Welcome to JoyCity   作:ニコラウス

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長くなったのでいくつかに分割します。
2025/01/28:文章の全体を修正しました。
2025/03/22:表記ゆれを修正しました。


トラブルシューターのジョー:2

「ジョー、柄修理しないでもうそのままで良いんじゃないのか?」

「握り辛いしこの使ってると本来の刀の振り方に影響が出そうでな。」

「本来の理由はカッコ悪いからだろ?特典のスキルで刀振れるようになったのに何いっちょ前にプロみたいなこと言ってんだジョーボーイ!」

いつも通りご機嫌そうなロニと違い、ジョーはトレードマークのヘルメットすら被らず陰鬱な雰囲気でカウンター席に座り込んでいる。

 

二週間ほど前、仕事中に刀を破損してしまったジョーは壊れた部品の取り換え費用のために食事の質も量も下げて休まず仕事をしていた。

だが遡ること五日前、仕事中に受けた攻撃で懐にあった柄を破損、そして昨日は家に置いておいた鍔と破損した柄を仕事中に盗まれるという踏んだり蹴ったりな出来事があったのだ。

 

「そんで?さっき費用の見積もり出してもらってきたんだろ?いくらぐらいだったんだ?」

「…鍔は一万二千JOY、柄で三十六万JOYだと。」

「ほぉ!飲まず食わず家無しになったうえで今のペースで1か月働けば修理できるな!」

「人間は飲まず食わずで一か月も生きられないんだロニ、もっと稼ぎの良い仕事を回してくれ。」

「まだ信用も実績も足りないって何度も言ってるだろ?

 金をもっと稼ぎたかったら大人しく数をこなすんだな!

 お、客が来たからまたな。

 お疲れケンジ!酒は用意してあるぜ!」

 

朗らかにかつ他人事のように言うと、ロニは入店してきたトラブルシューターの対応へ向かってしまった。

「はぁ…くそ、どう稼ぐか…」

「よう、ブレードランナー。金がないのか?」

ぼやいていたジョーへそう声をかけてきたのは、黒いスーツに灰色のロングコートを羽織った暗い肌の大男だった。

 

「…俺の事を言ってるのか?」

「おう、そうだ。刀じゃなく刃だけ持って駆け回ってるだろ?」

「そう言われると悪くない気もしてくるが…

 それで?お前の思った通り金が無いが何だ?お前が俺に仕事を紹介でもしてくれるのか?」

「あぁ、報酬の高い仕事を紹介しても構わない。

 やる前にテストを受けてもらうことになるが。」

 

「報酬は?」

「テストクリアで3万JOY、これは一日で全部終わる。

 本題の仕事は数日がかりで、やり遂げたら30万JOYだ。」

「受ける。あんた名前は?」

「ビッグボウと呼ばれてる。

 即決とは決断力があるな、気に入ったぜ。

 俺の他にも依頼主の雇ったスカウトマンは居てな、テストに最初に合格したトラブルシューターが仕事を受けられるんだ。

 時間はあるだろう?今から向かおうじゃないか。」

 

ジョーが刀とヘルメットをつかみ酒場の外へ出ていくビッグボウを追いかけていくと、いつの間に呼んだのかすでに止まっていたタクシーへ、ビッグボウと一緒に乗り込む。

「サバイバーズディスコまで。」

ビッグボウの言葉に、運転手は車両を発進させることで答えた。

 

「仕事やテストについて内容は聞けるのか?」

「あぁ、今回の仕事はアタッシュケースサイズの破損しやすい荷物の運搬だ。

 テストはその為に必要な機動力、荷物の保護力、戦闘力の三つを測る。

 まず機動力のテストのためにコースを規定時間以内かつ模擬荷物を破損させずに抜ける。

 それが終わったら別のコースをドロイド、バトルドロイド、レプリカント、ホムンクルスの混成部隊と戦いながら移動してもらい、規定数以上の敵を倒し、かつ規定時間以内に模擬荷物を破損させずに抜ければテストはクリアだ。」

「わかった。

 その規定時間やら敵を倒す規定数やら荷物の脆さやらによるが楽勝だろうな。」

 

それに対しビッグボウはにやりと笑う。

「随分自信家じゃないか。

 口だけじゃないことを期待してるぜ。」

「当然だ、俺は出来ないことは言わないからな。」

 

ジョーの言いたいセリフランキング7位のセリフ共に、タクシーは目的地へと到着する。

「さて、ついたぜ。

 依頼主のミスサバイバーにあいさつして早速テストに向かおう。」

二人はタクシーを降りるとディスコという割には昼だからか静かな建物の中に入っていく。

建物の中で数人の従業員たちが備品の搬入などをしている横を通り抜け、STAFONRYのプレートが付いた扉を抜け、しばらく階段を下ると、OUNERLUUMというプレートのついた扉の前にたどり着いた。

 

「ビッグボウ、扉の看板の英語…」「それ以上は言うなブレードランナー、ミスサバイバーはお得意様なんだ。」

ビッグボウはジョーの言葉を制すと扉をノックし大声で中へ呼びかけた。

「ミス!ビッグボウです!」

 

声に答えるように中から部屋の扉が開けられる。

部屋の中には黒いスーツにサングラス、くるくる巻かれて伸び縮みするイヤホンといったいかにもSPな恰好をしたガタイの良い男が4人壁際に立っており、中心には豪華な椅子に美女が座って居た。

「ボウ、遅かったじゃないの。

 運び屋探しなんてしてないと思ってたわ。」

 

部屋の中に凛とした声が響く。

「俺は他のやつらと違って無駄に雑魚を連れてきたりしないだけですよ、ミス。

 現に死者も数名出ているんでしょう?」

「それもそうね、今日までに何人死んだんだったかしら。」

「17人です、ミス。」

「らしいわ、ボウ。

 そう言っているのだから彼は18人目になったりしないのよね?」

興味なさそうに話す彼女へ、ビッグボウは自信を持った声で答える。

 

「勿論ですよ。

 ほらジョー、ミスへ挨拶を。」

「俺は」

「挨拶は良いわ、仕事を依頼することになったら聞くから。

 じゃあハンス、彼らをテストコースへ案内なさい。」

「承知しました。

 お前たち、ついてこい。」

「失礼しました、ミス。」

挨拶を中断させられ唖然とするジョーを連れ、ビッグボウとSPのハンスは部屋を出て移動を開始する。

 

「ブレードランナー、ミスは挨拶を聞く気はないが挨拶をしようともしないと機嫌を損ねる。

 依頼人の顔色を伺うのも仕事だと思ってくれ。」

「あ、あぁ。わかった。」

先ほど下った階段を上ると、今度は先ほどとは違う道を通り、建物の裏口から外へ出る。

そして路地をしばらく歩き、違う建物の中に入った。

建物の中は通路と鉄格子のついたカウンターがあり、カウンターの奥には初老の男が鉄格子の開閉できそうな部分の前に座っていた。

そして、男の後ろの棚には番号の書かれた青い球体がいくつも置いてある。

 

「マッケンリー、368番に入りたい。」

ハンスがそう言うと無言で男は立ち上がり、棚たちの奥から368と書かれた青い球体を持ってきた。

 

男が鉄格子を開け、球体をハンスへ渡す。

「一階の三号室を使いな。」

鉄格子を閉めながらそう言うと、男はカウンターの上の機械を操作する。

しばらくするとブザーが鳴り、通路の奥の方にある扉の上にあるランプが点灯した。

 

ハンスは球体を手に、ツカツカとランプのついた扉へ向かう。

扉の先には半畳ほどの空間に台座があり、その上へハンスが青い球体を置いた。

「お前、こいつを使ったことはあるか?」

「これが初めてです。」

「球体に触れて、入ると念じるか口に出して言え。

 それで入れる。」

 

言い切るか言い切らないかもわからないほどのタイミングでハンスは球体に触れ、消えていった。

「よしブレードランナー、俺たちも入るぞ。」

「わかった!」

気合も十分に青い球体の中へ入ったジョーの前には、巨大なアスレチックのような空間が広がっていた。

 

「まず最初の機動力確認テストだ。

 このケースを持ってこの地図に書いてある黄色いボタンを押しに行け。

 お前がスタートのボタンを押してからゴールの黄色いボタンを押すまでが3分27秒以内であり、このケースについているセンサーが感知した衝撃や揺れが荷物が破損するほどなければ本来の戦闘力も加味したテストに挑戦できる。

 さっさと準備をして始めろ。」

「ハンスさん、事前にこのケースが揺れとかどれだけまでなら大丈夫か試しても良いですか?」

「いいがさっさとしてくれ。

 ここにあるモニターで揺れや衝撃が確認できる。

 上のゲージが揺れ、下のゲージが衝撃だ。

 揺れたり衝撃がかかるとゲージが右側に伸び、ここの線を超えると物品は破損したと判断される。」

 

ジョーはそれを聞き、ケースを揺らしたり叩いたりした後、持っていた伸縮するベルトで背中に固定し走ったり飛んだり跳ねたりを始め数十秒してスタート地点についた。

「大体わかりました、行けます。」

「ならそこのボタンを押して走れ。」

ジョーはハンスが指さしたボタンを押すと、素早く駆け出した。

置かれていた地図を読み込み生成した地図がヘルメット内の画面に映り、目的地と現在地を示す光点が光る。

 

勢いを殺さぬまま壁を駆け上ると屋根を飛び移り、直線距離で目的地へ向かう。

目的地が屋根のある室内であることを目視すると、近くの路地へ素早く飛び降り、開いていた窓から飛び込みボタンを押す。

 

スタートからゴールまで、およそ一分半の早業であった。

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