ユメ先輩がホシノ達の前に現れる少し前。
アビドス砂漠上空、大型ヘリの内部に俺とユメ先輩、エガタ学園の生徒数名がいた。俺はヘリの操縦席でアビドス旧校舎に向けて進路を取っていた。
「サイズ調整完了」
「出力修正プラス0.4」
「エネルギー充電Max」
「全武装点検完了」
ヘリの後ろではエガタ学園の生徒たちがユメ先輩の体にとあるものを装着している途中だった。
パワードスーツ〈クストス〉。アビ・エシェフを参考に作り上げられた身体補助のパワードスーツだ。形は体を覆う骨組み型の単純なのものだが装着すれば戦車を軽々と持ち上げられる程の膂力を発揮出来る。
さらにそれに合わせて作られた特注の盾と劣化ウランの特殊徹甲弾を放つ為の特注大型拳銃。二つともミレニアムのエンジニア部とエガタの兵器開発部の合作でもある。
「全調整と点検終わりました」
「よし、ユメ先輩カタパルトに」
「あいあいさ〜」
ユメ先輩はヘリの内部に取り付けてあるカタパルトに乗り体勢を整えた。
「起きたばっかりなのにすいません、ユメ先輩」
「大切なアビドスの何より後輩たちの為ならこれぐらいへっちゃだよ!それに楽しみなんだ、新しい後輩に会うのもホシノちゃんに会うのも。……ホシノちゃんには怒られちゃうかなぁ、あはは」
「まあ、その時はその時でしっかり怒られて下さいよ?大変だったんですから」
ビナーに何回殺された事か、一人で相手する存在じゃねえ。
「うん、心配かけちゃったみたいだから。でも、今は!」
「ええ、ホシノをアビドスを助けますよ!」
カタパルト前方のヘリの扉が開き巨大なロボットが見える。
「ブースター取り付け終了!何時でも行けます!」
「行きますよ!ユメ先輩!」
「うん!!」
〈システムオールグリーン。ブースター点火。射出します〉
ユメ先輩の背後に取り付けられたブースターが点火しカタパルトが稼働すると超高速でユメ先輩はロボット、オブシディアン・フューリーの顔面目掛けて盾を構えて飛んでいく。
「大切な後輩たちに手出しはさせない!!」
『何が――ぐあっ!?』
「ダイナミックだなぁ、先輩」
先輩はそのままブースターをパージしホシノ達の目の前に降り立った。
********
そうして今に至る訳だがどうすっかなあ。まさかあんなデカブツ出してくるなんてなぁ。
まあ、カイザーPMC理事――いや、
「全員戦闘態勢!」
「「「「「了解!」」」」」
「ヘリの全火器システム起動。操作を各操縦席に移譲。これよりヘリの操縦に専念する」
「移譲を確認!」
「火器制御システムオールグリーン」
「残弾数残り100%」
「ヘリの防御シールド展開。エネルギー残量100%」
「照準設定完了!」
「よし!アビドスに当てないよう気をつけながら射撃開始!」
「「「「「了解!」」」」」
そうしてヘリの全武装が
さらに地上からは先生の指揮の元ユメ先輩をはじめ、アビドスのみんなからの攻撃が開始された。
『グッ!?邪魔をするなぁ!!』
アビドスよりこちらを脅威とみなしたのかオブシディアン・フューリーの両肩からプラズマミサイルがヘリに向けて放たれたる。
まあ、計画通りなんだが。
「回避行動!」
「フレア展開!」
「機関銃による迎撃開始!」
次々と放たれるプラズマミサイルだがその全てを回避しフレアで爆破し機関銃で撃ち落とす。それを抜けてきたものはたった1発、それもシールドにより阻まれる。
「ダメージ想定内、シールド残量95%」
「ユメ先輩!」
『わかった!』
俺がユメ先輩に合図を出せばこちらを注視していたオブシディアン・フューリーが突如膝を着く。
〈右膝損傷、歩行に支障が出ます〉
『何が!?』
オブシディアン・フューリーの右膝を撃ち抜いたのはユメ先輩が持つ特殊拳銃。劣化ウラン製の特殊徹甲弾を撃つ為に開発されたその拳銃は並の生徒ではまず吹き飛ばされる程の反動を誇りその威力はご覧の通り、オブシディアン・フューリーの右膝を撃ち抜き大きな損傷を与えた。
〈ショックアブソーバーへの負荷を確認。射撃可能回数、三回〉
「それだけあれば問題なし!」
パワードスーツであるクストスを装備したユメ先輩ですら放てるのはたったの4回。それ以上はクストスが瓦解する。
右膝へのダメージで動きが止まったオブシディアン・フューリーの隙を見逃さずユメ先輩はそのまま左膝、右肩、左肩に向けて特殊拳銃を立て続けに発砲する。
『クソッ!?クソッ!?クソがァァァァァァ!?こんなはずでは!?』
それによりオブシディアン・フューリーは撃ち抜かれた関節から火花を上げながら膝を付き両手を地面につけた。
〈パワードスーツ・クストス、許容ダメージ限界値。パージします〉
「ありゃ〜、クストスもだけど拳銃もダメかぁ」
クストスは搭乗者の安全の為にパージされ特殊拳銃も特殊徹甲弾が撃たれる際の膨大な摩擦熱により砲身が発熱し真っ赤に染まっていた。
真っ赤に発熱した特殊拳銃を残念そうに見つめるユメ先輩に向けてホシノが歩みよる。
「ユメ先輩、これを」
「え?これは、私の拳銃……ありがとう、ホシノちゃん!」
「帰ったら言いたいことが沢山あります」
「え!?今言うの!?…………うん、もちろん」
ホシノからまるで新品のように綺麗な状態の自分の拳銃を受け取ったユメ先輩はそれを見て笑い弾丸を込めた。そして盾をホシノと一緒に構える。
『動きは封じたからあとは機能停止まで総攻撃だ』
「みんな!あと少しだよ!」
ヤマトと先生の言葉にみんなは頷きオブシディアン・フューリーに向けて総攻撃を開始しようとして地響きに動きを止める。
『こ、今度は何が!?』
そして地面が爆発したように砂が吹き飛びそこから何かが飛び出しその長い体でオブシディアン・フューリーに絡みつく。
『ダメージ70%、これ以上は危険です脱出して下さい』
『クソがあっ!?』
何かに巻き付かれたオブシディアン・フューリーの機体は悲鳴を上げ火花を散らす。
元カイザーPMC理事は脱出しようとするがそれよりも早く、オブシディアン・フューリーに巻き付いた何かの口がオブシディアン・フューリーの操縦席である頭を食いちぎる。
『や、やめろ!?死にたくな――』
口に咥えられたオブシディアン・フューリーの頭部は軋みながら変形し無惨にも噛み砕かれ、吐き捨てられた。
そして、たち昇った砂煙も落ち着きその中から姿を現したのは――
「ビナー、出てきたか」
デカグラマトンが一体ビナーだった。
たった一話で終わりビナーに一瞬でやられたオブシディアン・フューリーくん。すまんな、カイザーPMC理事が乗った時点で君の敗北は決まってたんだ。