながら、鬱陶しそうな調子で口にした。

 

「…………空気読めよ、陰キャ」

「さっきから全然……! アヤメちゃんの言ってることわかんない!」

 

 苦しそうに表情を歪ませながら、アイは心の声を張り上げる。

 

「死んじゃうことが……楽しいことのはずがない。本人も、残された人も……! 幸せになる人なんて誰もいないよ!」

「知らねえよ」

 

 懸命に言葉を紡ぐアイのもとへ詰め寄りながら、アヤメは返す。

 

「所詮他人のことなんてどうでもいいのが人間じゃないのか? ならせめて自分の世界だけは面白おかしくしようって生き物が人間なんじゃないのか? お前ら古代人はそうやって薄汚い歴史を積み上げてきたんじゃないのか……⁉︎」

「う————!」

「アイ!」

 

 ピューピルがアイの胸ぐらを掴んだ直後、飛び出したギーツを阻むように遠隔装備から放出されたエネルギーが半透明の障壁を形成する。

 

 仮面越しにアイと向かい合ったアヤメは、彼女の前髪に隠れたオッドアイを睨みつけながら口を開いた。

 

「わたしは何も間違ってないよ、大戸アイ。これがわたしの“プライオリティ”——他者を顧みない、自己の幸せを貪る。偽善だらけの抗弁を撒き散らすお前ら古代人よりもよっぽど人間らしいとは思わないか?」

「私……だって」

「あ?」

「私だってそう!」

 

 胸元を握るピューピルの腕を両手で掴み返したアイは、揺らぎのない眼差しを目の前の仮面へ向けた。

 

「私だって……自分のことしか考えてない。私はねいるに生きていて欲しいから戦い続けてる! ねいるの幸せじゃなくて……自分の幸せのために戦ってるの!」

「はぁ……?」

 

 それはアヤメにとっては理解し難い思考、論理。

 

「苦しくても……やり遂げなきゃいけないんだ。そこに私の……幸せがあるからッ!」

 

 直後、アイの手元から放たれた輝きがはっきりとした像を結ぶ。

 二振りの短剣————ペンライトのようにも見えるそれを前方へ振るい、ピューピルの胸元に火花を咲かせた。

 

「なんっ……⁉︎」

 

 アイはすぐさま次の行動へ移る。

 短剣を手元から消し、今度は新体操に用いるリボンらしきものを作り出すとそれをピューピルの脚へと伸ばし、巻きつけた。

 そのまま腕を引き、現実世界ではあり得ない腕力でピューピルを宙へと放り投げる。

 

「小細工を……!」

 

《BOOST STRIKE》

 

 アイへ意識が向いた最中、後方から迫り来る灼熱への対応が遅れる。

 防御するよりも速く、ギーツが繰り出した拳はピューピルの顔面へ炸裂した。

 

「————クソがぁッ‼︎」

 

 吹き飛ばされる寸前、即座に身を捻ったピューピルもまた横薙ぎの蹴りをギーツの頭部へと直撃させる。

 

 地面へ転がったのは同時。だがダメージが蓄積されていたギーツは限界がきたのか、その変身は解除され再び浮世英寿の姿へと戻っていた。

 

「英寿さん!」

「問題ない」

 

 駆け寄ってきたアイを手のひらで制止しつつ、英寿は立ち上がってピューピルを見据えた。

 

 創世の力を封じられている今、このままギーツ単独で戦闘を続けても状況が好転することはあまり望めない。英寿自身そのことは予感していた。

 

 だが、もちろん引く気はない。

 ここで負ければ、あらゆる世界の人々が死に誘われることになるのだから。

 

「……ごめんなさい、英寿さん。私にもっと、戦う力があれば……」

「なにを勘違いしているのか知らないが、俺がきみに求めているのはそこじゃない」

「え?」

 

 アイを一瞥した後、英寿は前方に立つピューピルへ視線を戻す。

 

「アヤメ、お前がやろうとしていることは、可能性の剥奪…………人々の幸せになれる権利そのものを奪う行為だ。誰であろうと他人の幸せを奪うことは許されない。誰もが幸せになれる世界から最も遠いものを、お前はつくろうとしている」

「知らねえって言ってるだろ……」

「本来人の願いとは誰にも侵害されるべきじゃないが、俺はお前の願いを否定する。……人々から願いを預かる神様として、お前の好きにさせるわけにはいかないからな」

 

 そこまで言って、英寿は再びアイの方へ顔を向けた。

 

「アイ、きみが今いちばん望んでいることはなんだ?」

「え……?」

 

 戸惑うアイを横目に、英寿は周囲に集まってきたポーンジャマトたちを生身で相手取り始める。

 

「さっきアイ自身が言ったことを思い出せ。きみはどうしてワンダーエッグを買う。どうして戦い続ける。友達を助けることが……なぜ自分の幸せに繋がるんだ!」

「それは……」

「ごちゃごちゃと……うるさいんだよッ!」

 

 自ら作り出したジャマトの群れを吹き飛ばしながらアイへと突進するピューピル。

 英寿は変わらず生身のままその腰元へ覆い被さり、決死の覚悟で彼女の動きを止めた。

 

「コイツ……!」

「英寿さん⁉︎」

 

 刹那、英寿とピューピルの狭間で閃光が迸った。

 英寿が密かにつくり出していたマグナムシューター40Xの弾丸が、ピューピルの腹部で弾けたのだ。

 

 思わず後退するピューピルへ目を固定したまま、英寿は続ける。

 

「せっかく目の前に神様がいるんだ。願い事の一つくらいしても、バチは当たらないさ」

「私の……願い」

 

 瞬間、アイの中で何かが燃え上がった。

 

 アイはずっと怖かった。自分がねいるを助けても、彼女はそれを望んでいないのだとしたら、それはきっと彼女にとって「不幸」になる。

 そうなればアイにとっての「幸せ」もなくなる。

 

 ねいるに笑顔でいて欲しい。また一緒にフルーツでも食べて、どうでもいい話に花を咲かせたい。

 

(ああ————そうだ)

 

 自分自身の幸せに気がついた時、アイは自然とそれを言葉にしていた。

 

「私は……きっとねいるがどう思うかなんて、それすらもどうでもよかったんだ」

 

 

 ——『何度だって、また挑戦する。ねいるは私に会いたいって、絶対思ってる!』

 

 かつての自分の決意表明。

 そこに秘められていたのはねいるへの想いなどではなく、ただひたすらに自分の幸せを掴みたいと願う心だった。

 

(そうだ……『ねいるが私に会いたい』んじゃなくて、私が……私自身が、ねいるに会いたいって、ずっとそう思ってた。ううん、ねいるだけじゃない……)

 

 思い起こされるのは、今はもう遠く感じる日々の記憶。

 ワンダーエッグのガチャマシンがあるあの庭園には、アイだけじゃなく、ねいる、リカ、桃恵もいた。

 

 アイは今でもずっと、あの日々を夢見て戦っていたんだ。

 決して戻ることのできない時間。あの時しかなかったもの。

 

 

 

 

 

 

 

「……あいたい」

 

 涙と一緒に、無意識に言葉が溢れてくる。

 アイが戦う原動力となる願いが、彼女の中で確かな像を結んでこぼれた。

 

「もう一度みんなに……会いたいよおっ‼︎」

 

 嘘偽りのない心からの願いが、夜空に溶けていく。

 

 僅かな静寂が訪れた後————荘厳な鐘の音色とともに、英寿の全身が輝き始めた。

 

「“絶世の女神”の力で相殺できない……⁉︎」

 

 狼狽するピューピルを横目に英寿が微笑する。

 

 創世の力は、他者の強い願いに同調してその波長を強めることもある。

 かつての英寿の仲間たちも、それぞれの「願い」を創世の力にくべることで特別な力を手にしたことがあった。

 

 アイの強い願いと同調して、一時的にだが英寿の創世の力が絶世の女神の力を上回ったのだ。

 

「——今の俺にはどうしても限界が存在する。だがアイ、この力はきっと……きみを裏切ることはないだろうさ」

「え……?」

 

 周囲を満たしていた輝きが英寿の手元に集まっていく。

 それは小さな光の結晶となり、最後には英寿たち仮面ライダーが用いる小型の“レイズバックル”へと変化していた。

 

 英寿は流れるような手つきで握っていたマグナムシューターへそれを装填し、夜空へと銃口を向ける。

 

《ANEMONERIA》

 

《ANEMONERIA TACTICAL BLAST》

 

 眩い閃光とともに、黄金色の流星が天へと昇っていく。

 やがて星の弾丸は炸裂し、夜空に空く風穴のような“門”をつくり出した。

 

 その“門”から二筋の光柱が地表へ降り注ぐ。

 アイは凝らした眼でそこに浮かんできた人影を確認すると——声にならない叫びで、その名を呼んだ。

 

 

「あなたのハートに〜! ——ずっきゅんばっきゅん!!」

 

 

「————ッ……!!」

 

 突如として飛来した二振りの刃がピューピルへ殺到し、彼女は咄嗟に両腕を構えてそれを防御。

 カッターナイフのような形状をしたその刃は回転しながら光柱のもとへ戻り、持ち主の手の中へと帰っていく。

 

 光が晴れたときに見えた二つの背中に、アイは見覚えがあった。

 

 

「——勢いでぶっ飛ばしちゃったけどさぁ、なぁにここ? いつものミッションと違くない? ん、てかアンタ誰?」

「あ……えと、私もよく状況がわかんなくて、気づいたらここに立ってたから」

 

 一人はスタジャンにダメージジーンズ——どこかパンクな雰囲気を醸し出している少女。

 もう一人は白いベストを着用した清潔感のある長身の少女。

 

「——リカ! 桃ちゃん!」

 

 肺に残っていた空気を全て吐き出す勢いで、アイは彼女たちの名前を呼び、駆け出す。

 背後からやってくるアイに面食らいつつも、二人の少女は迎え入れるように彼女の方を向いた。

 

「お、もう一人いるじゃん。アンタもエッグ買ってるの?」

「え?」

「私たち初対面なんだけど……なんだか今回のミッション、複数人でこなすタイプみたいで」

 

 いまいち噛み合わない態度にアイの思考が一瞬止まる。

 

 今アイの目の前にいるのは間違いなくかつての仲間たち————川井リカと沢木桃恵だった。

 だが……まるでお互いのことなど知らないように、両者は怪訝な視線を向け合っている。

 

 刹那、過去に遭遇したケースが記憶の棚から引っ張り出された。

 

並行世界(パラレル)の……リカと桃ちゃん?」

「えっ、私のこと知ってんの⁉︎ もしかしてファンだった?」

 

 頭に浮かんでいた可能性が、リカの返答によって裏付けられる。

 

 英寿の力で呼び出された二人————彼女たちはアイが知っているリカと桃恵とは似て非なる存在。別の並行世界に存在するであろう二人だった。

 

「——んま、今はそれどころじゃないか。私川井リカ。『かわいいリカ』、覚えやすいでしょ?」

「私は沢木桃恵。今回限りだけかもしれないけど……よろしくね」

「あ————」

 

 涙とともに溢れ出そうになった言葉を飲み込み、アイは笑顔をつくった。

 

「——私、大戸アイ。……実は、別の世界との二人とは既に会ってるんだ」

「ほんとに? そんな話は向こうで聞いたことあるけど……」

「まーあなんでもいいよ、よろしく。——う〜ん『アイキュン』『アイアイ』『あーちゃん』『アイティ』『アイジョリーナ』……なんて呼ばれてた?」

 

 いつか尋ねられたこと。

 今度は考える必要もなく、

 

「……『アイ』。アイだよ、リカ!」

 

 満面の笑みで、アイは返した。

 

 

「役者が揃ってきたな」

「うわっ⁉︎ なにこのイケメン⁉︎ ヤッバ!」

「わ……」

 

 後方からアイの隣まで歩み寄ってきた英寿を見て思った通りの反応をする二人に、アイは思わず吹き出しそうになった。

 

「——ハッ……何をしたのかと思えば、ガキ二人呼んだだけかよ」

 

 数メートル離れた場所に立っていたピューピルが吐き捨てるように口にする。

 

「舐められたものだな。……わたしとマトモに戦えるのはギーツ、依然お前だけ。より強力な“ジャマト”を呼び出しでもすれば、状況は絶望的になることくらいお前ならわかるだろ?」

「アイのおかげで俺の力も戻りつつある」

 

 そう言って英寿は、懐から取り出した紅白色のバックルを掲げて見せた。

 

「それに、俺が呼んだのは彼女たちだけじゃない」

「…………なに?」

 

 笑みを微塵も崩すことなく、英寿はアイたちの前へ踏み出しながら言い放った。

 

「仲間に会いたいと願ったのは、アイだけじゃないってことさ」

 

 直後、再び重々しい鐘の音が空間に反響した。

 

「まさか————」

 

 ピューピルが何かを予感したその時、英寿たちの背後に光のカーテンが広がっていく。

 その奥から徐々に近づいてくる影の正体を察知した瞬間、仮面の下でアヤメは奥歯を噛み締めた。

 

 

 

 

「——また厄介ごとに巻き込まれたみたいだな、ギーツ」

 

 固い表情を僅かに緩ませた彼が最初に口を開いた。

 

 現れたのは、二人の青年と一人の少女。

 それぞれまとっている雰囲気は別物だが、共通点として全員が英寿が身につけているものと同じ“デザイアドライバー”を腰に巻いている。

 

「動画の収録中だったんだけどな〜……」

「まあまあ、英寿の頼みなら聞かないわけにはいかないでしょ」

「神様が願い事なんて、あべこべだな」

「フッ……たまには神様が願い事の一つくらいしたって、バチは当たらないだろ?」

 

 それはかつて「理想の世界」を賭けて戦ったライバル————そして仲間たち。

 

 牛のライダー……仮面ライダーバッファ、吾妻道長。

 狸のライダー……仮面ライダータイクーン、桜井景和。

 猫のライダー……仮面ライダーナーゴ、鞍馬祢音。

 

「うわっ⁉︎ イケメンがいっぱい出てきた⁉︎」

「女の人もスタイル良くて……かわいい……」

 

 アイが呆然とする横で、リカと桃恵がうっとりとした表情を見せる。

 

「あなたたちは……?」

「紹介するよ。俺の——信者たちだ」

「は?」

「信者⁉︎」

「そこは仲間って言うところでしょ⁉︎」

「冗談だ」

 

 三人の中ではいちばん平凡な印象を覚える青年のツッコミに、英寿は楽しげな笑みを浮かべながら言った。

 

「この状況を打開するために俺が呼び寄せた仲間たちだ。……きみの願いはまだ完全に叶ったわけじゃないだろう、アイ」

「……!」

 

 英寿が視線で示した方向へ向き直る。

 そこに見えたのは夜空を貫くほどの高さでそびえている巨大な彫像。

 

 アイの親友————ねいるが囚われているであろう“絶世の女神”。

 

「今回のミッションはこうだ。道を阻むジャマトとラスボスを引きつけて、彼女を——アイをあの彫像まで送り出す」

「えっ」

 

 英寿の言葉を耳にした全員の表情が引き締まる。

 

「たまにはこういうミッションもありかもな」

「うん、なんか楽しいね」

「状況はよくわからないけど……やることは前と変わらないよね?」

「目の前の敵をぶっ潰して」

「私たちの願いを叶える」

「背中は任せろ。……会えるといいな、きみの大切な人に」

「……英寿さん」

 

「ギーツ……ッ!」

 

 一変した状況とそれを導いた創世の神に向けて、ピューピルは周囲を焼き尽くさんとするような憎悪のこもった声音を吐いた。

 

「お前も仮面ライダーだって言うなら、自分の手で願いを掴み取ってみせろ。……俺たちを倒してな」

 

 

《MARK Ⅸ》

 

《SET IGNITION》

 

 

 

「——変身!」

 

 

 

《REVOLVE ON》

 

 英寿がドライバーへバックルを装填すると、周囲の空気がさらに変わった。

 現れた「九尾」が装甲へと変形し、神々しい光を帯びて彼を包み込む。

 

《DYNAMITE BOOST!》

 

《GEATSⅨ》

 

 これまでのギーツとは比較にならない威圧感。

 九尾を思わせるマントを下げ、創世の白狐が顕現する。

 

「——変身!」

「変身!」

「へ〜んしん!」

 

 彼へ続くように同じ工程——ベルトに挿したバックルを操作する三人の仮面ライダーたち。

 

《ZOMBIE》

《NINJA》

《BEAT》

 

 使い慣れた装備をそれぞれ身に纏いながら、ライダーたちは少女とともに並び立つ。

 

 生に執着し、幸せを願う者たちの戦いが、幕を開けようとしていた。

 

《READY——FIGHT》

 




相変わらずワンエグ視聴が前提のエピソードになっているので、皆さんワンエグを見ましょう。

ある程度ご存じの方向けに少し補足しておくと、最終的に円盤3巻についてくるドラマCDへ繋がるようなイメージで執筆しております。何がなんだかわからないという人は今すぐ円盤を買いましょう(据わった目)。

おそらく次回で完結します。
ではまた。
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