TSジト目銀髪ロリ「断固として防がねばなるまい」 作:パワー!
部下たちの頑張りのおかげで、なんとか日が沈む前に作業を終えることができた。
衝撃の事実が発覚したことにより、私はショックで途中からほとんど何もできなかったのだが、それが部下たちのやる気の着火剤になったようでよかった。
実質私のおかげで早く終わった。
つまり、戦闘といい修理といい、今日いちばん活躍したのは私だということだ。
まぁ、私は隊長なので当然といえば当然なのだが。
修理の方は元々私が原因だということには目を瞑っておく。
相棒を手放すなんて考えられないのだから、あれは仕方ないのだ。
冷静になって考えてみると、鎌によって引き裂かれた石畳を半日足らずで修理してしまう私の軍は一体なんなのだろう。
明らかに戦闘よりもそっちの方が適性があるように思える。
ハーメルンの軍は私を含め皆優秀なのは当たり前なのだが、優秀さの方向性がやや斜めを向いてるのではないだろうか。
脳みそが入っているかすら疑わしい敵軍のように、あらゆる物事に対して無能でないのは喜ばしいことなのだが。
そのうち軍の敷地内を色々改造し始めないか不安である。
この前、「俺たちならこの規模の建物でも改修できるんじゃないか」と部下が話し合ってるのを聞いた。
私は軍の建物のあの古き良き感じが好きなので、いらない革命が起きそうで少し悲しい。
ただ、部下に任せればより快適になるのは間違いないので、やめろと言うこともできないのが現状だ。
最近敵軍のちょっかいが増えてきたので、当分はそんな暇ないと思うので大丈夫だと信じたい。
というよりも、本当に最近は相手の攻撃の姿勢が止まらない。鬱陶しい。
私たちは別に敵の国に乗り込もうとは考えてないため、ずっと防御体制を敷いている。
今日私が直々に出張って確信したが、敵軍の数が日に日に増えている。
敵兵一人一人の質は別に高くない。こちらが職人が100年研いでできた刃だとしたら、敵軍は使い潰した百均のハサミの切れ味程度だ。
しかし、あまりにも数が多い。
以前はもっと少なかった気がするのは、気のせいではないだろう。
一体今までどこに隠れていたのか、日を追うごとに増えている。
今はまだ私たちが圧倒できているからいいが、このまま敵軍の数が増え続けると危ういかもしれない。
一応、私の隊の後ろにはより強力な別動隊が控えてはいるが、菌類のように指数関数的に増える理解不能イかれ軍団がこちらの想定を超えてくる可能性もある。
な◯う軍に完全に侵略されたら終わりだ。
美しい祖国が醜い地獄になってしまう。
その事態だけはなんとしてでも避けなければならない。
今後の戦闘はますます過激になっていくだろう。
それに備える為にも、今できることを最大限にやる必要がある。
私はな◯う軍殲滅という高尚な決意を胸に、壁にかけてある大鎌に触れた。
これからも頼むぞと相棒に声をかけ、その柄を握りしめる。
そして周囲のものを壊さないように注意しながら、一振り。
宙を走る鎌の刃がキラリと光った。
「…………」
決まった。
今のはかなりかっこよかったのではないだろうか。
そのまま流れるように決めポーズをする。
チラリと鏡を見てみると、そこには『大鎌の半天使』がいた。
あまりのクールさに震えてしまう。
由来がやや残念ではあったが、響きはかっこいいし私にぴったりなのは間違いないのだ。
これからの戦いで、人々が由来など忘れるぐらいかっこいい活躍をすればいい。
この大鎌で、敵を狩り尽くすのだ。
鏡の中の己の姿に興奮し、私は意味もなくもう一度鎌を振った。
ふと、鏡の中の私と視線が重なる。
ドヤ顔だ。ふてぶてしい。
私は冷静になった。
いけないいけない。
常にかっこよくあるためには、そんなにコロコロと表情を変えてはいけないのだ。
常にクールな表情を保つように努めなくては。
今できることを最大限にやるという先ほどの考えが蘇る。
さっそく行動に移すことにしよう。
今の私が出来ること。それはつまり新たな決めポーズの開発だ。
極めて重大な仕事である。
私は鏡の前で、まだ見ぬ新たなかっこよさを求め、鎌を振り回し始めた。
無論、すぐに見つかるとは思っていない。
かっこよさというのは安売りされていないのだから。
ああでもないこうでもないと、試行錯誤を繰り返しながら私は鎌を振る。
しかし、いくらやっても全く良いポーズが思い浮かばない。
結局いちばん最初のポーズに回帰する。
自分の無力さが悔しく、私は歯を食いしばる。
それでも私は鎌を振るのだ。
ガシャン!
「あ」
しまった。夢中になりすぎて、つい鏡を割ってしまった。
これではポーズを客観視できない。
今日のところはこれで止めにしておこう。
鎌を壁にかけ直し、割れた鏡の破片を集める。
するとその時、私の部屋のドアが叩かれた。
「隊長! すごい音がしたんですけど大丈夫ですか! さてはまた鏡割りましたね! 今月2回目ですよ!」
あ、これは面倒くさいやつだ。
部下の声色に怒気を感じる。
今日は道の修理も手伝ってもらったし、無理もないか。
私はドアを開けるのを躊躇った。
なんとか言い逃れる方法はないものか。
そして閃いた。
さっきの鏡の割れる音は違う部屋から聞こえたことにすれば良い。
私はドアを開ける。
「私の部屋からではなく隣の部屋から音がしたぞ」
「隊長、隣は私の部屋ですよ」
「逆隣……」
「隊長の部屋は角部屋です』
「そうだった」
これ以上は無理そうなので、私は諦めて認めることにした。
「あ! 鏡だけじゃなくて、部屋中が酷いことになってるじゃないですか! 一体何してたんですか」
「今できる最大限のこと」
「意味がわかりません」
この後部下にちょっと怒られた。私は隊長なのに。なぜだ。