TSジト目銀髪ロリ「断固として防がねばなるまい」 作:パワー!
私は自らの拠点である軍支部の前に立っていた。
「ふふふ」
普段クールで無表情な私だが、思わず口の端を上げてしまう。
だが今日ばかりは仕方ない。少しくらい笑っても許されるだろう。
「ふふふふふふ」
遠巻きに部下たちがチラチラとこちらの様子を伺っているのがわかるが、彼らの視線の先はおそらく私ではない。
そう、このでっかい鎌のオブジェを見ているに違いないのだ!
「ふふふふふふふふふ」
私の目の前には、私の身長をはるかに超える大きな鎌のオブジェが二本クロスするように建っている。
先日軍本部を訪れて門前払いという屈辱を受けた際に、私は思ったのだ。
本部の前にあるでっかい剣のオブジェ、かっこよすぎる。私のとこにも欲しい、と。
思い立ったが吉日、私はすぐに部下と一緒にオブジェ製作にとりかかった。
剣もいいが、やはりここは鎌。鎌はロマンの塊だ。
支部の特性を出すのにもちょうどいい。
私以外はみんな剣を使うが、そのみんなと戦ったら私が勝つので、これは横暴でもなんでもなく合理的判断に基づいた決定に違いない。
半日で完成した。
オブジェというのは建物というより芸術品のイメージが強かったのだが、私の軍ならお茶の子さいさいだった。
さすが私が毎日土木仕事を与えているだけはある。
お茶の子どころかコーヒーの孫でもさいさいかもしれない。
「見ろよ、はんぺんちゃんが腰に手を当ててるぞ」
「すごい嬉しそう」
「しかも珍しくご機嫌……っ!」
「それはいつも通り」
「お口もにょもにょさせないでも笑えたんだ」
部下たちはオブジェがかっこよすぎて今は近寄れないらしい。
街中でとんでもない美形と遭遇したら道を開けてしまうのと同じだ。
「ふふふふふふふふふふふふ」
何度見てもかっこいい。剣のオブジェも良かったが、これは別格だ。
私は自分がかつてなくニヤついているのがわかった。
今の姿を部下に見られたら大変だが、彼らもまた鎌のオブジェを見るのに必死なのだから大丈夫だろう。
だが、見られたとしても今日は許されるに違いない。
なんせ今日は、鎌のオブジェが出来てから一週間記念日なのだから。
「たぶん、はんぺんちゃん今『今日は完成から一週間記念日だ!』って思ってるぞ」
「流石にそれはないんじゃないか? そんなメンヘラ彼女みたいな」
「でも昨日きいたとき『今日は完成から六日記念日だ』って言ってた」
「まじか。越えてきた」
「メンヘラというよりただ純粋な子供なだけ」
「私が育てなきゃ」
私はオブジェを前に再度決意を新たにした。
このかっこよさに恥じないような活躍を見せなければならない。
我が軍の正義の心を忘れずに行動していこう。
私は昂った気持ちに任せて、オブジェではなく本物の相棒の大鎌を上に掲げた。
「ふふふふふふふふふふふ」
「純粋な子供なのはいいとして、あれはどうなんだ」
「ご近所さんがこの前あれ見て、軍が変な宗教団体になったと勘違いしてた」
「そりゃそう思うわ。クロスした鎌なんて死神でしかない」
「それを前に鎌を掲げて笑う子供……なんかホラー映画のポスターみたい」
「夢に出そう」
「私が育てなきゃ」
しばらくオブジェの感動に浸っていると、遠くで感動に浸っているはずの部下たちが何やら騒がしいことに気づいた。
「正義の軍が悪の化身みたいになってるのはまずいな」
「誰かオブジェ作る時に止めなかったのか? 普通に考えて鎌はなしだろ」
「俺は止めたけど『それなら私を倒してみろ』って」
「理不尽すぎる」
「ランドセルは何色がいいんだろ」
やれやれ、そんなに近くで見たいなら堂々とくればいいものを。
そもそもここは我々の拠点なのだから遠慮する必要はない。
私の部下たちはシャイのようだ。
仕方ないので私は部下に手招きをした。
上からの命令は絶対。これは軍の鉄則だ。
私は「隊長が呼んでいるから仕方ない」という口実を彼らに作ってあげているのだ。
私はクールで無口なため勘違いされやすいが、部下への気遣いもできる良い上司なのを忘れてはいけない。
最近、命令に反対されることが何回かあった気がしないでもないが、それは今は関係ないことなので頭の隅に追いやる。
部下たちがぞろぞろと私の元へと歩いてきた。
「なんですか隊長」
「私は良い上司だから」
「疑義がかなり残りますけど、可愛……かっこいいからそうですね」
「うん。それに私は親切」
「親切な人はみんなの意見を汲んでくれますよね」
「実際そう。今みたいに」
部下たちが顔を合わせて黙ってしまった。しまった。自分から言うのは違ったかもしれない。
彼らの頭上に『?』が浮かんでいる。
私は一番近くの『?』を手に取って後ろに隠した。これで大丈夫。
ほっと一息つくと、拠点の中から一人の部下がこっちに向かって歩いてきているのに気づいた。
何やら気まずそうな顔をしている。
「隊長、今本部から連絡が来まして」
「どうした」
「表彰はなしだそうです」
「え」
全身をショックが駆け巡る。表彰がなし、だと。
やはり本部は私のことを嘲笑っていたようだ。許せない。
私はショックと同時に怒りに燃えた。
「支部を勝手にカルトにしたからだそうです」
「…………?」
「すぐに元に戻せだそうです」
「意味がわからない」
だが、これではっきりした。
本部は私を揶揄っていたのだ。適当な理由をつけて表彰をなしにしてくるあたりがその証拠だ。
かなり楽しみにしていたのに、この仕打ちはひどい。
クールな私でも少し落ち込むし、少し怒りが表情に出た。
「顔真っ赤で可愛い」
「シッ、聞こえるぞ」
「本部は妥当な判断下せるんだな」
「そんな気がした」
「ランドセルは赤色がよし、と」
部下たちも自分の尊敬する上司がおちょくられて騒めいているようだ。
私は怒りに肩をぷるぷる振るわせる。
すると女兵士が私の側まできて、私を抱きしめた。
部下に気をつかわせてしまったらしい。
女兵士はいつもの真顔で「よしよし」と言いながら私の背中をさすったあと呟いた。
「私が育てなきゃ」
「え」
「ランドセルは赤」
「え」
え?