2016年2月10日 14時26分 月軌道‐アステロイドベルト マリネロス基地。
小惑星帯に作られたマリネロス基地。
そこのドックへと白いカタクラフト‐タルシスが入港する。
「お帰りなさいませ、スレイン様」
コクピットから出てきたスレインをそう言って迎えたのは長身の青年だ。
彼の名はハークライト‐スレインの小姓を勤める青年だ。
「何か匂うと思ったら犬が紛れ込んでいる」
「しかも、随分と薄汚れた」
そう言ったのは軌道騎士であるバルークルスとマリルシャンである。
「ここに何の用だ?」
「これは、バルークルス伯爵、マリルシャン伯爵。
私も参戦したく馳せ参じました」
上から目線の二人にスレインとハークライトは膝をつき、答える。
「地球の犬が」
「生意気な口を」
そこまで言うとマリルシャンは腰に帯びていた剣を抜き、振り上げる。
「おっと、それ以上は興が過ぎるぜ」
「なっ!」
マリルシャンがスレインに剣を振り下ろすよりも早くその男がマリルシャンの側頭部に拳銃を突きつける。
無精髭を生やした長身の東洋人である。
男の名はガウルン。
半年前、ノヴォスタリスク基地から撤収したおり、宇宙空間に小型カタクラフトに乗って浮遊していた所を保護されたのである。
「ガウルン、貴様も非礼がすぎるぞ」
そう言って、ガウルンを諫めたのはザーツバルムである。
首をすくめるガウルンを一瞥するとザーツバルムはマリルシャン達に向き合う。
「このスレイン・トロイヤードは我が家臣。
粗相があれば謝罪しよう。
しかし、云われ無き仕打ちであればマリルシャン卿、容赦はせぬぞ」
「地球人を飼うだけなら酔狂で許されよう。
だが、騎士に取り立てるなど些か戯れが過ぎるのではないか」
「バルークルス卿、我が家臣について貴公に口を出される筋合いはない」
「しかし、共に戦うとなれば別の話。
いつ、裏切るとわからないものと戦場になど出られませぬ」
ザーツバルムへと食ってかかるマリルシャンとバルークルス。
「ならば、この場で私を斬って下さい。
あなたの言うとおりです。
このまま戦場へ出ると、私の方が後ろから斬られかねません」
「貴様ぁ!」
スレインの言葉に激昂した様子でマリルシャンが剣を抜く。
「諸君!聞かれよ諸君!!」
だが、そこでザーツバルムが声を上げて宣言する。
「ヴァース皇帝の庇護の元、今この場においてスレイン・トロイヤードを我が息子とする。
この場に同席された諸君が証人である」
「伯爵…」
驚いた様子で顔を上げるスレイン。
「立て、スレイン。
今日からそなたは我が息子だ。
これでも手を出すおつもりか?
マリルシャン卿。」
「貴公にそこまでの覚悟がおありならよいでしょう。
しかし、僅かでもおかしなまねをすれば……容赦なく斬る」
引き抜いた剣を鞘へと収め、そう吐き捨てるとマリルシャンは去っていったー。
『ふ……面白くなってきやがったな』
そんな様子を見ながらガウルンは心の中でほくそ笑んだ。
同日 23時16分 トライデント基地内二番ドック トゥアハー・デ・ダナン館内
地球軍トライデント基地では、次の出撃に備えて準備が進められていた。
無論、それはトゥアハー・デ・ダナンでも同じであった。
「宇宙戦での戦闘を行って感じたのだが、アサルトライフルでは風の影響を受けやすい事がわかった」
「…っとなれば面での制圧、散弾砲の方が有利という事になるか…」
「そういうことになる」
二人が話しているのは今回の作戦で使用する武装についてである。
「問題となるのはラムダドライバの使用タイミングだな…」
「確かにな…」
使用時間が限られるラムダドライバは使用するタイミングが非常に難しい。
効率的に運用するにはどうすべきか考える必要があったのだ。
だが、それを深く考えさる余裕は無い。
作戦開始の時間が来たからである。
同日 00時10分 月軌道‐アステロイドベルト
『相良さん、神崎さん。
傘の使用方法は大丈夫ですね』
『問題ない』
「大丈夫です」
各々のASに搭乗した宗介と和哉がテスタロッサの質問に答える。
傘と言うのは地球軍が開発した小惑星用のシールドである。
『ウルズ6、発艦する』
『続いてメサイヤ1、発艦します』
地球であっても、宇宙であっても発艦時に体へのしかかる重力は重力はあまり変わらないように感じながら、クレイモアは宇宙空間へと飛び出した。
『何だ?』
ボークサー散弾砲を用いて量産型のカタクラフトを破壊していた宗介はレーダーにこちらへ真っすぐ向かってくる機体を見つけて疑問の声を上げる。
『ライブラリに照合…コダールです』
「何だと!」
驚愕した声を上げる宗介。
コダール…この世界に来る以前、ミスリルと敵対する組織-アマルガムが使用していたラムダドライバ搭載ASだ。
『よう…カシム。
会いたかったぜぇ』
「ガウルン…貴様…何故生きている!」
入ってきた通信に声を荒げる宗介。
『さてねぇ…気がついたらコイツとここにいた』
宗介の言葉にガウルンが答える―それと同時に二つの機体は衝突を開始した―。
『おいおい…この状況でコダールとか何そのマゾゲー』
等と思いながら和哉はその機体と向き合う。
即ち―ディオスクリアとである。
『宗介はコダールと、伊奈帆はタルシスとやり合ってるか…。
ならこいつは俺がやるしかないか…』
ラムダドライバを作動させた状態ではあるがやはり、単騎で相手にするには少々難しい気もする。
『だが、不可能ではない!』
そう自分に言い聞かせながら力場を纏わせた散弾を発射した。
「くっ…やはり重い一撃だな…ラムダドライバとやらの攻撃は…」
ディオスクリアのコックピット内、ビームブレードで散弾を受け止めながらザーツバルムはひとりごちる。
意志を現実世界へと顕現させる装置。
その存在について教えたのはガウルンである。
基地の中で騎手へあのような狼藉が赦されるのもその功績があったからである。
今回の敵の武装が量産機、ステルギスに用意したらしき散弾を用いているのもまた、僥倖と言えた。
力場を纏っていたとしても次元バリアとビームサーベルで防ぐ事が可能だからだ。
『貴様の精神力が尽きるのが早いか、ディオスクリアの次元バリアの耐久力が尽きるのが早いか…』
心の中で呟きながら散弾砲に弾を込める機体に向けてビームサーベルを振り下ろす。
瞬間、ディオスクリアに激しい衝撃が襲いかかり、モニターに次々とエラーメッセージが表示された。
『何だと…』
驚愕するザーツバルム。
先ほどの一撃で右腕が根本から吹き飛ばされたからである。
いくらラムダドライバで強化されていたとはいえ、普通の散弾でディオスクリアにここまでダメージを与えるのは難しい。
そこで考えたのがスラッグ弾である。
貫通力は鉄鋼弾よりも劣るが、ラムダドライバを使用することで分厚い隔壁すらも破壊する威力を持つのだ。
腕の付け根にバリアの隙間があったのか、次元バリアが解除されたディオスクリアへ散弾砲ん向ける。
『軍曹!、レーダーに接近するデブリの群れが!』
「了解!」
追撃しようとした和哉な耳にメサイヤの報告が入り、その場を急速離脱。
直後にデブリが降り注ぎ、ディオスクリアを引き裂いたー。
気分がノリノリで筆が超進みますw
アニメと同じくザーツ興には早々に退場していただき、変わりにガウルンさんを出してみました。