TSジト目銀髪ロリ「断固として防がねばなるまい」 作:パワー!
帰って紅茶を飲むという私の完璧な計画は、一瞬で崩れてしまった。
なんと、敵軍を殲滅している間に、私の愛する国が何者かに荒らされていたのだ。
死人が出たとかそういうわけでなく、道が破壊されたらしい。
一体誰が何の目的でこの破壊行為を行ったのかは不明だが、そいつのせいで私たちは今こうして破壊された道の修理をしているというわけだ。
もしかして、な◯う軍の仕業か!
砦への襲撃が囮で、その隙に内部を破壊するという作戦だったとか。
あり得る。
「おのれな◯う軍め……」
「隊長、ぼけっとしてないで働いてください。自分でやったことでしょう」
「次攻めてきたらなんとしてでも殺す……」
「隊長」
「ごめん」
よくよく考えれば、囮作戦などという頭脳的な作戦を、せいぜい将棋の駒でオセロをしてギリギリ違和感を覚えないぐらいの知能しかない敵軍が思いつくはずもなかった。
そしてよく考えなくとも、道が破壊されてるのは私のせいだった。
人間誰にでも失敗はあるので仕方ない。
「でも人間は失敗から学び、同じ過ちを繰り返さないよう努める生き物でもありますよ」
「噂で聞いたんですけど、どこかに学ばずに失敗を繰り返す隊長がいるらしいです」
……最近、部下が私のことを舐めているように感じるのは気のせいだろうか。
皮肉を言っているように聞こえる。
まぁそんなわけないはないのだが、一旦応戦しておこう。
「そんな奴がいるのか。私は別の噂を聞いたぞ。なんでも、子供をいじめる大人がいっぱいいるらしい」
「隊長、それは見苦しいですよ」
「…………」
さて、さっさと修理を終わらせて帰ろう。
部下たちは私のために手伝ってくれてるのだから、私が少しでも作業を進めるべきだ。
だから喋らずに集中してやろう。
「隊長が毎回道を破壊しまくるせいで、俺たちそこら辺の職人より土木作業がうまくなりましたよ。なんで鎌引き摺るだけで石でできた道が引き裂かれるんですか」
「私はおかげでこの前知人に家の修理を手伝って欲しいって言われました」
聞こえない聞こえない。集中集中。
「隊長が大鎌引き摺りながら道を破壊していくの、もうハーメルンの国民たち慣れちゃったみたいですね」
「その後俺たちがこうして修理するのまで、もはや風物詩的な扱い方されてますよ」
聞こえない聞こえない。集中集中。
「そういえば隊長、最近『大鎌の半天使』なんて呼ばれてますけど、もともとは『大鎌の天使』だったらしいですよ。隊長はちっちゃくて銀髪で、見た目は天使っぽいですもんね」
聞こえない聞こえない。集中集ちゅ……?
「でも大鎌引き摺って街を破壊しまくるから、悪魔の方がしっくりくるんじゃないかってなったんですよ。でも結局見た目の天使感が強すぎるせいで、半天使ってことで落ち着いたらしいです」
「えっ」
聞こえた。
私のかっこいい二つ名、由来はかっこよくなかった。
私の中で衝撃の稲妻が走る。
大鎌を華麗に操って敵を引き裂く、その美しくも強い勇姿に感銘を受けた人々がつけた名前だと思っていたのに。
そんな理由だったのか。
ショックだ。
私は立ちくらみがして、よろけてしまう。
「ちょっ、隊長! どうしたんですか急に」
咄嗟に部下が支えてくれる。
やはり私の部下は皆優秀だ。
しかし、私を襲ったショックはあまりに大きい。
しばらく布団にくるまって丸くなりたい。
敵軍の自動メンタル回復装置が羨ましくなった。
「隊長? あれ、隊長? おーい。え、死にました?」
部下には申し訳ないがちょっと一人にさせて欲しい。
だから目の前でそんなにぶんぶんと手を振らなくていい。
私は部下の手を払う。
「生きてた」
当たり前のことを言う部下に支えてくれた礼を伝え、私は道の端にしゃがみ込んだ。
「隊長ショック受けたみたい。可愛……可哀想」
「今愉悦するなって。気持ちはわかるけど。ゾクゾクする」
「隊長の三角座り……百二十点!」
「隊長置物になっちゃった……なんか力湧いてきた!」
「今ならいつもの倍のペースで動ける気がする!」
なんとか立ち直り、顔を上げた時には既に道は綺麗になっていた。
後で部下から聞いたが、私がショックから立ち直るまでの間、部下たちは愉悦パワーでいつもの三倍はやく修理を終わらせたらしい。
流石は私の部下だ。ハーメルン軍万歳。