TSジト目銀髪ロリ「断固として防がねばなるまい」   作:パワー!

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7話

 今日も今日とて、憎き敵軍を撃退することに成功した。

 私と相棒である大鎌の前に、敵軍はあまりにも無力だ。

 私は『大鎌の半天使』なのだから当然である。

 

 削れた地面を埋め直しながら、私は自画自賛した。

 

 朝から敵軍の顔を見たにも関わらず、今の私の機嫌はいい。ウキウキだ。

 鼻歌を歌いながら、地面に土を流し込む。

 

 私が何故機嫌がいいのか、理由は単純だ。

 

 流石の私でも、紅茶を飲んでくつろいでいたところに襲撃の知らせがあった時は機嫌が良くなかった。

 しかし、大鎌を引きずって遅れて戦場に到着した際、私の姿を見た敵兵が『大鎌が出たぞ!』と叫んだのだ。

 相手がいくらうざったい敵軍だからといって、私の名前が広まっているのを実感できたことが嬉しかった。

 

 このままいけば、私が世界中で有名になるのは時間の問題だろう。

 

 今なら穏やかな気持ちで敵兵を七枚おろしにできそうだ。

 敵軍よ早く来い。私の名声のための犠牲となれ。

 いややっぱり来るな。

 

「ふふふ……」

「隊長、手が止まってます」

「ふふふ……」

「ふふふじゃないです」

「……ははは?」

「隊長が私よりも幼い女の子じゃなかったらぶん殴ってますよ」

 

 おっと、自分の世界に入りすぎていたようだ。

 部下に怒られてしまった。

 ちらりと隣に座る部下の様子を伺うと、こちらに一瞥もくれず無表情で作業に集中しているようだった。怖い。

 

 私は慌てて土を平らにする作業に取り掛かる。

 

 この部下は私と同じ数少ない女兵士で、私より5つほど年上だ。

 いつも無表情で、淡々と仕事をこなす。ポーカーフェイスの達人だ。

 私もかっこよさを求めて普段からなるべく表情を変えないように努めてはいるが、この女兵士には負ける。

 私は女兵士の真顔以外の顔を見たことがないのだ。

 部下の男共がそのポーカーフェイスを崩そうとギャグ百連発をしたこともあったが、彼女は頬をぴくりともさせなかった。

 いや、あれは普通に私もつまらないと思ったから、すごいのは彼らのセンスのなさか。

 

 とはいえ、この女兵士のポーカーフェイスはなかなかのものだ。

 だから私は彼女のことをよく参考にしている。

 

 ちなみに、以前どうしていつも無表情なのか尋ねたら、『だって普段無表情の子が、物語の山場で笑ったり泣いたりするのグッとくるじゃないですか』とのこと。納得の理由だ。

 

 やはり彼女も我が国の民。素晴らしい感性を持っている。

 

 

 

 

 怒られたため、私はしばらく作業に集中していた。

 しかしいつもやってる作業のため、すぐに退屈になってしまう。

 

 女兵士は相変わらず隣で作業に集中している。と思って横を見てみると、女兵士は手でワニを作って遊んでいた。

 無表情だ。怖い。

 こいつ、さっき私に注意したくせに。

 でも私が手伝ってもらっている側だから何も言えない。悔しい。

 

「お前の名前はワニワニパニックだ」

 

 女兵士が何か呟いている。どうやら手ワニに名前をつけたらしい。

 

「今日から私に仕えるように」

 

 女兵士はそう言って微笑み、手ワニの口をパクパクさせた。

 女兵士が笑っているのを初めて見て衝撃に震える私をよそに、彼女は作業を再開する。正直グッときた。

 

 私は女兵士にいつも以上に興味が湧いてきた。

 暇だったため、雑談しながら作業してもよいだろう。

 部下との交流は大事だ。

 

 私は女兵士に声をかける。そうだ、とっておきの話をしよう。

 

「最近、私はすごいことに気づいた」

「なんですか急に」

「気になる?」

「別に」

「ドッグフードを食べたら目が良くなるんだよ」

「たぶんそれ間違ってますよ」

「でも犬はみんな目がいい」

「どこ情報ですかそれ」

「私。でも確証はある。眼鏡をかけた犬はいない」

「そうですね」

「そして犬はみんなドッグフードを食べる。つまりはそういうこと」

「でもコンタクトかもしれないですよ」

「…………」

 

 たしかに。

 

「隊長」

「何」

「思ったこと言っていいですか」

「うん」

「時間返して欲しいです」

「私も思った」

 

 私たちは再び黙り込んで、作業に集中することにした。

 作業はあと4分の1か。今日は早く終わりそうだ。

 

 石の道なら修理が大変だった。

 わざわざ遠回りして土の道を選んだ甲斐があった。

 今朝の自分に感謝しなくては。

 

 しかし、そのせいで到着が遅れて部下たちに文句を言われたのは納得いかない。

 一体どうすればよかったというのだろうか。

 やはり石の道を削ってでも進めばよかったのか。

 

 ふと顔を上げると、私たちが道を修復してるのを全く気にした様子もなく、民たちが街を歩いている。

 

 その様子をなんとなく眺めていると、私は気づいた。

 

 そうだ、私はこの国を守るために戦っているのだ。

 後のことを考えて遠回りなんてもっての他だった。

 私としたことが、そんな当たり前のことを見落としていた。

 部下たちはそのことを責めていたのだ。

 

「ごめん。私が悪かった」

「いいですよ。何に対しての謝罪かはわかりませんが」

「今後は石の道でも切り裂いていく」

「やっぱりよくないです」

 

 今日の己の行動を恥じ、私は前を向く。

 

 子供達が道の端で追いかけっこをしていた。

 その子たちに声をかける老婦人がいた。

 それを屋根の上から見下ろして怪しげに笑う青年がいた。

 

 この平和で素晴らしい国を守るために、私はこれまで通り石の道でも切り裂いて行こう。

 

 心に決意を滾らせ、私は地面に土を流し込んだ。

 

 

 

 

 修理を終え、軍の拠点に帰ろうとしたところ、遠くから部下が走ってきているのに気づいた。

 何やら慌てた様子だ。

 

「隊長! 配信切れてなかったせいで真の実力がバレちゃいましたな◯う軍が、我が淫夢RTA配信ハーメルン軍のフリをして侵入しています!!」

「……私が出る」

「はっ!」

 

 愚かにも私の愛するこの国に侵入するなんて許せない。

 この国は私が守る! 

 

 ズサササッ! 

 

 私は部下に没収されていた大鎌を奪い取り、使命感に燃えて石の道に向かって走り出した。

 

「ちょっ、隊長! なんでわざわざ石の道に行くんですか! この道から行けますって!」

 

 ズサササッ! 

 

「というか、侵入してますっていいましたよね! 砦に向かっても何もないですって! そっちじゃない! こら待て、止まれ!」

「あぁ……せっかく直したのに……」

 

 待っていろな◯う軍! 

 

 イクゾー! デッデッデデデデ! (カーン)デデデデ!

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