残機無限のブルーアーカイブ   作:エドアルド

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大一番の前に

 

「……いったいなんなのよ」

 

 その言葉を発したのはセリカだった。カイザーPMCが攻めてきたと思ったら突然現れたガスマスクの少女達に3分たらずで殲滅されたのだ。状況が上手く飲み込めていなかった。

 

「とりあえず、危機は去った……ということでしょうか?」

「ん、カイザーは全員倒れてる」

 

 通信機の向こうのアヤネの言葉に返したシロコの目線の先には微かな呻き声をあげながら倒れているカイザーの兵隊達がいた。

 カイザーPMC理事も顔が酷い事になりながらもどうやら生きてはいるようであった。

 

 そんな現場に次々と装甲車がやってきた。また、カイザーの一団かとアビドスの生徒達と便利屋68、先生は身構えるが――

 

「……あのマーク、エガタ学園の」

 

 カヨコの言葉に構えをとく。エガタ学園、ブラックマーケットにあるという連邦生徒会非公認の学園。そこの生徒とはつい最近、交流もあり知らない仲では無かった。

 

 停車した何台もの装甲車の中からはよく不良生徒と言われる格好をした生徒達やヘルメット団なども出てきたが全員が腕にエガタ学園の校章が描かれた腕章を付けていた。

 

 そしてとある装甲車から出てきたのはヤマトだった。

 

 

 

 

********

 

 

 

 

『はーい、注目!』

 

 俺は装甲車の上からスピーカーで沢山いるエガタ学園の生徒達に向かって話しかけていた。

 ここにいる生徒達は全員がエガタ学園の所属であり、日給2万円でカイザーPMCとの戦闘によりボロボロになったアビドス自治区の整備をやらせる為に連れて来た。

 

『これからここ、アビドス自治区の整備をします。瓦礫の撤去と清掃、倒れているカイザーPMCはトラックに乗っけて自治区の外に放り出せばいいです。それじゃあ開始!』

 

 俺の開始の言葉と共にエガタ学園の生徒達はそれぞれ行動を開始した。

 それを見届けると装甲車を降りて先生達の元に行く。

 

「ヤマトこれは……」

「ん?ああ、彼女達はエガタ学園の生徒だよ。戦闘でアビドス自治区はこの有様だろ?だから連れて来たんだ」

 

 いやあ、にしても本当に酷いな、大分派手にやったみたいだ。

 

「この後もちょっと予定入ってるから直ぐに行かなきゃ行けないんだけど」

 

 そう言いながら手に持っていたファイルを先生に渡す。

 

「これは?」

 

 そう言いながら先生はそのファイルの中の書類に目を通すと驚きに目を見開く。

 

「これは、土地の権利書?アビドス自治区の!?」

「えっ!?」

「ほんと?」

 

 俺が渡したのはアビドス自治区の土地の権利書だ。

 

「カイザーをちょっときょうはk……交渉してね。カイザーに渡ったアビドスの土地は全部戻って来たよ」

 

 いやあ、実に楽だったよ。先生が対策委員会の顧問になってたおかげでホシノは未だに生徒会副委員長だから今回のカイザーPMCの戦闘行為は確実に違法行為だ。それとコユキに頼んで手に入れたカイザーの黒い部分の一部その二つで土地を潔く譲ってもらった。流石に借金に関してはちゃんとした契約の元成り立ってるので無くしたりする事は出来なかった。利子を減額するのは行けたが。

 

「さて、先生。あとはホシノだ」

「うん」

「生徒の俺には出来ない先生の仕事だぜ?」

「任せて」

 

 先生の自信に満ち溢れた言葉に安心した。普段はあれだがいざとなると頼もしいな。

 

「さて、俺はこの後もやる事がある。また後でな。ホシノの事頼んだぜ」

「うん。また後で。必ず連れて帰るよ」

 

 俺はその言葉を背にしながら装甲車に戻った。

 アビドスの土地は取り返した。後はホシノ……は先生の担当だ。あと一人必要だ、アビドスには。

 

 

 

 

 

 

********

 

 

 

 

 

 とある病院の一室に俺は来ていた。そこの部屋の主は生命維持装置に繋がれながら穏やかに眠っている。

 

「ユメ先輩」

 

 月明かりを受けただ眠っているかのように見えるユメだが、アビドス砂漠でビナーと戦闘した時の怪我が原因で脳に傷を負い植物状態になっていた。

 医者からはいつ目を覚ますかはわからないと言われている。もしかしたら一生目が覚めないかもしれないとも言われた。

 

「クックックッ、このような貴重な機会に立ち会えるとは幸運です」

 

 俺とユメの他にこの部屋にいる人物が一人黒服だ。こいつがここに居ることは大変に遺憾なのだがこれも契約だ、破る訳というか破る事は出来ないからな。

 

「で?物は?」

「こちらに」

 

 黒服から手渡されたケースを開くと中には3発の銃弾とリボルバーが入っていた。

 

「あなたが色々と試行錯誤してくれたおかげで早急に作り上げることが出来ました。すでに実験も済ませています」

「……問題無いんだな」

「ええ、勿論」

 

 俺はリボルバーを手に取ると銃弾を込めて撃鉄を起こす。

 そしてユメ先輩の額に照準を合わせる。

 

「……チッ」

「私が代わりましょうか?」

「要らない」

「ククッ、わかりました」

 

 今からユメ先輩を撃つという事実に手が震える。自分の命を絶つ事には問題が無いのに他人のものとなると怖気付くなんて矛盾してるな。だがその矛盾は俺にとって大切なものだ。

 

「……スゥ……ハァ……」

 

 呼吸を整えて俺はリボルバーの引き金を引いた。銃声が病室に轟き、機械の心肺停止を知らせる音が鳴り響いた。


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