精霊の御子 カレは美人で魔法使い   作:へびひこ

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第十八話 老魔術師の願い

「なかなか早いお着きだな、近衛近右衛門。どうやら麻帆良の魔法使いも無能ではなかったらしい」

 

 世界樹広場へと宙を跳ぶように駆ける司たちの前に一人の老人が姿を見せた。

 禿げあがった頭によく手入れされた白いひげ。和服姿だが、サンタクロースのお爺さんだと言われたら信じてしまいそうだとのどかは場違いな感想を抱いた。

 

「法条の御当主か……お主が今回の仕掛け人か?」

「いかにも。ワシが企んだことよ。いささか拍子抜けするほど上手くいったわい。無能を率いるのはご苦労なことだな? 近右衛門殿」

 

 いかにも好々爺と言った笑顔で笑う。その言葉は表情と不釣り合いなほど辛辣だ。

 

 法条家。関東の魔術師。その名家だ。

 その歴史と格式は司の藤宮家に劣るものではない。また実力も高いと言われている。彼らも実力で西洋魔法使いから独立を勝ち取った家なのだから当然だ。

 

 近右衛門の言うとおりならば目の前にいるのはその当主だ。ならば法条家、その一門すべてが敵に回ったと思わなければならない。

 

「なぜ法条家が……」

 

 司が思わず呟いた。

 法条家は藤宮家とも交流のあった家のはずだ。司自身はそれほど知らないが浅い付き合いではないはず。なにしろ協力して関東魔法協会に対抗する同盟相手なのだから。

 

「そこにいるのは藤宮の嫡男か。立派になったのう。お主は憶えていないだろうが幼い頃藤宮の夫人に鍛えられ木刀を振るっていた姿を見かけたことがある。本当に立派になった。一目見て一流と思える魔術師に育った」

 

 まるで久しぶりに会った親類の子供にでも語りかけるような親しげで温かい言葉だった。近右衛門に向けた辛辣さなど欠片もない。

 

「母親に似たのか……その強い意志を宿した瞳と温和な顔立ちが瓜二つ。良い顔立ちになった。もう一人前の男の顔だ。もしよかったら孫娘を嫁にやっても良いと思えるほどだのう」

 

 べた褒めだ。初対面の相手にこれほど褒められると司としてはむしろ薄気味悪く感じてしまう。敵対者ならなおさらだ。なにか思惑があるのではないかと裏を疑ってしまう。

 

「なぜ、こんな事を?」

「ふむ、まだ大人の社会はよく知らないものと見える。藤宮の当主め、相変わらず過保護なことだ。これほどの実力と覚悟のある男ならば一人前に働けるであろうに」

 

 かすかに苦笑を浮かべるが「気持ちはわかるがな」と独りごちた。

 

「さて、ワシが事を起こした理由か。当然なにをしようとしているかは理解しているな?」

「魔法世界を破壊すると聞いています」

「そのとおり。麻帆良の魔法使いもまるきり無能ではないらしい。いや藤宮あたりが調べたか?」

 

 出来のいい生徒を見る目で老人は司を見つめる。その視線は暖かで優しげだ。まるで我が子の成長を喜ぶ親にも似ている。なぜこれほど彼が自分に友好的なのか司にはさっぱり理解出来ない。

 

「ワシがやりたいのはな。西洋魔法使いの力の根源を破壊したいのだよ」

「力の根源?」

 

 夕映が思わず呟く。

 彼女に視線を向けるとその装いからなにか納得したのか一つ肯いた。

 

「君は藤宮の嫡男の従者かな? まさにだ。奴らがなぜこの地球で我が物顔で振る舞えると思う? それはな。魔法世界という異世界にある『本国』とやらの後ろ盾があると増長しておるからよ。いざとなればそこから援軍が来る。地球の魔術師などに負けぬとな」

「それは違う。わしらはけしてそのような……」

「ふん、いまさら奇麗事で取り繕う気か? それとも子供や藤宮の嫡男に知られたくないか? 貴様らが交渉に行き詰まるたびに何度『本国』という言葉を出して他者を威圧したか覚えがないと抜かすか?」

 

 近右衛門が言葉に詰まる。確かに子供には、しかも最近裏に入ったばかりの二人の少女には聞かせたくない。この手の話を聞けば潔癖な年頃の子供は一方的に西洋魔法使いを敵視しかねない。

 

 誰とて力で他者を屈服させている組織に無条件で好意的にはなれないだろう。かかげている理想が『和平による平和』『魔法使いの義務を果たして世界に貢献』などというものならなおさら現実との落差に嫌悪するかもしれない。

 

 司はそこまで単純ではないだろうが、やはりあまり聞かせたい話ではない。この二人の女生徒に至っては信頼するには情報がなさ過ぎる。しかもつい最近までただの女子中学生だったのだ。こんな話を許容できるほど大人だとは思えない。

 

 近右衛門は一人の大人としてまだこの手の話を理想と夢を抱く子供たちの耳に入れさせたくない。この三人はまだ子供だ。それはもう少し大人になり世間を知り、世間が奇麗事だけではまわらないのだと理解してからでも遅くないはずだ。その時になればきっと理解してくれる。理想をおこなうためには手を汚す必要があるのだと。

 

「魔法世界が消えれば……西洋魔法使いはその力の背景を失う。世界に対する影響力を失う」

 

 司はその内容を噛みしめるように呟いた。確かにいい手かも知れないと頭のどこかで思う。師である近右衛門には悪いが司は魔法世界に興味がない。栄えようと滅ぼうと好きにすればいいと思う。

 

 もし魔法世界がなくなれば西洋魔法使いが強引に力を振るうことはなくなるだろう。話に聞く限り西洋魔法使いは少々強引すぎた。今は比較的穏やかだがその勢力を拡大していた昔はごく当たり前に魔術組織を脅しあげて傘下に加え、逆らうならば攻め滅ぼしたと聞いている。

 

 その恨み辛みは当然のように世界に残っている。日本でも関西はいまだに関東魔法協会への恨みが強い。強引に押しかけてきた余所者で歴史ある魔術組織を数多くその秘伝と共に失わせた野蛮人たち。関東でさえ反感を持つ組織は多い。

 それでも西洋魔法使いが地球でかなりの力を発揮するのは魔法世界という異世界の後ろ盾があるからだ。

 

 後ろ盾を失った彼らはおそらく地球の魔術組織と同等程度まで力を落とす。もしくは報復がおこなわれるかもしれないが彼らも無力ではない。

 

 むしろ地球でもかなりの規模を誇る組織だ。戦えば規模は大きくなり犠牲も多くなる。考えなしの阿呆でなければ戦争より交渉により西洋魔法使いが当たり前に手に入れてきた特権を奪う方を選ぶだろう。多少の争いはあっても将来的には力の均衡による平和が実現するかもしれない。

 

「そのとおり。さすれば地球の魔術師たちは西洋魔法使いの横暴に怯える必要はもはやない。理想的なことだとは思わないかな。藤宮の跡継ぎ殿」

「横暴とは……」

 

 近右衛門は心外そうに口を挟もうとするがぴしゃりとさえぎられる。

 

「横暴とは力を背景に他者を脅し無理矢理従わせることを言う。貴様らが今までやってきた。いや今もやり続けていることだ」

「じゃから東西和平を。西洋魔法使いと日本の魔術師の融和が必要なんじゃ。それを足がかりに世界に広め、ゆくゆくは互いに尊重し合う関係になれば問題は解決するじゃろう」

「ふん、無理だ。不可能だ。現に貴様とてその『本国』とやらの意向に逆らえんのだろう。そんな状態で融和などしても西洋魔法使いの影響力が世界を覆うだけのこと。逆らえば潰すと脅しあげてな」

 

 近右衛門の理想を法条の当主は真っ向から否定する。不可能だと。その結果は西洋魔法使いによる地球の支配だと。

 

 おそらくそうなると司も思う。近右衛門の理想もわかる。本気でそう願っていることも理解出来るつもりだ。しかし他の者もそう考えるだろうか? 自分たちの影響力を広げ力をつけることを選ばないだろうか?

 

「藤宮の跡継ぎ殿。ワシらは藤宮と敵対する意志はない。ワシらはただ西洋魔法使いの増長の源を破壊するだけ、藤宮に害を及ぼさない。退いてはもらえまいか?」

 

 司の目にわずかに逡巡が走るのを法条の当主は満足そうに見やった。

 その場の空気を感じてやられたと近右衛門は内心唸った。

 

 法条の当主はいつの間にか司を『藤宮の跡継ぎ』と呼んでいる。つまり藤宮一族としての判断をせよと要求しているのだ。

 

 司が藤宮一族として考えたらどういう結論を出すか近右衛門でも予測出来ない。いや、したくない。最悪その槍でそのまま麻帆良の長である自分を貫きかねない。

 

 法条は藤宮の同盟相手。麻帆良は藤宮にとっては不干渉の相手。

 法条が麻帆良になにをしようと藤宮が首を突っ込む理由はあまりない。

 

 今ここにいるのは司個人の好意だ。近右衛門という師の危機に善意で手を貸しているにすぎない。

 

 しかし事が藤宮の一族も絡めばどう判断する。

 責任感が強く、なにより一族を大事にする子だと判断している。そんな子がどう考える?

 

 なんとかしなくてはと焦るが、この場で出せる手札が近右衛門にはない。

 せめて事前に藤宮一族と連絡をつけて協力を確約させるべきだった。

 

 個人的な縁を頼りすぎたと近右衛門は後悔する。確かに司は自分の弟子だ。師として敬ってもくれる。だが一族が絡めばそんなものは些事になりはてる。司は一族の子、その後継者として教育を受けた藤宮の魔術師だ。師への好意より一族の利益をこそ考えるだろう。

 

 しかししばらく考え込んだ司の発言は予想外のものだった。

 

「この先に木乃香さんがいるのですか?」

 

 まるで今までのやりとりをなかったことにするような問いだ。近右衛門はなにを考えているのかと藤宮の後継者を見る。その表情は澄んでいて迷いなどどこにもない。

 

 あるいはなにか考えがあるのか、あるとしたらどういったものか。どちらにせよ下手に邪魔はしない方がいいと近右衛門は沈黙を守った。

 

「いるが、それがどうしたかな? なにか藤宮に不都合でも?」

 

 法条の当主がにこやかに応じる。だがその瞳は油断なく司を見ていた。

 

「魔術儀式に使用するつもりですか?」

「術式の発動、そのための魔力装置として利用する」

 

 その瞬間司の雰囲気が確かに変わった。

 

 近右衛門は背筋にぞくりとしたものが走るのを感じた。才能があると思っていた。頭もけして悪くはない。その将来に期待もした。だが今の司はそれ以上の傑物に思える。おそらく現時点でも一流を名乗れる魔術師だ。それはエヴァンジェリンの解呪で確信していた。

 

 だがこの雰囲気は中学生の子供が出せるものではない。ただ魔術の腕があるだけの子供では断じてない。もはや大人に匹敵する。今の司はそれほどの気迫を感じさせる。

 

 空気の流れが変わったのを敏感に察して法条の当主が顔を険しくする。

 そして次の司の言葉に一瞬唖然とした。司の言葉の槍は老人を貫かんと突き出された。それも予想外の方向から来た。

 

「彼女は魔術師ではない。現段階では一般人です。その事は理解されていますか?」

 

 それが司の出したこの場での回答。

 藤宮の跡継ぎとしての姿勢。

 

 司は自身も木乃香と同じ『極東最大の魔力保持者』だ。一族はその肩書きを危険視した。将来司に災いが及ばないように手を配り、司自身がその困難に負けないように鍛え上げた。

 

 しかし近衛木乃香は違う。

 父親の意向で一般人として育てられた。聞いた限りでは魔術を知らず。裏の世界を知らず。自身のことすら知らないらしい。

 

 これではただの一般人だ。

 たとえ魔術の名家に生まれていてもこれでは魔術師ではない。

 一般人を裏に無理矢理関わらせ、魔術儀式に利用するのならそれは魔術師の禁忌に触れる。『一般人を害さない』というごく当たり前のルールであり常識を破っていることになる。

 

 そもそも彼らは街を鬼の大軍に攻めさせることで『魔術、魔法の秘匿』すら破った。その上『一般人を害さない』というルールを破るのなら藤宮がその言葉を聞く価値のある相手ではない。なぜなら彼らはすでに犯罪者集団に近いからだ。犯罪者集団が藤宮の跡継ぎに交渉を持ちかけるなど『立場をわきまえろ』と一喝しても誰も責めないだろう。

 

 法条の当主は目を鋭く光らせたが、穏やかに微笑んで見せた。

 

「これはこれは近衛の一人娘。『関西の姫』を一般人呼ばわりとは関西呪術協会が聞いたら激怒しますぞ。藤宮の跡継ぎ殿」

 

 関西呪術協会の跡取りを一般人と主張するのか?

 そう問いかける。いや責める。それで引き下がればよし。それでも退かぬならばと考えているのが司にもわかる。

 

 彼はなぜかは知らないが司と。いやあるいは藤宮と事を構えたくないのだと考えざるを得ない。彼が司に友好的だった理由もそれだろう。なんとか言いくるめて穏便に去って欲しかったのだ。

 

 魔法世界を滅ぼしたあと藤宮を味方につける気だったのかも知れない。いや関東の魔術組織すべてに声をかけて関東魔法協会に圧力をかけるつもりだったのだろう。

 

「では彼女の祖父に尋ねましょう。近衛木乃香は現時点で一般人ですか?」

 

 司の問いに対して近右衛門の答えは決まっている。まさか娘婿の優柔不断がこんな奇貨になるとは思いもしなかったと近右衛門は若干苦く思う。あるいは普通に魔術師として育てていれば避けられた事態かもしれないが、土壇場で有力な味方を引き込む札になり得た。

 

「……あれは一般人じゃ。魔術を習得しておらず。裏の世界も知らない。ただ魔力を持っているだけの人間を『魔術師』とは呼ばん」

「関西呪術協会も同意見と解釈しても?」

「かまわん。婿殿の意見も娘には一般人であって欲しいというものじゃった。間違いない」

 

 老人の顔が歪んだ。当てが外れたのだ。それも予想もしなかった屁理屈で。

 

 近右衛門は心底安堵する。そして自分がよほど余裕なく焦っていたことに気がついた。いつもならばそんな逃げ道ぐらいすぐに見つけられただろう。子供に出し抜かれるとは自分もまだまだ甘いと思う。けれどそんな弟子の成長が眩しく思えた。

 

「僕は藤宮一族の務めとして不当に魔術師に拘束され、魔術儀式に利用されようとしている一般人を救出するために動きます。邪魔をするならば排除しますが?」

 

 司がその美貌に冷たい笑みを浮かべて法条の当主を一睨みした。

 法条の当主である老人は一層笑みを深くしてそんな司を見つめた。出し抜かれ、やり込められたというのに悔しがりもしなければ慌てもしない。むしろそんな司を好ましく思っているような態度だ。

 

 

 

 

 その場には老人二人が残った。

 近右衛門が司に命じたのだ。

 

「ここはわしが引き受ける。お主は魔術儀式の阻止を頼む。エヴァの呪いすら解呪したのだから、問題はあるまい?」

「……止めるだけなら楽ですが、周囲に被害のないようにと考えると規模が大きすぎます。それなりの被害は覚悟してください。努力はしますが」

「やむを得ん。わしでもこんなアホのような魔力をまったく反動なしに止めるなど不可能じゃ」

 

 もはや世界樹にはとんでもない魔力が収束され光り輝いている。

 あれを無力化するなど人間には不可能だ。せめて魔術儀式を破壊し、魔力を可能な限り拡散させるのがせいぜいだろう。

 

 そして司は二人の女生徒を連れて世界樹広場へ向かった。

 追っ付け近右衛門の手配した援軍も向かう。向こうはまず問題なかろうと考える。

 

「ふむ、見逃してくれるとはありがたいの。それとも諦めたかの。なら降伏して欲しいんじゃが」

「なにを馬鹿なことを。たとえ世界樹に辿り着いてもそこにはワシの孫がいる。藤宮の跡継ぎにも負けはせん」

 

 自信を持って言い切る姿に近右衛門はまさかと思う。だが法条は実力の高い魔術の名家だ。司もその事は知っているはず。ならば油断はしまいと思うが心配ではある。

 

「それにあの藤宮の嫡男を後ろから討つなど出来るものか」

「どうも司に好意的なようじゃったが、縁でもあるのかの?」

 

 近右衛門の疑問になにを馬鹿なことを聞くのだという顔をした。

 

「あれは将来日本の魔術師たちを束ねて西洋魔法使いに立ち向かえる子だ。そんな将来有望な子を殺すなど出来る訳がない。もしワシらの計画が潰えてもあの子がいるのならば日本が西洋魔法使いに屈するなどありえん」

「ずいぶん高く買っておるの」

 

 自身も彼を将来西洋魔法使いと日本の魔術師の架け橋にと願った。目の前の法条の当主はむしろ日本の魔術師の旗頭となる事を願っているらしい。あちこちから期待されてあの子も難儀なことだと心配になる。重責に押しつぶされることがなければ良いのだが。

 

「貴様は小細工をしたようだが、あの子はワシの目で見た限りほぼ魔術師寄りだ。貴様ごときの手駒にはならんぞ? 今回はどうやらワシらのやり口が気にくわなかったらしいがな」

「あの子は木乃香の友人じゃ。そうでなければあるいはお主の目論見通りに退いていたかもしれん」

「なるほど『関西の姫』とすでに友誼を結んでいたか、それもまためでたい。あの二人が結ばれれば日本の魔術師たちはあの二人の元へ馳せ参じるのに抵抗はあるまい。『関西の姫』と『藤宮の息子』共に『極東最大の魔力保持者』実に結構なことだ」

 

 ありえる未来ではある。

 そうなれば二人は西洋魔法使いと和解を目指すだろうか、それとも排除に向かうだろうか? 今の気性なら和解を目指しそうだが子供は変わる。大人になったときも今と同じ思想や人格のままとは限らない。

 

「あの子や木乃香は日本の未来を、西洋魔法使いと地球の魔術師の未来まで背負うのか……哀れな」

「それが魔術師の家に生まれその血を継ぐものの義務だ。それを放り出して西洋魔法使いの組織に身を置く貴様には理解できんかもしれんがな」

 

 法条の老人はごく自然にそれが二人の『義務』だと言い切った。

 おそらく多くの魔術師がそう思い。そう口にし、彼らにそれを期待するだろう。

 

「夢を見ることは出来てもその夢が叶うことはけしてなく。ただ一生を魔術師たちのために捧げて生きる。哀れとは思わんのか?」

「貴様も西の長の同類か? 言ったはずだ。それが魔術師の家に生まれた者の義務だと」

 

 生粋の魔術師だの。

 その皮肉は口にださない。自分とて他人の事は言えない。二人には大きなことを期待しているのだ。自分には不可能でもあの二人ならばと。

 

「そろそろ始めるかの。出来れば弟子と孫を助けに行きたいのでな」

「ワシも孫の手助けに行きたいのだ。貴様ごときに手間をかけたくないが『極東最強』が相手では軽くひねるというわけにもいくまいな」

 

 互いになんの合図もなく空中で近右衛門の放った無詠唱魔法と法条当主、法条源助が軽く片手で印を組むだけで発動させた魔術が激突する。

 

 空に凄まじい魔力がぶつかり合い。打ち消し合い。せめぎ合う。

 

『極東最強』対『法条一門当主』の戦いが始まった。

 




お久しぶりの更新です。最近改定作業をしたとはいえ、更新はほぼ一年ぶりです。

ちょうど麻帆良での戦争が始まり、これからというところで力尽きてそのまま放置。
すでに忘れられているかも知れません。

これからは若干マイペースとはいえ、ある程度しっかりと更新していきたいです。

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