便利屋68はその界隈ではまあまあ有名な便利屋であり四人の生徒により構成される会社……会社なのか?まあ、会社でいいだろう。
便利屋68とはアルがゲヘナ学園の高等部に上がった時から交流がある。最初はアルが他の生徒達にカツアゲされてたところを助けてそこが始まりだった。
「で?何でまた無駄遣いしたんだ?」
「む、無駄遣いですって!?」
「社員にご飯の一つも奢れない時点で無駄遣いでは?」
「…………」
「アルちゃん白目剥いちゃった。ヤマトもあまり虐めるのは良くないよー」
いやーこれは正論パンチしなきゃダメでしょ。
「で?結局何にお金使ったんだ?」
「アルちゃんがこの後の依頼のために全財産使って傭兵を雇ったんだよ」
「はぁ?」
アルが傭兵を雇った?便利屋68は実力に関してはキヴォトスでも上位に行ける集団ではある。便利屋68の仕事も基本便利屋だけですませている。なのにバイトを雇うという事はそれだけデカい仕事って訳か?あ、確かこの後便利屋68がアビドス襲撃するんだっけな。
「……んー、まあ、詳しくは聞かないわ。お前達にも守秘義務とかあるだろうし」
「流石同業者、わかってるね〜」
「お待たせしました!柴関ラーメン四つとチャーシュー麺大盛りと餃子です」
話していれば席に料理が届いた。俺の分までこっちに持ってきてもらってありがたい。
置かれていくラーメンに便利屋68の面々は頬を緩める。ハルカだけは恐縮してていつも通りだと思う。
「大将なんか量多くない?」
「いやぁ、ちょっと手元が狂っちまってな。こっちのミスだから問題無く食べてくれ」
「大将っていつも手元狂ってるな」
「そういやぁそうだな!俺もまだまだって事だな。はっはっはっ!」
大将マジで聖人、いや、聖犬?まあ、聖人でいいだろ。
「では、手を合わせて頂きます」
「「「「頂きます」」」」
俺の食前の挨拶に便利屋68も同調し、食べ始める。この前食ったばかりだけどここのは美味いな。
便利屋68のみんなも美味しそうに食べている。やはり食事は良いな。
食事をしていればノノミちゃんがいつの間にかこちらのテーブルに近付いてきていた。
「美味しいでしょう?」
ごく当たり前のように自然に、ノノミちゃんはテーブルの横から声をかけてきた。それに少し驚いた表情をしながら便利屋68の視線がノノミちゃんに集まる。
「あれ……?えっと、隣の席の――」
「うんうん、此処のラーメンは本当に最高なんです、遠くから態々来るお客さんもいるんですよ」
「えぇ、分かるわ、色々な場所で色々なものを食べたけれど、このレベルのラーメンは中々お目に掛かれないもの」
確かにここの料理は美味い。美食研究会が大人しく料理を食べる程だ。あいつら常識をどっかに置いて来たのか?と思う程やらかしが多いが舌は肥えてるからなぁ。
「えへへ……私達、此処の常連なんです、他の学校の生徒さんに食べて頂けるなんて、何だか嬉しいですね」
「きょ、きょ、恐縮です……」
「その制服、ゲヘナ?遠くから来たんだね」
「……まぁね、ちょっとだけ大変だったよ~?」
「…………」
あ、カヨコとムツキ、今話してるノノミちゃんがアビドスの所属だって気付いたな。
「ね、もしかしてアビドス?」
「たぶん……でも社長…気づいてないね…言うべき?」
「ん~..面白そうだからほっとこ!」
さて、どうしようか、まあ迎撃はするか。あとはアイツら呼ぶかな。
「うふふふっ、良いわ、こんな所で気の合う人達に会えるなんて、これは想定外だけれど、こういう予測できない出来事こそ、人生の醍醐味じゃないかしら!」
アルはすっかり仲良くなっちゃってこの後戦うってのに、まあ、こういうポンコツ具合がアルの面白いところだよ。
さて、久しぶりにコイツらが何処まで成長したのかみてやるか。楽しみだ。
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「ふう……良い人達だったわね」
「………」
「………はぁ……」
便利屋とアビドス、ヤマトが互いに手を振り合って別れた後、アルは笑顔なのに対してただ一人、カヨコの表情は暗かった。
そんなカヨコを心配してアルは声をかけた。
「カヨコ?もしかして胃もたれでも…」
「違う、社長、あの子達の制服気付いた?」
「せ、制服?なんのこと?」
カヨコの予想外の言葉にアルはきょとんとする。
その顔をみてムツキはクスクス笑い始めた。
「アビドスだよ、あいつら」
「………アビドス?」
アルは難しい顔でアビドス……アビドス……と言葉を繰り返し、そんなアルを見てカヨコは額を押さえてため息をついた。
そして漸く、アルは今回の依頼主からの襲撃校の名前がアビドスである事を思い出した。
「ななな、なっ、何ですってッーーー!?」
「あははは、その反応おもしろ~い」
「はぁ……本当に全然気づいていなかったの」
「……えっ、そ、それって私達のターゲットって事ですよね? わ、私が始末してきましょうか!?」
「あははは、遅い、遅い、どうせもうちょっとしたら攻撃を仕掛けるんだし、その時暴れよ、ハルカちゃん」
「そ、そうですよね」
愛銃を握りしめ、今にも突撃しそうなハルカをムツキが制止する。その制止にハルカは愛銃を握りしめた手を緩めた。が、カヨコはまだ苦虫を噛み潰し続けているような表情をしていた。
「う、嘘でしょ……あの子たちがアビドス? う、うぅ、何という運命の悪戯……!?」
「はぁ……社長、まだ悪い情報が残ってる」
崩れ落ち、まるで生まれたての小鹿の様に震えているアルにカヨコは追い討ちをかけるように言葉を続けた。
「う、うそでしょ…?これ以上、何が……」
「ヤマトがアビドス側に着いてる」
ピタっと、震えていたアルの動きが止まった。
そして数秒の間を開けて錆び付いたブリキの玩具のようにカヨコの方に振り返った。
「……嘘でしょ?」
「嘘つく理由が無い。それにさっき『楽しみに待ってる』って言われた」
カヨコはそう言って天を仰ぐ。
そして、静止していたアルは徐々にカタカタと震え始め……
「どお"じでよ"ぉぉぉお"っ!!!!!」
情けなく汚い声で悲鳴を上げた。