501のウィザード 番外編   作:青雷

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実はユーザーさん方の間で結構熱い(?)らしいロスマン先生編です。
…えー、一応、最初に謝っておきます。

ごめんなさい!!!


いつかの聖夜~ロスマン~

 サトゥルヌス祭──この日は誰もが家族や親しい者と過ごすというのが通例だが、何事にも例外というものは存在する。

 

「──あの、本当にいいんですか?」

 

「気にしないで。あなた、今日は恋人と過ごすんだって言ってたでしょう?1年に1度なんだから、仕事をする暇があったら少しでもおしゃれに時間を使いなさい。後は私の方でやっておくから」

 

「ロ、ロスマン先生……ッ!──ありがとうございますッ!今度、お返しに美味しいもの持ってきますから!お疲れ様ですッ!」

 

「……別に食べ物でなくてもいいのだけど」

 

 走り去っていった部下を見送ったロスマンは、さて、と気を入れ直し、今しがた部下に襲いかかろうとしていた大量の書類達を片付け始める。

 

「これは……新人の子達の訓練記録ね。──へぇ、中々いいじゃない。特にこの子、磨けば絶対──」

 

 そこでハッとし、いかんいかんと仕事に集中する。

 前線から身を引いて暫く、教官として後進の育成に注力するようになってからというものの、こういった書類との対面が増えてきた。502部隊ではサーシャがこっち方面の業務を担当していたが、今度機会があればコツでも聞いてみようか──そんな事を考えながら、訓練記録をファイルに纏め終えた。ご丁寧に1人1人ロスマンの注釈付きだ。

 

 その後は、元より自分の分だった書類達の相手をする。訓練生用ストライカーをアップグレードしたいという具申書だったり、訓練に於ける弾薬類の消費を記録したものや、今後の訓練の方向性を決める会議の資料等、内容は多岐に渡る。

 

 黙々と作業を続けること暫く──ようやく全ての仕事を片付けたロスマンは、椅子にもたれて大きく伸びをする。壁の時計を見ればとうに夕飯時を過ぎており、かれこれ2時間程作業をしていたらしい。

 

「ふぅ……他の皆も、もう帰ったみたいね」

 

 部下を見送った時にはチラホラと残っていた同僚達は姿を消しており、ロスマンが最後のようだ。

 

「……私も帰ろうかしら」

 

 手早く荷物を纏め、職場を後にする。外に出るなり肌を撫でてきた寒風に身震いしたロスマンは、マフラーを口元まで引き上げてから歩き出した。

 

(折角のサトゥルヌスだし、夜はいつもより奮発しようかしら)

 

 仕事を頑張った自分へのご褒美として、"ワインとよく合う肉料理が評判"と以前から気になっていたレストランへ向かってみる。──が、

 

「申し訳ありません。現在満席でして……」

 

「……因みに、待ち時間は……?」

 

「既にご予約のお客様もいますので……少なくとも2時間は掛かってしまうかと」

 

「そう……ありがとう。またの機会にするわ」

 

 ピークの時間は過ぎている為、空いているかもしれないと来てみたが、少々甘かったようだ。

 次に向かったのは、魚介系のパスタが人気の店。以前も行ったことがあり、また行く機会を探していた店だ。

 

「すみません、本日分の材料がもう……」

 

「……サトゥルヌスだもの、仕方ないわ。──また今度にするわね」

 

 それならばと足を運んだのは、少し入り組んだ路地にある小さなカフェ。コーヒーや紅茶以外にもパスタやオムライスといった料理を楽しめるこの店は、ロスマンも定期的に訪れる秘蔵の一軒。ここならば──と思ったところで、一度踏み留まる。

 

(大丈夫、よね……?)

 

 念の為、こっそりと窓から店内を覗いてみる。数人の先客こそいるが、空席はいくつかある。今度こそ大丈夫そうだと胸をなで下ろしたロスマンが入口へ向かうと──

 

 

 ─本日貸切─

 

 

(……ニパさんも、こんな気持ちだったのかしら……)

 

 何かにつけて「ツイてない」と揶揄されていたかつての同僚を思い出しながら、トボトボと歩き始める。ここまで来たらもう適当な店でワインとケーキだけでも買って帰ろうと思っていたところで、不意に、背後でドアの開く音が。

 

「──やっぱり、ロスマン先生!」

 

 どこか聞き覚えのある声に振り返ると、

 

「ユーリさん……!?」

 

「さっき一瞬だけ窓から見えたので、もしかしたらと思ったんですが……お久しぶりです」

 

「ええ、久しぶり──さすが人気者ね、パーティの最中に邪魔しちゃったかしら?」

 

「邪魔なんてそんな──そうだ、もしよろしければ先生もご一緒にどうですか?」

 

「ありがとう、でも気持ちだけ受け取っておくわ。折角のパーティに私みたいな部外者が入っていっても、皆気まずくなっちゃうでしょうし──それじゃあね。パーティ、楽しみなさい」

 

 呼び止める暇もなく、ロスマンは足早にその場を立ち去る。残されたユーリは、遠ざかる彼女の背中を見送りつつ、店内に戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

(──はぁ……何とかお酒とケーキは買えたけど、想定してたよりもこぢんまりとした夜になりそうね)

 

 帰宅したロスマンがテーブルに置いた箱。その中には、帰り道に立ち寄った店で運良く残っていた小さなケーキが入っている。当初予定していた自分へのご褒美と言うにはは随分質素だが、1人で過ごすサトゥルヌスにはお似合いかもしれない。

 

「懐かしいわね……」

 

 脳裏に502部隊の仲間達と過ごしたサトゥルヌス祭の記憶が思い起こされる。部隊に残っている皆は今頃賑やかなパーティを楽しんでいるのだろうか。あの偽伯爵辺りは現役を退いて尚、こういう時にはひょっこりと基地に顔を出してそうなものだが。

 

「……しんみりしてても仕方ないわね。折角の聖夜だもの、出来る範囲で最大限楽しまなきゃ損だわ」

 

 今こそ、これまでコツコツと集めていた秘蔵の物品を解放する時──そう思った矢先、不意に玄関の呼び鈴が鳴った。

 

(こんな時間に来客?誰かしら……)

 

 訝しみながらもドアを開けると……

 

「──ああ、良かった。帰られてたんですね。不在だったらどうしようかと」

 

「ユーリさん……どうして、あなたパーティはどうしたのよ?」

 

「急用ということで抜け出してきちゃいました。……正直、皆さんお酒を飲む中で僕だけ飲まないでいるの、ちょっと居心地が悪かったというか」

 

 それを聞いて、そういえばユーリは酒が得意でなかった事を思い出す。

 

「それでわざわざここまで?あの店から結構歩くわよ?」

 

「まぁ、こういうのは慣れてますし。それに折角ロスマン先生と会えましたから──これ、お土産です」

 

 曰く、どうやら店のマスターもロスマンが中を覗いているのに気づいていたらしい。サトゥルヌスの夜に女性の元を訪ねるなら手土産は持って行きなさい。と、チキンとケーキを手土産として持たせてくれたのだという。

 

 料理の入った箱を受け取る際、指先がユーリの手に触れる。

 

「手……こんなに冷たくなってるじゃない。優秀な生徒だと思ってたけど、まだまだ指導が必要かしら?」

 

「実際、こういう日の楽しみ方は先生の方がお上手でしょうし。お願いします」

 

「仕方ないんだから──あがって、お茶を淹れるわ」

 

 予想外の訪問者を迎えたロスマンは、どこか嬉しそうに口元を緩めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 ロスマンは買ってきた酒を、ユーリは淹れてもらった紅茶を飲みながら、料理とケーキを食していく。

 

「──ふぅ……美味しかった。やっぱり誰かと一緒の方が楽しいわね」

 

「そういえば、先生は今日ご予定無かったんですか?先生程の方なら、職場の皆さんにお誘いを受けそうなものですが」

 

「そうね……実のところ、今の職場では私はまだ新人なのよ。教練担当の歴の長さで見れば、逆に1番上なのだけど」

 

 長いこと部隊の教練担当として数多のウィッチ達を育て上げたロスマンだが、正式に教官としての立場に就いたのは割と最近の事。だからこそ周囲の者も、彼女に対して新人として接するべきか、逆にベテランとして敬うべきか、まだ手探り状態なのだろうという空気はロスマン自身感じ取っていた。今日仕事を肩代わりした部下のようなタイプはどちらかといえば少数派になる。

 

「だから、まぁ概ね予想通りね──こうしてあなたと2人で居ること以外は」

 

「なら、その偶然に感謝しないとですね。サトゥルヌス祭の日にロスマン先生とご一緒出来て、嬉しいですよ」

 

「全く、暫く会わない内に随分とお上手になったものね。どこかで偽伯爵の影響でも受けたのかしら?」

 

「流石にクルピンスキーさん程口は回りませんよ。ただ、思った事を正直に口にしただけです」

 

 そう言われて、不意に顔が熱くなった気がした。もう酒が回ってきたのだろうか。

 

「……あなた、誰にでもそういうことを言ってるの?」

 

「……そういうこと、とは?」

 

「……ユーリさん、ちょっと来てもらえるかしら?」

 

 席を立ったロスマンは、ユーリを伴い別室へ移動する。

 

「先生、ここで何を……?」

 

 本人に自覚が無いのなら。教育担当としてロスマンがやることはひとつ。

 

「──いい機会だわ。あなたみたいな男が軽はずみに女性に甘い言葉を投げかけたらどうなるか……みっちりと教えてあげる」

 

「え…──ッ!?」

 

 不意に手を強く引かれたユーリは、驚く程容易く組み敷かれてしまう。押し倒されたのがベッドであり、ここはロスマンの寝室なのだという事を遅まきながら理解した。

 

「気付かなかったかしら?実はさっきの紅茶、少しだけリキュールを混ぜたの。普通ならほんのり酔う程度の弱いものだけど──こんな簡単に押さえ込まれる程度には効果があったみたいね」

 

「先生…っ、待ってください!これ以上は──!」

 

 少しぼんやりとした頭でロスマンを説得しようとするユーリだが、生憎こちらはしっかりと酒が回っている。説得など無意味だ。

 

「確かに、これ以上は魔法力を失うかもしれないわね……けど、私を誰だと思ってるの?」

 

 妖艶な笑みを浮かべたロスマンはユーリの首筋にチロリと舌を這わせる。突然の感触に、ユーリの身体がビクンと跳ねた。

 

「純潔を守ったままでも、気持ちよくなれる方法はたくさんあるのよ──もう私以外の女にあんなセリフを吐けないよう、徹底的に教育するからそのつもりでいなさい」

 

「先…生……ッ」

 

 

 こうして、聖夜は更けていく──多くの人々の喜びと笑顔、教え子への秘めたる想いを乗せて。

 

 




私の小説では最大限のギリギリラインを攻めた話になりました…書き始めた時はこうなる予定じゃなかったんだけどなぁ…?

残る2本は明日24日の投稿となります。
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