とりあえず頑張る
「クックックッ、まさか貴方の方から来て頂けるとは思いもよりませんでしたよ。骸夜ヤマトさん」
「俺だって出来れば会いたくなんて無かったよお前とは、でもそうも言ってられないんでな」
とあるビルのオフィス、その場所にはポツンと机と椅子が置いてある。
そこに座るのは黒いスーツに身を包みキヴォトスでも見ない珍しい姿の大人、体は影の様に黒く無機質で、右目にあたる箇所には発光部があり、そこから顔全体に亀裂が走っている。
ゲマトリアという組織の一員『黒服』。
そんな黒服と俺は対峙していた。
元々黒服とはキヴォトスに転生して自分の不死性を知ってから間もなくしてから出会った。
やはりというか俺の不死性に目をつけて接触してきた。その時はキッパリ断ったが連絡先だけは受け取っていた。
「それで今回はどのようなご要件で?あの契約を結んでいただけるので?」
「それは無い。何をされるかわかったもんじゃねぇ」
黒服が前に持ちかけてきたのは俺を調査する見返りに金銭やゲマトリアの技術提供など非常に魅力的ではあったがその調査がどの範囲でありどれだけの期間であるかなど不明瞭な事も多く断った。
「俺が出すのは情報と今まで俺が書いた俺自身の研究資料、お前達ゲマトリアに求めるのは技術だ。もっと詳しく言えば共同研究になるな」
「クックックッ、それはまた非常に気になりますね」
先生がこのキヴォトスに来た以上もうキヴォトスの命運を賭けた戦いはもうすぐだ、ここで俺に出来る事をしなくてBADENDになったなんて笑えない。
「それじゃあ、詳しく話そうか」
「ええ、有意義な時間にしましょう」
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「いらっしゃい!なんだ、ヤマトか!」
「こんちわ、大将。チャーシュー麺大盛りに餃子お願い」
「おう、いつものだな。待ってな!」
俺は黒服との話し合いを終えて柴関ラーメンに来た。
黒服との話し合いはすげぇ神経を削られた。なんだよアイツ、マジで面倒、苦手。
「ヤマトじゃん、やっほー」
柴関ラーメンに入って声をかけたのはムツキだった。他の便利屋68の面々も揃っている。
「ああ、お前らか。ここ気に入ったのか?」
「まあ、安くて美味しいからね」
俺は便利屋68と同席する。
「で?難しい顔してどうしたんだアル?」
「……このままでいいのかしら。いいえ、良くないわ」
ああ、またか。
アルは時たまこうなる。ハードボイルドでアウトローの存在になろうとしているアルは少しズレている。どうせ柴関の大将の優しさに触れたせいだろう。
「また
「私に必要なのは冷酷さと無慈悲さと非情さなのに!こんなほっこり感じゃない!ここには仕事に来てるのよなのに、こんな――」
「はーい、黙りましょうか」
俺はアルの口を手で塞ぐ。
「もごもごもご!?もごもご!!」
「ちょっ、口動かすなくすぐったい。良いから落ち着けよ。お前がそうなるといつもろくな事ないだろ?」
「……もごもご」
アルが大人しくなったのを見計らって俺はアルの口から手をどける。
「お前はさ変な思い込みしてんだよ。アウトローは法に従わないもの、ハードボイルドは感傷や恐怖などの感情に流されない、冷酷非情、精神的な強靭の高いやつだ、お前の言うそれはただの犯罪者と紙一重だぞ?お前がなりたいのは吐き気を催す邪悪か?それとも卑劣な悪か?お前の解釈がいまいちよく分からないんだよなあ」
「……それは」
俺が思うにコイツの言うアウトローとハードボイルドは自由とカッコ良さなんだよな。まあ、コイツ元来のポンコツさで到底なれるとは思わんが、それがアルのいい所でもある。あと変な所で甘ちゃんな所とか。
「お前がどう生きようとお前が決める事だが、アウトローとハードボイルドって言葉に捕らわれすぎだ。もっと自分のやりたいようにやれ」
「私のやりたいように……」
アルは変に意識してない時の方がそれっぽいんだけどなぁ。根は真面目なところあるし、アウトローとハードボイルドなんて目指して簡単になれるような存在でもない。特にハードボイルドなんてそのうち感情が死にそうだ。
「お待ちどう!柴関ラーメン四つとチャーシュー麺大盛りと餃子だ。腹減ってると良くない考えばかり浮かんじまうもんだ、飯食ってから考えてもでも遅くはねぇさ。それにな嬢ちゃん、あんたの周りにはいい友達がいるじゃないか」
「大将いい事言うねぇ」
「人生経験が違うんだよ!なんてな、はっはっはっ」
席に届いたラーメンを俺達はそれぞれ食ったがその間アルは何やら悩んだ顔をしていた。まあ、そのうち吹っ切れるだろ。
「ご馳走でした。大将御会計」
「あいよ」
ラーメンも食い終わり店を出ようとした時。突然柴関ラーメンの建物は崩れ去り俺はミンチになった。