猫を拾った。
 世話をして餌を与える日々、すくすくと成長する猫。

 ふと疑問に思ってじっと見てみると……家の猫なんかデカくね?

 ちょっと大きい猫と共に生活する男の日常と、ちょっぴりの非日常。

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可愛い猫と送る少し不思議な日常。


どう見ても猫じゃない俺のペットは猫

 

 猫を拾った。

 アパートはペット可だったけど、うるさいのは嫌だから一人で住んでいた。

 

 でも、雨に濡れないようにアパートの軒先で震えるその猫を見たら、そうも言えなくなった。

 

 「お前、家に来るか?」

 

 不思議と目が合って、頷いたように見えた。

 俺は猫を抱えてアパートの自室に帰ると、猫と共に風呂に入ることにした。

 

 猫は黒猫で目は琥珀色、とても小さくて、頑張ってミルクを飲んでいる。

 

 猫って牛乳でもいけるイメージだけど、トイレ用品とかと一緒に専用の物を買った方が良いか……と猫を見ながら考える。

 

 まあ幸いにもこいつは大人しいから俺の生活にさほど影響は無いだろう。

 そう判断して、その日は猫をタオルとダンボールの仮住まいに置いて寝ることにした。

 

 俺の生活は特に変化はない。

 朝仕事に行き、夜に帰る。

 

 飯は夜だけ作って、朝は夜の余り物だ。

 

 ただ、猫の飯を用意したり、トイレを変えたりと多少の手間は増えた。

 

 それも大した手間じゃ無い。猫は静かで大人しい。俺の生活に影響を与えない。

 

 そうして、手のひらの上に乗る程度の猫は、あっという間に両手で抱えるほどに成長して、更に大きくなった。

 

 猫の食事量は更に増して、ついに家計にダメージを与えるほどになった。

 

 「お前は良く食うな。まあ食わないよりは良いだろう」

 

 ガリガリよりは健康的な方が良い。これでいて肥満という訳ではないようなので俺からは特に無い。

 

 俺の生活にはさほど変化がない。

 

 

 それから少し季節が変わった。

 猫は……、猫は大きくなった。

 

 体重を測ったら15キロもある。

 でも太っているという訳では無く、単純に大きくなったのだ。

 もしかして猫では無い……?と俺が判断してもおかしくないぐらいで、メジャーで測ると体長150センチもあった。

 

 ヒョウとかジャガーとかに近い体系だし、逃げ出した個体とか……?と考えていると、猫は俺の足をつついて餌の要求をしてくるマイペースさを発揮していた。

 

 まあ良いか、と考えるのも馬鹿らしくなり猫に餌を与えた。完全に家計に影響を与えており、俺は毎月の貯金額を減らすことになった。

 

 最近では猫は俺の布団に潜り込んで来るのだが、大人しいこいつは俺が寝てから入り込むので対処のしようが無い。

 鍵を掛けるのは面倒だし、この大きさで寝床を新しく作るのは金銭的にも作業量的にも大変そうだと感じたのだ。

 

 ところで、猫は全然動かないので試しに運動用のランニングマシンのようなものを買ってみたのだ。

 

 自分用も兼ねているので出費としてはそこまでではないが、猫に出来るかな?と思っているとめちゃくちゃ器用にマシンを動かしていた。

 

 というかマシンを動かせるのって賢い猫の範疇では無理がある気がするんだが……こいつの何も考えて無さそうな顔を見ていると、まあ良いかという気持ちになってくる。

 

 なんかまた大きくなっているんだけど……虎とかそういうのとは明らかに違うんだよな。

 

 黒い大型の猫なんてクロヒョウ位しか知らないし、どう見てもこいつはクロヒョウではなくデカイ猫なんだ。

 

 そんなよく分からない日々を過ごしていると、家に変な奴が尋ねてきた。

 

 出前のインターホンかと思って出てしまったら、トンガリ帽子に黒いワンピースのような服を着た女が立っていたのだ。

 

 「誰?何??」

 

 混乱する俺に、女は訳の分からんことを言ってくる。

 

 「この辺りで出現したクーデルオストロルの痕跡があなたの家付近で途切れているんです。あれはとても凶暴で知性も働きます。育つ前に帰さないと大変なことになる……」

 

 扉を閉めた。

 まず早口で俺の知らない横文字を大量に使う奴とは友達になれない。

 次に、こちらの事情やら状況を一切考えずに、挨拶も名乗りもしないで要求だけを言ってくる奴はたいてい変な奴だ。

 

 あと、シンプルに出前だと思っていた喜びの感情が不審者のせいで急激に落ち込んだというのもある。

 

 猫はなんでか寿司も食うので、たまにあげているのだ。

 

 流石に犬にタマネギレベルのヤバそうな物は与えていないが、魚と米位ならあげすぎに注意すれば問題無いだろうし、猫か疑わしい我が家の猫に、猫の駄目な物は当てはまるのか?というそもそも論もある。

 

 再度のインターホンを今度は出前だと認識したうえで開ける。礼を言い受け取る。

 

 視界の端にまだ不審者が居たが、ブツブツと呟いていて怖かったのでスルーした。

 

 運送の人も少しびびっていた。そりゃそうだよな。

 

 寿司を猫と食べる。

 字面も絵面も特殊だが、大人しく椅子に座って器用に寿司を食うこいつが不審者の言う凶暴な生物には全く見えない。

 

 猫じゃ無いのは認めるけど、一応猫ってことにしているのだ。

 

 「理解出来ているか分からんけど、お前も家の一員だからな」

 

 不審者が来てから珍しく不安そうな顔をしているが、今更追い出したりしねーよ。

 

 お前の飯の在庫とかどうすんだよ。

 俺はあれ食いたくないからな。

 

 結局、猫と寿司を食い終わり、猫は当然足らないので2食分の餌を食べて、歯ブラシ代わりの噛むおもちゃをキチンと使う。

 

 ちょっと大きかて、文字が認識出来ている疑惑があるくらい賢くて、寂しがり屋の猫。

 

 こいつはそういう奴である。

 

 そのあとは猫と一緒の布団で寝て、起きて会社に行くときにドアを開けたら不審者がまだ居て、めちゃくちゃ驚いて……話を聞くからと一旦帰って貰った。

 

 勿論話はファミレスですることにした。

 シンプル不審者を家に上げたく無いし、何されるか分からんからな。

 

 「なんで話聞いてくれないんですか」

 

 「人の話を聞かないで、挨拶も自己紹介もしてこないでベラベラ話すヤベー奴だと思ったから」

 

 警察呼ぼうか割と本気で迷ったけど、お巡りさんも困るだろうし、また来られても困る。マジで嫌。

 

 「そうですか。私は魔女をやっています奥山です。あのクーデルオストロルが……」

 

 「ちょっと待った!」

 

 飯が来ているのだ。冷める前に食べたいというか、マシンガントークで冷めていくのが嫌というか……。

 

 「飯が冷めちゃうしさ、食いながら、ゆっくり喋ってくれ」

 

 「はい。では、冷めないようにします」

 

 なんだか分からないが、何かをやった。

 ていうか了承得てからやれよとか、俺のにはやらなくて良いよとか……こいつシンプル不審者だわと結論付けた。

 

 「じゃあ俺は食うから、その、俺が知っている前提で言わずに、もうちょっとかみ砕いて説明してくれると助かるわ」

 

 「難しい注文ですね。分かりました。あなたの家に住むクーデルオストロルをこちらに譲って頂きたいのです」

 

 「フツーに嫌」

 

 何言ってんのコイツ……?状態である。

 

 「魔の素養の無いあなたのような一般人には辛い状況だと思うのですが」

 

 「いや、別に何とも無いけど」

 

 分かっていたけど、コイツはシンプルに俺を値踏みして、下に見ているのだ。

 

 よく分からんけど、了承が出ると本気で思っているんだろうか。今も理解出来ないって顔してるし。

 

 「話はそれで終わりなら俺は食い終わったんで帰るわ」

 

 「いえ、話は終わっていません。譲ってください」

 

 俺は無視して帰ることにした。会計は押しつけた。

 なんつうか実力行使に出そうだしダッシュで帰る。

 

 明日の筋肉痛と、心地よいを通り越したキツい疲労感を残して家に帰ってきた。

 

 なんか嫌な感じがするので、ドアは閉めずにキッチンから塩を取り、塩を撒いてからドアを閉めて帰った。

 

 猫は俺の匂いを嗅いで、珍しく嫌そうな顔をして俺を風呂場に押すので、俺はお祓いみたいに人生で初めて服を着て風呂に入った。

 

 正確には服を着て水のシャワーを浴びた。

 猫が退くまで3度もやらされるハメになり、俺は翌日当たり前のように風邪をひいた。

 

 こういう時の猫は暖かい。なんつうか体温を感じる事がこれほど有難いとは思わなかったが、風邪の原因はコイツじゃんと感情がフラットに落ち着いた。

 

 俺は明日体調が回復して会社に行くときに、あの女が居て……襲いかかって来るかもと非常に憂鬱だった。

 

 今のあの女は不審者からキ〇ガイに超進化しているので危害を加えてきそうだなと思っているわけだ。

 

 「……お前は俺の家族だ。奪われたくないなあ」

 

 風邪をひくと、なんで弱音が出るんだろうな。

 

 昼まで寝て、カップ麺をすする。

 猫は自分で器用に棚から出して、フツーに食べてた。

 

 レトルトパウチも開けられるのか……とちょっとびっくりしつつも、餌の数が一致しない現象の原因が判明した瞬間でもあった。

 

 こいつこっそり食ってんじゃねーかと。

 

 ちなみに夜は冷凍食品にカップ味噌汁を食べた。

 買い置きは定期的にストックしておいて助かったなと感じる瞬間である。

 

 猫には俺の手でちゃんと皿に盛って出した。

 

 洗い物は明日やることにして、最低限の歯磨き等を行って眠ることにした。

 

 

 翌朝、体調も戻って会社に行く用意をしていると珍しく猫が玄関までやってきた。

 

 俺は猫を撫でると、黒い虫用の冷却スプレーを片手に外に出た。

 

 「やっぱり!!よこせっ!」

 

 「おいおい、こいつの意見は聞いたのか?」

 

 キチ〇イ女を冷却スプレーで牽制しつつ、珍しく外に出てきた引きこもり猫に声を掛ける。

 

 「下等生物どもの意見なんて興味無い!」

 

 本性を出したのか……俺を無視してナイフを振りかざして猫に襲いかかる。

 

 てかナイフを隠し持ってるとか怖すぎでしょ……。

 でも、コイツが猫に勝てる気は全然しなかった。

 

 「ニャッ」

 

 猫のパンチが女の頭を横から払い、地面に叩きつけた。

 今のはめちゃくちゃ早かったな……なんて見物していると、叩きつける、起き上がって襲いかかるのループが行われる。

 

 3度目の猫パンチが炸裂したあとは起き上がることもなく。猫はキチガ〇の背中に手を乗せて、もにょもにょと口を動かしたあと、器用にドアを開けて家に帰った。

 

 俺は放置して会社に向かった。

 家に帰るまでに居なくなって、二度と顔を見せないで欲しいと願ったのだった。

 

 

 夜になり帰宅すると、例の人影は消えていて……俺はホッとして家へと帰ることが出来た。

 

 ドアを開けて、狭い廊下の奥に見慣れたもこもこが居るのを見て安堵したのは内緒だ。

 

 あと、冷静に考えて体高が1メートルくらいは確実に超えてね?と疑問に思ったのは間違いであって欲しい。

 

 今日も猫と一緒に夜ご飯を食べる。

 普通の猫で換算すると、猫缶を実に10個は消費している我が家の猫の食費は限界突破しているのだった。

 

 具体的に言うと、俺の食費と既に大差無い。

 月の貯金額はもりっと減り、猫の胃袋へと消えていくのだ。

 

 まあ良いか。

 猫の居ない生活を忘れてしまったので、俺は今日も日常を送ることにした。




読んで頂き感謝。
猫の設定とか書こうと思いましたが、書かない方が良いかと思い書きませんでした。猫は猫です。

余談なんですが、没ルートとして猫耳の女性になって生活を送るルートと、反省した魔女を預かって現代に馴染ませる教育ルート、人間かした猫と、魔女に魔女の師匠の4人で暮らすごちゃ混ぜルートの構成がありましたが、猫が勝ちました。

最後に出てきた猫は体高120センチ、体長220センチ、50キロという設定です。ジャガーより軽いしこれは猫です。

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