学園都市キヴォトス、ブラックマーケットの一角に立つ学校。その名はエガタ学園。連邦生徒会非公認の学校にして自治区を持たない異色の学園。
そんなエガタ学園に来訪者が一人。
「アロナ、ここで合ってる?」
『はい!間違いなくここがエガタ学園です』
連邦生徒会の制服に身を包んだ大人の女性。連邦捜査部シャーレの顧問である先生だ。この日は度々自分を手助けしてくれるヤマトが所属しているエガタ学園を一度この目で見ようとやって来たのだ。一応視察という仕事の面も持ち合わせてはいるが微々たるものだ。
先生は早速エガタ学園の敷地に入って行くと中々の大きさに目を見張る。事前にある程度調べていたとはいえ学校の敷地だけで言えばキヴォトス一の広さを誇るのは伊達では無いようだ。生徒数もマンモス校筆頭であるゲヘナ学園と同規模という点から見ても相当な規模を誇っている。
「確か入口近くに守衛所があるらしいけど……あそこか」
先生が見つけた一つの建物、そこには守衛所と書かれている。その名の通り守衛の詰所だ。ここエガタ学園はブラックマーケットの中に立っている関係上治安はかなり酷いものになっている。それ故に学校そのものを守る為の守衛委員会というものが設立されており学校の守りを担っている。
それとは別に風紀委員会も存在してはいるがそちらは学校内での取り締まりを主に担当している。
先生が守衛所に向かう理由としては部外者がここに入る際にはこの守衛所にて入校許可証の発行が必要になってくる。他の学校ではあまり見られないシステムだがやはりブラックマーケットの中という事で犯罪の抑制の為などにセキュリティ面ではガッチガチに固められている。
「すいませーん」
「はい、どうぞ」
早速守衛所に向かった先生が声をかけると中から声がかえってくる。その声に従って中に入る。
「うおっ……でっ……」
中に入って先生が目撃したのは黒い軍服のような服に彼岸花が装飾された服を着た身長2m程の女子生徒だった。彼女が着ているのはエガタ学園の守衛委員会に支給される制服である。
「ようこそ、シャーレの先生」
「……あれ?私自己紹介した?」
「ああ、この姿では初めましてですね」
そう言って彼女はガスマスクを取り出す。
「あ、この前の!」
「はい、改めまして。エガタ学園二年の覇刃カノンと言います」
覇刃カノン、アビドス自治区にてカイザーPMCを殲滅した特殊部隊エクリクシのコールサインD2である。エクリクシの子達は普段はこうしてエガタ学園で普通の学園生活を送っているのだ。
「話しは聞いています。これが入校許可証になります」
「ありがとう」
「仕事ですので」
カノンから手渡された入校許可証を首からかけた先生は守衛所を後にして校舎に向かう。そしてあと少しで入口に到着というところで突然校舎1階の一角が爆発する。
「えっ!?」
爆発からは何人かの生徒が悲鳴をあげながら吹き飛ばされ校庭に顔面からダイナミック着地をしている。それを見た先生は慌てて校庭に投げ出された生徒たちに近寄る。
「配合ミスった……」
「だから辞めましょうって言ったじゃないですか」
「お前らふざけんじゃねぇぞ」
しかも吹き飛ばされた生徒の中にはヤマトがいた。ただヤマトだけは上手く着地したようで顔面からの着地は避けていた。
「ヤマト大丈夫!?」
「大丈夫だ、って先生じゃないですか。そういえばもうそんな時間か」
体についた砂埃をはたきながらヤマトは立ち上がる。
「何があったの?」
「ああ、いや、こいつらが薬品の調合ミスって爆発させたんですよ。運良く怪我はしなかったけど危うくミンチになるところでしたよ」
「ははっ!ミンチになっても君は問題ないじゃないか」
ヤマトと先生が話している所に突然割って入る声があった。その声の主は未だに立ち上がる爆煙の中から現れた。
「ショウ、部費減らされてぇのか?」
「それは困るな」
現れたのは緑髪のロングヘアの少女、エガタ学園、薬品化学部部長、
「おや?そちらの大人は?」
「初めましてシャーレの先生です」
「ああ、君がかのシャーレ先生か」
ショウは先生に歩み寄ると何かを握らせる。
「お近づきの印だ」
「なにこれ?」
先生に渡されたのは何やら青色の液体が入った試験管だった。それを見た瞬間にヤマトはその試験管をぶんどるとショウに向けてぶん投げた。
「おっと危ないじゃないか」
「危険物を先生に渡すんじゃない!」
ショウが先生に渡したのはニトログリセリンのおよそ5倍の威力を誇るショウ独自の調合により生まれた爆薬だ。
「なに、非力な先生に少しでも身を守るものは必要かと思ってね」
「身を守るどころか滅ぼしかねないものなんですけど!!」
「ははっ、まあ良いじゃないか。とりあえず実験室のあと片付けをしなきゃいけないので失礼するよ。ほら、お前たち起きて手伝え」
「はい部長」
「了解です部長」
「面倒起こすなよまったく……」
やっと爆煙が収まってきた実験室に戻っていくショウ達を見てとんでもないところに来たなと内心思う先生であった。