TSジト目銀髪ロリ「断固として防がねばなるまい」 作:パワー!
いつものように、私の名前を世界に轟かせるために鍛錬を積んでいると、軍本部からのお呼び出しがかかった。
来月までに来いとのことなので随分と急だ。
「戦況の確認と、隊長のこれまでの功績を鑑みて表彰されるらしいですよ」
……勝ったな。
私は内心でガッツポーズをし、実際には真顔でダブルピースをした。
国から私の功績が認められたということは、『大鎌の半天使』の名が名実ともに認められたということだ。
まだ敵軍を完全に殲滅できていないのに、表彰されてもいいのだろうかとも思ったが、そこは偉い人が決めたのだから大丈夫なのだろう。
この調子だと、私はその偉い人よりも偉くなってしまうかもしれない。
口元に笑みが溢れそうになるのを必死に堪えながら私は部下に、報告ご苦労と伝え退出を促した。
部下は一礼をし、扉の前まで移動する。
そのまま出ていくかと思ったところ、部下は「そういえば」と言いながら振り向いた。なんだ。
「隊長がさっきから熱心に書いてるその紙、一体なんの書類ですか」
「鍛錬」
「なるほど、わかりました。失礼します」
そう言って部下は今度こそ部屋から出ていった。
短いやり取りで意思疎通が可能なこの感じ、嫌いじゃない。
まさか、部下が『あ、これめんどくさいやつだ』と察して会話を切り上げたなんてことはないので、私は満足げにうんうんと頷いてみせた。
私の目の前には『かっこいい前口上集(4)』という最重要書類と、先ほどまで私が使っていた万年筆が置かれている。
部下が報告に来るまで、私はここに思いついたかっこいいセリフを書き殴って忘れないようにするという鍛錬を積んでいたのだ。
書きづらいからボールペン使ったらよかったという頭の中の声は無視だ。
空き時間でも勤勉な姿勢を保つ己の立派加減に、思わず震えてしまう。
こんな隊長を持つ私の部下たちはきっと幸せに違いない。
そして、こんな私を認めるこの国はやはり最高の母国だ。
だからこそ私はここで立ち止まるわけにはいかない。
母国に恩返しをするためにも、攻め入ってくるな◯う軍を迅速に撃滅しなければならない。
私の母国を荒らす輩は、この大鎌の錆にしてくれよう!
と、『かっこいい前口上集(4)』に付け加えて、私は決意を新たにする。
……これはありだ。(4)の中ではピカイチのセンスを感じる。
私は今書いた文の下に二重線をつけた。しかし、あまりのかっこよさに興奮していたので途中で線が曲がってしまい、ボツ案みたいになった。
私は悲しい気持ちになった。
仕方なく最初から読み返してみたら、夢中になって書き殴っていたせいで、ほとんど解読不能の汚い文字であることに気づいた。読めない。
私はさらに悲しい気持ちになった。
だが、そこで私は気づいた。
……これはこれで暗号みたいでかっこいいのではないだろうか。
意図せずして暗号を作り出してしまう私の才能が恐ろしい。
あとで部下に解読させてみよう。
私は嬉しい気持ちになった。
しばらく喜怒哀楽の喜と哀を反復横跳びしたあと、私は冷静になった。
私としたことが、ついつい顔にまで感情が出てしまっていた。
今のを部下に見られていたら、私の絶対的威厳が圧倒的威厳にランクダウンするかもしれない。
危ないところだった。
少し隙間が空いている扉が気にならないでもなかったが、私の絶対的威厳に気圧されたのか、突然バタンと閉まった。
無生物すら恐れさせる私の覇気に私自身少し驚く。
いつの間にか私は一つ上の領域に立っていたらしい。
再び嬉しさが湧き上がってきたが、今度は表情にまでは出さず、クールキャラを完遂した。
視界の端の鏡に、口をもにょもにょさせる銀髪ロリが映ったが、たぶん気のせいだ。
次の日、昨日と同じく報告に来た部下が「隊長はいつもクールで素敵ですね」と言ってきたので間違いない。
あと暗号の解読はできなかったそうだ。
流石は私。優秀な部下ですら解読できない暗号を開発してしまったようだ。
「隊長、口がもにょもにょしてます」
クールで素敵な私は、部下の声など聞こえなかった。
あ、そうだ。軍本部に行くのを忘れないようにしないと。
名誉が私を待っている!
私は大鎌を手に取って、軍本部まで急いだ。
ズササササッ!
クールで素敵で名誉ある私は、後ろで騒ぎ立てる部下の声など聞こえなかった。