ぼくのかんがえたさいきょうのせーと   作:秋九

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この話から無人島特別試験が始まります。
本文ではルール説明を省いているので、ルールの詳細が知りたい方は、あとがきにまとめた特別試験のルールをぜひ先に読んで下さい。


15話 完璧超人

 

 豪華客船に付属している施設の一つのカフェ。俺はそこで優雅なモーニングを食べていた。

 

 無人島へ向う豪華客船。俺たち一年生は無人島のペンションで一週間バカンスを楽しんで、その後豪華客船で一週間宿泊。なんていうスケジュールを聞かされて、今ここにいる。

 

 まあそんなことはどうでも良かったりする。俺は目の前の食事を見た。

 コーヒーは当然ミルク入り。サンドウィッチはたまごサンドとハムサンド。うんっまい。

 

「よぉ、獅峯。ガキみたいな顔してんな」

 

 もぐもぐごっくん。しっかり咀嚼して飲み込んでから、俺に声をかけてきた人物に向けて手を上げて応えた。

 

「や、龍園くん。久しぶりだね」

「俺のメールは見たみたいだな」

 

 俺が返信しなかったことが気掛かりだったんだろう。龍園は指定されたカフェにいた俺をみて良かったぜと呟いた。

 

「協力の話かな。しつこいね」

「お褒めに預かり光栄だ。どうだ?手を組む気にはなったか?」

 

 俺の座っていたカウンター席の隣に腰を下ろし、机に頬杖をつきながら龍園はそう言う。俺は一旦無視してもう一度サンドウィッチを一口食べた。うんっまい。そしてごっくん。

 

「何か新しい提案がなければ、俺の意見は変わらないよ。それに君はDクラスに上手くやられたばかりじゃないか。君の実力に対しての信用性が薄れてる」

「俺が遊んでやったんだよ。確かに上手くやられたが、俺にとっちゃあれはただの遊びだ」

「はははっ。遊びに勝てないやつは、勝負で勝てないんだよ」

 

 その言葉に龍園はそうかもなと言って笑った。

 否定しないんだな。なんなら、胸ぐら掴まれるかもしれないと思ったのに。案外彼は大人なのかもしれない。いや、単純に否定できないのかな。うん、それだ。

 

「新たな提案ならある。俺はお前と協力関係になろうって言いにきたわけじゃねえ。あくまでも敵同士。手を組めるところは組もうって話だ」

「何があるのか分からないのに、安易にその提案に乗ろうとは思えないな」

 

 でも、面白い提案だ。つまり利用し合う。気にせずCクラスをボコボコにしてもいいってことだろう。ま、それは当然Aクラスにも当てはまる。

 龍園にやられるなんて想像もつかないが、彼がどれだけの存在なのかを確かめてもいいかもしれないな。

 

「まあ、前向きに考えることにするよ。もうすぐ島につきそうだしね、何があるのかはすぐ分かる」

 

 ペンションで一週間のバカンス?そんなわけ無いだろう。

 それからすぐ、ちょうど良いタイミングで船内にアナウンスがかかった。

 

『生徒の皆様にお知らせします。お時間がありましたら、是非デッキにお集まり下さい。間も無く島が見えて参ります。暫くの間、非常に意義ある景色をご覧頂けるでしょう』

 

 なんとも奇妙なアナウンスだ。龍園は席を立ちこの場を去る。話はもう終わったようだ。デッキに向かうのだろうか。

 

 まあ、これは俺の役割じゃ無い。きっとうちのクラスの優秀な大男が意義ある景色を見てくれるだろう。

 俺はサンドウィッチを頬張った。うんっまい。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 無人島での『特別試験』が始まった。

 

 真嶋による全体での説明、そしてAクラスに向けてである詳細の説明、それら全てが終わり自由行動の許可が出る。

 ひとまず暑い砂浜から日陰へ移動することとなり、俺と葛城が先頭で森へ入っていった。その間、意義ある景色を見たであろう葛城に()()()()()()()を聞くことにする。

 良さげな日陰へはすぐに着いたが、ひとまず葛城の話を聞くことにした

 

「葛城くんは、もうスポット、いくつか見つけてるでしょ?君の意見を聞かせて」

「獅峯……もしかして、デッキに出なかったのか?」

「……サンドウィッチ美味しかったなあ」

 

 俺の発言に葛城は大きくため息をつく。酷いやつだ。君が見ていたのならそれで良いじゃ無いか。確かに自分の目で見ることは大切だが、別にそこまで本気になれない。

 俺のすぐ近くにいた()()は微笑んだ。バカにしたような笑い方だ。失礼なやつだな。

 

「いくつかは確実に抑えたいところがある。しかし、リスクを考えれば占有を避けたい箇所もあるだろう。地図にスポットと思われるところに印をつける。あとはお前が考えてくれ」

 

 支給されたマニュアルにある白紙のページに簡単な地図が描かれる。そしてその地図に、何ヶ所かバツ印が書かれた。

 彼は本当に優秀な男だ。ついでにと、島を旋回した時に見えた情報も加えて教えてくれた。洞窟、小屋、塔。他の怪しい場所や、その他諸々の情報。これだけの情報が分かれば、もう自分で意義ある景色を見たのと同然だな。

 

 俺は頭の中で、この試験をどう攻略しようか考えをまとめて、みんなに声をかける。よし、と言って喋り始めれば全員が注目した。

 

「まず、この試験のリーダーは俺が務める。そして今から名前を呼んだ人を今回限りのスポットを見つける行動班のリーダーとするので、その人を含めた4人1組を作って欲しい。そのチームに出来るだけ男子1人は入れること。これは安全の面からね。つくられた計9班にそれぞれに印の描かれた簡単な地図を渡すので、そこ周辺にあると思われるスポットへ向かってほしい。そして、俺がその場に向かうまで留まってもらいたい」

 

 そして俺は9人の名前を呼んだ。リーダーに指名した人の基準はコミュニケーション能力だ。運動神経、学力などは一切考慮しない。その4人1組のグループをうまく機能させられる人物の名前をあげた。

 

「それで……坂柳さん、神室さん、葛城くん、戸塚くんはこのメンバーでひとチームになってもらいたい。俺を除いて考えているからどこかの行動班は3人1組で頼む」

 

 それからチームを作るようにいえば、ほんの数分で9つの行動班が完成した。俺はそれぞれのリーダーに手書きの地図と目印を渡して解散を言い渡す。

 真嶋には俺がリーダーをすると伝えてあるので、すぐにキーカードを用意してもらえるだろう。

 

 次に残った坂柳、神室、葛城、戸塚への指示を出すことにした。

 

「まず、このチームに目指してもらいたいスポットは『洞窟』だ」

 

 葛城が描いてくれたおおよそのスポットが記された地図の、洞窟があると思われる場所を指差して俺は言った。

 

「ここをベースキャンプにしたい。そこでまず、葛城くんと戸塚くんがここへ向かって。出来るだけ早くね。坂柳さんと神室さんは安全第一で、急がなくて良いからここへ向かう。俺が先に洞窟へ着くか、坂柳さんたちが先に着くかは分からないけど、この洞窟に5人で合流する」

 

 この無人島での試験において、坂柳の身体的ハンデは大きい。無理をさせてはいけないし、させるつもりもない。本人がリタイアを望むなら許すつもりでさえある。

 そもそも、身体にハンデのある坂柳が他の生徒と同じ扱いなのおかしいだろう。いや、そもそもこの試験の大前提はバカンスだったか。競い合うことを強制されていない。

 坂柳が無理だと思えばリタイアさせて安全な船内で過ごさせろ、ってわけね。

 

「心遣い感謝します。今回の試験、私は力になれそうにありません。ですが、少し意見いいでしょうか。話を聞く限り獅峯くんがリーダーだとバレる可能性が高い戦略ですね。洞窟を所有したあと、それぞれのスポットを巡るのでしょう?」

「坂柳と同意見だ。リスクが高すぎる。リーダーだと安易に口走ったことも含め、獅峯が自らリーダーになることもあまり良い戦略とはいえないだろう」

 

 坂柳と葛城の2人は俺の戦略に不満、そして疑問があるようだ。まあ、当然だ。

 俺1人で各スポットに留まっている班に合流するつもりでは無いとはいえ、所有した順がバレれば今いる5人にリーダーは絞られる。その上、俺は洞窟に坂柳と神室を待機させるつもりだ。

 故に洞窟所有を見られ、その後の行動がバレれば、その時点で三分の一でリーダーを当てられる。初日にしては候補を絞られ過ぎだな。

 

「そもそも獅峯は単独でなにをするつもりだ」

「————あー……カモ狩り?」

 

 俺の言葉に神室と戸塚が分かりやすく顔を歪めた。酷いな、落ち込むよ。

 

「うわ、ろくなことにならなさそう」

「あははっ、まあ俺に任せて欲しいな。Aクラスのみんなには勝利を約束するよ」

 

 こうして俺たちは二手に別れた。と言っても1対4の別れ方。

 俺はすぐに龍園の元へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 龍園翔との取引は成立した。あくまでも敵同士、利用し合う関係だ。

 

 こうして、龍園の元を去った俺は洞窟を目指す。葛城が地図に示した場所はかなり正確で、印を目指せば迷うことなく辿り着けた。

 

「お、もう揃ってる。お待たせー」

「遅かったですね、獅峯くん。何をしていたんですか?」

「えー?知りたいー?どーしよっかなあ」

「うっざ」

 

 神室の怖あいお言葉を受け流して、俺は手早く洞窟を占領する。

 ここがAクラスのベースキャンプだ。

 他のクラスメイトが待っているであろうスポットへ向かう為にも、俺と龍園が交わした契約について簡単に話しておくべきだろう。

 

「さっきまで取引をしてたんだ。Aクラスが得たものはこの試験で使える200ポイント。その200ポイントを使って、俺たちAクラスが貰えた300ポイントは使用することなく、一週間を乗り切りたい」

 

 俺の言葉に葛城は疑わしげにこちらを見る。一体こちらは何を払ったんだ、と言わんばかりの顔だ。

 何を払った……というより。何を払うかだけど。うーん。

 

「こっちは何も払わないよ」

「冗談はよせ。無料(ただ)より高いものはないぞ。信じて良いのかその言葉」

 

 洞窟を出ようとする葛城が振り返りざまに言うが、彼は入り口から当たる光のせいで凄みがある。威圧とかそういう凄みじゃない。ほら、彼はスキンヘッドだろ?ほら、ピカーン、ってね。

 

「—————ぶっ……。信じて良いよ……っ、くっ、ふふ」

 

 俺はゲンコツを食らった。

 

 

 

 それから、いくつかあるスポットを全て巡り、9つの行動班を連れてベースキャンプとなる洞窟へ戻った。

 スポットは見つけ次第、どんどん占有していくべきだろう。この試験のルールの良いところは、リーダー当てが最終日ということだな。バレても()()()()()()()

 Cクラスから譲渡される200ポイントの内訳を坂柳は考えていてくれたらしい。天才の無駄遣いというか、坂柳の頭脳の使い道がこんな所しかなくて、俺は悔しいよ。

 占有したことによって利用できる道具もあったりして、ポイントは想定よりも余裕がありそうだった。食料もそれなりに手に入りそうだし、200ポイントは七日間のストレスを限りなく少なく済むような道具に当てたい。仮設トイレ、仮設シャワーの設置は当然だが、余裕があれば各2個購入するのもありかもしれない。娯楽用品も少しは買えるかもな。

 

 それから龍園に用意してもらった無線で彼に用意してもらいたいものを伝える。クラスメイトには必要なものがあれば必ず俺に伝えるように言ったのでポイントが勝手に使用されることはないだろう。

 龍園との契約内容をクラスメイトに伝えていないのは、その必要性がないと判断したからだ。坂柳や葛城には後で伝えてもいいと思うけどね。

 ただ、今日中しか必要なものが買えないというのは問題だ。夜の点呼を終えたらそれは伝えよう。

 

 そして、外でテントの設置をしている男子を手伝うべく、俺は洞窟を出ようした。

 そうだ、坂柳には先に伝えておこう。

 

「坂柳さん、何か欲しい娯楽用品とか探しておきなよ。君は森を歩き回れないだろう。お喋りで7日を楽しめるなら話は別だけどね。リタイアも好きにしていい」

「随分甘いんですね。リタイアは今のところ考えていませんよ」

「へえ、そう。無理だけは絶対しないでね。これは純粋な心配」

 

 そう言って返事を待たずに俺は洞窟を出た。

 坂柳の砂浜から日陰に入るまでの間の徒歩を見たからだろうか。杖をついて森を進むその姿が恐ろしかった。洞窟まで無事に来れたことを考えれば、多少安心していいのかもしれないけど。

 あー、なんか俺らしくない。多分、坂柳と大自然が似合ってないからだな。まあ、この無人島を大自然とは言えないが。

 

「お、テントもう出来てんの?流石だねえ」

「キングおせーよ。地面硬そうだけどどうする?」

 

 テントを設置し終えた橋下が俺の横に来てそう言った。その他のクラスメイトもぞろぞろと集まってくる。

 洞窟の内部を寝床として利用するに当たって地面の硬さは問題点だったが、毛布を購入したのでどうにかできるだろう。

 

「テントの下にはビニールを詰めよう。無制限で支給されるらしいし、たくさん用意してもらって。あ、もちろん無駄にはしたくないから、後で返せるようにはしてね。真嶋先生にはもう伝えてあるよ」

「なるほどなあ。んじゃ、後でみんなで詰めとく」

「やった、助かる。俺、ちょっと島を探検したかったからさ。葛城くんが俺の居場所聞いてきたら伝えといて」

 

 土地の把握、スポットの占有、他クラスの情報収集。俺1人で動いた方が効率がいいだろう。それに会っておきたい人がいる。

 うん、夜の点呼までかなり余裕があるな。

 

「点呼前には戻ってくるけど、それまでは戻ってこないかもしれないからさ。葛城くんに指示もらって。ほら、焚き火の準備とか、食材調達とかさ。探索班を作ったりとかも適当に。彼がいなければ橋本くん頼んだよ。じゃ」

 

 あまりにも投げやりだろうか。まあいいだろう。彼らならなんとかなる。

 

 もう、俺は我慢できないのだ。人工的だろうと、なんだろうと。俺はもう森を飛び回りたい。

 

 

 

 

 




『補足説明』
原作と違う点について。
無人島での特別試験に坂柳有栖が参加してる。つまり、この後にある干支試験でも坂柳は参加する。

『無人島での特別試験』
【支給品】テント2つ。懐中電灯2つ。マッチ一箱。日焼け止めは制限なし。歯ブラシ各自1つ。女子のみ生理用品無制限。簡易トイレ(ビニールとシート無制限)。マニュアル。生徒一人につき一つの腕時計。

【基本ルール】各クラス試験専用のポイントが300ポイントが支給される。マニュアルに購入できるリストが載っている。
試験終了時、各クラスに残っているポイントをクラスポイントに加算。
各クラスベースキャンプを設定。正当な理由なく変更はできない。
試験期間は1週間、7日目の正午に終了。

【ペナルティ】
・許可なく腕時計を外す
・リタイアでマイナス30ポイント
・環境を汚染する行為を発見した場合、マイナス20ポイント
・毎日午前8時、午後8時に行う点呼に不在の場合。一人につきマイナス5ポイント
・他クラスへの暴行行為、略奪行為、器物損害などを行った場合、生徒の所属するクラスは即失格とし、対象者のプライベートポイントの全没収

【追加ルール】
・スポットを占有するには専用のキーカードが必要
・一度の占有につき1ボーナスポイントを得る。占有したスポットは自由に使用できる
・他が占有したスポットを許可なく使用した場合50ポイントのペナルティを受ける
・キーカードを使用することが出来るのはリーダーとなった人物に限定される
・正当な理由なくリーダーを変更することは出来ない
・8時間に一度占有権はリセットされる
・何ヶ所でも同時に占有できる
・繰り返し同じクラスが占有することができる
・最終日に点呼のタイミングで他クラスのリーダーを言い当てる権利が与えられる
・リーダーが的中した場合、当てたクラス1つにつき50ポイント
・リーダーを言い当てられた場合、マイナス50ポイント。貯めたボーナスポイント無効。
・誤ったリーダーを報告した場合、マイナス50ポイント
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