Welcome to JoyCity   作:ニコラウス

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2025/01/28:文章の全体を修正しました。
2025/03/22:転生担当官のセリフを修正しました。


スローライフを求めて

白い空間の中で、きっちりしたスーツを着た七三分けの男とくたびれた―スーツを着た疲れた表情の男の二人がテーブルを間に挟み座っていた。

疲れた表情の男は大きな冊子を悩まし気に眺めており、七三分けの男は口元に笑みを浮かべ、微動だにしない。

 

そんな状態が何分も続いた頃、くたびれた男が口を開いた。

「すみません担当官さん、相談に乗ってもらうことは可能ですか?」

担当官と呼ばれた七三分けの男は笑みを浮かべたまま言葉を返す。

「安藤様、もちろん可能ですよ。

 どのようなご相談ですか?」

「実は、ゆったりと暮らしたいのですが特典に迷っていまして…」

「名前だけではわかりにくいものも多いですものね。

 安定しており時間に追われない生活、と認識してご案内いたしますがよろしいですか?」

安藤と呼ばれた疲れた表情の男がうなずくと、七三分けの男は冊子をもう一冊取り出し、ページをめくりだした。

 

「まずお勧めするのは、【スキル】市民権です。

 市民権はAランクからGランクまでございますが、Eランク以下ですと治安のかなり悪い階層にしか在住できないため、Dランク以上の取得をお勧めします。」

「市民権がスキルって、無い人間はどうなるんですか?」

「治安の悪い地域に不法滞在したり死んだりしているようです。」

「な、なるほど…」

一切表情を変えずニコニコと説明する七三分けの男に、安藤は少し引きながら答える。

 

「次にお勧めするのは【神器】プライベートエリアです。

 こちらは見た目が青い球体の【神器】で効果としては異空間を作り出し、球体へ触れた人間をその空間へ移動させます。

 広さは最低3㎡で、その他1㎡刻み、天井の高さは最低2m50cmから50cm刻みで大きさが選択可能です。

 治安のよい地域は土地代や家賃が高いですから、この【神器】を設置することが前提のとても狭いワンルームの物件なども数多くあります。」

「家賃で思ったのですが、転生先の物価や給料などについて教えてもらうことは可能ですか?」

「ええ、詳しくは【神器】の査定眼鏡や物価帳、【スキル】の価格査定や物価調査などを使用したほうが良いですが、物価について軽くお伝えします。

 2月ほど前の平均価格は1日約10時間の日雇い労働の給料が5500JOYほど、1食の価格が750JOYほど、家賃は10日毎に10000JOYほど、電気水道ガスに値する魔力費が1日に1200JOYほど、税金が在住開始から1年毎に15000JOYかかります。

 税金が変動する際はこちらに連絡が来るので税金の情報だけは最新ですが、他の価格情報は変動している可能性もあります。

 なお、1年は360日、ひと月は30日、1日は24時間、1時間は60分、1分は60秒です。」

 

「なるほど…ありがとうございます。

 聞いた感じ、日雇い労働だとかなりかつかつなんですね。」

「毎日10数時間の労働を行わねば生きていけないのはゆったりとは程遠い生活でしょう。

 ですので特典を使用し資金を稼ぐ事を提案します。

 まず最初に提案するのは生産【神器】、農耕【神器】、生物【神器】を使用しての物品の販売です。

 作業を行わなければならない事、【神器】としてのデメリットはありますが日雇い労働よりは少ない労力で稼げます。

 そして、次の提案ですが、今ならば資金稼ぎにとても有用な【ユニークスキル】が選択可能です。

 【ユニークスキル】銃弾生成は体力や精神力など、いわゆるスタミナを消費して銃弾を生成可能な物で、少々の疲労感はありますが無から換金アイテムを生成できるといっても過言ではありません。

 こちらは【リミット】1ですが、つい先ほど所有者の方が所有権を破棄されたため選択が可能になりました。

 これらの方法は【神器】物々交換機、マーケットボックス、マーケットターミナル、【スキル】マーケットなどと共に使うと効果的です。」

 

「うーん、悩みますね…

 一応農耕をしてみるのも良いかな、と思っているのですがコストとの兼ね合いからどうすればよいかと…」

「では農耕【神器】を使う方針で安藤様の特典の構成を一緒に考えましょう。

 まず、【神器】小さな農地が10㎡の広さが必要です。

 そのため生活空間も含めて最低15㎡の【神器】プライベートエリアを選択するとよいと思われます。

 そして販売のための【神器】マーケットボックスと査定眼鏡と物価帳、ある程度の安全のための【スキル】Dランク市民権、【神器】バリアプロジェクター。

 農地の世話のための【神器】天照輝宝、そして最初の生活基盤を整えるために売り払う【神器】を【コスト】が許す限りといった感じでしょうか。」

「え、もしかして初期資金とかない感じですか」

 

「はい、特典と転生という次のチャンスだけがあなた方に送られます。

 それでどうでしょう?間違いなく【ユニークスキル】銃弾生成の方が間違いなくコスパが良く、身の安全などにも【コスト】をもっと使用できると思いますが。」

「いえ、先ほど言われた神器と市民権を取得します。」

「わかりました、まずはカタログの28ページ、バリアプロジェクターから―――」

 

 

 

「―――これで終わりですね。

 一応希望と違う特典が取得されていないか1ページ目をご確認ください。」

「はい、確認しました。大丈夫です。」

 

特典の選択が終わり、安藤もいくらか晴れやかな顔となっていた。

「担当官さん、良ければ名前を教えてもらえませんか?」

「我々はここで転生を恙無く進行するための存在であり、ほかの転生担当官と会うことも、また転生者の方たちと会うこともないので、個人名を必要とせず、私の名前は転生担当官でしかないのです。」

「そうですか…残念ですが仕方ありません、確かに私にとっての転生担当官はあなただけですものね。」

安藤は少し肩を落としつつ苦笑する。

 

「はい、そうですね。

 ではこれから転生を執り行います。」

言葉が終わると共に空間へ神聖さを感じる文様があふれかえる。

 

「担当官さん!私、あなたに転生を担当してもらえてよかったです!」

「ありがとうございます。ですがそう言うのは、あなたの求めるゆったりした暮らしを終え、死ぬ直前にでもお願いします。

 では!さようなら!そして新たなる誕生日に祝福を!」

 

文様から溢れかえる光に安藤が包まれ輝きを増していく。

目が眩むほどの光が収まると…残ったのは机と椅子と無表情の七三分けの男だけだった。

「安藤様の転生に幸があるとよいですが…

 さて、次の方どうぞ。」

 

また張り付けた笑みを浮かべ、男は次の転生者を椅子の上へ召喚した。

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